タイトル: | 特許公報(B2)_新規なキシリレンジチオール誘導体 |
出願番号: | 1995184014 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C07C321/20,C07C327/22,C08F20/38,G02B1/04 |
今井 雅夫 川内 啓也 鈴木 順行 小林 誠一 笹川 勝好 藤井 謙一 JP 3688021 特許公報(B2) 20050617 1995184014 19950720 新規なキシリレンジチオール誘導体 三井化学株式会社 000005887 今井 雅夫 川内 啓也 鈴木 順行 小林 誠一 笹川 勝好 藤井 謙一 20050824 7 C07C321/20 C07C327/22 C08F20/38 G02B1/04 JP C07C321/20 C07C327/22 C08F20/38 G02B1/04 7 C07C321/20 C07C327/22 C08F 20/38 G02B 1/04 CA(STN) REGISTRY(STN) 特開平03−056459(JP,A) 特開平03−205413(JP,A) 特開平04−168110(JP,A) 特開平05−051419(JP,A) 2 1997031047 19970204 10 20000315 穴吹 智子 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、良好な光学物性、高い屈折率及び優れた耐擦傷性をもつ光学用レンズ樹脂などの原料として有用な新規なキシリレンジチオール誘導体に関する。【0002】【従来の技術】プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。現在、これらの目的に広く用いられる樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.C と言う)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐熱性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性、研磨性等の加工性が良好であること等、種々の特徴を有している。しかしながら、この樹脂は、無機ガラスに比べ、屈折率が小さく、ガラスレンズと同等の光学特性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚及び曲率を大きくする必要があり、全体に肉厚になることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれていた。【0003】D.A.C 樹脂よりも屈折率が高いレンズとして、ポリウレタン系レンズが知られている。例えば、特開昭63-46213号において、キシリレンジイソシアネート化合物とポリチオール化合物とからなるポリウレタン系レンズが提案されている。また、特開平2-270859号公報には、特定のポリチオール化合物とイソシアネート化合物の組み合わせにより、高屈折率で、軽量、耐衝撃性に優れたポリウレタン系レンズが提案されている。しかしながら、これらの樹脂によるレンズは、耐擦傷性が十分ではなく、レンズの表面が傷つきやすいという欠点を有している。また、光学的に均質なレンズを得るためには重合時間が長くなり、作業性が繁雑になることがあった。このため、これらの問題点を解決すべくさらなる改良が望まれていた。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、良好な光学物性、高い屈折率および優れた耐擦傷性をもつ光学用レンズ樹脂などの原料として有用な新規なキシリレンジチオール誘導体を提供するものである。【0005】【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。即ち、本発明は、新規な式(1)(化3)で表されるキシリレンジチオール誘導体および式(2)(化3)で表されるキシリレンジチオール誘導体に関するものである。【0006】【化3】(上式中、Rは水素原子またはメチル基を表す)【0007】【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。式(1)で表されるキシリレンジチオール誘導体、即ち、1,4−ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼンは、次の方法で得られる。即ち、▲1▼先ず、p−キシリレンジクロライドとチオ尿素とを、水溶媒中で反応させて、p−キシリレンジチオールを得、▲2▼次いで、p−キシリレンジチオールを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等でアルカリ塩とした後、1−ブロモ−3−クロロプロパンを、溶媒中で反応させ、S,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテルを得、▲3▼得られたS,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテルとチオ尿素とを、溶媒中で反応させることにより、本願の式(1)で表されるキシリレンジチオール誘導体を得る。【0008】反応▲1▼において、チオ尿素の使用量は、p−キシリレンジクロライド1モルに対して2〜2.5モル、好ましくは2〜2.1モルであり、水の使用量は、p−キシリレンジクロライド1モルに対して600〜1000ml、好ましくは700〜900mlである。また、反応温度は100〜105℃であり、反応時間は4〜6時間である。反応終了後、生成物をトルエン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解し、有機層をよく洗浄した後、溶媒を留去して生成物を得る。この生成物は必要に応じて、公知の方法により、さらに精製することもできる。【0009】反応▲2▼において、1−ブロモ−3−クロロプロパンの使用量は、p−キシリレンジチオール1モルに対して2〜2.5モル、好ましくは2〜2.1モルである。反応の際用いられる溶媒は、原料等と反応性がない溶媒であればよく、例えば、水、エタノール、非プロトン性溶剤のN,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。溶媒の使用量は、p−キシリレンジチオール1モルに対して300〜3000ml、好ましくは800〜2000mlである。また、反応温度は5〜120℃、好ましくは30〜100℃で、反応時間は1〜20時間、好ましくは2〜10時間である。この時、必要に応じて、界面活性剤や相間移動触媒等を用いても良い。反応終了後、生成物をトルエン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解し、有機層をよく洗浄した後、溶媒を留去して生成物を得る。この生成物は、必要に応じて、公知の方法により、さらに精製することもできる。【0010】反応▲3▼において、チオ尿素の使用量は、S,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテル1モルに対して2〜2.5モル、好ましくは2〜2.1モルである。反応の際用いられる溶媒は、原料等と反応性がない溶媒であればよく、例えば、水、エタノール、非プロトン性溶剤のN,N−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶媒の使用量は、S,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテル1モルに対して200〜1000ml、好ましくは600〜900mlである。また、反応温度は30〜120℃、好ましくは60〜90℃で、反応時間は1〜15時間、好ましくは2〜5時間である。この時、必要に応じて、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等のハロゲン置換剤、界面活性剤、相間移動触媒等を用いても良い。反応終了後、生成物をトルエン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解し、有機層をよく洗浄した後、溶媒を留去して生成物を得る。この生成物は、必要に応じて、公知の方法により、さらに精製することもできる。【0011】また、式(2)で表されるキシリレンジチオール誘導体、即ち、1,4−ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼンと(メタ)アクリル酸とのジエステルは、上記の方法で得られた式(1)で表されるジチオールに、公知の方法、即ち、アクリル酸クロライドまたはメタクリル酸クロライドを、アセトン、トルエン、クロロホルム等の原料等と反応性がない溶媒中で、塩酸補集剤の存在下に反応させることにより得られる。アクリル酸クロライドまたはメタクリル酸クロライドの使用量は、式(1)で表されるジチオール1モルに対して2〜2.5モルである。反応温度は−10〜35℃に保ち、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、トリエチルアミン、ピリジン等の塩酸補集剤を加えて反応を進める。反応終了後、生成物をトルエン、ベンゼン等の有機溶媒に溶解し、有機層をよく洗浄した後、溶媒を留去して生成物を得る。この生成物は、必要に応じて、公知の方法により、さらに精製することもできる。【0012】【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。尚、例中に示す部はすべて重量部を示す。実施例1反応▲1▼:p−キシリレンジチオールの合成p−キシリレンジクロライド78.5部、チオ尿素71.5部、水275部を混合し、反応液温102℃に保ち、5時間攪拌した。反応終了後、冷却し、窒素雰囲気下で、50wt%水酸化ナトリウム水溶液144部を加え、反応液温100℃に保ち、30分間攪拌した。次いで、反応液を40℃に冷却し、濃塩酸180部を加え、そのまま30分間攪拌した。反応終了後、トルエン200部を加え、抽出し、有機層を分離した。有機層を水150部で洗浄した後、濃縮、蒸留を行い、蒸留物としてp−キシリレンジチオールを得た。無色の固体、収量59部。【0013】反応▲2▼:S,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテルの合成1−ブロモ−3−クロロプロパン112部、エタノール130部に、反応▲1▼で得られたp−キシリレンジチオール59部と水酸化カリウム47部をエタノール300部中で反応させた溶液を、反応液温60〜70℃に保ちながら、1.5時間かけて滴下した。滴下後、還流下で30分間反応した。反応終了後、水460部、トルエン400部を加え、抽出し、有機層を分離した。有機層を水350部で洗浄した後、濃縮した。濃縮物をクロマトグラフ法で精製し、淡赤色のシロップ状のS,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテル81部を得た。【0014】反応▲3▼:式(1)で表されるジチオールの合成反応▲2▼で得られたS,S’−ビス(クロロプロピル)−p−キシリレンジチオエーテル19.5部、チオ尿素9.5部、N,N−ジメチルホルムアミド35部を、液温80〜85℃に保ち、5時間攪拌し、反応させた。反応終了後、10wt%水酸化ナトリウム水溶液300部を加え、常温で30分間攪拌した。次いで、10wt%塩酸250部を加え、常温で30分間攪拌した。その後、トルエン160部を加え、抽出し、有機層を分離した。有機層を水250部で洗浄した後、濃縮した。濃縮物をクロマトグラフ法で精製して、無色のシロップ状の下記式(1)(化4)で表されるジチオール8部を得た。【0015】【化4】【0016】実施例2 ジメタクリレートの合成実施例1で得られた式(1)で表されるジチオール8部、アセトン40部、20wt%水酸化ナトリウム11.6部を混合し、反応液温10〜20℃に保ちながら、メタクリル酸クロライド5.7部を滴下した。滴下終了後、30分間攪拌した。次いで、水200部、トルエン80部を加え、抽出し、有機層を分離した。有機層を5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液100部、水150部で洗浄した後、濃縮した。濃縮物をクロマトグラフ法で精製して、無色のシロップ状の下記式(3)(化5)で表されるジメタクリレート1.6部を得た。【0017】【化5】【0018】実施例3 ジアクリレートの合成実施例2のメタクリル酸クロライド5.7部をアクリル酸クロライド5.0部に代え、反応温度を5℃にした以外は、実施例2と同様にして、無色のシロップ状の下記式(4)(化6)で表されるジアクリレート0.5部を得た。【0019】【化6】【0020】参考例1実施例2で得られたジメタクリレート35部に対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート35mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.63、アッベ数νd =40であった。また、耐擦傷性についても非常に優れており、評価は○であった。尚、屈折率、アッベ数、耐擦傷性、外観、耐衝撃性は以下の試験法により評価した。*屈折率、アッベ数:プルフリッヒ屈折計を用いて20℃で測定した。*耐擦傷性:樹脂の表面を#0000のスチールウールで摩擦して、表面の傷つき難さを調べ、次のように判定した。○:強く摩擦しても全く傷つかない△:強く摩擦すると少し傷つく×:弱い摩擦でも傷つく*外観:目視により観察した。*耐衝撃性:作製したレンズの中心部に高さ127cmから鉄球を落下させて耐衝撃性を評価した。【0021】参考例2実施例3で得られたジアクリレート35部に対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート17.5mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン35mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射した後、30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.64、アッベ数νd =35であった。また、耐擦傷性については非常に優れており、評価は○であった。【0022】参考例3実施例2で得られたジメタクリレート32部に対して、ポリエチレングリコールジメタクリレート〔n=9、新中村化学工業(株)製:NKエステル9G〕8g、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート17.5mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン70mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射した後、30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.59、アッベ数νd =42であった。また、耐擦傷性については非常に優れており、評価は○であった。さらに、参考例1で得られた成形体よりも耐衝撃性は向上していた。【0023】参考例4実施例3で得られたジアクリレート35部に対して、ポリエチレングリコールジメタクリレート〔n=9、新中村化学工業(株)製:NKエステル9G〕15g、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート17.5mg、増感剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン70mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。冷却しながら、紫外線を5分間照射した後、30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.60、アッベ数νd =40であった。また、耐擦傷性については非常に優れており、評価は○であった。さらに、参考例2で得られた成形体よりも耐衝撃性は向上していた。【0024】参考比較例1下記式(5)(化7)で表されるジメタクリレート35部に対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート35mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.63、アッベ数νd =34であり、耐擦傷性の評価は△であった。【0025】【化7】【0026】参考比較例2p−ベンゼンジチオールジメタクリレート35部に対して、ラジカル重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート35mgを添加してよく混合した。これを十分脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。30〜120℃まで1時間かけて昇温し、さらに120℃で1時間加熱した。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体は、無色透明であり、屈折率nd =1.66、アッベ数νd =24であり、耐擦傷性の評価は×であった。【0027】【発明の効果】本発明の式(1)表されるジチオールおよび式(2)で表されるそのジ(メタ)アクリレートは、良好な光学物性、高い屈折率および優れた耐擦傷性をもつ光学用レンズ樹脂を与えることができる。 式(1)(化1)で表されるキシリレンジチオール誘導体。 式(2)(化2)で表されるキシリレンジチオール誘導体。(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す)