タイトル: | 特許公報(B2)_ジケトピロロピロール顔料の2つの新しい結晶変態 |
出願番号: | 1995163153 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C09B67/48,C07D487/04,C08K5/34,C08L101/00,C09B67/10,C09D7/12 |
ツィミン ハオ アブール イクバル フリッツ ヘレン JP 3637105 特許公報(B2) 20050114 1995163153 19950629 ジケトピロロピロール顔料の2つの新しい結晶変態 チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド 396023948 Ciba Specialty Chemicals Holding Inc. 岡部 正夫 100064447 加藤 伸晃 100085176 産形 和央 100106703 臼井 伸一 100096943 藤野 育男 100091889 越智 隆夫 100101498 本宮 照久 100096688 高梨 憲通 100102808 朝日 伸光 100104352 高橋 誠一郎 100107401 吉澤 弘司 100106183 ツィミン ハオ アブール イクバル フリッツ ヘレン CH 02076/94-1 19940629 20050413 7 C09B67/48 C07D487/04 C08K5/34 C08L101/00 C09B67/10 C09D7/12 JP C09B67/48 Z C07D487/04 137 C08K5/34 C08L101/00 C09B67/10 C09D7/12 7 C09B 67/48 C09B 67/10 特開昭63−048279(JP,A) 6 1996020731 19960123 15 20020617 吉住 和之 【0001】本願は1,4−ジケト−3,6−ビス(3−メチルフェニル)ピロロ[3,4−c」ピロールの2つの新規結晶変態(β及びγ)、その製造及びこれら新規な生成物を顔料として使用することに関する。【0002】色々な種類の有機顔料の代表的なものの多くが多形性であることはよく知られている。同一の化学組成を有するにもかかわらず、このような顔料は2つ以上の結晶変態をとる。これは特にフタロシアニン、キナクリドン及びいくつかのアゾ色素について言えることである(例えば W. Herbst, K. Hunger, Industrial Organic Pigments (1933), 41-43, 427-428, 453-454 参照)。顔料によっては、反対にたった1つの結晶変態しか知られていない。例えば、ここ何年来知られており米国特許4,415,685及び4,579,949などに記載されているジケトピロロピロール顔料類については第二の結晶変態は色々試みられているにもかかわらずまったく得られていない。【0003】最近、下記式【化4】[式中R1はC1−C6アルキルである]のような脱離基がジケトピロロピロールのような不溶性の物質に中にも容易に導入でき、下記構造【化5】を有する可溶性のカルバメートを形成できることが見出されている。また熱処理(50〜400℃の間での加熱)、化学処理(有機や無機の酸あるいは塩基で処理)または光分解(例えば375nm未満の波長に曝す)によって元来の顔料を改質することができることが知られている。これらの研究については出願日が1993年11月の特許出願に記載されている。【0004】驚くべきことに、式【化6】のジケトピロロピロールの場合、上述したようにN非置換顔料を特定の条件下で化学処理あるいは熱処理して改質すると既知の変態ではなくそれぞれの処理により新規の結晶変態が起こることが見いだされた。化学処理を行って、即ち非プロトン性有機溶媒中で酸の存在下80〜120℃で加熱して得られる新規の変態を以後β変態と言い、熱処理、即ち200〜350℃で乾式加熱することにより得られる新規な変態をγ変態という。これら新規の修飾は相互に異なりまた既知の変態(以後α変態という)とも異なるX線回折パターンを有する。β変態は基質によって異なる温度で加熱処理をすることにより再度α変態に転換され、また赤色のα変態と比べて色調が黄味がかった赤にシフトしている。熱に安定なγ変態は鮮やかなオレンジ色が特徴である。【0005】完全なX線回折パターンはシーメンスD500X線回折計(CuKα照射)を用いて従来法で測定される。既知のα変態のX線回折パターンは以下の回折線を特徴とする。【表3】【0006】本発明は下記式【化7】のジケトピロロピロールであってa)そのX線回折パターンが以下の回折線を特徴とするβ変態であるもの、【表4】またはb)そのX線回折パターンが以下の回折線を特徴とするγ変態であるものに関する。【表5】γ変態が好ましい。【0007】新規なβ変態は、下記式【化8】[式中R1はC1−C6アルキルである]の可溶性のジケトピロロピロールを有機溶媒に溶かし、溶液を80〜120℃の間で酸の存在下で加熱し、ついで冷却すると沈澱してくる生成物を従来法で単離して得られる。C1−C6アルキルであるR1は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−アミル、またはヘキシルである。R1はエチル、特にメチルが好ましい。【0008】溶解した式IIのジケトピロロピロールは酸の存在下で溶媒にもよるが5分〜60分間還流処理するのがよい。ついで混合物を10〜30℃まで冷却するのがよい。使用できる溶媒は不活性の非プロトン性溶媒、たとえばジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ドデカン、トルエン、キシレン、アセチルアセトン、ジメチルスルホキシド、あるいはこれらの混合物である。ジメチルスルホキシド、アセチルアセトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、特にジメチルホルムアミドが好ましい。【0009】適当な酸は無機または有機の酸で、例えば、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である。4−トルエンスルホン酸が好ましい。式IIのジケトピロロピロール1モル当たり、酸を8〜30モル、好ましくは15〜20モルを用いるのがよい。酸は顔料塩を懸濁する前、懸濁する時、または懸濁後のいずれに加えてもよいが好ましいのは顔料塩を懸濁する前または懸濁するときである。ジケトピロロピロール1モルに対し、15〜20モルの4−トルエンスルホン酸を、N,N−ジメチルホルムアミド中で100〜105℃で15〜20分間使用するのが好ましい。【0010】新規なγ変態は、下記式【化9】[式中R1はC1−C6アルキルである]のジケトピロロピロールを200〜350℃の間で10分〜10時間加熱して得られる。式IIのジケトピロロピロールは粉末状で220℃から260℃で30分〜2時間加熱するのが好ましい。式IIのジケトピロロピロールは一般に知られている方法に従って調製することができる。例えば式Iのジケトピロロピロールを下記式【化10】のジカルボネート、あるいは式【化11】[式中R2は塩素、フッ素、または臭素である]のトリハロ酢酸エステル、あるいは式【化12】[R1はすでに定義した通りである]のアジドと、非プロトン性有機溶媒中で、触媒としての塩基の存在下で、0℃から400℃の間で2〜80時間反応させることで調製できる。式IIIのジカルボネート、式IVのトリハロ酢酸エステル、あるいは式Vのアジドは2倍から10倍過剰に用いるのがよい。式Iのジケトピロロピロールは式IIIのジカルボネートと反応させるのが好ましい。式IIIのジカルボネート、式IVのトリハロ酢酸エステル及び式Vのアジドは既知物質である。一般に知られた方法で新規物質も作ることができる。【0011】適当な溶媒の例としては、テトラヒドロフランやジオキサンのようなエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドンのような二極性非プロトン性溶媒、トリクロロエタンのようなハロゲン化脂肪族あるいは芳香族炭化水素、ベンゼン、またはトルエン、キシレン、アニソールやクロロベンゼンのようなアルキル−、アルコキシ−、ハロゲン置換ベンゼン、ピリジン、ピコリン、またはキノリンのような芳香族窒素含有複素環があげられる。好ましい溶媒の例としてはテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドンがある。以上述べた溶媒は混合物として用いることもできる。反応物の重量部当たり溶媒を5から20重量部用いるのがよい。【0012】触媒に適した塩基の例は、リチウム、ナトリウム、あるいはカリウムのようなアルカリ金属それ自体、その水酸化物や炭酸塩、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミドのようなアルカリ金属アミド、リチウムヒドリド、ナトリウムヒドリド、カリウムヒドリドのようなアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属、例えばナトリウムやカリウムのメチラート、エチラート、n−プロピラート、イソプロピラート、n−ブチラート、sec−ブチラート、tert−ブチラート、2−メチル−2−ブチラート、2−メチル−2−ペンチラート、3−メチル−3−ペンチラート、3−エチル−3−ペンチラートのような一級、二級もしくは三級の炭素数1から10の脂肪族アルコールから誘導されるアルカリ金属アルコラート、たとえばジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジンなどの有機脂肪族、芳香族、複素環の窒素塩基、トリメチルアミンやトリエチルアミンのようなトリアルキルアミンである。これら塩基の混合物も使用することができる。好ましいのはジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、特に4−ジメチルアミノピリジンのような有機窒素塩基である。【0013】反応は10℃から100℃の間で、特に好ましくは14℃から40℃の間で大気圧下で行うのが好ましい。【0014】本発明のβ及びγジケトピロロピロールは、例えば米国特許第4415685号及び第4579949号でそのα変態について記載しているように、高分子有機材料を着色するための顔料として好適である。しかしながら、βジケトピロロピロールは基質によって温度は異なるが加熱すると再びα変態に転換されるので、比較的高温で処理される材料中に用いるときは注意が必要である。対照的にγジケトピロロピロールは非常に安定で、高度に飽和したポリオレフィンやポリエステルのような高分子材料中に用いるのに非常に適している。【0015】他の顔料の多くと同様に、本発明のβ及びγジケトピロロピロールも公知の方法で表面処理をしてコーティングシステムでの特性を改善するとよい。凝集を防止あるいは減少させ、かつ分散安定性を改善するために用いられる添加物を本発明の顔料と一緒に使用するとよい。このように処理された顔料は、単独も他の顔料と混ぜても、いろいろなコーティングシステムで赤からオレンジの上色に着色するのによい特性を示す。特にアクリル、アルキド及びポリエステルタイプの自動車用仕上げシステムにおいて好ましい。使用できる凝集防止剤の例として2−フタルイミドメチルキナクリドン、キナクリドンスルホン酸及び他の似たような誘導体があげられる。システムによっては重合分散剤を使用すると顔料の特性が更に改善されることがある。【0016】本発明のβ及びγジケトピロロピロールは、着色する高分子有機材料の0.01−30重量%を用いる。好ましくは0.1−10重量%で、β型の場合は20℃から180℃の、γ型の場合は20℃から300℃の間の温度で材料に混合するのがよい。【0017】本発明のβ及びγジケトピロロピロールは、例えば粉体、ペースト、フラッシュペースト、調剤として使用することができ、印刷インキ、サイジングカラー、バインダーカラー、物理的にあるいは酸化されて乾燥するコーティング材料、酸硬化、アミン硬化及び過酸化硬化コーティング材料、ポリウレタンコーティング材料などのあらゆるコーティングに適してる。加工温度との適合性にもよるが、本発明の顔料は、合成、半合成、天然の巨大分子材料を着色するのに使用することもできる。これら巨大分子材料としてはポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、フェノール樹脂、アミノ樹脂、及びゴムがあげられる。更なる適用例は、ガラス、シリカ、アスベスト、木材、セルロース、アセチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルやそれらの混合物の繊維などの天然、再生、合成の繊維を単独でまたは他の無機や有機の顔料と一緒に着色することである。得られた着色、例えばコーティング材料、印刷やプラスチックにおける着色は、黄味がかった赤を特徴とし、オーバースプレー、マイグレーション、光や風化に対し堅牢であり、色合いの強さと透明性で際だっている。【0018】本発明の顔料は、固体、弾性材料、ペースト、高粘度材料、低粘度または揺変性の材料を着色するのに使用することができ、公知の方法によりこれらの材料に混合することができる。例をあげると、水含有ペーストは湿潤剤の存在または非存在下で顔料を水中に混ぜ込んで作成することができる。また顔料を水存在下で分散剤中に混ぜ込んだり練り込んで作成することもできこの際有機溶媒やオイルが存在してよい。これらのペーストは、フラッシュペースト、印刷インク、サイジングカラー、ポリマー分散剤を作成するのに用いることができる。しかし顔料も攪拌、圧延、混練や錬磨により水や有機溶媒、非乾性油、乾性油、プラスチック、ゴムなどに導入することができる。最後に、顔料を有機や無機の材料、粒状や繊維状の物質、粉体や他の顔料と乾式混合して加工し、組成物とする事も可能である。【0019】【実施例】以下の実施例により発明を説明する。【0020】実施例1a:可溶性ジケトピロロピロールの調製15.2gのジ−tert−ブチルジカルボネートを、10.0gの1,4−ジケト−3,6−ジ(3−メチルフェニル)ピロロ[3,4−c]ピロールと1.0gの4−ジメチルアミノピリジンを含む350mlのモレキュラーシーブで乾燥したテトラヒドロフランに加えた。生じたオレンジ色の懸濁液を室温で20時間空気中の水分を排除しながら攪拌した。ついで溶媒を減圧下で留去した。褐色の残渣をまず水で洗い、ついでメタノールで洗浄して真空下室温で乾燥し、14.1g(理論値の86.5%)の鮮やかな黄色の下記式の生成物を得た。【化13】【表6】【0021】b)7.4gの4−トルエンスルホン酸を、工程a)の生成物1.0gを75mlのN,N−ジメチルホルムアミドにとかした溶液に加えた。混合物を100℃に熱し、この温度で15分間攪拌し、氷浴中で急激に20℃にまで冷却した。析出した顔料を漉しとり、メタノールついで水で洗い、真空下60℃で乾燥して、赤色粉末0.43gを得た。【表7】X線解析パターンは以下の回折線を特徴とする。【表8】【0022】実施例2:2.3gの実施例1aの生成物を結晶皿にいれ、予め240℃にしたオーブンにいれ、この温度で1時間保った。生成物を室温まで戻すと1.3gのオレンジ色の粉末が得られた。これをPVCに混ぜ込むと鮮やかなオレンジ色が得られた。【表9】X線解析パターンは以下の回折線を特徴とする。【表10】【0023】実施例3:7.5gの実施例1bで得られた顔料、98.9gの下記組成のCAB溶液:【表11】および36.50gのポリエステル樹脂DINAPOL H700(商品名)(Dynamit Nobel)、4.60gのMAPRENAL MF600(Hoechist)、2.50gの分散剤DISPERBYK 160(商品名)(Byk Chemie)を一緒にして90分間振とう機を用いて分散させた(全コーティング材料は150g、顔料5%)。このようにして得られた上色コーティング材料27.69gを17.31gのAl保存溶液(8%強度)と混合して下塗り仕上げ塗料とした。Al保存溶液の組成は以下の通りである。【表12】混合物をアルミニウムパネルに噴霧し(湿フィルムの厚さは約20μm)、室温で30分間蒸発させた後、上塗り仕上げ塗料として下記組成の熱硬化性アクリルワニスを噴霧した。(湿フィルムの厚さ約50μm)【表13】室温で更に30分間蒸発させた後コーティングを130℃で30分間焼き付けした。【0024】実施例4:実施例1bで調製した顔料0.6gを67gのポリ塩化ビニル、33gのジオクチルフタレート、2gのジブチルスズジラウレート及び2gの二酸化チタンと混合し、混合物をローラーミル上160℃15分間加工して薄いシートとした。こうしてできた赤色のPVCシートは非常に堅牢度がよかった。【0025】実施例5:実施例3で用いた顔料を同量の実施例2で作成した顔料に置き換え、実施例3に従って加工すると堅牢性に優れた高度に飽和したオレンジ色のコーティング材料が得られた。【0026】実施例6:実施例4における顔料を、同量の実施例2で調製した顔料に置き換え、実施例4に従って加工すると、PVCの堅牢性に優れ彩度の高いオレンジ色の着色が得られた。 下記式のジケトピロロピロール結晶であって、a)そのX線回折パターンが以下の回折線を特徴とするβ変態である結晶またはb)そのX線回折パターンが以下の回折線を特徴とするγ変態である結晶。 請求項1記載の式Iのジケトピロロピロールのγ−変態である結晶。 請求項1記載の式Iのジケトピロロピロールのβ変態である結晶の製造方法であって、下記式の可溶性ジケトピロロピロール[式中、R1はC1−C6アルキルである]を有機溶媒に溶かし、溶液を酸の存在下で80−120℃の間で加熱し、冷却して析出した生成物を従来法で単離することからなる方法。 請求項1に記載の式Iのジケトピロロピロールのγ変態である結晶の製造方法であって、下記式[式中R1はC1−C6アルキルである]のジケトピロロピロールを200〜350℃で10分〜10時間加熱することからなる方法。 請求項1に記載のジケトピロロピロールの固体のβ変態である結晶を含んでいる高分子有機材料。 請求項1記載のジケトピロロピロールの固体のγ変態である結晶を含んでいる請求項5記載の高分子有機材料。