生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_糸状性バルキングの防除方法
出願番号:1995138745
年次:2005
IPC分類:7,C02F3/12,C12N9/56


特許情報キャッシュ

前田 光紀 橋本 恭明 JP 3656280 特許公報(B2) 20050318 1995138745 19950512 糸状性バルキングの防除方法 日本曹達株式会社 000004307 松橋 泰典 100113860 前田 光紀 橋本 恭明 20050608 7 C02F3/12 C12N9/56 JP C02F3/12 T C12N9/56 7 C02F 3/12 C12N 1/00-1/20 特開平03−154696(JP,A) 特開平06−153918(JP,A) 特開平7−100483(JP,A) バイオテクノロジ−事典,バイオテクノロジ−事典編集委員会,1987年 5月,p1089 1 1996309382 19961126 7 20020206 加藤 幹 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、糸状性細菌溶菌酵素による活性汚泥槽の糸状性バルキング防除方法に関する。【0002】【従来の技術】活性汚泥法は、1914年にAndernとLockettらにより開発されて以来、微生物の能力を活用した画期的な廃水処理法として用いられている。この活性汚泥法の利点は、BOD除去率が高く、運転操作が簡単で、自然生態系とも調和する処理方法であるが、その反面、窒素、リン除去率が低いことや、バルキングの発生などの問題点がある。バルキングは、活性汚泥の圧密性が低下し、活性汚泥と処理水の分離が悪化するために処理水とともに活性汚泥が流出する現象で、処理水の水質が悪化することになる。この原因の大半は、糸状性細菌の異常増殖によるとされている。このため、活性汚泥法においては、バルキングの防除および予防が重要な課題となっている。【0003】これまで、活性汚泥に発生する糸状性バルキングを防除するために、化学的および微生物学的方法が用いられている。このうち、化学的方法に用いる防除剤としては、塩素剤や第四級アンモニウム塩等の殺菌剤と各種沈降・凝集剤がある。しかし、殺菌剤は、比較的多量に用いることにより、その効果は確実であるが、作用が無差別的であるため、活性汚泥の有用微生物の増殖をも阻害することがあるほか、処理水中にも残存する可能性があり、環境への悪影響が懸念される。沈降・凝集剤は、活性汚泥の凝集および沈降に関与するだけで、糸状性細菌には作用しないため、本質的な解決にならないうえ、連続投入が要求される。その上、高分子凝集剤が使用されている場合は、同時に環境への悪影響も懸念される。微生物学的方法に用いる微生物製剤は、効果が確実ではないし、効果があらわれるまで長い時間を要する場合が多い。これは、微生物製剤中の微生物が糸状性細菌溶菌能もしくは殺菌能を有していても、活性汚泥のような各種微生物が存在する混合系のなかで、しかも生育環境が最適とも言えない条件下で活着させること自体難しいことであるし、ましてやその能力を十分発揮させることはなおさら困難なためである。このため、活性汚泥中の糸状性細菌以外の有用微生物や周囲の環境等に悪影響をおよぼさず、即効性のあるバルキング防除剤が求められている。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、有用な微生物等の増殖を妨げることなく、また環境にも悪影響を与えず、即効性のある活性汚泥の糸状性バルキング防除方法を提供せんとすることにある。【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼを活性汚泥槽に添加することを特徴とする酵素を用いた糸状性バルキングの防除方法である。【0006】本発明者らは、微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用するプロテアーゼを探索し、例えばバチルス ズブチルス起源のエンドペプチダーゼで至適pHを中性領域に持つプロテアーゼNアマノ(天野製薬株式会社)、バチルス属起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性領域に持つGODO−BAP(合同酒精株式会社)、アスペルギルス オリゼ起源のエンドペプチダーゼで至適pHを中性領域に持つプロチンFN(大和化成株式会社)、バチルス ズブチルス起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性に持つプロチンA(大和化成株式会社)、バチルス属起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性領域に持つビオサム(昭和電工株式会社)、バチルス属起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性領域に持つカズサーゼ(昭和電工株式会社)、バチルス属起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性領域に持つエスペラーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)等が糸状性細菌を溶菌することを見いだした。これらのプロテアーゼを活性汚泥槽に添加することにより、活性汚泥の有用な微生物の増殖を阻害せず、糸状性細菌を選択的に溶菌し、バルキングを防除することにより、活性汚泥の沈降性を改善することを見いだした。一般に活性汚泥法では、曝気槽水が中性領域であることが多いため、例えば、バチルス ズブチルス起源のエンドペプチダーゼで、至適pHを中性領域に持つプロテアーゼNアマノ(天野製薬株式会社)やアスペルギルス オリゼ起源のエンドペプチダーゼで、至適pHを中性領域に持つプロチンFN(大和化成株式会社)等が特に有効である。【0007】本発明において、微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼを活性汚泥中において100ppm〜10,000ppm、好ましくは、200ppm〜1,000ppmで用いることにより、糸状性バルキングを防除することができる。【0008】本発明における微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼが溶菌作用を示すのは、例えば、スフェロチルス属、チオスリックス属、ベギアトア属、さらにEikelboom(Water Res.、第9巻、365−388頁、1975年)によって命名されたTYPE 1701、1702、021N等の糸状性細菌に対してである。特に世界中の廃水処理施設で糸状性バルキングの最も主要な原因となっているTYPE 021Nには非常に有効である。【0009】活性汚泥槽に微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼを添加する方法としては、活性汚泥中に直接添加、または、返送汚泥や流入廃水中に混和、混合するなどの方法が適宜とれる。【0010】バルキングが発生した活性汚泥槽に微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼを添加すると、糸状性細菌を特異的、即効的に溶菌することができ、効果的にバルキングを防除できる。【0011】【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。【0012】実施例1(溶菌性試験)グルコース0.3g/l、酢酸ナトリウム0.3g/l、硫酸アンモニウム0.1g/l、塩化カリウム0.05g/l、硫酸アンモニウム0.05g/l、炭酸カルシウム0.02g/l、塩化第二鉄0.0005g/l、リン酸二ナトリウム0.312g/l、リン酸一ナトリウム0.02g/l、寒天エキス200ml/l、ビタミンミックス* 5ml/l、pH7.0からなる培地に供試糸状性細菌としてTYPE 021N(タイプII−3 T1−4株)を植菌し、30℃にて2〜3日間振盪培養を行った。(ビタミンミックス* : パントテン酸カルシウム20mg/l、ニコチン酸20mg/l、ビオチン1mg/l、シアノコバラミン1mg/l、葉酸1mg/l、塩酸ピリドキシン20mg/l、パラアミノ安息香酸20mg/l、コカルボキシラーゼ20mg/l、イノシット20mg/l、塩酸チアミン20mg/l、リボフラビン20mg/l、アデニン2mg/l、ウラシル2mg/l、チミン2mg/l)培養されたTYPE 021N(タイプII−3 T1−4株)を集め、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に懸濁させ、ホモジナイズした。この懸濁液に本発明の微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼのうち、プロテアーゼNアマノ(天野製薬株式会社)、GODO−BAP(合同酒精株式会社)、プロチンFN(大和化成株式会社)、プロチンAS10(大和化成株式会社)、ビオサムAP−1.5(昭和電工株式会社)、カズサーゼAP−2.2(昭和電工株式会社)、エスペラーゼ4.0T(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)をそれぞれ100ppmとなるように秤取り添加した。添加直後の吸光度を600nmで測定した。続いて、37℃でインキュベーションし、一定時間ごとに吸光度を測定し、TYPE 021N(タイプII−3 T1−4株)の溶菌状態を観察した。なお、対照区としてプロテアーゼNアマノ、GODO−BAP、プロチンFN、プロチンAS10、ビオサムAP−1.5、カズサーゼAP−2.2エスペラーゼ4.0Tを添加していないものを使用した。菌体残存率は、試験開始時のOD600nm値を100% として求めた値である。その結果、表1に示した。【0013】【表1】【0014】表1に示すように、糸状性細菌は、プロテアーゼNアマノ、GODO−BAP、プロチンFN、プロチンAS10、ビオサムAP−1.5、カズサーゼAP−2.2、エスペラーゼ4.0Tを添加することにより、糸状性細菌の残存量が減少し、糸状性細菌が溶菌されていた。【0015】実施例2(溶菌性試験)酵母エキス2.5g/l、ペプトン5.0g/l、グルコース1.0g/l、pH7.0からなる培地に供試細菌として、シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa) IFO12689とバチルスズブチリス(Bacillus subtilis) IFO3134、エシェリシア コリ(Escherichia coli) ATCC27166をそれぞれ植菌し、30℃で1〜2日間振盪培養を行った。培養されたそれぞれの細菌を各種類ごとに別々に集め、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に懸濁させた。この懸濁液に本発明の微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼのうち、プロテアーゼNアマノ、GODO−BAP、プロチンFN、プロチンAS10、ビオサムAP−1.5、カズサーゼAP−2.2、エスペラーゼ4.0Tをそれぞれ1,000ppmとなるように秤取り添加した。添加直後の吸光度を600nmで測定した。続いて、37℃でインキュベーションし、一定時間ごとに吸光度を測定し、それぞれの細菌の溶菌状態を観察した。なお、対照区として、プロテアーゼNアマノ、GODO−BAP、プロチンFN、プロチンAS10、ビオサムAP−1.5、カズサーゼAP−2.2、エスペラーゼ4.0Tを添加していないものを使用した。 菌体残存率は、試験開始時のOD600nm値を100% として求めた値である。その結果、表1に示したように、各供試細菌ともプロテアーゼNアマノ、GODO−BAP、プロチンFN、プロチンAS10、ビオサムAP−1.5、カズサーゼAP−2.2、エスペラーゼ4.0Tによっては、ほとんど溶菌されなかった。従って、糸状性細菌と一般的な他の細菌との間には、微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼの溶菌性に対して大きな感受性差があることがわかった。【0016】実施例3(バルキング防除試験)グルコース870mg/l、ペプトン250mg/l、塩化ナトリウム300mg/l、リン酸二カリウム39.1mg/l、硝酸アンモニウム43mg/lの合成廃水を調製した。合成廃水の流入量 1l/日、MLSS 2,000ppm、室温20〜25℃で図1に示す連続培養活性汚泥システムを用いて、活性汚泥の培養を行い、糸状性バルキングを発生させ、以下の実験を行った。なお、このとき発生していた糸状性細菌は、TYPE 021Nとスフェロチルス ナタンスであった。試験区として、微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼのうち、プロチンFNを曝気槽に対し、400ppmとなるように秤取り、投与した。対照区にはプロチンFNを投与しなかった。その後、対照区、試験区のそれぞれの活性汚泥の沈降度を測定し、顕微鏡観察を行った。なお、活性汚泥の沈降度は、メスシリンダーを用いて、SV180を測定した。その結果、図2に示したように、プロチンFN投与区の活性汚泥の沈降度は、投与翌日から対照区に比べ、改善された。また、プロチンFNを投与した翌日の両者の活性汚泥を顕微鏡観察したところ、図3に示したように対照区は、糸状性細菌が視野一杯に広がっていたのに対し、図4に示したように試験区は、糸状性細菌はかなり減少していた。また、試験区は活性汚泥のフロックもしっかりしていた。【0017】【発明の効果】微生物起源で中性もしくはアルカリ性領域で作用し、かつ糸状性細菌溶菌能を有するプロテアーゼを活性汚泥槽に添加することにより、活性汚泥の有益な微生物に悪影響を与えることなく、糸状性細菌を特異的、即効的に溶菌することができ、効果的に糸状性バルキングを防除する事ができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例3に用いた連続培養活性汚泥システム【図2】実施例3のプロチンFN投与における活性汚泥沈降度変化【図3】実施例3の対照区の活性汚泥の顕微鏡写真【図4】実施例3の試験区の活性汚泥の顕微鏡写真【符号の説明】1:滅菌処理済み合成廃水(4.5l)2:曝気槽(2l)3:沈殿槽(0.5l)4:定量ポンプ5:エアーポンプ6:滅菌フィルター7:スターラー8:処理水 バチルス ズブチルス起源のエンドペプチダーゼで至適pHを中性領域に持つプロテアーゼ、バチルス属起源のエンドペプチダーゼで至適pHをアルカリ性領域に持つプロテアーゼ、及びアスペルギルス オリゼ起源のエンドペプチダーゼで至適pHを中性領域に持つプロテアーゼからなる群から選ばれるプロテアーゼを活性汚泥槽に添加することを特徴とする酵素を用いた糸状性バルキングの防除方法。


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