タイトル: | 特許公報(B2)_茶葉サポニンの製造法 |
出願番号: | 1995137737 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07G 3/00,A61K 36/00,A61P 29/00,A61P 37/08,C07J 63/00 |
提坂裕子 植村照美 杉浦友美 JP 3810827 特許公報(B2) 20060602 1995137737 19950605 茶葉サポニンの製造法 株式会社 伊藤園 591014972 大島 正孝 100080609 提坂裕子 植村照美 杉浦友美 20060816 C07G 3/00 20060101AFI20060727BHJP A61K 36/00 20060101ALI20060727BHJP A61P 29/00 20060101ALI20060727BHJP A61P 37/08 20060101ALI20060727BHJP C07J 63/00 20060101ALN20060727BHJP JPC07G3/00A61K35/78A61P29/00A61P37/08C07J63/00 C07G 3/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus(JOIS) 特開平07−061998(JP,A) 特開平06−116258(JP,A) 特開平01−175978(JP,A) 特開昭62−061569(JP,A) 特開平07−061993(JP,A) 10 1996333380 19961217 10 20011029 新留 豊 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、茶葉サポニンの製造法に関する。さらに詳しくは様々な薬理活性を有する茶葉サポニンを工業的に有利に製造する方法に関する。【0002】【従来の技術】茶葉サポニンは、茶葉に約0.3%程度含まれ(乾燥重量に対し)、これまでに抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗潰瘍作用、血圧降下作用、抗肥満作用、好中球賦活作用が見いだされている。茶葉サポニンは、数種の構造の似たサポニンの混合物で、そのうちの主要なサポニンであるテアサポニンB1には、下記式(I)【0003】【化1】【0004】で表わされる構造が決定されている(Biosci. Biotech. Biochem. 58, 2036, 1994)。また茶種子に含まれるサポニンは、茶葉サポニンとは構造が異なり、溶血性は茶葉サポニンの方がはるかに低いという違いがある。【0005】特開昭60−123424号には、茶サポニンを主成分として含む保健剤に関し、半発酵の葉、葉柄、種子および/または果実を脂溶性有機溶媒で脱脂して得た原料茶を、温水で膨潤させ、低級脂肪族アルコールで抽出し、100℃以下の温度で減圧下に溶媒を留去させて得たエキスを水とn−ブタノールで分配処理し、ブタノ−ル層から溶媒を留去せしめるか、該エキスを水に溶かしポリスチレン系樹脂に吸着させ、低級脂肪族アルコールで溶出させ、溶媒留去して茶サポニンを製造する方法が開示されている。【0006】また、特開平7−61993号公報には、茶葉サポニン類の製造法および茶葉サポニン類を含む製剤に関し、(1)茶葉をそのまま、あるいは茶葉を蒸熱したものを準備し、(2)有機溶剤で処理して脱脂した後含水低級アルコールで抽出するか、あるいは含水低級アルコールで抽出した後有機溶剤で処理して脱脂し、(3)カテキン類を除去し、次いで(4)クロマトグラフィーに付して茶葉サポニン類を分離し取得する茶葉サポニン類の製造法が開示されている。【0007】しかしながら、前記特開昭60−123424号公報の方法では、茶葉の場合、サポニンより100倍程度含有量の多いタンニン(カテキン類)がほとんど除去できず、茶サポニンというよりも、フラボノイドを含む茶タンニンを製造することになる。また葉に含まれるサポニンと、種子に含まれるサポニンは、化学構造も生理活性も異なるにもかかわらす、両者は区別されていない。【0008】特開平7−61993号公報の方法では、カテキン類やフラボノイド類を含まないサポニン混合物が得られるが、多量の有機溶媒を使用しなければならないといった難点がある。本発明者らは、様々な薬理活性を有し、有用性が見込まれる茶葉サポニンを、有機溶媒をできるだけ使用せず、簡便な方法で、安価に製造する方法を開発すべく研究を重ねた結果、本発明を完成した。【0009】【発明が解決しようとする課題】それ故、本発明の目的は、茶葉サポニンの製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、茶葉サポニンを簡便に安価で工業的に有利に製造する方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。【0010】【課題を解決するための手段】本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、茶葉の熱湯抽出残渣を含水低級アルコールで抽出することを特徴とする茶葉サポニンの製造法によって達成される。茶葉サポニンは、水よりも低級アルコールあるいは含水低級アルコールにより、葉から効率よく抽出されるが、同時に多量のタンニン(カテキン類)や、クロロフィルなどを含む脂溶性成分も抽出され、後からこれらを除去するのに多量の有機溶媒が必要となる。【0011】本発明では、茶葉の熱湯抽出残渣が用いられる。茶葉を熱湯処理することにより、不用なタンニン(カテキン類)やカフェインその他熱水に易溶性の成分が除去される。茶葉としては、茶葉そのまま、蒸熱した茶葉あるいは通常の製茶加工を行った茶葉のいずれを用いることもできる。通常の製茶加工を行った茶葉としては、例えば緑茶、烏龍茶または紅茶を挙げることができる。また、茶葉としてはカメリア シネンシス L(Camellia Sinensis L.)が好ましい。【0012】茶葉の熱湯抽出は80℃以上の温度で実施するのが好ましい。90℃以上の温度がより好ましい。抽出時間は10分以上が好ましく、15分以上がさらに好ましい。抽出に用いる熱湯の量は茶葉が十分に浸る量が好ましい。通常、茶葉の乾燥重量の10倍程度が目安となる。熱湯の量は多いほどタンニン(カテキン類)の除去効率は向上する。熱湯抽出の回数は1回〜数回、例えば5回に及ぶことができる。1回の抽出で約1/3のタンニンが除去できるが、望ましくは2回以上である。この熱湯処理によるサポニンの損失は僅かで、大半は未変化のまま茶葉中に残存する。【0013】熱湯抽出残渣としては、飲料に供した後の茶がらや、最近その有用性が注目されている茶葉カテキン類を熱湯抽出法により抽出した残渣を用いることもできる。これは産業廃棄物の有効利用にもなる。茶葉の熱湯抽出残渣は、含水低級アルコールで抽出される。抽出前に、必要に応じ、熱湯抽出残渣を搾汁してタンニンを含む熱湯抽出液を可及的に除去するのが好ましい。【0014】含水低級アルコールによる抽出によりサポニンを抽出する。低級アルコールとしては、例えばメタノールあるいはエタノールいずれかが好ましい。食品に利用するにはエタノ−ルが好まれる。アルコール濃度が高いほど脂溶性成分が多く溶出し、水に対する溶解性が低下する。含水低級アルコールとしては、30〜50重量%の水と70〜50重量%の低級アルコーからなるものが好ましい。【0015】次いで、含水低級アルコールで抽出された抽出液を、必要に応じ、水不溶性ポリビニルピロリドンで処理するかあるいは酢酸エチルにより抽出処理して、該抽出液中に存在するカテキン類を除去する工程をさらに実施することができる。熱湯抽出残渣は、好ましいものにあっては茶葉が含有するカテキン類の7〜8割が除去されているが、それでも残存するカテキン類の量はサポニンの量を上回るのが普通である。含水低級アルコールによる抽出で残存するカテキン類の全てが抽出されるわけではないが、抽出液から純度の高いサポニンを得るためには、上記の如くカテキン類を除去する操作を行うのが好ましい。カテキン類を除去するには、抽出液を水不溶性ポリビニルピロリドンすなわち架橋したポリビニルピロリドンで処理するかあるいは酢酸エチルにより抽出処理する。すなわち水不溶性ポリビニルピロリドンにカテキン類を吸着させて除去するかあるいは酢酸エチルに溶解させて除去する。【0016】また、必要に応じ、含水低級アルコールで抽出された抽出液から、カテキン類を除去する工程を実施する前にまたは実施した後に、抽出溶媒を留去することもできる。これによって、茶葉サポニンを含むエキスが得られる。また、得られたエキスを噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥することにより、含有量40%前後の茶葉サポニンが得られる。減圧濃縮は、40℃以下で行うことが望ましい。アルコール存在下で長期間高温処理すると、茶葉サポニンの個々の成分の構造変化が生じる恐れがあるからである。あるいは、抽出溶媒を留去するのではなく、抽出液をクロマトグラフィーにかけ、茶葉サポニンを分離してもよい。この場合、純度90%以上の茶葉サポニン混合物が得られる。【0017】クロマトグラフィーはシリカゲルカラムクロマトグラフィー、浸水型逆相充填剤カラムクロマトグラフィーおよび合成吸着剤カラムクロマトグラフィーよりなる群から選らばれる1つ又は2つ以上の組合せであることができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーでは、クロロホルム/メタノール/水の混液、例えばこの順の容積比が2〜3/1/0.1〜0.2の混液で溶出するのが好ましい。また、浸水型逆相充填剤カラムクロマトグラフィーおよび合成吸着剤カラムクロマトグラフィーでは、水、メタノールまたはこれらの任意の割合の混液で溶出するのが好ましい。就中/水から水/メタノール、メタノールへと順次濃度を変えて溶出するのが好ましい。薄層クロマトグラフィー(TLC)でサポニンを検出してサポニン分画を集めることにより、茶葉サポニン類を得る。【0018】本発明方法により得られる茶葉サポニン類は下記式(I)【0019】【化2】【0020】で表わされるサポニンを少なくとも含有する。【0021】【実施例】以下、実施例により本発明を詳述する。本発明はこれらの実施例により何等制限されるものではない。【0022】[試験例1] タンニン除去のための熱湯抽出温度の検討サポニンが変化せず、かつカテキン類が効率よく抽出される熱湯の温度を検討した。すなわち、緑茶(煎茶)5gに50、60、70、80、90℃の熱湯50mlを加え、10分間抽出を行った。ネルろ過後、各熱湯抽出液についてタンニンの比色定量を行い、温度の違いによるタンニン抽出率の差を比較した。結果は、90℃の熱湯抽出による抽出率が最も高く、5.2%であった(表1)。【0023】次に、熱湯処理する前の煎茶と、各温度で熱湯抽出した後の茶がらにメタノール50mlを加え、室温で30分間抽出後ろ過し、メタノール抽出液をセプパックで前処理してHPLC分析を行い、サポニンの変化の有無を調べた。その結果、それぞれのクロマトグラムに変化はみられず、高温の熱湯抽出によるサポニンの変化と損失はないものと思われた。【0024】【表1】【0025】[試験例2] 熱湯抽出の回数の検討より効率的にカテキン類を除去するための熱湯抽出の回数を検討した。煎茶5gを90℃の熱湯50mlで、▲1▼1回、▲2▼2回および▲3▼3回、10分間抽出し、それぞれの熱湯抽出液中のタンニン量を比色定量した。また、それぞれの茶がらを50mlの50%エタノールで抽出後ろ過し、その抽出液についてタンニンの比色定量およびHPLC分析(セプパック処理後)を行った。その結果、熱湯抽出1回(▲1▼)で3.7%、2回(▲2▼)で6.1%、3回(▲3▼)で6.9%タンニンが抽出され、それぞれの50%エタノール抽出によるタンニンの抽出率は▲1▼で4.9%であったのに対し、▲2▼で3.3%(▲1▼の67.3%)、▲3▼で2.5%(▲1▼の51.0%)であった(表2)。これらの結果より、煩雑さとタンニンの除去率を考え合わせると、熱湯抽出の回数は2回が適当であると思われた。【0026】【表2】【0027】[試験例3] サポニン抽出のためのエタノール濃度の検討煎茶(870904入手)10gを熱湯抽出後ネルろ過し、茶がらに100mlの40、50、60、70、80%エタノールおよび100%メタノール(コントロール)を加えて室温で一晩抽出し、各抽出液について酒精度測定(酒精計:日本計量器工業(株))、TLCおよびHPLC分析(セプパック処理後)を行った。TLCの結果、どの抽出液からもサポニンは検出されたが、夾雑物が異なっていた。すなわち、エタノール濃度が高いほど葉緑素が多く、低いほどフラボノイドが多かった。HPLC分析の結果、サポニン抽出率は40%エタノール抽出でやや低かった他はほぼ同程度であった(表3)。以上の結果から、サポニンを抽出するための溶媒中のエタノール濃度は50〜70%が適当であると思われた。【0028】【表3】【0029】[試験例4] エタノールによるサポニン抽出のための抽出時間の検討煎茶10gを熱湯抽出後ネルろ過し、茶がらに100mlの60%エタノールを加えて室温で抽出を行い、1、3、5時間、1、2、5日間後に抽出液を1mlずつ取り、セプパック処理後、TLCおよびHPLC分析を行った。TLCの結果、各抽出時間後の抽出液中のサポニンの量は3時間以降ではあまり差がみられなかったが、夾雑物については抽出時間が長くなるに従って多く抽出され、特にフラボノイドや葉緑素が増加したようであった。また、HPLC分析の結果、サポニン抽出率は1時間抽出でやや低かった他はほぼ同程度であった(表4)。以上の結果より、含水エタノールによる抽出の時間は3時間以上がよいと思われた。【0030】【表4】【0031】[試験例5] エタノール抽出液の濃縮温度の検討50%エタノール抽出液を濃縮する際、加熱によりサポニンが変化するかどうかを検討した。すなわち、試験例3において調製した50%エタノール抽出液を、約1/4量になるまで80℃で自然濃縮、あるいは40℃で減圧濃縮(対照)した後、セプパックで前処理してからHPLC分析を行った。80℃で自然濃縮したものについて40℃で減圧濃縮したものと比較した結果、主要なピークの割合が小さくなり、他のピークの割合が大きくなっていた(表5)。80℃の加熱によりサポニンのピーク比に変化がみられたため、高温下での濃縮は不適当であると思われた。【0032】【表5】【0033】[実施例1−茶葉サポニンの製造]静岡産の煎茶100kgを使用し、90℃の熱湯で15分間抽出する操作を3回行った。冷却後、熱湯により膨潤した茶葉にエタノ−ル500リットルと精製水を加え、50%エタノールになるように調製した。室温で約1日間抽出し、ろ過した。抽出液に水不溶性ポリビニルピロリドン(商品名:ポリクラーSB−100、五協産業(株))を16kg加え、18時間攪拌処理した。ろ過後、処理液を40℃で減圧濃縮にかけ、さらに凍結乾燥をおこない、薄緑色の粉末(茶葉サポニン)1120gを得た。得られたサポニンをHPLCで分析した結果、純サポニン含有量は55.5%と計算された。【0034】[実施例2−茶葉サポニンの精製]実施例1で製造した茶葉サポニン10gを40%メタノールに溶解し、浸水型逆相充填剤(商品名:COSMOSIL C18-OPN(ナカライテスク))を充填したオープンカラムクロマトグラフィー(300ml)にかけ、40〜 100%のメタノールで溶出した。薄層クロマトグラフィーでサポニンを検出し、サポニン分画を集め、サポニン混合物4.23gを得た。得られたサポニンをHPLCで分析した結果、サポニン純度はほぼ100%と計算された。【0035】【発明の効果】本発明による茶葉サポニンの製造法によれば、除カテキン処理をポリビニルポリピロリドンによって行った場合、使用する溶媒は、エタノール等低級アルコール1種のみでよく、有機溶媒の保管や処理の問題が従来法にくらべ軽減される。また使用する溶媒の量もかなり低減できる。さらに飲用に供した後の茶がらが原料として利用できるので、実用的価値も高い。また、本法を基本にしてこれにクロマトグラフィー等の分離手段を組み合わせれば、さらに純度の高いサポニン混合物を得ることができ、食品分野のみならず医薬品、医薬部外品など、様々な利用分野に適用できる。 茶葉の熱湯抽出残渣を含水低級アルコールで抽出することを特徴とする茶葉サポニンの製造方法。 茶葉が茶葉そのまま、蒸熱した茶葉あるいは通常の製茶加工を行った茶葉のいずれかである請求項1の方法。 茶葉がカメリア シネンシス(L)の葉である請求項1または2の方法。 通常の製茶加工を行った茶葉が緑茶、烏龍茶または紅茶である請求項2の方法。 茶葉の熱湯抽出残渣が茶葉を80℃以上の熱湯で抽出した残渣である請求項1の方法。 含水低級アルコールが30〜50重量%の水と70〜50重量%の低級アルコールからなる請求項1の方法。 含水低級アルコールが含水メタノールまたは含水エタノールである請求項1の方法。 含水低級アルコールで抽出された抽出液を、水不溶性ポリビニルピロリドンで処理するかあるいは酢酸エチルにより抽出処理して、該抽出液中に存在するカテキン類を除去する工程をさらに実施する請求項1〜7のいずれかに記載の方法。 含水低級アルコールで抽出された抽出液から抽出溶媒を留去する工程をさらに実施する請求項1の方法。 含水低級アルコールで抽出された抽出液から、カテキン類を除去する工程を実施する前にまたは実施した後に、抽出溶媒を留去する工程をさらに実施する請求項1の方法。