生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規なβ−アガラーゼ,その製造方法及びその用途
出願番号:1995125610
年次:2007
IPC分類:C12N 9/42,C12P 19/12,C12N 5/04


特許情報キャッシュ

荒木 利芳 JP 3865801 特許公報(B2) 20061013 1995125610 19950427 新規なβ−アガラーゼ,その製造方法及びその用途 株式会社ヤクルト本社 000006884 佐藤 正年 100092082 佐藤 年哉 100099586 荒木 利芳 20070110 C12N 9/42 20060101AFI20061214BHJP C12P 19/12 20060101ALI20061214BHJP C12N 5/04 20060101ALI20061214BHJP JPC12N9/42C12P19/12C12N5/00 F C12N 9/00-9/99 C12P 1/00/41/00 C12N 1/20-1/21 PubMed CA/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平05−252947(JP,A) J. Phycol.,1994年,30 [6],p.1040-1046 Nippon Suisan Gakkaishi,1990年,56 [5],p.825-830 5 FERM P-14905 1996294389 19961112 12 20010827 新留 豊 【0001】【産業上の利用分野】本発明は例えばβ−アガラーゼ活性を有する新規酵素、この酵素を産生する新規微生物、この酵素の製造方法、及びこの酵素を用いたオリゴ糖,プロトプラストの製造方法に関するものである。【0002】【従来の技術】寒天やポルフィランはある主の紅藻の細胞壁に含まれる海藻特有の多糖類である。現在、この寒天やポルフィランのオリゴ糖は研究用試薬としてのみならず、血圧降下作用、抗腫瘍作用や腸ぜん動運動の活性化などの薬理作用ならびにある種の微生物に対する静菌作用を有することが知られている。特に、ポルフィランのオリゴ糖は硫酸根を有しているため、ナトリウムイオンを吸収し、体外に排出するという点で塩分の取りすぎ防止に有効である。【0003】寒天の化学成分は、アガロース(agarose) とアガロペクチン(agaropectin) との2種類からなっている。図1はアガロース構成ユニットの構成を示す説明図である。図1に示す通り、アガロースは、ゲル化する性質を有する中性多糖類であり、アガロビオース(agarobiose)(即ち、4-O-β-D-galactopyranosyl-3,6-anhydro-L-galactose )と、ネオアガロビオース(neoagarobiose) (即ち、 3-O-(3,6-anhydro-α-L-galactopyranosyl)-D-galactose)とが交互に直線状に繋って形成されている。【0004】一方、アガロペクチンの化学構造は、複雑であり、未だ明確に解明されていないが、D-ガラクトース(D-galactose) ,3,6-アンハイドロ−L−ガラクトース(3,6-anhydro-L-garactose )とともに、少量の硫酸塩、グルクロン酸、ピルビン酸などから構成されている。ピルビン酸はアガロビオースユニット中のD-ガラクトース残基のC−4及びC−6とケタール結合している。このことはアガロビオースが、アガロペクチンの重要な構成成分であることを示唆している。【0005】一方、ポルフィランは、紅藻アマノリ属のものを熱水抽出したときに得られる多糖類で硫酸エステル化した直鎖のガラクタンで、3-β-D-galactosyl 及び4-α-L-galactosyl ユニットを主構成分としている。我国や中国で、ゲル化材として僅かに生産されている。【0006】近年、海洋生物資源としての海藻類の有効利用の観点から、また、生理活性物質としてのアガロオリゴ糖の製造方法の観点から、新規なアガロース分解酵素やアガロース産生能を有する新規な微生物の探索が行われている(特開平1−228465号)。特に、アガロースのネオアガロースオリゴ糖への分解活性については、ネオアガロテトラオース(4糖類)の分解能を有するものは殆ど知られていないのが現状である。【0007】【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、海底泥中より分離した海洋性細菌が海藻多糖の成分であるアガロースやポルフェランを効率よく分解し、更に、従来のアガラーゼでは分解が困難であったネオアガロテトラオースをも効率よく分解する酵素の生産菌であることを発見し、更に該生産菌から2種類のβ−アガラーゼを単離精製し、本発明を完成するに至った。【0008】本発明は、活性が優れた、特にネオアガロテトラオースやポルフィランの分解活性を有する新規なβ−アガラーゼを得ることを目的とする。【0009】【課題を解決するための手段】 β−アガラーゼAは、アガロースを分解し、主にネオアガロテトラオース(4糖類)又はネオアガロヘキサオース(6糖類)にまで低分子化する反応を触媒する酵素である。具体的な理化学的性質は後に詳述する。【0010】 また、本請求項1に記載された発明に係る新規なβ−アガラーゼBは、アガロースを分解し、主としてネオアガロビオース(2糖類)にまで低分子化する反応を触媒する酵素である。この具体的な理化学的性質に付いても後に詳述する。【0011】 更に、本請求項2に記載された発明に係る新規なβ−アガラーゼBは、ビブリオsp.PO−303(FERM P−14905)より得られたものである。【0012】 また、本請求項3に記載された発明に係るアガラーゼの製造方法では、請求項1又は2に記載のβ−アガラーゼBを製造する方法であって、 βアガラーゼBを産生する能力を有するビブリオ属の微生物を寒天を炭素源として培養し、その培養上清液から分離して精製するものである。【0013】 更に、本請求項4に記載された発明に係るオリゴ糖の製造方法では、請求項1又は2に記載のβ−アガラーゼBを、アガロースを基質とし、作用させるものである。【0014】 また、本請求項6に記載された発明に係る海藻細胞のプロトプラストの製造方法では、請求項1又は2記載のβ−アガラーゼBを海藻に作用させるものである。【0015】【作用】本発明におけるβ−アガラーゼAは、アガロースを分解し、主にネオアガロテトラオース(4糖類)とネオアガロヘキサオース(6糖類)とにまで低分子化する反応を触媒する特徴を有する酵素であって、下記理化学的性質を有する。【0016】(a) 分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による測定の結果は、約90000である。尚、既知のアガラーゼに、この分子量に該当する分子量を有するものは報告されていない。(b) 等電点等電点電気泳動の結果は、約6.6である。既知のアガラーゼにこの値に該当する等電点を有するものは報告されていない。(c) 溶解性水溶性である。(d) 作用少なくとも寒天、アガロース及びポルフィランを分解して、主として4糖類と6糖類に低分子化する反応を触媒する。また、κ−カラギーナン、λ−カラギーナンは分解しない。(e) 至適温度45℃(f) 至適pHpH7.5(g) pH安定性pH5.0〜9.0(h) 熱安定性40℃まで安定【0017】本発明におけるβ−アガラーゼBは、アガロースを分解し、主としてネオアガロビオース(2糖類)にまで低分子化する反応を触媒する酵素であって、下記理化学的性質を有する。【0018】(a) 分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による測定の結果は、約98000である。尚、既知のβ−アガラーゼに、この分子量に該当する分子量を有するものは報告されていない。(b) 等電点等電点電気泳動の結果は、約3.4である。既知のβ−アガラーゼに、この値に該当する等電点を有するものは報告されていない。(c) 溶解性水溶性である。(d) 作用少なくとも寒天、アガロース及びポルフィランを分解して、主として2糖類に低分子化する反応を触媒する。また、κ−カラギーナン、λ−カラギーナンは分解しない。(e) 至適温度55℃(f) 至適pHpH6.5(g) pH安定性pH4.0〜10.0(h) 熱安定性40℃まで安定【0019】本発明のβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBは微生物を用いて生産される。各酵素を生産する微生物を培養して、微生物の内部又は培養上清からβ−アガラーゼAまたはBを分離することができる。この何れかの酵素の生産菌としては、例えば、本発明では、新たに海底泥中から分離されたビブリオsp.PO−303を用いることができる。この微生物ビブリ・sp.PO−303は、上記の2つの酵素を産生することができる。尚、本菌株は生工研菌寄第14905号(平成07年04月21日寄託)として既に寄託されている。【0020】尚、本発明に用いる微生物としては、本菌株とその変種、変位株に限定されるものではなく、前記β−アガラーゼA又はβ−アガラーゼB生産能を有するものであれば良い。【0021】具体的なβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBの製造方法としては、このβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼB生産能を有する微生物を寒天を炭素源として培養し、その培養上清液から分離して精製するものである。この培地は、炭素源として寒天を含む他に、窒素源、無機化合物等の栄養素を適当量含有するものであれば、天然培地,合成培地の何れも使用することができる。【0022】具体的な寒天を含む炭素源としては、市販の寒天粉末は勿論のこと、アガロース,アガロペクチン,寒天の部分加水分解物等の加工物、及び、加工される前のアガロースを含むテングサ,オゴノリ等の紅藻類を単独又は併用して用いることもできる。また、寒天の他にも炭素源として、グルコース等の糖類を併用することもできる。【0023】また、窒素源としては、通常の培地の組成で用いるものが使用できる。例えば、肉エキス,ペプトン,酵母エキス,乾燥酵母,カザミノ酸,各種アミノ酸、尿素等の動植物等の加水分解物や各種無機アンモニウム塩,硝酸塩等の有機又は無機窒素源を、1種又は2種以上を用いることができる。【0024】更に、無機化合物としては、培養される微生物の必須無機塩として、ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,鉄,マンガン等のリン酸塩,塩酸塩,硫酸塩,炭酸塩,酢酸塩等を1種以上用いることができる。【0025】培養は、目的のβ−アガラーゼA又はBを産生する微生物の培養に応じた培養方法及び条件が選択される。例えば、好気性微生物であれば、振盪培養,通気攪拌培養等が大量に培養することができ良好である。【0026】微生物の培養によって産生されたβ−アガラーゼA又はBは、通常の方法によって、分離・精製される。例えば、菌体中に酵素を保有する場合には、菌体を通常用いられている手段によって破砕してβ−アガラーゼA又はBを抽出して精製される。また、培養液中に産生されたβ−アガラーゼA又はBは、微生物を濾過・遠心分離等の方法で除去して精製される。【0027】精製方法としては、通常用いられる精製方法を利用することができる。例えば、塩析,溶媒沈殿により、β−アガラーゼA又はBを沈殿させて溶媒中から分離して、精製することができる。また、沈殿させたものを更にイオン交換クロマトグラフィ、ゲルクロマトグラフィ、等電点電気泳動等により、更に精製することもできる。【0028】得られたβ−アガラーゼA又はBは、アガロースを基質として作用させることにより、オリゴ糖を製造することができる。このアガロースから得られるオリゴ糖は研究用試薬としてのみならず、血圧降下作用、抗腫瘍作用や腸ぜん動運動の活性化などの薬理作用ならびにある種の微生物に対する静菌作用を有することは、前述の通りである。【0029】また、得られたβ−アガラーゼA又はBは、海藻に作用させることにより、容易に海藻細胞のプロトプラストを作成することができる。また、寒天組成中のアガロースを分解する酵素であるため、例えば、アガロース電気泳動により、目的の部位に保持された遺伝子を回りの寒天を溶かすことにより、容易に入手することもできる。【0030】【実施例】1.海洋泥中よりのビブリオ菌の採取海洋泥中に生息する微生物からβ−アガラーゼ活性の高い微生物を分離選択した。具体的には、海洋泥に生息する海洋性微生物を単離し、個々の微生物を寒天を炭素源とする培地中で培養し、β−アガラーゼ活性を測定したところ、β−アガラーゼ活性の最も高い微生物を得た。【0031】尚、本実施例におけるβ−アガラーゼ活性の測定は次のように行われた。0.5%の寒天を含む100mM MES緩衝液、pH7.5の0.5mlに酵素液0.5mlを加え、38℃で10min反応させ、生じた還元糖の増加をソモジ・ネルソン(Somogyi-Nelson)法で測定した。酵素活性の1unitは上記反応条件で、1分間に1μmolのD−ガラクトースに相当する還元力を生ずる酵素量と定義した。【0032】2.菌学的性質このβ−アガラーゼ活性の最も高い微生物は、Bergeys' Manual Systematic Bacteriology の記載に準拠して同定を行ったところ、次に示す結果からビブリオ(Vibrio)に属していることが判明した。この微生物の形態は、次の表1に示すものである。また、表2に生理学的試験結果を示す。この表1及び表2の結果より、本微生物は海洋性細菌ビブリオ(vibrio)sp. であることが確認された。尚、本細菌をビブリオ(Vibrio)sp.PO-303 と命名した。【0033】【表1】【0034】【表2】【0035】ビブリオ(Vibrio)sp.PO-303 の生育温度,酵素生成,生育NaCl濃度,炭素源としての糖やアミノ酸の利用性等を調べた。結果を次の表3〜表6に示す。【0036】【表3】【0037】【表4】【0038】【表5】【0039】【表6】【0040】即ち、グラム陰性で単極毛を有し、OFテスト発酵性であり、カタラーゼならびにオキシダーゼテスト陽性、グルコース培地から酸生成、ガス非産生、ビブリオスタティックエイジェント(0/129)に感受性あり、GC含量44%であった。【0041】3.培養本細菌(ビブリオ(Vibrio)sp.PO-303 )は、酵素産生のための誘導物質として、寒天を必要とし、その濃度を0.3%とし、その他、0.3%ポリペプトン、0.1%酵母エキス、3%塩化ナトリウム、0.5%塩化マグネシウム、0.2%リン酸水素二カリウム、0.04%リン酸二水素カリウムの組成からなる培地を用いて、25℃、4日間、振盪培養した場合、1,000mlの培地から66unitsのアガラーゼを得ることができた。【0042】4.β−アガラーゼの精製産生されたβ−アガラーゼを精製した。即ち、本細菌を上記の条件で大量培養し、遠心分離して得られた培養上清液に75%飽和になるように固形硫酸アンモニウムを加えた。4℃で1日放置後、遠心分離し、生じた沈殿を少量の50mMMES緩衝液pH7.5に溶解し、同緩衝液で透析後、透析内液を塩析酵素液として用いた。【0043】塩析酵素液を陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE-Toyopearl 65M)、ゲル濾過クロマトグラフィー(Toyopearl 55)、疎水クロマトグラフィー(Ether-Toyopearl 650S)、陰イオン交換クロマトグラフィー(Mono Q HR 5/5 )で分画したところ、その分子量と等電点の相違により、2種類のβ−アガラーゼが得られた。【0044】5.アガラーゼの酵素特性得られた2種類のβ−アガラーゼの分子量,等電点,溶解性,至適pH,pH安定性,至適温度を測定した。結果を次の表7に示す。尚、2種類のβ−アガラーゼのうち、分子量90,000のものをβ−アガラーゼA,98,000のものをβ−アガラーゼBと命名した。【0045】【表7】【0046】また、これら2つの酵素画分はディスク電気泳動的に均一であることから純粋に精製されていることが確認された。精製β−アガラーゼA及びBの寒天,アガロース,ポルフィラン,ネオアガロビオース,ネオアガロテトラオース,ネオアガロヘキサオースに対する作用様式を調べた。その結果を表8に示す。【0047】【表8】【0048】表7及び表8に示したように、本細菌は寒天,アガロース,ポルフィランに作用し、主な分解産物として、ネオアガロテトラオース(4糖類)又はネオアガロヘキサオース(6糖類)を生じる酵素β−アガラーゼAと、主な精製物としてネオアガロビオース(2糖類)を生じる酵素β−アガラーゼBとの2種類の作用様式の異なるアガラーゼを産生することが判明した。【0049】6.ネオアガロオリゴ糖の製造6.1 寒天からのオリゴ糖の調製従来からの寒天からオリゴ糖を調製する方法として酸による加水分解がある。しかしながら、酸加水分解法は100℃での加熱を要し、また、反応時間が長いと、オリゴ糖が更に単糖に分解されてしまうため、効率よくオリゴ糖を調製することが困難である。それに対して、前述のβ−アガラーゼA又はBを用いる方法では室温で効率よくオリゴ糖を調製することが可能である。特に、ネオアガロテトラオースを分解するネオアガラーゼBの使用は従来困難とされているネオアガロビオースの調製に優れた方法である。【0050】具体的には、前記の方法で製造したβ−アガラーゼB(2ユニット)と、1%に調整したアガロース(20ml)とを試験管内で混合して、38℃で20時間反応させた。その後、反応生成物をセファデックス(Sephadex)G−15カラム(10×90cm)を用いて分離した。その結果、ネオアガロビオース(約28%)が得られた。【0051】6.2 ポルフィランからのオリゴ糖の調製ところで、ポルフィランは寒天と類似した骨格に硫酸根を含有する多糖であるが、酸で加水分解する方法は上記の問題に加えて、硫酸根を分解するので硫酸根含有オリゴ糖を調製することは困難である。しかしながら、前述のβ−アガラーゼA又はBはポルフィランも加水分解し、種々の硫酸根含有オリゴ糖を容易に産出することができる。【0052】具体的には、前記の方法で製造したβ−アガラーゼB(2ユニット)と、1%に調整したポルフィラン(20ml)とを試験管内で混合して、38℃で20時間反応させた。その後、反応生成物をセファデックス(Sephadex)G−15カラム(10×90cm)を用いて分離した。その結果、ネオアガロビオース(約16%)が得られた。【0053】7.プロトプラストの製造7.1 紅藻からのプロトプラストの調製海藻の優良産業品種の開発を行う上で、細胞融合や遺伝子操作によるバイオテクノロジーは優れた手法である。バイオテクノロジーを行うためには酵素で細胞壁を溶解し、プロトプラストを作出する方法の開発が必要とされている。前記β−アガラーゼA又はBを用いることにより、寒天ならびにポルフィランを含む紅藻から多量のプロトプラストを作出することが可能である。【0054】具体的には、供試海藻(紅藻)1gを5%パパインと、0.7Mマンニトール含有20mMMES緩衝液pH7.5,30mlを入れた100ml容ビーカに加え、22℃,30分間振盪した。0.7Mマンニトール含有MES緩衝液、pH7.5を用いて、40μmのナイロンメッシュで濾過洗浄し、洗浄した葉体をナイフで数ミリ片に裁断した。【0055】裁断片の200mgを2unitアガラーゼと市販のセルラーゼオノズカRS(4%)ならびにマセロチームR−10(1%)、それに0.7Mマンニトール含有20mMMES緩衝液、pH6.0を入れた30ml容三角フラスコに投入し、22℃で5時間振盪した。その結果、紅藻ツルツル(Grateloupia turuturu)の1gから105 〜106 、また、紅藻オゴノリ(Gracilaria verrucosa)からは104 〜105 のプロトプラストが得られた。【0056】8.アガロースゲルからのDNA断片の抽出本β−アガラーゼAは高純度に精製してもアガロースを液化することが可能であるので、アガロースゲル電気泳動で分画されたDNA断片の回収に利用できる。即ち、泳動後のアガロースゲルを精製アガラーゼAを加えて、溶解し、目的のDNA断片を抽出することができる。【0057】【発明の効果】本発明は以上説明したとおり、β−アガラーゼAは、アガロースを分解し、主にネオアガロテトラオース(4糖類)とネオアガロヘキサオース(6糖類)とにまで低分子化する反応を触媒する特徴を有する酵素である。【0058】また、本発明におけるβ−アガラーゼBは、アガロースを分解し、主としてネオアガロビオース(2糖類)にまで低分子化する反応を触媒する酵素である。【0059】更に、本発明のβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBは微生物を用いて生産される。この何れかの酵素の生産菌としては、各酵素を生産する微生物を培養して、微生物の内部又は培養上清から生成することができる。【0060】また、β−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBの製造方法としては、このβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼB生産能を有する微生物を寒天を炭素源として培養し、その培養上清液から分離して精製するものである。【0061】更に、本発明のβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBは、アガロースを基質として作用させることにより、オリゴ糖を製造することができる。このアガロースから得られるオリゴ糖は研究用試薬としてのみならず、血圧降下作用、抗腫瘍作用や腸ぜん動運動の活性化などの薬理作用ならびにある種の微生物に対する静菌作用を有する。【0062】また、本発明のβ−アガラーゼA又はβ−アガラーゼBは、海藻に作用させることにより、容易に海藻細胞のプロトプラストを作成することができるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】アガロース構成ユニットの構成を示す説明図である。 アガロースを分解し、主としてネオアガロビオース(2糖類)にまで低分子化する反応を触媒する酵素であって、下記理化学的性質を有する新規なβ−アガラーゼB。 (a) 分子量;約98000 (b) 等電点;約3.4 (c) 溶解性;水溶性 (d) 作用; 少なくとも寒天、アガロース及びポルフィランを分解して、主として2糖類に低分子化する反応を触媒する。また、κ−カラギーナン、λ−カラギーナンは分解しない。 (e) 至適温度;55℃ (f) 至適pH;pH6.5 (g) pH安定性;pH4.0〜10.0 ビブリオsp.PO−303(FERM P−14905)より得られたことを特徴とする請求項1に記載の新規なβ−アガラーゼB。 前記β−アガラーゼBを産生する能力を有するビブリオ属の微生物を寒天を炭素源として培養し、その培養上清液から分離して精製することを特徴とする請求項1又は2に記載のアガラーゼの製造方法。 請求項1又は2に記載のβ−アガラーゼBを、アガロースを基質とし、作用させることを特徴とするオリゴ糖の製造方法。 請求項1又は2記載のβ−アガラーゼBを海藻に作用させることを特徴とする海藻細胞のプロトプラストの製造方法。


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