タイトル: | 特許公報(B2)_無水酢酸と酢酸の分離方法 |
出願番号: | 1995113708 |
年次: | 2006 |
IPC分類: | C07C 53/12,C07C 51/573 |
柿本 武彦 阪本 信治 JP 3751657 特許公報(B2) 20051216 1995113708 19950414 無水酢酸と酢酸の分離方法 日本合成化学工業株式会社 000004101 柿本 武彦 阪本 信治 20060301 C07C 53/12 20060101AFI20060209BHJP C07C 51/573 20060101ALI20060209BHJP JPC07C53/12C07C51/573 C07C 53/12 C07C 53/08 C07C 51/44 C07C 51/573 特開昭62−246538(JP,A) 1 1996283192 19961029 4 20020403 吉良 優子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は無水酢酸と酢酸との混合物から工業的に有利に両成分を分離する方法を提供するものである。【0002】【従来の技術】無水酢酸は有用な化学剤として知られている。工業的に無水酢酸を取り扱う場合、しばしば酢酸との混合物が発生する。例えば無水酢酸の製造においてケテンを熱分解して酢酸に吸収させる方法での反応生成液や、無水酢酸を脱水反応に使用した時に生成する、未反応無水酢酸と副生酢酸との混合物等がある。【0003】【発明が解決しようとする課題】従って、この混合物から両成分を分離する必要性が生じるが無水酢酸と酢酸とは類似した性質を持つため、効率的な分離は容易でない。無水酢酸を種々の化合物との混合物から蒸留法や抽出法で精製することは、よく行われているが、酢酸との分離については殆ど報告もなく、解決すべき課題となっている。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者はかかる問題の解決のため鋭意研究を重ねた結果、蒸留塔の中段に無水酢酸と酢酸との混合物を、塔頂から水をそれぞれ導入しながら蒸留を行い、塔底から精製無水酢酸を回収する場合、無水酢酸と酢酸との分離が効率良く行われることを見出し、本発明を完成するに到った。【0005】本発明を実施するに当たって、無水酢酸と酢酸との混合物を蒸留塔の中段に仕込むが、本発明の最大の特徴は蒸留塔の塔頂より水を導入する点である。かかる水の存在により蒸留が効率良く行われ、かつ蒸留塔の腐食も全く心配ない顕著な効果が発揮される。無水酢酸の取り扱いにおいて水を存在させることは、一般の化学常識からは好ましい事ではないが、本発明においては意外にも水の存在が無水酢酸に悪影響を及ぼさず初期の効果が得られるのである。【0006】水の導入量は余りに少ないと蒸留塔の腐食が激しくなる等本発明の効果が得られず、一方余りに多過ぎると無水酢酸の損失が顕著となるので、通常は塔上部の水分濃度が0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の割合となるように制御される。【0007】蒸留に付される無水酢酸と酢酸の混合物はその組成及び生成履歴に特に制限はないが、無水酢酸50〜95重量%好ましくは60〜90重量%、酢酸5〜50重量%好ましくは10〜40重量%の割合の組成の混合物が有利である。【0008】本発明の方法を実施する際に使用する蒸留塔は任意のものであって良く常圧蒸留、減圧蒸留のいずれでもなし得るものであれば、段塔式、充填塔式、噴霧式、流下薄膜式、撹拌液膜式等任意の構造のものが挙げられるが、圧力損失が小さいものが望ましく、通常は充填塔式や段塔式が実用的である。蒸留塔の理論段数は20〜70段程度が望ましい。【0009】蒸留に当たっては、蒸留塔の中段即ち塔頂より10〜40段目に無水酢酸と酢酸の混合物を供給し、塔頂(0〜30段目)より水を導入する。塔底のリボイラーを加熱することにより塔底から精製された高純度の無水酢酸を得る。塔頂からは無水酢酸を含む酢酸溶液が留出する。還流比は1〜10程度が実用的であり、還流液は塔頂にリサイクルされる。【0010】混合物仕込量100に対して加水量は0.2〜10、塔底缶出量は30〜95、塔頂留出量は5〜70程度である。【0011】【作 用】蒸留塔の中段に無水酢酸と酢酸との混合物を、塔頂から水をそれぞれ導入しながら蒸留を行い、塔底から精製無水酢酸を回収することによって、無水酢酸と酢酸との分離が効率良く行われる。【0012】【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。実施例1無水酢酸と酢酸との混合物(無水酢酸80重量%、酢酸20重量%の組成)を理論段数が30段の棚段式蒸留塔(SUS製)の15段目(塔頂から)に毎時100Kgの割合で供給し、一方塔頂部から2段目に水を毎時1Kgの割合で供給した。還流比を4として常圧下で蒸留を行った。【0013】塔底部より無水酢酸(純度99.5%以上)を毎時72Kgの割合で得た。塔頂留出液の組成は無水酢酸30重量%、酢酸70重量%の混合物であった。この時の塔頂温度は122℃、塔底温度は149℃であり、又蒸留塔内部の腐食も全く心配なかった。【0014】実施例2無水酢酸と酢酸との混合物(無水酢酸80重量%、酢酸20重量%の組成)の仕込み段を20段に、加水量を0.6Kgに変更した以外は実施例1と同じ実験をし、塔底部より無水酢酸(純度99.5%以上)を毎時72Kgの割合で得た。塔頂留出液の組成は無水酢酸30重量%、酢酸70重量%の混合物であった。この時の塔頂温度は122℃、塔底温度は149℃であり、又蒸留塔内部の腐食も全く心配なかった。【0015】対照例1実施例1において水の使用を省略したところ、無水酢酸の純度が98.0%に低下し、且10日間運転を継続すると蒸留塔の上部付近に金属腐食が認められた。【0016】【発明の効果】本発明では蒸留塔の中段に無水酢酸と酢酸との混合物を、塔頂から水をそれぞれ導入しながら蒸留を行い、塔底から精製無水酢酸を回収することによって、蒸留塔の腐食がなく、且無水酢酸と酢酸との分離が効率良く行われる。 蒸留塔の中段に無水酢酸と酢酸との混合物を、塔頂から水をそれぞれ導入しながら蒸留を行い、塔底から精製無水酢酸を回収することを特徴とする無水酢酸と酢酸の分離方法。