生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_可逆的熱ゲル化剤
出願番号:1995111325
年次:2007
IPC分類:C08B 37/00,A23L 1/00,A23L 1/05,A23L 1/16,A61K 8/60,C12P 19/04


特許情報キャッシュ

白川 真由美 大和谷 和彦 JP 3909095 特許公報(B2) 20070126 1995111325 19950411 可逆的熱ゲル化剤 大日本住友製薬株式会社 000002912 松尾 まゆみ 100124637 白川 真由美 大和谷 和彦 20070425 C08B 37/00 20060101AFI20070405BHJP A23L 1/00 20060101ALI20070405BHJP A23L 1/05 20060101ALI20070405BHJP A23L 1/16 20060101ALI20070405BHJP A61K 8/60 20060101ALI20070405BHJP C12P 19/04 20060101ALN20070405BHJP JPC08B37/00 ZA23L1/00 BA23L1/00 DA23L1/04A23L1/16 CA61K8/60C12P19/04 Z C08B 37/00-37/18 A23L 1/00 A23L 1/05 A23L 1/16 A61K 8/60 C12P 19/04 CA(STN) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) EMBASE(STN) JSTPlus(JDream2) 特開平06−181704(JP,A) 特開平07−031491(JP,A) 特開平04−320401(JP,A) Gums and Stabilizers for the Food Industry 4 (Proc.),1988年,pages 391-398 Pure & Appl. Chem.,1989年,Vol.61, No.7,pages 1315-1322 Carbohydrate Research,1991年,Vol.214,pages 299-314 5 1996283305 19961029 14 20020401 山田 拓 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分分解して製造される可逆的熱ゲル化剤および該ゲル化剤の食品,化粧品,トイレタリー製品への利用に関する。【0002】【従来技術および発明が解決しようとする課題】食品,化粧品,トイレタリーなどの分野では種々のゲル化剤が使用されており、ゲル状およびゾル状の製品が数多く上市されている。これらの分野では安全でイメージの良い天然の多糖類、蛋白質も使用されてはいるが、ゾル,ゲルの食感の多様性や安定性、あるいはゲル化温度やゾル/ゲル状態の可逆的な制御が求められている。【0003】これらの分野のゲル化剤としては、古くから、澱粉をはじめ、寒天,ゼラチン,カラギーナン(ローカストビーンガムの併用),ペクチン,アルギン酸ソーダなどが目的・用途に応じて使用されている。また、微生物由来のキサンタンガム(ローカストビーンガムとの併用),ジェランガム,カードランなどのゲル化剤も開発され、ゲル状,ゾル状,ペースト状食品などに用いられている。【0004】これら多糖類のゲル化剤のゲル化挙動は、カードランを除き、いずれも冷却するとゲル化し、加熱するとゾル化するものであった。加熱してゲル化するゲル化剤としては、メチルセルロース,カードラン,蛋白質などがあるが、いずれもゾル/ゲルが非可逆的である。メチルセルロースは化学合成品であるため使用に制限があるうえ、ゲル化温度(点)が高い(55℃〜85℃)ので上記の分野では使用し難い。また、蛋白質、例えば卵白や大豆グロブリンは、熱変性によるゲル化なので制御し難いなどの問題があるうえ、食感や安定性に必ずしも満足のいくものではなかった。【0005】また、現在大量に使用されているゲル化剤は、他成分の共存下でゲル化したり、物性が変化したりする場合が多い。例えば、ペクチンのゲル化には、HMペクチンでは糖と酸、LMペクチンではイオンが必要である。アルギン酸ソーダやカラギーナンの場合もイオンの存在がゲル化に大きな影響を及ぼす。これらのゲル化剤はわずかな条件の違いで、ゲル化が起こらなかったり、物性が変化したりするので、簡便には使用し難い。また、ゼラチンや寒天では、熱や酸に弱く、加熱溶解や殺菌時に分解するという安定性に問題がある。【0006】 一方、植物由来の天然多糖ガラクトキシログルカンの一つであるタマリンド種子ガムが知られており、増粘剤として食品分野などに用いられている。ガラクトキシログルカンは通常はゲル化せず、ゲル化させるには糖やイオンあるいはアルコールの共存が必要である。また、ガラクトキシログルカンに酵素を作用させ、側鎖ガラクトースを除去するとゲル化することが知られている。酵素として、植物由来のガラクトシダーゼ〔Reid J. S. D. et al., Gums and Stabilizers for the Food Industry 4 (Proc.), 391-398 (1988)〕または微生物由来のガラクトシダーゼ(特開平6-181704)を用いる方法が知られている。前者では植物由来の酵素の精製が実用上困難であり、したがって、その酵素は高価である。後者では微生物由来の複合酵素を用いているため、メインのガラクトシダーゼ活性の他にセルラーゼ活性(β−1,4−グルカナーゼ活性)をも含むので、記載の方法ではガラクトキシログルカンの主鎖の切断も起こり、ゲル化しないか、またはゲル化しても極めて弱い。【0007】本発明者らは、ガラクトキシログルカンの機能性や利用性を研究する中で、新規な物性を有するゲル化剤を見いだした。即ち、ガラクトキシログルカンを部分分解すると、可逆的熱ゲル化剤が製造されることを見いだした。該ゲル化剤は、通常使用されるゲル化剤とは逆の熱挙動を示すことから、食品,化粧品,トイレタリーなどの分野に新しいタイプのゲル化剤として提供されうる。【0008】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分分解すると、新規な物性をもつ部分分解物、即ち、可逆的熱ゲル化剤が製造され、該ゲル化剤が食品,化粧品,トイレタリーなどの分野に新しいタイプのゲル化剤として提供されうることを見いだした。【0009】更に詳しくは、本発明は、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを微生物由来の精製β−ガラクトシダーゼを用いて部分的に除去して製造される可逆的熱ゲル化剤である。このゲル化剤は、加熱するとゲル化し、冷却するとゾル化する熱相転移性を有する。しかも、このゲル化剤は加熱時のゲル強度が大きく、かつ安定である。ガラクトキシログルカンそのものはゲル化させるために糖やイオンあるいはアルコールの共存が必要であるのに対し、本発明のゲル化剤は必ずしもそれを必要とせず単独でゲル化するので、ガラクトキシログルカンとは異なった新しいタイプの増粘剤,ゲル化剤となりうる。【0010】本明細書中における「可逆的熱ゲル化剤」とは、可逆的にゾル化/ゲル化する熱相転移性を有し、加熱するとゲル化し、冷却するとゾル化するゲル化剤を意味する。ここでは、このような加熱するとゲル化し、冷却するとゾル化する性状を可逆的熱ゲル性という。また、以下、本発明の可逆的熱ゲル化剤は単に本発明のゲル化剤という。【0011】本発明に用いる原料のガラクトキシログルカンは双子葉,単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)に存在する天然多糖である。ガラクトキシログルカンはグルコース,キシロースおよびガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ−1,4結合し、側鎖にキシロース、そのキシロースにさらにガラクトースが結合している。ガラクトキシログルカンは、タマリンドをはじめ、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギ、リンゴなどから抽出される。【0012】本発明に用いるガラクトキシログルカンとしては、いかなるガラクトキシログルカンでもよいが、ガラクトキシログルカンの含有率が高く、入手も容易なタマリンド種子由来のガラクトキシログルカン〔タマリンド種子ガム:商品名「グリロイド」大日本製薬(株)製〕が好ましい。【0013】ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを部分的に除去する方法としては、例えば希酸を用いる酸加水分解,熱分解および酵素分解が挙げられるが、前二者は主鎖の切断や側鎖のキシロースの切断も同時に起こり不適当である。好ましい方法としては、後者の、β−ガラクトシダーゼを用いる酵素分解が挙げられる。酵素分解法は温和な条件で反応させることができ、しかも側鎖ガラクトースを条件に応じて選択的に部分除去することができる。用いるβ−ガラクトシダーゼとしては、植物由来のもの、微生物由来のものいずれでもよいが、微生物由来のものが安価で好ましい。【0014】微生物由来のβ−ガラクトシダーゼとしては、市販の酵素剤、例えば、Aspergillus orizaeまたは Bacillus circulans 由来の酵素が使用される。しかしながら、Aspergillus orizae由来の酵素製剤は複合酵素活性を有し、主鎖を切断するセルラーゼやイソプリメベロース生成酵素を夾雑物として含んでいるので、該夾雑物を除く必要がある。その除去法としては通常の方法、例えばイオン交換,疎水性,アフィニティーの差を利用した各種のクロマトグラフィーを用いる方法が挙げられる。【0015】 本発明のゲル化剤は、精製β−ガラクトシダーゼを使用し、至適の反応温度,pH,濃度などの条件下で基質のガラクトキシログルカン水溶液を反応させ、反応時間に応じて側鎖ガラクトースを一定の割合で除去して製造される。例えば、2%の基質濃度で、酵素濃度2. 4×10 -5重量%、pH5〜6、反応温度50〜55℃の条件下に反応させることができる。酵素の至適pHと至適温度は、例えば、Aspergillus orizae由来酵素「ラクターゼY-AO」ではpH5.0,50℃、Bacillus circulans由来酵素「ビオラクタ(登録商標)」ではpH6.0,55℃である。また、反応時間は基質の濃度,酵素濃度,殊にpHに依存するので、反応時間を適宜調整することができる。【0016】上記酵素反応は反応が進むにつれ、側鎖ガラクトースが部分的に除去され、それに対応してガラクトースが遊離してくるが、その除去率が30%付近になると反応液は急激に増粘し、遂にはゲル化する。側鎖ガラクトースの除去率がある一定の範囲の部分分解物は可逆的熱ゲル性を有する。このような性状を有する範囲は、除去率が30%〜65%であり、好ましくは35%〜55%である。除去率が30%以下では全くゲル化せず、65%以上ではゲル化するのみである。【0017】また、上記酵素反応において、ゲル化するための基質の最低濃度は約0.5%であり、それ以下の濃度ではゲル化しないか、または、ゲル化しても少し攪拌すると壊れる。【0018】本発明のゲル化剤は、興味あることに、熱によるゾル/ゲル相転移が二度、即ち、低温側と高温側で起こり、低温側の転移温度(または転移点)以下および高温側の転移温度以上ではゾル化し、両転移温度間ではゲル化する。加温していくと、低温側の転移温度(この場合ゲル化点)でゲル化し、高温側の転移温度(この場合ゾル化点)でゾル化する。例えば、基質として2%ガラクトキシログルカン水溶液を酵素反応して製造される、側鎖ガラクトースの除去率が40%の本発明のゲル化剤は、30℃と90℃でゾル/ゲル相転移が起こり、30℃以下および90℃以上ではゾル状態、30℃〜90℃ではゲル状態を示す。【0019】かかる相転移温度は基質の濃度および側鎖ガラクトースの除去率によって変化する。基質の濃度が高くなるにつれ、また、その除去率が大きくなるにつれて、ゲル化の温度領域(ゲル領域)は拡大する、すなわち、低温側の相転移温度は低下し、高温側のそれは高くなる。また、ゲル領域におけるゲル強度は0℃〜60℃の温度範囲では高温側のゲルの方が大きい。【0020】また、本発明のゲル化剤の相転移温度は塩,糖の添加によってもその影響を受け、例えば食塩の添加では上昇傾向、砂糖の添加では下降傾向が認められる。したがって、塩,糖の添加により本発明のゲル化剤の転移温度を制御することもできる。【0021】本発明のゲル化剤は、そのゲル物性(例えば、破断応力および破断変形)が他のゲル化剤、例えば寒天,ゼラチン,κ−カラギーナンと比べて異なった性状を有するので、新規な食感・利用が可能である。また、本発明のゲル化剤は、可逆的熱ゲル性を示すが、この熱挙動は上記のゲル化剤のそれとは全く逆であり(例えば、寒天,ゼラチン,κ−カラギーナンは冷却するとゲル化し、加熱するとゾル化する)、しかも、耐熱性にも優れているので、新しいタイプのゲル化剤となりうる。【0022】また、本発明のゲル化剤のゲルはやや離水傾向があるが、適当な他の多糖類、例えばキサンタンガムを添加することにより、その離水を抑制することができる。添加するキサンタンガムの量が多くなるにつれ、離水の度合いは小さくなり、それに応じて、ゲルは柔らかくなる。したがって、本発明のゲル化剤に、必要なら、他の多糖類を添加して離水の度合いを制御することも可能である。その調製法は本発明のゲル化剤と例えばキサンタンガムを混合してもよいし、最初から、原料のガラクトキシログルカンとキサンタンガムの混合物を基質として酵素反応させ、調製することもできる。【0023】使用される本発明のゲル化剤は、側鎖ガラクトースの除去率が30%〜65%、好ましくは35%〜55%の範囲の単一物でもよいし、その範囲の他との混合物でもよい。また、一定の反応時間によって製造される本発明のゲル化剤は、反応系内そのままをゲル化剤として用いてもよいし、これを噴霧乾燥,凍結乾燥して乾燥粉末にして、または、アルコールで沈殿・濾過後、乾燥粉末にして用いられる。【0024】また、本発明のゲル化剤は、産業上よく使われる他の、加熱によりゾル化するゲル化剤と併用することもできる。その調製法は両者を単に混合してもよいし、最初から、原料のガラクトキシログルカンと他のゲル化剤の混合物を基質として酵素反応させ、調製することもできる。両者の併用は、相互のゲル化剤の融点を制御することができるので好ましい。例えば、本発明のゲル化剤を併用することにより、室温以上で溶解するゼラチンゲル(融点25℃)の融点を上げて、流通・保存中の溶解防止が可能である。【0025】このように、本発明のゲル化剤を用いると、新しいタイプのゲル状食品,飲料,スープ,化粧品や芳香剤などのトイレタリー製品を製造することができる。例えば、その可逆的熱ゲル物性を利用して、加熱しても弾力のあるホットゲル、ホットドリンク、電子レンジ対応食品、ホット惣菜、老人食(咀嚼・嚥下が困難な人のための食品)、畜肉製品、ソフトキャンディー、チューインガム、可食性フィルム、カード型食品への応用が可能である。【0026】【発明の効果】本発明により、新しい食感を有し、安定で、加熱によりゲル化し冷却によりゾル化する可逆的熱ゲル化剤が提供される。本発明のゲル化剤は、食品素材として用いられている天然多糖ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分除去したものであるので、安全である。また、本発明のゲル化剤は、ゲル化させるために糖やイオンあるいはアルコールの共存を必ずしも必要とせず、単独でゲル化するので、新しいタイプのゲル状食品、飲料、スープ、化粧品や芳香剤などのトイレタリー製品として使用することができ、しかもその使用は簡便である。また、本発明のゲル化剤は、産業上よく使われる加熱によってゾル化するゲル化剤と併用することもでき、その併用により相互のゲル化剤の融点を制御することが可能である。【0027】【実施例】以下に実施例および参考例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常の技術を用いる改変が可能である。【0028】参考例1 β−ガラクトシダーゼの精製方法:− 複合酵素活性を有する市販のβ−ガラクトシダーゼ「ラクターゼY-AO」〔(株)ヤクルト本社製;Aspergillus orizae由来〕の2.5%水溶液をイオン交換クロマトグラフィー〔DEAE Toyopearl(登録商標);東ソー(株)製〕の 0.025M リン酸緩衝液(pH 7.4)、0-0.6MのNaClグラジエントに付し、NaCl濃度0.2-0.4Mで溶出させた。さらに、疎水クロマトグラフィー〔Butyl-Toyopearl(登録商標); 東ソー(株)製〕の0.025Mリン酸緩衝液(pH 7.4)、0-0.6Mの硫酸アンモニウムグラジエントに付し、硫酸アンモニウム濃度10% 以下で溶出させた。以上の操作により、市販の粗酵素2.5gから精製酵素60mgを得た。本品はセルラーゼ活性、IPase(イソプリメベロース生成酵素) 活性が認められなかった。【0029】 実施例1 ゲル化剤の調製:− 参考例1で得た精製酵素β−ガラクトシダーゼを用い、基質の1%ガラクトキシログルカン〔グリロイド(登録商標)3S, 大日本製薬(株)製〕水溶液を、酵素濃度2.4 ×10-5重量%, pH 5.6, 50 ℃で反応させ、経時的に試料を調製した。図1に反応時間,側鎖ガラクトースの除去率および粘度を示す。粘度はB型粘度計〔東京計器(株)製〕を用い、50℃,30rpm で測定した。除去率は、遊離のガラクトースの量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(連結カラム:Shodex(登録商標) Ionpak KS 805+KS 802) で測定し、算出した。【0030】反応溶液は反応開始後約15時間でゲル化した。100 ℃,20分間加熱し反応を停止させた。このゲルは側鎖ガラクトースの除去率が約40% であった。このゲルを凍結乾燥またはアルコールを加えて沈殿・濾取後、乾燥粉末化して、粉末ゲル化剤とした。また、粉末にせず反応系そのものをゲル化剤として用いることもできる。【0031】本明細書中では、1%ガラクトキシログルカン水溶液を基質として製造されるゲル化剤は、以下1%ガラクトキシログルカンゲルと呼称し、その側鎖ガラクトースの除去率が約40% であれば、1%ガラクトキシログルカンゲル(除去率約40%)と表記する。また、そのゲルを粉末化したものを粉末1%ガラクトキシログルカンゲルと呼称し、粉末1%ガラクトキシログルカンゲル(除去率約40%)と表記する。【0032】実施例2 ゲル化剤のゲル物性(粘度):−実施例1で製造した粉末1%ガラクトキシログルカンゲル(除去率40%)を冷水に溶解し、各温度での粘度をB型粘度計で測定した。対照として、原料の1%ガラクトキシログルカン水溶液を同様に測定した。結果を表1に示す。【0033】【表1】【0034】原料の1%ガラクトキシログルカン水溶液の粘度は、温度が上昇するにつれ低下するのに対し、本発明のゲル化剤の粘度は30℃を越える付近から逆に高くなり、遂にはゲル化した。このゲルは温度を下げると再びゾル化し、可逆的にゾル化/ゲル化する熱相転移性を示した。このゲル物性を利用して、新しいタイプのゲル化剤・増粘剤としての利用が可能である。【0035】実施例3:−実施例1と同様にして、基質として2%ガラクトキシログルカン水溶液を用い、酵素濃度1.7 ×10-5%, pH 5.2 (0.25%クエン酸水溶液でpH調整), 50 ℃で15時間反応させ、2%ガラクトキシログルカンゲル(除去率63%)を製造した。【0036】実施例4 側鎖ガラクトースの除去率とゾル/ゲル転移温度:−2%ガラクトキシログルカン水溶液の20mM酢酸緩衝液(pH 5.0)に、参考例1で得た精製β−ガラクトシダーゼを加え、酵素濃度3.3 ×10-5%, 50 ℃で0 〜20時間反応させた後、100 ℃,20分間加熱し反応を停止させた。各反応時間で製造される2%ガラクトキシログルカンゲルについてゾル/ゲル転移温度(または転移点)を測定した。また、遊離のガラクトースの量をHPLCで測定し、側鎖ガラクトースの除去率(%)を算出した。結果を表2および図2に示す。【0037】【表2】【0038】ガラクトースが約30%除去されるところまでは、反応が進むにつれて粘度が徐々に低下するが、30%を越える付近から白濁しはじめ、急激に増粘し、遂にはゲル化する(加温50℃)。除去率が35〜67% のゲルは、低温側と高温側にゾル/ゲル転移温度が観測され、低温側の転移温度以下および高温側の転移温度以上ではゾル、両転移温度の間ではゲルであった。この転移温度は、側鎖ガラクトースの除去率によって変化し、除去率が大きくなるにつれて、低温側では低下し、高温側では高くなった。また、ゲルの強度は 0℃〜60℃の温度範囲では高温側の方が大きかった。【0039】実施例5 ゲル化剤のゲル物性:−実施例3で調製した2%ガラクトキシログルカンゲル(除去率63%)の物性(破断応力と破断変形)をレオメーター〔レオナーRE-3305(山電(株)製)〕で測定し、他のゲル化剤(寒天,ゼラチンおよびκ−カラギーナン)と比較した。また、他のゲル特性(ゲル化点,ゲル化性,融点および離水性)と物性の変化(耐熱性)についても対比した。結果を表3および図3に示す。【0040】表中、ゲル化剤の表記、例えば寒天(0.8%)は0.8%寒天水溶液から調製した寒天ゲルを意味する。試料は厚さ20mmを使用した。また、耐熱性はゲル化剤を100 ℃で加熱した時、溶けない(◎)、少し溶ける(△)、溶ける(×)の3段階で評価した。【0041】本発明のゲル化剤は1℃以上でゲル化し、そのゲルは弾力があって脆い。該ゲルは図3に示されるように、レオメーターによる破断応力と破断変形のパターンから2つの破断点を有し、他のゲル化剤のそれとは異なったパターンおよび温度挙動を示す。また、本発明のゲル化剤は他のゲル化剤に比べ耐熱性が優れている。したがって、本発明のゲル化剤はそのゲル物性の違いから、新規な食感(例えば、滑らかで口当たりが良く、また、弾力性に富む)、利用が期待される。【0042】【表3】【0043】実施例6 キサンタンガムによる離水抑制効果:−1%ガラクトキシログルカン水溶液の20mM酢酸緩衝液(pH 5.0)と0 〜0.5%キサンタンガム水溶液の混合液に精製β−ガラクトシダーゼを加え、50℃で反応させた後、100 ℃で20分間加熱し反応を停止させた。得られた1%ガラクトキシログルカンゲル(除去率64% と67%)について、離水量の測定を行い、離水率(%) を算出した。図4に離水(%) と添加したキサンタンガム濃度(%) を示す。【0044】図4から明らかなように、本発明のゲルの離水は、キサンタンガム濃度が高くなるにつれ少なくなり、逆にゲルは柔らかくなる傾向を示す。キサンタンガムを0.5%添加すると離水はほとんどなくなった。このように、本発明のゲル化剤は離水の傾向があるが、必要であれば、キサンタンガムを添加することにより、その離水を抑制することができる。【0045】実施例7 ホットゼリーの応用:−表4に示す処方でゼリーを調製し、電子レンジで温めて食するホットゼリーとした。対照品のカラギーナンを用いたものでは、電子レンジで加温すると50℃以上の温度で融解しゲル化しないため、ホットゼリーとすることはできなかった。本発明のゲル化剤を用いると、電子レンジで加温して、温かいまま食するホットゼリーを製造することができる。【0046】【表4】【0047】実施例8 ゼラチン併用ゲル:−実施例1で調整した1%粉末ゲルの0.5 重量 %とゼラチン〔新田ゼラチン(株)製;ゴールド〕2 重量 %を併用した。両者を冷水に溶解した後、加熱攪拌してゲルを調製し、夏期を想定した温度(25℃〜40℃) のもとでの保存時の溶融性を調べた。その結果、ゼラチンのみでは25℃で完全に融解したのに対して、併用したものは融解がみられず、ゼラチンゲルの保存、流通の改善に有効であった。【0048】 実施例9 家庭用インスタントゲル(ミルクゼリー):− 市販β−ガラクトシダーゼ「ビオラクタ(登録商標)」〔大和化成(株)製;Bacillus circulans由来〕の0.5g、グリロイド(登録商標)6C〔大日本製薬(株)製、タマリンドガラクトキシログルカン〕の2g、砂糖20g を粉末混合し、この混合物を100gの牛乳に攪拌溶解し、55℃,7 時間加熱して、家庭用インスタントゲル(ミルクゼリー)を調製した。このゼリーは弾力のあるもち状のゼリーであり、電子レンジで温めてホットゼリーとして食することができるし、また、冷蔵庫で5℃付近まで冷却するとゾル状となり、異なった食感のものが得られた。【0049】実施例10 家庭用インスタントゲル(コーンポタージュゼリー):−表5に示す処方で粉末混合し、この混合物20g を180gの水に攪拌溶解し、55℃,9 時間加熱して、家庭用インスタントゲル(コーンポタージュゼリー)を調製した。このゼリーは弾力のあるもち状のゼリーであり、電子レンジで温めてホットゼリーとして食することができる。また、このゼリーは冷蔵庫で冷やすと滑らかなコールドタイプのスープとして食することもできる。【0050】【表5】【0051】実施例11 可食性フィルム:−実施例1で調製した1%粉末ゲル1gを冷水100gに攪拌溶解し、この溶液をシャーレに入れ、60℃,2時間乾燥させて可食性フィルムとすることができる。【0052】実施例12 麺状あるいは球状のゲル:−実施例1で調製した1%粉末ゲルを冷却してゾルとし、適当な大きさの孔径を有する注射器または絞り出し袋に充填して、温水中に射出または絞り出すことにより、麺状あるいは球状のゲルを製造することができる。また、同様に、ゾル化させたものを型にいれ、加温することにより成形することもできる。【0053】実施例13 化粧品(ミルクローション):−実施例1で調製した1%粉末ゲルを用いて、表6の処方でミルクローションを調製すると、保湿性、皮膜形成性の良好なローションが製造される。【0054】【表6】【0055】実施例14 芳香剤ゲル:−実施例1で調製した1%粉末ゲルを用いて、表7の処方で芳香剤ゲルを製造することができる。この芳香剤ゲルは夏時の高温下でも溶解せず、良好なものであった。【0056】【表7】【図面の簡単な説明】【図1】図1は1%ガラクトキシログルカン水溶液の酵素反応における反応時間,粘度および側鎖ガラクトースの除去率を示す。横軸は反応時間(時間)を表し、左縦軸は50℃における粘度(cps)を表し、右縦軸はガラクトースの除去率(%)を表す。記号−○−は粘度曲線を表し、記号−△−はガラクトース除去率の曲線を表す。【図2】図2は2%ガラクトキシログルカン水溶液を酵素反応して調製された2%ガラクトキシログルカンゲルの側鎖ガラクトースの除去率とゾル−ゲル相転移温度を示す。横軸はガラクトースの除去率(%)を表し、縦軸は転移温度(℃)を表す。記号−■−は低温側の転移温度曲線を表し、記号−□−は高温側の転移温度曲線を表す。【図3】図3は2%ガラクトキシログルカンゲル(除去率63%)と0.8%寒天,1%κ−カラギーナン,4%ゼラチンの各ゲルの、25℃におけるレオメーターによる破断パターンを示す。横軸は破断変形(mm)を表し、縦軸は破断応力(104 N/m2 )を表す。【図4】図4は1%ガラクトキシログルカンゲルのキサンタンガムによる離水抑制効果を示す。横軸は添加したキサンタンガム濃度(%)を表し、縦軸は離水率(%)を表す。記号−●−は側鎖ガラクトースの除去率が63%の場合を表し、記号−▲−はその除去率が67%の場合を表す。 ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを微生物由来の精製β−ガラクシダーゼを用いて部分分解して製造される可逆的熱ゲル化剤であって、側鎖ガラクトースの除去率が35%〜45%である可逆的熱ゲル化剤。 ガラクトキシログルカンがタマリンド種子ガムである請求項1記載の可逆的熱ゲル化剤。 請求項1または請求項2記載の可逆的熱ゲル化剤を含む食品。 請求項1または請求項2記載の可逆的熱ゲル化剤を含む化粧品。 請求項1または請求項2記載の可逆的熱ゲル化剤を含むトイレタリー製品。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る