生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_貯蔵安定性の改善されたヒドロキシイソ酪酸エステル
出願番号:1995107172
年次:2008
IPC分類:C07C 69/675


特許情報キャッシュ

大日向 孝広 高柳 恭之 JP 4116104 特許公報(B2) 20080425 1995107172 19950407 貯蔵安定性の改善されたヒドロキシイソ酪酸エステル 三菱レイヨン株式会社 000006035 大日向 孝広 高柳 恭之 20080709 C07C 69/675 20060101AFI20080619BHJP JPC07C69/675 C07C 69/675 特開平06−247896(JP,A) 特開平08−099934(JP,A) 特開昭63−275544(JP,A) 1 1996283201 19961029 7 20020322 木村 敏康 【0001】【産業上の利用分野】本発明は貯蔵安定性の改善されたヒドロキシイソ酪酸エステルに関するものであり、このヒドロキシイソ酪酸エステルは、金属部品、電子部品などの洗浄剤や塗料、接着剤などの溶剤などの幅広い用途に有用なものである。【0002】【従来の技術およびその問題点】ヒドロキシイソ酪酸エステルは洗浄剤、溶剤、合成原料として有用な化合物である。しかし、従来用いられているヒドロキシイソ酪酸エステルは長期間の貯蔵中に分解、変色するという現象が発生し、金属部品、電子部品などの精密洗浄用途や塗料、接着剤などの溶剤用途などに使用する場合の大きな問題点となっている。【0003】また、ヒドロキシイソ酪酸エステルを貯蔵するに際し、工業用に一般に用いられる炭素鋼、ブリキなどを材質とする容器中に貯蔵する場合、これらの金属をも腐食してしまう現象がみられる。このような金属材料の腐食を防止するために、例えば腐食防止剤の添加といった対策がとられているが、これでも完全に腐食を防ぐことは困難である。【0004】このような事から貯蔵中に分解、変色することのない貯蔵安定性の優れたヒドロキシイソ酪酸エステルの登場が工業的に強く要望されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を解決し、分解、変色することのない貯蔵安定性の優れたヒドロキシイソ酪酸エステルを提供することにある。【0006】【課題を解決するための手段】本発明者らは、ヒドロキシイソ酪酸エステルの貯蔵安定性について鋭意検討した結果、ヒドロキシイソ酪酸エステルの分解、変色は、ヒドロキシイソ酪酸エステルに含まれている不純物中の酸成分により引き起こされていることを見いだした。【0007】さらに、ヒドロキシイソ酪酸エステルの製造において使用される酸成分が製品ヒドロキシイソ酪酸エステル中に不純物として混入している場合には、酸成分が混入していない場合に比して、ヒドロキシイソ酪酸エステルの分解、変色が著しく促進されることが判明した。【0008】すなわち、ヒドロキシイソ酪酸エステルの貯蔵中の分解、変色といった貯蔵安定性の悪さの原因が、ヒドロキシイソ酪酸エステルに含まれる不純物中の酸成分によるものであること、そしてその酸成分の含有量を一定量以下にすることにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。【0009】本発明は、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル及びβ−ヒドロキシイソ酪酸メチルから選ばれたヒドロキシイソ酪酸エステルにおいて、当該ヒドロキシイソ酪酸エステル中の酸成分の含有量を0.3質量%以下、且つ0.005質量%以上に調整することを特徴とする貯蔵安定性の改善されたヒドロキシイソ酪酸エステルに関する。【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるヒドロキシイソ酪酸エステルとしては、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル、α−ヒドロキシイソ酪酸プロピル、α−ヒドロキシイソ酪酸ブチルなどのα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[1]に相当)、β−ヒドロキシイソ酪酸メチル、β−ヒドロキシイソ酪酸エチル、β−ヒドロキシイソ酪酸プロピル、β−ヒドロキシイソ酪酸ブチルなどのβ−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[2]に相当)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。【0011】ヒドロキシイソ酪酸エステルの製造法は従来から種々知られているが、硫酸、塩酸、強酸性イオン交換樹脂等の触媒存在下でのヒドロキシイソ酪酸のエステル化反応、シアンヒドリンのアルコリシス反応、ヒドロキシイソ酪酸アミドとギ酸エステルとの交換反応などによる製造法が一般的である。なお、本発明のヒドロキシイソ酪酸エステルは上記方法によって製造されたものに限定されるものではなく、いずれの方法によって得られたヒドロキシイソ酪酸エステルも本発明の対象となりうる。【0012】ヒドロキシイソ酪酸エステルを製造する場合、通常の製造方法では製品ヒドロキシイソ酪酸エステル中への若干の酸成分の混入は避けられない。例えば、酸触媒存在下でのヒドロキシイソ酪酸のエステル化反応やシアンヒドリンのアルコリシス反応の場合、必然的に反応液中にヒドロキシイソ酪酸や反応に用いた酸触媒などの酸成分が多量に残存してしまい、後に行う蒸留精製工程においてもヒドロキシイソ酪酸エステルと完全に分離することは困難であり、製品ヒドロキシイソ酪酸エステル中に酸成分が混入してしまう。また、シアンヒドリンの水和によるヒドロキシイソ酪酸アミドを経由する方法の場合、水和時の副反応により生じたヒドロキシイソ酪酸などが製品中に混入してしまう。【0013】ヒドロキシイソ酪酸エステル中に不純物として存在する酸成分としては、ヒドロキシイソ酪酸エステル製造時において使用される硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、安息香酸などの無機酸あるいは有機酸類、またはヒドロキシイソ酪酸エステル製造時の酸性副生物であるメタクリル酸、ヒドロキシイソ酪酸、アルコキシイソ酪酸などである。これら酸成分はヒドロキシイソ酪酸エステルの製造法によっても異なるが、通常の製法では1重量%程度の混入が避けられない。ヒドロキシイソ酪酸エステルの貯蔵中における分解、変色を防止するためには、ヒドロキシイソ酪酸エステルに含まれる酸成分を0.5重量%以下にすることが必要である。好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下にするのがよい。【0014】ヒドロキシイソ酪酸エステル中への酸成分を低減する方法としては、いろいろな方法により行うことができる。例えば、反応液中の酸成分を塩基にて中和した後に蒸留精製工程に供しヒドロキシイソ酪酸エステルを得る方法がある。いかなる方法にせよヒドロキシイソ酪酸エステル中の酸成分の含有量を0.5重量%以下に調整することが重要である。【0015】ヒドロキシイソ酪酸エステルの酸成分含有量はできるだけ少ないほうが好ましいが、実質的に0重量%とするには極めて過酷な操作条件を必要とし、必然的に大幅なコストアップとなり経済的ではない。そのため、ヒドロキシイソ酪酸エステル中の酸成分含有量の下限値としては0.001重量%程度でよい。【0016】【実施例】以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。【0017】実施例1、2および比較例1、2表1に示す酸成分を含有するα−ヒドロキシイソ酪酸メチル50kgを直径50cm、高さ80cmの炭素鋼製(SS-41) ドラム内に密封して、貯蔵温度を15〜30℃に保ち、直射日光に当たらないようにして1年間保存した。この間、3ヶ月ごとに内容物を取り出して、内容物の外観観察、純度分析、およびドラム材質の外観観察を行った。結果を表1に示す。【0018】【表1】【0019】実施例3、4および比較例3、4表2に示す酸成分を含有するα−ヒドロキシイソ酪酸エチル15kgを18リットル石油缶(ブリキ製)内に密封して、貯蔵温度を15〜30℃に保ち、直射日光に当たらないようにして6ヶ月間保存した。6ヶ月後内容物を取り出して、内容物の外観観察、純度分析、および石油缶材質の外観観察を行った。結果を表2に示す。【0020】【表2】【0021】実施例5、6および比較例5、6表3に示す酸成分を含有するβ−ヒドロキシイソ酪酸メチルを実施例1と同様に1年間貯蔵した後、その100g中に、はんだ (Sn-37Pb)付けを施したプリント配線基板(銅張積層板)を20℃で所定時間(10分間および1時間)浸漬した。浸漬後、2−プロパノールによる1分間のリンス洗浄、熱風乾燥を行った後、金属部分(はんだ、銅)を目視により観察した。結果を表3に示す。【0022】【表3】【0023】【発明の効果】従来用いられているヒドロキシイソ酪酸エステルは貯蔵中に分解、変色してしまうという問題を有していた。これに対して、本発明によるヒドロキシイソ酪酸エステルは、貯蔵中の分解、変色を著しく抑制することができ、かつ金属部品、電子部品などの精密洗浄用途や塗料、接着剤などの溶剤用途などへの使用が容易になった。 α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル及びβ−ヒドロキシイソ酪酸メチルから選ばれたヒドロキシイソ酪酸エステルにおいて、当該ヒドロキシイソ酪酸エステル中の酸成分の含有量を0.3質量%以下、且つ0.005質量%以上に調整することを特徴とする貯蔵安定性の改善されたヒドロキシイソ酪酸エステル。


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