タイトル: | 特許公報(B2)_透過率測定サンプル、その作製方法、 及び透過率測定方法 |
出願番号: | 1995070173 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,G01N1/36,G01N21/59 |
神保 宏樹 平岩 弘之 JP 3572425 特許公報(B2) 20040709 1995070173 19950328 透過率測定サンプル、その作製方法、 及び透過率測定方法 株式会社ニコン 000004112 神保 宏樹 平岩 弘之 20041006 7 G01N1/36 G01N21/59 JP G01N1/28 Z G01N21/59 Z 7 G01N 1/00 - 1/44 G01N 21/17 - 21/61 G01M 11/00 - 11/08 JICSTファイル(JOIS) 特開平7−63680(JP,A) 特開平5−129262(JP,A) 特公平4−45103(JP,B2) 特許第3360097(JP,B2) 特開平8−75649(JP,A) 特開平5−214132(JP,A) 特開平6−275587(JP,A) 特開昭63−100042(JP,A) 4 1996271393 19961018 16 20020328 遠藤 孝徳 【0001】【産業上の利用分野】本発明は光学素材、例えば多成分光学ガラス、合成石英ガラス、結晶材料等の透過率、例えば内部透過率(反射損失を含まない分光透過率)の高精度な測定に用いるサンプル及びその作製方法、測定方法に関するものである。特に、g線(436nm)、i線(365nm)リソグラフィーに代表される可視・紫外線光学系に使用される多成分光学ガラスや、KrF(248nm)、ArF(193nm)エキシマレ−ザリソグラフィーなどの300nm以下の紫外線光学系に使用される合成石英ガラス、結晶材料の透過率測定サンプルに関するものである。【0002】【従来の技術】従来、シリコン等のウエハ上に集積回路の微細パターンを露光・転写する光リソグラフィー技術においては、ステッパと呼ばれる露光装置が用いられる。このステッパの光源は、近年のLSIの高集積化に伴ってg線からi線へと短波長化が進められている。このようなステッパの照明系あるいは投影レンズに用いられる光学ガラスの内部透過率は、99.8%/cmあるいは99.9%/cm以上(内部吸収0.2%/cm、あるいは、0.1%/cm以下)が要求される。そして、さらなるLSIの高集積化に伴い、ステッパの光源はKrFやArFエキシマレーザーへと移行している。このようなエキシマレーザーステッパの照明系あるいは投影レンズには、もはや一般光学ガラスは使用できず、石英ガラスや蛍石などの素材に限定される。このようなエキシマレーザーステッパの照明系あるいは投影レンズに用いられる石英ガラス、蛍石においても、その内部透過率は99.8%/cmあるいは99.9%/cm以上が要求される。したがって、紫外光領域での上記光学素材の高透過率化を目指した開発が進められている。一方で、短波長化が進むにつれて、光学素材の内部透過率を高精度で測定することが技術的に非常に難しくなっている。したがって、光学素材の高透過率を達成するためには、まず第一に、このような微弱な吸収しか存在しない光学ガラスや合成石英ガラスや結晶材料等の内部透過率(内部吸収0.1%/cm程度)を精度良く測定し、評価可能な技術が不可欠である。【0003】【発明が解決しようとする課題】内部透過率の測定方法としては日本光学硝子工業会規格JOGIS−17−82に光学ガラスの内部透過率の測定方法が規定されている。その他の光学素材である石英ガラスあるいは結晶材料についても、内部透過率の測定方法はこれに準ずるものである。この規定の中で、透過率測定サンプルの作製については、厚さ3mmと10mmの1対とし、両者共平行に対面を研磨すること、内部透過率の表示については、10mm厚のガラスに対する値で表示すること、また、小数点以下第3位を四捨五入しているため、測定精度は内部吸収1%/cmに過ぎず、特に内部透過率の測定誤差の問題が顕著になるi線、エキシマレーザー等の短波長域は対象とされていなかった。【0004】光学素材の透過率の測定方法において、内部吸収0.1%/cmを有意差として測定するためには、主に、以下に示す事項が検討される。▲1▼基本性能の高い分光光度計を用いて分光透過率(反射損失込みの透過率)を測定する。▲2▼市販の分光光度計において、測定光路内にサンプルを挿入することで生じる光路ずれに起因する透過率ずれを補正する。▲3▼高精度な、すなわち測定誤差の少ないサンプルを作製する。【0005】▲1▼、▲2▼に関しては、装置の開発により、193nm、248nmにおける測定ゆらぎを3σで±0.01%を達成した。また、平行光線である事で、屈折による光路のズレにより生じる、検出器として使用される光電子増倍管の光電面の感度むらの影響が、実質上無い装置を作製した。【0006】しかしながら、▲3▼に関しては、従来、透過率測定サンプルの規格が存在せず、サンプルの精度を規定する項目及び程度が定量化されていなかった。したがって、透過率測定サンプルの規格を実現する作製方法も示されていなかった。【0007】【課題を解決するための手段】本発明者らは、光学素材の透過率の測定方法において、透過率測定サンプルの規格及び作製方法に起因する測定誤差を鋭意研究した。そして、サンプルに起因する測定誤差要素を検討した結果、サンプルの研磨面の平行度、面精度、表面粗さが問題となることが解った。【0008】一般にサンプルの作製は評価する光学素材の一部を分光光度計のサンプル室に入るような形状に切り出し、厚さ方向の向かい合う二面を市販の研磨剤で光学研磨することにより行われる。ここで、平行度とは、光学研磨面の向かい合う二面のうちの一面を基準とし、その基準面に対する傾き(角度)である。また、面精度とは研磨面の平面原器からのずれ量であり、表面粗さとは各光学研磨面の凹凸の高さである。【0009】本発明者らは、先に、平行度30秒以下、面精度を平行度と同程度以下、表面粗さrms=10Å以下のサンプルを用いることにより、光学素材の内部透過率を±0.1%以下の誤差で高精度に測定することが可能となることを提案した。さらに、透過率測定サンプルを作製する際に使用した切削、研磨剤等の残留不純物や加工により発生した残留応力に起因する構造欠陥が光学素材の分光透過率の低下原因であることを見い出し、光学素材のサンプルの作製において、サンプルを表面粗さrms=10Å程度に前研磨した後、SiO2研磨剤でrms=10Å以下にする、あるは酸またはアルカリ処理することを特徴とする透過率測定サンプルの作製方法を提案した。【0010】しかしながら、例えば短波長の紫外域または真空紫外域の光学素材の透過率測定においては、さらに高精度の測定が望まれる。そこで、透過率測定サンプルの表面の状態が測定精度に大きく影響することについて、さらに研究を進めた。サンプル表面の状態は、上述した要素のうち、特に表面粗さ、研磨剤等の残留不純物、そして加工により発生する残留応力に起因する構造欠陥の3つに支配される。そこで、サンプルの表面損失を0.1%以下とすることにより、さらに高精度の測定が可能となった。【0011】さらに、測定前に、紫外線洗浄を行う事により、サンプル表面の測定結果に及ぼす影響を抑えることが可能となった。【0012】【作用】サンプルの平行度と透過率に影響を及ぼす測定光の光路ずれについては、以下の式が成り立つ。【0013】【数1】【0014】これにより透過率の相対比較を行う場合はサンプルの平行度を規定する必要があることが解る。また、測定光に対するサンプルの傾斜方向が測定光の検出器上での変位方向を決めるため、好ましくは測定時にサンプルの傾斜方向を揃える必要がある。しかしながら、実験結果から平行度を30秒以下とすれば測定誤差が無視できることが解った。【0015】面精度の測定は縞走査型干渉計を使用して行った。なお、上記で規定したサンプルの平行度(30秒)と同等の高低差を与える面精度は次式から求めることができる。【0016】【数2】【0017】ここで、λは測定光の波長であり、通常546nm、2は面の数、Lはサンプルの直径、対角線等のサンプルの研磨された面の最大の長さ(cm)を意味する。したがって、面精度=1.33Lλ以下が必要となる。透過率測定サンプルの面精度の実測値を上記式により導かれた面精度以内にすれば、測定精度上問題がないことが解った。上式よりdを求めると、d=1.33Lとなる。【0018】表面粗さについては、特に光学素材の分光透過率が屈折率から算出される理論透過率よりも低く測定されることに着目し、サンプル規格の検証実験を行った。その一例を紹介する。まず、理論透過率について説明する。多重反射を考慮した分光透過率Tは以下の(1)、(2)式で定義される。【0019】【数3】【0020】Rは測定光が光学素材表面に対して垂直に入射したときの反射率である。【0021】【数4】【0022】理論透過率T0は(1)式において光量の低下が反射損失のみの場合、すなわち、内部吸収係数aが0の場合の分光透過率の計算値あるいは、サンプル厚みが無限に小さい場合の分光透過率の計算値である。一般に、分光透過率が理論透過率より低く測定される、すなわち測定光量の表面損失の一因として、サンプルの表面粗さに起因する散乱損失が考えられている。【0023】そこで、図1及び図2に測定波長248nm及び193nmでのサンプルの表面粗さと散乱損失を除外した理論透過率の関係を示す。表面粗さに起因する、表面の散乱損失を除外した理論透過率T(散)は以下の近似式を用いて算出される。【0024】【数5】【0025】また、図中に示す種々の表面粗さに対する分光透過率は、透過率測定サンプルに同一条件で製造された合成石英ガラスを用い、表面粗さ以外の規格は平行度30秒、面精度3λ、厚さt=10±0.05mmとした。尚、表面粗さは光学干渉方式の表面粗さ計を用いて測定し、以下の式で求められる。【0026】【数6】【0027】図1及び図2から解る様に、表面散乱損失を含めた理論透過率を計算すると、サンプルの表面粗さの増加に伴い、測定波長の理論透過率、すなわち248nmでは92.12%/cm、193nmでは90.87%/cmからずれる傾向がある。ここで、図1,2中の波線は表面散乱損失のない場合の理論透過率を示し、実線は、表面粗さに依存した表面散乱を含めた理論透過率を、●ドットは実測定値を示す。【0028】そこで、理論上、測定精度を確保するためには表面粗さrms=10Å以下の透過率測定サンプルの規格が必要となることが解る。以上のことから、本発明は光学素材の透過率の測定方法において、透過率測定サンプルに規格を設け、その規格を平行度30秒以下、面精度を平行度と同程度以下、表面粗さrms=10Å以下とし、内部吸収係数0.1%/cmを有意差として安定に測定することを可能とする。【0029】一方、図1及び図2から解る様に、種々の表面粗さに対する分光透過率の実測定値(●ドット)は、大きなばらつきがあるが表面散乱損失を除外した理論透過率と同様な傾向を示す。しかしながら、分光透過率は表面粗さのみによらず、表面散乱損失を除外した理論透過率より少なくとも0.1%以上低く測定されることが解る。また、この現象は特に、波長の短い193nmで顕著である。【0030】また、本発明者らは、分光透過率の低下原因である表面損失が、散乱損失だけでは説明できないことから、サンプル表面の各種測定を行った。サンプル表面の残留不純物の分析は通常の表面分析方法、例えばESCA、蛍光X線分析装置では、感度の点で問題があり、不純物の定量は不可能であった。そこで、全反射蛍光X線分析装置により分析を行った。結果を以下に示す。a)分光透過率が特に低く測定されたサンプル表面に多量のCe不純物が検出された。b)全反射蛍光X線分析法によりCe不純物が検出されない、サンプルでも193nmでの分光透過率が低く測定されることがあった。【0031】これは、サンプルを作製する際に使用される研磨剤の主成分であるCeO2がサンプル表面の微小クラック部に残留しているためと考えられる。サンプル表面に残留する不純物としては、光学素材の研磨剤の主成分CeO2、Al2O3、ZrO2及びダイヤモンド砥粒等の他にも研磨剤に含まれている様々な成分が考えられる。これらの成分がサンプル表面に微量の不純物として残留する場合においても同様な表面損失を引き起こすと考えられる。【0032】金属不純物の影響はとしては、高純度SiO2微粒子を使用した、仕上げ研磨によって、除去可能である。また、さらに短波長域では、検出限界以下の有機系の残留物やCe以外の不純物等の影響あるいは残留応力に起因する構造欠陥の影響が大きくなり、b)の結果が得られる事が実験、分析などによりわかってきた。【0033】残留応力については、酸もしくはアルカリ洗浄法により除去可能である。これらの事実から、透過率測定に影響を与える因子として、サンプルの表面散乱以外の原因としては、サンプル表面の吸収による損失の影響が大きいことが判明した。そこで、本発明者らは光学素材の透過率の測定方法において、内部吸収係数0.1%/cmを有意差として精度良く測定することを可能とする、透過率測定サンプルの作製方法を検討した。その結果、紫外線照射による紫外線洗浄を行うことが有効であることを様々な実験により見い出した。【0034】これは、サンプルに紫外線を照射する事で、表面の有機物を分解し発生したオゾンO3で同時に酸化除去する事で、表面の洗浄する方法である。紫外線洗浄に至った、経緯を以下に記す。クリ−ンル−ムや清浄度を保ったまま真空封入後N2パージした容器内にサンプルを保管しても、比較的早く透過率測定値が変化し測定に誤差を生じること、及びクリ−ンル−ム内のSi基板の表面汚染現象にヒントを得、放出ガス分析、ESCA、接触角測定等様々な実験を行ったところ、以下の事がわかった。▲1▼湿式精密洗浄後、時間の経過と共に透過率が減少する。▲2▼湿式精密洗浄後、時間の経過と共に表面に炭化水素系の不純物が増加する。【0035】これらより、透過率低下の原因は、表面に付着した数原子層の炭化水素系不純物による表面損失であると推定される。これらの対策として、測定直前に、紫外線洗浄を行うことを試してみた。実験にて確認した結果、紫外線洗浄法は、処理が簡便であり、短時間で極めて効果が高い事が確認できた。この事からも、表面損失の主因として、表層の炭化水素化合物の存在が確認できる。【0036】次に、紫外線洗浄による効果の実験結果を詳しく記述する。紫外線洗浄の原理は、低圧Hgランプ等を用いた紫外線照射による炭水化物などの有機化合物の分解作用と、照射の際、空気中のO2が、O2→O+O、O+O2→O3の反応を経て生成される活性酸素O*の強力な酸化作用により有機化合物がガス状態の物質、例えばH2O、CO2、N2等に変化し、非照射表面より除去され、非常に清浄な表面が得られる事にある。【0037】ただし、紫外線処理で除去でき得る、汚染物は表層数原子層である事が望ましい。これは、汚染物による膜厚が厚いと、処理時間が長くなる事がある。この為他の洗浄法、例えば、酸及びアルカリ洗浄、もしくは、水系、有機系を組み合わせたいわゆる精密洗浄法などと組み合わせる事が望ましい。この効果は、波長がより短い、193nmで顕著であるので、193nm透過率測定について、調査した。【0038】まず、紫外線処理時間と193nmの反射損失込み透過率の関係を調査した。図3に示す様に、処理開始と共に透過率測定値が上昇し、屈折率から計算した理論透過率値90.87%に漸近する。理論値からのズレは、内部散乱による損失である。内部散乱測定値から算出した内部散乱損失係数0.15%/cmを考慮すると内部吸収は0.05%/cm以下と見積もる事が出来る。【0039】また、紫外線処理時間と接触角の関係を図4に、接触角と表面損失の関係を図5に示す。ここで、接触角とは、水を使用した液適法により測定した値である。清浄な表面は、高い表面エネルギ−を持ち、汚染された表面は低い表面エネルギ−を持つため、等量の液滴を滴下すると、清浄な面では大きく広がり接触角は小さく、汚染された面では、滴をはじくため、大きな接触角となる。【0040】つまり、接触角が大きいサンプルの表面には、汚染物である有機物が表面に付着しており、紫外線処理により、有機物が除去され、表面損失が減少する。このため、透過率の測定が正確に出来ると思われる。図4より読みとると、表面損失を0.1%にする為には、接触角を10゜以下にする事により達成できることが確認できた。【0041】光源としては、Hgランプ等の紫外域で高出力のランプ、エキシマランプ、ArFエキシマレ−ザ−の様な紫外域パルスレーザ、Arイオンレーザの第2次高調波またはNd:YAG第3次高調波の様な紫外域CWレーザ等が使用できる事を低圧Hgランプ同様の実験にて確認した。特に、Hgランプを用いた場合は、サンプル自体がダメージを受けてサンプルの物性変化(例えば透過率低下、クラックの発生、表面形状の変化等)を防ぐことができるので、好ましい。【0042】紫外線処理の際の、雰囲気O2濃度依存性を確認したところ、5%以上のO2濃度では処理による効果及び処理時間による洗浄効果はほとんど変わらなかった。しかし、5%以下では、処理効果がやや劣り、同じ効果を得るための処理時間が長くなった。このため、紫外線処理時の雰囲気O2濃度は望ましくは5%以上が必要である。【0043】この効果は、多成分の光学ガラス、及びCaF2等の光学単結晶等の透過率精密測定にも、適用できる。以下、実施例により、本発明を詳しく説明する。【0044】【実施例】光学素材である高純度石英ガラスインゴットは、原料として高純度の四塩化ケイ素を用い、石英ガラス製バーナーにて酸素ガス及び水素ガスを混合・燃焼させ、中心部から原料ガスをキャリアガス(通常酸素ガス)で希釈して噴出させ、ターゲット上に堆積、溶融して合成した。これにより、直径180mm、長さ550mmの石英ガラスインゴットを得た。【0045】さらに、得られた石英ガラスインゴット及び蛍石単結晶について、含有金属不純物(Ti,Cr,Fe,Ni,Cu,Zn,Co,Mn)の定量分析を誘導結合プラズマ発光分光法によって行ったところ、濃度がそれぞれ20ppb以下であり、本石英ガラス及び蛍石は高純度であることがわかった。また、この石英ガラスの内部散乱損失係数は、積分球を使用した実測値から0.15%/cmである事を算出した。ここで、内部散乱の原因は、石英ガラスの本質的な物性に起因する、レ−リ−散乱・ブリリアン散乱等が主因である。【0046】透過率測定器は、平行ビ−ムを用いたダブルビ−ム超精密分光光度計を作製し、使用した。ここで、193nm透過率に関して、平行光でない市販の分光光度計で得たデ−タと、本実施例で作製した超精密分光光度計で得たデ−タの比較を図6に示す。【0047】サンプルは全く同一のものを測定し、表面損失は本特許のサンプル作製法を用いたため、事実上無視し得る量である。実線は、内部散乱損失係数0.15%/cmの内部散乱損失分を含んだ、理論透過率である。●ドットは本特許の超精密分光光度計、■ドットは市販の分光光度計で、透過率のサンプル厚さ依存性を測定した実デ−タである。●ドットの回帰直線は、切片が理論値と一致している事、直線からのズレが小さいのに対して、■ドットはサンプル厚さのによる光路のズレによる、光電子倍増管の光電面の感度むらの影響により、直線性がみられない。本実施例の超精密分光光度計は、平行光を用いているため、精度が非常に良い事が確認された。図6中の●ドットの回帰式と理論値実線のズレは内部吸収によると思われる。この様に、本発明の透過率測定法を用いれば、内部吸収は、透過損失−内部散乱損失により、高精度で算出する事が可能である。【0048】以下実施例のデ−タは全て、本発明により作製した平行ビ−ムを用いたダブルビ−ム超精密分光光度計を使用した。また、使用した石英ガラスサンプルの内部散乱損失係数は、全て0.15%/cm±0.03である。[実施例1]透過率サンプルの紫外線洗浄効果を確認した結果を、図7に示す。【0049】■ドットは、SiO2で仕上げ研磨し、平行度30秒以下、面精度を平行度と同程度以下、表面粗さrms=10Å以下とした精密研磨後、精密洗浄を行ったサンプルの測定値である。また、●ドットは、さらに透過率測定前に紫外線洗浄を10分間行ったサンプルのデータである。【0050】それぞれ、波線、一点鎖線は、回帰直線であり、決定係数R=0.99、標準誤差=0.01であった。実線は、内部散乱損失係数を0.15%/cmの内部散乱損失分を含んだ理論透過率(反射・内部散乱損失込み透過率)を示す。紫外線処理無しのデータの直線性は、本特許による測定装置の精度が高いため良いが、切片が理論値より0.12%低い。これは、傾きが●ドットの回帰直線と同一である事からも、有機系汚染物による表面損失であると判断される。【0051】それに対して、紫外線洗浄した、●ドットの測定値は、切片が理論値と一致した。この様に切片のずれは表面損失を示し、それに対し内部散乱損失を含んだ、理論透過率、測定値の回帰直線など厚さ依存性を示す成分が、内部透過損失である。[実施例2]透過率サンプルの作製法と透過率測定装置を使用した測定例を図8を示す。【0052】測定に使用した、サンプルはやや吸収が通常より若干大きい事が予測されるものを用いた。透過率測定サンプルは、SiO2で仕上げ研磨し、平行度30秒以下、面精度を平行度と同程度以下、表面粗さrms=10Å以下とした精密研磨後、精密洗浄を行い、さらに透過率測定前に紫外線洗浄を10分間行ったサンプルの透過率測定データである。【0053】実線は、内部散乱損失係数0.15%/cmの内部散乱損失分を含んだ理論透過率(反射・内部散乱損失込み透過率)を示す。破線は、回帰直線であり、決定係数R=0.99、標準誤差=0.01であった。非常に直線性が高い事及び切片が実線と一致、つまり理論値と一致している事がわかる。回帰直線の傾きから、透過損失係数0.19%/cmを算出した。透過損失係数−内部散乱損失係数=吸収係数であるから、0.19−0.15=0.04%/cmを求めた。[実施例3]透過率サンプルの作製法と透過率測定装置を使用した測定例を図9を示す。【0054】測定に使用した、サンプルはやや吸収が平均的である事が予測されるものを用いた。透過率測定サンプルは、SiO2で仕上げ研磨し、平行度30秒以下、面精度を平行度と同程度以下、表面粗さrms=10Å以下とした精密研磨後、精密洗浄を行い、さらに透過率測定前に紫外線洗浄を10分間行ったサンプルの透過率測定データである。【0055】実線は、内部散乱損失係数0.15%/cmの内部散乱損失分を含んだ理論透過率(反射・内部散乱損失込み透過率)を示す。波線は、回帰直線であり、決定係数R=0.99、標準誤差=0.01であった。非常に直線性が高い事及び切片が実線と一致、つまり理論値と一致している事がわかる。回帰直線の傾きから、透過損失係数0.17%/cmを算出した。透過損失係数ー内部散乱損失係数=吸収係数であるから、0.17−0.15=0.02%/cmを求めた。【0056】【発明の効果】本発明によるサンプルの規格及びサンプルの作製方法により、光学素材の内部透過率を±0.1%/cm以下の誤差で高精度に測定することが可能となった。本発明は、短波長域の紫外域及び真空紫外域の透過率測定において特に有効である。【0057】また、短波長域の微少な吸収が問題となる光学部品にも利用可能である。【図面の簡単な説明】【図1】サンプルの表面粗さと種々の透過率(248nm)の関係をプロットしたグラフである。【図2】サンプルの表面粗さと種々の透過率(193nm)の関係をプロットしたグラフである。【図3】サンプル紫外線処理時間と分光透過率(193nm)の関係をプロットしたグラフである。【図4】サンプル紫外線処理時間とサンプル表面接触角の関係をプロットしたグラフである。【図5】サンプル表面接触角と表面損失(193nm)の関係をプロットしたグラフである。【図6】本発明による超精密透過率測定装置の透過率測定におけるサンプル厚さ依存性を示したグラフである。【図7】本発明による実施例1、合成石英ガラスの193nm分光透過率測定結果をプロットしたグラフである。【図8】本発明による実施例2、合成石英ガラスの193nm分光透過率測定結果をプロットしたグラフである。【図9】本発明による実施例3、合成石英ガラスの193nm分光透過率測定結果をプロットしたグラフである。 向かい合う二面が研磨された光学素材の透過率測定サンプルにおいて、各研磨面の測定波長の表面損失が0.1%以下であることを特徴とする透過率測定サンプル。 向かい合う二面が研磨され、該研磨面の測定波長の表面損失が0.1%以下である光学素材の透過率を、分光光度計により測定することを特徴とする透過率の測定方法。 請求項2に記載の透過率の測定方法において、前記分光光度計が平行ビームを用いたものであることを特徴とする透過率の測定方法。 向かい合う二面が研磨され、且つ研磨面を紫外線洗浄し、該研磨面の測定波長の表面損失が0.1%以下である光学素材の透過率を、平行ビームを用いた分光光度計により測定することを特徴とする透過率の測定方法。