生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ビスマス錯体およびそれを含有する抗菌剤
出願番号:1995032441
年次:2006
IPC分類:A61K 31/60,A61K 31/10,A61K 31/29,A61P 31/04


特許情報キャッシュ

安里 英治 横田 好子 出口 収平 JP 3813644 特許公報(B2) 20060609 1995032441 19950221 ビスマス錯体およびそれを含有する抗菌剤 安里 英治 594145334 アステラス製薬株式会社 000006677 濱井 康丞 100137464 安里 英治 横田 好子 出口 収平 JP 1994203777 19940829 20060823 A61K 31/60 20060101AFI20060803BHJP A61K 31/10 20060101ALI20060803BHJP A61K 31/29 20060101ALI20060803BHJP A61P 31/04 20060101ALI20060803BHJP JPA61K31/60A61K31/10A61K31/29A61P31/04 A61K 31/29 A61K 31/10 A61K 31/60 A61P 31/04 CAplus(STN) REGISTRY(STN) BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN) Al-DAHER et al,Journal of the Iraqi Chemical Society,1985年,10, 1,p.84-90 Praeckel UDO et al,Zeitschrift fuer Naturforschung, Teil B: Anorganische Chemie, Organishe Chemie,1981年,36B, 1,p.70-73 Von M. WIEBER et al,Z. anorg. allg. Chem.,1976年,423,p.47-52 3 1996119862 19960514 7 20011204 榎本 佳予子 【0001】【産業上の利用分野】この発明は、ビスマス錯体およびその塩並びにそれを有効成分として含有する抗菌剤に関するものであり、医療の分野で利用される。【0002】【従来の技術】ヘリコバクター(Helicobacter)属菌、殊にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori,以下「H.P.」ということもある)はヒトや動物の胃腸管障害の病原菌として知られ、胃炎や胃潰瘍の患者から高率で検出されるため、これらの疾患やさらには胃癌との因果関係が指摘されている。従来からビスマス化合物は胃腸カタルや潰瘍の薬として汎用されているが、その中で消化管潰瘍治療薬として用いられているビスマスとクエン酸との錯体であるコロイダルビスマスサブサイトレート(CBS)や、ビスマスとサリチル酸との錯体であるビスマスサブサリチレートに、H.P.に対する抗菌活性があることが知られている(Antimicrob. Agents Chemother. 1985,28,837)。他方、ビスマスと2−メルカプトエタノールとが1:2の割合で結合している錯体の塩[Bi(SCH2CH2OH)2]・ClO4 が、Polyhedron (Vol.3,No1,71〜73,1984)に記載されているが、その用途は記載されていない。【0003】【発明が解決しようとする課題】上記したビスマス錯体や、他の抗生物質、抗潰瘍剤などのH.P.に対する抗菌活性は十分とはいえず、ヘリコバクター属菌に対する抗菌剤はいまだ実用化されていない。【0004】【課題を解決するための手段】この発明の発明者らは、ヘリコバクター属菌に対する抗菌剤について鋭意検討した結果、H.P.はウレアーゼによってアルカリ性のアンモニアを生成し胃酸を中和して胃の中に存在しているという知見に着目し、従来より抗ヘリコバクターピロリ活性があることで知られるビスマスイオンと、H.P.の産生するウレアーゼの活性を阻害するメルカプト基(−SH基)を有する化合物を結合させた錯体およびその塩を合成し、それらが優れた抗ヘリコバクターピロリ活性を有することを見い出してこの発明を完成した。【0005】この発明のビスマスとチオサリチル酸との錯体およびその塩、並びにビスマスと2−メルカプトエタノールとの錯体およびその塩(但し、化学式Bi(SCH2CH2OH)2で示される錯体およびその塩を除く)は新規であり、次のようにして製造される。【0006】すなわち、ビスマス化合物(例えば硝酸ビスマス5水和物、硫酸ビスマス、塩化ビスマス、フッ化ビスマス、臭化ビスマス、沃化ビスマスなど)と、メルカプト基を有するチオサリチル酸(化1)または2−メルカプトエタノール(化2)とを反応させることによって製造される。【化1】【化2】好ましいビスマス化合物としては硝酸ビスマス5水和物が挙げられる。この反応は水、メタノール、エタノールなどの慣用の溶媒中で行うことができる。反応温度は特に限定されず、通常常温下または加温下で反応が行われる。反応溶媒の酸性度、塩基度により、チオサリチル酸や2−メルカプトエタノールにおけるプロトンの解離状態や、カウンターイオンの種類により、ビスマスとこれらのメルカプト基を有する化合物は1:2、1:3、2:3などの割合で結合して錯体を形成する。【0007】また、ある割合で結合した錯体またはその塩を上記の方法で製造した後、その錯体またはその塩とビスマス化合物またはメルカプト基を有する化合物を上記反応条件でさらに反応させて、異なった割合で結合した錯体およびその塩を製造することもできる。好ましいカウンターイオンとしては、カチオンとしてアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが、アニオンとしては硝酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、水酸化物イオン、ハロゲンイオンなどが挙げられる。これらのカウンターイオンは、原料のビスマス化合物、反応溶媒あるいは、液性調整のために反応溶媒に加える塩基などから遊離して、この発明の錯体と塩を形成する。従って、この発明の錯体の好ましい塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩などが挙げられる。また、この発明の錯体およびその塩は、上記の反応溶媒やビスマス化合物に含まれる結晶水などに起因する結晶溶媒(例えば結晶エタノールなど)および/または結晶水を配位せずに有する場合や、これらを配位する場合があり、これらも全てこの発明の範囲に含まれる。【0008】この発明の抗菌剤は、ビスマスとメルカプト基を有する化合物との錯体またはその塩を有効成分として含有するものである。ビスマスとメルカプト基を有する化合物との錯体は、ビスマス−チオラート結合(Bi−S−)しているものが好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、前記のチオサリチル酸や2−メルカプトエタノールの他に、例えば芳香環にメルカプト基を有する化合物(例えば、チオフェノールなど)、複素環にメルカプト基を有する化合物(例えば、4−メルカプトピリジン、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトイミダゾール、5−メルカプト−2−メチル−1,3,4−チアジアゾール、5−メルカプト−1−メチル−1H−テトラゾールなど)、メルカプト基を有するアルコール類(2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなど)などが挙げられる。従って、この発明の抗菌剤の有効成分は、ビスマスとこれらのメルカプト基を有する化合物との錯体およびその塩である。これらの錯体の中では、ビスマスとチオサリチル酸との錯体およびビスマスと2−メルカプトエタノールとの錯体が好ましく、さらに、その錯体の中でビスマスとチオサリチル酸またはビスマスと2−メルカプトエタノールの結合比がそれぞれ1:2、1:3または2:3のものが特に好ましい。錯体の塩としては、前記の塩が挙げられる。さらに、この抗菌剤に用いられるビスマスとメルカプト基を有する化合物との錯体およびその塩には、上記した錯体の他に公知の錯体、例えば、化学式Bi(SCH2CH2OH)2で示される錯体およびその塩(例えば過塩素酸塩、硝酸塩など)、さらには、結晶水や結晶溶媒(例えば結晶エタノールなど)を有するものも含まれる。【0009】この発明の抗菌剤は、ヒトを含む哺乳動物に、カプセル剤、マイクロカプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末、トローチ剤、丸剤、坐剤、注射剤、懸濁剤、シロップ剤等の慣用の医薬製剤の形で、経口または非経口投与することができるが、経口投与が好ましい。この発明の抗菌剤は、例えばスクロース、でん粉、マンニット、ソルビット、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、スクロース、でん粉等の結合剤、例えばでん粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルでん粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、例えばステアリン酸マグネシウム、エアロシル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤、例えばクエン酸、メントール、グリシン、オレンジ末等の矯味剤、例えば安息香酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定化剤、例えばメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁化剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の分散剤、例えば水等の希釈剤のような製剤化に慣用の有機または無機の各種担体を用いる常法によって製造することができる。抗菌剤中の有効成分の量は、所望の治療効果を生じるに足りる量であればよく、例えば経口または非経口単位投与に対し約1mgないし約500mgである。有効成分は通常、単位投与量0.25mg/個体〜500mg/個体を1日当り1〜4回投与することができる。しかしながら、上記の投与量は患者の年齢、体重、症状または投与法によって適宜増加してもよい。【0010】【発明の効果】この発明の新規錯体を含むビスマスとメルカプト基を有する化合物との錯体およびその塩は、優れた抗菌作用、特にヘリコバクター属菌、その中でもヘリコバクター・ピロリに対して優れた抗菌作用を示すので、それらを有効成分として含有する抗菌剤は、ヘリコバクターピロリに起因する疾患の予防または治療に有用である。以下に、試験例によりヘリコバクター・ピロリに対する抗菌作用を示す。【0011】試験例1試験化合物1.実施例1の錯体2.実施例3の錯体3.ビスマスサブサリチレート(対照)使用菌株ヒトの胃より分離されたヘリコバクター・ピロリの臨床分離株No.7004、7007試験方法MICの測定寒天平板法により測定した。すなわち、測定培地として5%馬血液加Brucella agar(BBL)を用い、各薬剤の2倍系列希釈プレートを作製した。接種菌量の調製は、5%馬血液加Brucella agarで37℃、10%炭酸ガス、72時間培養した菌をMacFahrand 2.0に懸濁したものをBrucella brothにより10倍希釈した菌液(106cfu /ml)を測定培地にスタンプ接種した。37℃、10%炭酸ガス、72時間培養後、菌の発育の有無を肉眼で判定し、菌の発育を阻害する最小濃度をMICとした。結果を表1に示す。【表1】【0012】実施例実施例1 (NH4)3[Bi(C7H4O2S)3](C2H5OH)(H2O)2の合成チオサリチル酸(0.95g,6.2mmol)を含むエタノール(80ml)に硝酸ビスマス5水和物(1.0g,2.1mmol)を加えると透明な黄色溶液となる。その反応液に濃アンモニア水(29%,5ml)を加えてしばらく放置後(10分)生じる黄色沈澱を濾過して再びエタノール40mlに懸濁させ、濃アンモニア水(2ml)を加えて透明な黄色溶液とする。反応液を一旦自然濾過し、ろ液を冷蔵庫(3℃)で数日放置すると黄色の六角柱状の結晶が析出してくる。結晶をメタノールとジエチルエーテルの混合液(1:1)で2〜3回洗浄し、次いでジエチルエーテルで洗浄し風乾して、標記化学式で示されるビスマスとチオサリチル酸との錯体を得る。(収量:0.45g)IR (KBr錠剤法) : 3628, 3053, 1532, 1397, 1052, 1028, 842, 804, 752, 711, 652, 477, 450 cm-1元素分析:C23H34N3O9S3Biとして計算値:C : 34.45; H : 4.27; N : 5.24; Bi : 26.07 %分析値:C : 34.72; H : 4.07; N : 5.28; Bi : 24.60 %【0013】実施例2 [Bi2(C7H4O2S)3]の合成チオサリチル酸(0.95g,6.2mmol)を含むメタノール(80ml)に硝酸ビスマス5水和物(1.0g,2.1mmol)を加えると透明な黄色溶液となる。その反応液に濃アンモニア水(29%,1ml)を加えて生じる黄色沈澱を濾過し、メタノール、ジエチルエーテルの順に洗浄した後、風乾する(沈澱の収量:0.41g)。この沈澱をN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(30ml)に溶かし室温で放置すると数日後にはオレンジ色立方体状の結晶が析出してくる。結晶をDMF、メタノールとジエチルエーテルの混合液(1:1)、次いでジエチルエーテルで洗浄し、一週間真空乾燥して、標記化学式で示されるビスマスとチオサリチル酸との錯体を得る。(収量:0.32g)IR (KBr錠剤法) : 3440, 3055, 1645, 1584, 1565, 1507, 1428, 1385,1277, 1251, 1143, 1104, 1055, 1036, 860, 806, 747,726, 650, 557, 467, 404 cm-1元素分析:C21H12O6S3Bi2として計算値:C : 28.84; H : 1.38; N : 0.00; Bi : 47.80 %分析値:C : 28.97; H : 1.56; N : 0.17; Bi : 46.76 %【0014】実施例3 [Bi(SCH2CH2OH)2](NO3)(H2O)1/2の合成蒸留水(10ml)に硝酸ビスマス5水和物(743mg,1.53mmol)と2−メルカプトエタノール(234mg,3.0mmol)を加え、完全に透明な黄色溶液となるまで撹拌を続ける。反応液を冷蔵庫内(3℃)で放置、冷却すると翌日には黄色針状結晶が析出してくる。数日冷却放置後、結晶を吸引濾過し、5mlの冷水で素早く洗浄し減圧乾燥して、標記化学式で示されるビスマスと2−メルカプトエタノールとの錯体を得る。(収量:274mg)IR (KBr錠剤法) : 3400, 2921, 2871, 1763, 1624, 1393, 1279, 1208,1156, 1052, 1002, 934, 825, 656, 485 cm-1元素分析:C4H11NO5.5S2Biとして計算値:C : 11.06; H : 2.55; N : 3.23; Bi : 48.12 %分析値:C : 11.14; H : 2.25; N : 3.23; Bi : 47.85 %【0015】実施例4 [Bi(SCH2CH2O)(SCH2CH2OH)]の合成エタノール(10ml)に硝酸ビスマス5水和物(230mg,0.47mmol)と2−メルカプトエタノール(112mg,1.43mmol)を加え、完全に透明な黄色溶液となるまで撹拌を続ける。反応液に29%アンモニア水(1ml)を加え、一旦自然濾過した後、室温で放置する。数日後、析出した黄色針状結晶を濾過しジエチルエーテルで洗浄後、風乾して、標記化学式で示されるビスマスと2−メルカプトエタノールとの錯体を得る。(収量:95mg)IR (KBr錠剤法) : 3734, 3392, 2947, 2908, 2854, 2817, 2695, 2603,1636, 1469, 1456, 1420, 1407, 1385, 1327, 1272,1206, 1173, 1070, 1047, 1010, 942, 833, 661, 523,502, 415 cm-1元素分析:C4H9O2S2Biとして計算値:C : 13.26; H : 2.50; N : 0.00; Bi : 57.69 %分析値:C : 13.45; H : 2.39; N : 0.00; Bi : 59.92 %【0016】実施例5 [Bi(SCH2CH2OH)3]の合成蒸留水(15ml)に実施例4で得られる錯体(266mg,0.38mmol)と2−メルカプトエタノール(268mg,3.43mmol)を加え撹拌を続ける。溶解しきれない沈澱物を濾過して除き、ろ液を冷蔵庫内(3℃)で冷却放置する。数日後、析出した黄色針状結晶を濾過し、冷水、メタノールとジエチルエーテルの混合物(2:1)、ジエチルエーテルの順に洗浄し風乾して、標記化学式で示されるビスマスと2−メルカプトエタノールとの錯体を得る。(収量:110mg)IR (KBr錠剤法) : 3307, 2913, 2871, 1742, 1469, 1400, 1279, 1212,1162, 1060, 995, 834, 734, 659, 526, 478 cm-1元素分析:C6H15O3S3Biとして計算値:C : 16.36; H : 3.43; N : 0.00; Bi : 47.46 %分析値:C : 15.89; H : 3.13; N : 0.09; Bi : 47.33 %【0017】実施例6実施例3の錯体、ラクトース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを充分混合した後造粒した。次いで、40℃で真空乾燥し、整粒した。この粒にステアリン酸マグネシウムを加えて打錠して、1錠あたり以下の成分含量を有する錠剤を得た。【数1】 ビスマスと、チオサリチル酸または2−メルカプトエタノールとの錯体もしくはその塩を有効成分として含有する抗菌剤。 ビスマスとチオサリチル酸とが1:2、1:3または2:3の割合で結合している錯体またはその塩を有効成分として含有する請求項1に記載の抗菌剤 ビスマスと2−メルカプトエタノールとが1:2、1:3または2:3の割合で結合している錯体またはその塩を有効成分として含有する請求項1に記載の抗菌剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る