生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_新規なアリールプロピオン酸誘導体、その製造方法及び鎮痛薬としてのその用途
出願番号:1994511697
年次:2006
IPC分類:C07C 59/84,A61K 31/19,C07C 51/41


特許情報キャッシュ

カルガニコ,ヘルマノ マウレオン,カセーリャス,ダビッド ガルシア・ペレス,エメ・ルイザ JP 3778516 特許公報(B2) 20060310 1994511697 19931109 新規なアリールプロピオン酸誘導体、その製造方法及び鎮痛薬としてのその用途 ラボラトリオス・メナリニ・ソシエダッド・アノニマ 津国 肇 渡辺 睦雄 篠田 文雄 カルガニコ,ヘルマノ マウレオン,カセーリャス,ダビッド ガルシア・ペレス,エメ・ルイザ ES P9202260 19921110 20060524 C07C 59/84 20060101AFI20060427BHJP A61K 31/19 20060101ALI20060427BHJP C07C 51/41 20060101ALI20060427BHJP JPC07C59/84A61K31/19A61K31/19C07C51/41 C07C59/84 特表平2−502288(JP,A) 特開平2−311463(JP,A) 8 EP1993003127 19931109 WO1994011332 19940526 1996503203 19960409 7 20001018 2004007926 20040419 脇村 善一 井上 彌一 天野 宏樹 技術分野本発明は、新規なアリールプロピオン塩酸、特に式(I)で示される、(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸のトロメタミン塩に関する。本発明はまた、この新規な化合物の治療的用途に関する。技術的背景ケトプロフェン(II)としても知られている、2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸は、有効な鎮痛及び解熱作用のある既知の非ステロイド系抗炎症薬である。ケトプロフェンがそれの(+)−(S)体及び(−)−(R)体鏡像異性体のラセミ混合物として市販されてきた一方で、それの鎮痛作用は、本質的にはS体鏡像異性体によることが観察された[Yamaguchi T.ら、Folia Pharmacol. Japon. 90, 295(1987)]。その上、ケトプロフェンの(+)−(S)体鏡像異性体は、投与量が等しい場合には、そのラセミ体より速い作用及びより有効な鎮痛作用を有すると主張されてきた[Sunshine A.ら、WO89/04658]。構造的に、他のアリールプロピオン酸類と同様にケトプロフェンは、水に対する乏しい溶解性の原因である親油性の芳香族基と、潰瘍発生毒性に関係すると言われてきた遊離カルボキシル基とを有する。これらの欠点は、その使用が制限される場合があることであり、その乏しい溶解性は経口または他の手段による投与を困難にさせる。このアリールプロピオン酸の欠点が、塩基性アミノ酸との塩化手段により、例えばイブプロフェン[Kwan K.Ch. EP424028]及びケトプロフェン[Metz G. EP 136470, BE 882889]の場合はリシンとの塩にすることにより、または金属塩という手段により、例えばケトプロフェンの場合はナトリウム若しくは亜鉛との塩[それぞれFujimura H.ら、Oyo Yakuri, 13, 709(1977)及びBuxade A. ES 2016503]にすることにより、実質的に克服される可能性があると報告されてきた。特に医薬が頻繁に投与される場合に、生体内でのその金属の過度の貯留が有害かもしれないので、それの金属塩、例えばナトリウム塩の治療的用途は制限されるかもしれない。ナトリウム塩の場合、その高い吸湿性は、時間に対して安定である錠剤や他の固体形状の形での経口投与を制限し得る。本発明の化合物は、ケトプロフェンの(+)−(S)体鏡像異性体の新規な塩であり、そのために文献中にいかなる言及もない。この塩は、水溶性の(+)−(S)−ケトプロフェン塩類の系列、例えばナトリウム塩、アルミニウム塩、L−リシン塩等の中から選択されてきた。驚くべきことに、化合物(I)は、他のいかなる(+)−(S)−ケトプロフェン塩よりも水に対するより高くより速い溶解性(>100%w/v)を有する。この2つの特性の組み合わせは、他のいかなる塩、例えば水に対する溶解性は高いが、それの溶解速度は非常に低いL−リシン塩よりも、この塩をより有利なものにさせる。このような特性は、この化合物を筋肉内若しくは静脈内に、または高い溶解性ゆえに非常に速い溶解速度を有する錠剤を投与することを可能にする。投与の容易さに加えて、この化合物は、ラセミ体のケトプロフェンよりも、より速い鎮痛作用の兆候、高められた鎮痛的応答及びより長い持続期間を示す。その新規な誘導体は、動物及びヒトの両方において、速くかつ完全な吸収を示す。(+)−(S)−ケトプロフェンのトロメタミン塩はまた、ラセミ体のケトプロフェンのトロメタミン塩よりも、より速い作用及び高められた鎮痛的応答を有する。例えば、通常の無痛覚動物モデルであるフェニルベンゾキノン苦悶試験において、化合物(I)は、ラセミ体のケトプロフェンの2回分の投与量と同じ鎮痛効果を有することが証明された(表I及びII)。ここで、後のものについては塩の場合は静脈内に、遊離酸の場合は経口投与される。結晶化による、アミノ酸、特に中性アミノ酸(L形)とのアリールプロピオン酸の塩類の精製は、困難であることが知られている[Bruzzese T.ら、US 427996]。(S)−ケトプロフェンのトロメタミンとの塩の場合、例えばL−リシン塩と比較して(0.3%w/v)、エタノールに対するその高い溶解性(10%w/v)は、エタノールと例えば酢酸エチルのような有機溶媒との混合物からの容易な結晶化を可能にし、これにより完全にその酸またはトロメタミンから分離した純粋な塩を得ることができる。上述したことのおかげで、(S)−ケトプロフェンのトロメタミン塩は、驚くべきことに、遊離酸としての及び今まで既知の塩の形でのケトプロフェンの、並びに遊離酸としての及び塩の形での(+)−(S)−ケトプロフェンの欠点を克服する。実際に、本発明の化合物は、有利な物理化学的特性を有し、例えば:室温における非常に高くかつ極端に速い水に対する溶解性、容易な製造及び精製、非常に低い吸水性、水溶液が生理学的に一致するpH、水溶液及び固体状態における高い安定性、長期間において熱(15〜75℃)または光分解せず、である。本発明の化合物の更なる利点は、他の誘導体と比較して、生理学的な特性を有し、例えば:より低い胃障害効果、より低い毒性及び高く速い吸収によるより高い生物学的利用能、である。驚くべきことに、(+)−(S)−ケトプロフェンのトロメタミン塩は、(+)−(S)−ケトプロフェン、(−)−(R)−ケトプロフェン及びラセミ体のケトプロフェンよりも、動物内でのより小さい胃障害性を示す。他方で、本発明の(+)−(S)−ケトプロフェンのトロメタミン塩のヒトに対する投与は、遊離酸の形態での(+)−(S)−ケトプロフェンの投与によるか又は遊離酸の形態でラセミ体のケトプロフェンの2回投与によって得られたものよりも、はるかに短い時間で活性(+)−(S)鏡像異性体のより高い血漿レベルを引き起こす。更にこの好都合な特性は、本発明の化合物に、より高くより速い鎮痛作用を供し、胃腸、高血圧又は心臓の問題を有する、ナトリウム投与に耐えられない患者に対するそれの使用を許容する。化合物(I)の特徴的な特性のすべては、鎮痛剤と同様の治療上の効能に帰着し、一方で遊離の又は塩の形でのラセミ体のケトプロフェンの場合に要求されるよりも低い投与量を可能にし、かつ対応するそれの遊離酸又はラセミ体のケトプロフェンよりも著しく低い胃障害性を示す。同様に、その物理化学的かつ薬物動力学的な特性が、上述の特許(Sunshine Aら、WO89/04658)で請求された遊離酸の形でのケトプロフェンの(+)−(S)鏡像異性体の用途と比較して、明確な治療上の利点をもつ化合物(I)にさせる。(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸は、現在の文献に記載された手順である、エナンチオ選択合成[Fadel A., Synlett. 1, 48(1992)]により、又はキラルアミン類での結晶化による若しくは酵素的な方法によるラセミ体のケトプロフェンの分離[Nohira H.ら、EP423467, Sih C.L.ら、EP227078及びCarganico G.ら、スペイン特許No.9201189, 9201190及び9201191]によって製造され得る。式(I)の製造方法は、(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸(III)と、トロメタミン H2NC(CH2OH)3とを等モル量で反応させることにより特徴づけられる。この反応は、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン若しくはアセトンのような溶媒中又はこれらの極性溶媒の混合物中で遂行され得る。好ましくは、水−メタノール又はエタノールが使用される。反応温度は、0℃〜溶媒還流温度の間の温度、好ましくは1〜24時間に15〜40℃の間で変動するかもしれない。化合物の精製は、有機溶媒の混合物、例えばエタノール−酢酸エチル又はエタノール−エチルエーテル中での結晶化により行われる。治療用途に関して、本化合物は、米国ニューヨーク州のMack出版株式会社のRemington's Pharmaceutical Science Handbookに記載されたような従来の技術及び賦形剤を用いて、適当な医薬形態に処方される。そのような形態の例は、錠、顆粒、溶液、シロップ、注射などを含み、1回の投与あたり1〜1000mgを含有する。以下の例は、製造及び本発明の化合物の医薬活性に関する試験の結果を示す。例1(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸のトロメタミン塩エタノール(15ml)中の、(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸(5.0g、19.7mmol)溶液を、水(8ml)中の、トロメタミン(2.4g、19.7mmol)溶液と共に加えた。この混合物を室温で1/2時間攪拌し、蒸発乾固させ、半固体状の残渣を得た。それをエタノールに再溶解させ、その後乾燥するまで蒸発させて緩い固体を得、それをエタノール−酢酸エチルから結晶化させ、融点104.8〜105.1℃をもつ白い結晶性固体として表記の化合物6.8g(92%)を得た。[α]D20=−5.2°(c=1.47、メタノール)IR(KBr):3060,1650,1570,1400,1360,1290,1020,720,650cm-1N.M.R. 1H(300 MHz, CD3OD)δ ppm: 1.45(d, 3H); 3.64(s, 6H); 3.66(q, 1H); 7.41-7.80(m, 9H)元素分析(C20H25NO6)計算値:C,63.99%; H,6.71%; N,3.73%実験値:C,63.60%; H,6.40%; N,3.73%例2鎮痛活性.フェニルベンゾキノン苦悶試験Siegmundら[Proc. Soc. Exp. Biol. and Med., 95, 729(1957)]による手順に基づくこの標準試験は、化合物(I)の鎮痛効果の評価を可能にする。この試験において、20〜25gのSwiss雄マウスを使用し、おのおのをランダムな6群に分けた。試験下での生産物を静脈側尾中に静脈内注射した。本生産物を、生理的血清中に投与されるべき用量に適合した濃度に溶解した形で、かつ10ml/kgの量で投与した。注射後すぐに、1:20のエタノール:水中の、1.03mMのフェニルベンゾキノン溶液を、10ml/kgの量で腹腔内投与した。試験の各組に対して、対照群には賦形剤血清のみを系統的に投与した。既述の試薬の導入から5分後、動物における苦悶は5分間にわたり観察されなかった。苦悶の欠乏は、成功的な結果を示す。鎮痛的防御の程度は、対照群と比較した、苦悶の数により測定され得る。以下の表1は、化合物(I)で観察された鎮痛効果、並びに比較としてラセミ体のケトプロフェンのトロメタミン塩及びそれの(−)−(R)鏡像異性体の鎮痛効果を示す。生理的血清に溶解させた化合物(I)を用いて、また比較として均一な懸濁液(生理的血清中の、カルボキシメチルセルロース:Tween混合物)中のケトプロフェンを用いて、いずれもフェニルベンゾキノン注射の30分前に食道カテーテルにより経口投与して得られた結果を、表2に示す。 式(I)で示される、2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸のトロメタミン塩類の(−)−(R)鏡像異性体を実質的に含まない(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸のトロメタミン塩。 化合物(I)の製造方法であって、(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸(III)と、トロメタミン H2NC(CH2OH)3とを等モル量で反応させる工程を含む方法。 その反応を極性溶媒又は極性溶媒の混合物中で行う、請求項2に記載の方法。 その反応を水とメタノールとの混合物又はエタノール中で行う、請求項3に記載の方法。 その反応を0℃〜溶媒還流温度の間の温度で、1〜24時間にわたり行う、請求項2記載の方法。 反応温度が15〜40℃である、請求項5記載の方法。 ヒトに迅速な、また高い鎮痛応答をもたらす医薬組成物であって、治療に効果的な量の、実質的にR鏡像異性体を含まない(+)−(S)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸のトロメタミン塩、及び非毒性の製薬上許容される基材を含有する医薬組成物。 ヒトの痛みや炎症の治療薬を製造するために、請求項1記載の式(I)の化合物を使用する方法。


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