タイトル: | 特許公報(B2)_エリスロポエチン依存性ヒト細胞株 |
出願番号: | 1994298813 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,C12N5/06,A61K38/00,A61P7/00,A61P7/06,G01N33/53 |
朝長 万左男 栗山 一孝 宮崎 泰司 樋口 正人 JP 3696274 特許公報(B2) 20050708 1994298813 19941108 エリスロポエチン依存性ヒト細胞株 中外製薬株式会社 000003311 社本 一夫 100089705 今井 庄亮 100071124 増井 忠弐 100076691 栗田 忠彦 100075236 小林 泰 100075270 江尻 ひろ子 100091638 朝長 万左男 栗山 一孝 宮崎 泰司 樋口 正人 JP 1994272823 19941012 20050914 7 C12N5/06 A61K38/00 A61P7/00 A61P7/06 G01N33/53 C12N5/06 C12R1:91 JP C12N5/00 E A61P7/00 A61P7/06 G01N33/53 K G01N33/53 V A61K37/02 C12N5/00 E C12R1:91 7 C12N 5/00 BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed JSTPlus(JOIS) J.Biol.Chem., Vol.266, No.4, pp.2009-2012 (1991) 3 FERM BP-4819 1996163982 19960625 10 20010522 田村 明照 【0001】【産業上の利用分野】本発明はエリスロポエチン依存性ヒト細胞株に関し、さらに詳しくはエリスロポエチンに特異的に依存して増殖するヒト細胞株、および該細胞株を用いるエリスロポエチン活性のスクリーニング法に関する。【0002】【従来の技術】エリスロポエチン(以下、Epoと略記することもある)は高等動物における赤血球の細胞増殖分化を制御する糖タンパク質である(例えば、Carnot et al., Compt. Rend. 143:384, 1986参照)。赤血球は骨髄中で赤芽球の成熟および分化により生産されるが、エリスロポエチンは未分化の前駆細胞に作用してその赤血球への分化を誘導するサイトカインである。そのような作用から、エリスロポエチンは貧血、特に腎性貧血の臨床治療薬として近年大いに使用されている。【0003】現在臨床分野で使用されているエリスロポエチンのほとんどは遺伝子組換え技術によって得られる各種組換え体である。また、最近ではこのような組換えタンパク質そのものではなく、もっと低分子でエリスロポエチン活性をもつ化合物で置き換えることが試みられている(Lutz B. Giebel, Orally Active Cytokines: Designing a Small Molecule Mimetic of Erythropoietin, IBC Conference: New Advances in Peptidemimetics & Small Molecule Design, March 23-25, 1994)。このような場合、可能性のある組換え体または低分子化合物を臨床分野での応用に供するためには、これらのエリスロポエチン活性を簡単かつ確実にスクリーニングすることが必要である。エリスロポエチンに特異的に依存して増殖する細胞であれば、このような目的に使用することができる。【0004】エリスロポエチンに依存して増殖するヒト細胞株の樹立が報告されている(Kitamura et al., J. Cell. Physiol. 140:323, 1989)。しかしながら、このTF−1と命名された細胞株はエリスロポエチンのみに特異的に依存するのではなく、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)やIL−3(インターロイキン−3)にも依存性である。【0005】また、エリスロポエチンの存在下に維持しうるヒト巨核芽球性白血病細胞株UT−7(Komatsu et al., Cancer Res. 51:341, 1991)もTF−1細胞と同様にGM−CSFやIL−3にも依存性である。一方、GM−CSFおよびIL−3依存性を消失したUT−7/Epo細胞の樹立が報告されている(Komatsu et al., Blood 82:456, 1993)。しかしながら、UT−7/Epo細胞のGM−CSFおよびIL−3依存性の消失が、GM−CSF、IL−3共通のシグナル伝達タンパク質である受容体β鎖の量的減少に起因しているものである以上(Komatsu et al., 前出)、親株であるUT−7細胞のSCF依存性(Auffray et al., Exp. Hematol. 22:417, 1994)を有している可能性は否定できない。【0006】また、近年、エリスロポエチン特異的なシグナル伝達機構の解明が精力的に行われ、それにかかわる多くの物質が同定されている。しかし、これらの研究は前述したTF−1細胞(Hanazono et al., Int. J. Hematol. 59:80, 1994)や、B細胞系であるBa/F3細胞にエリスロポエチン受容体を人為的に発現させた細胞(例えば、Showers et al., Blood 80:3070, 1992)を用いて行われており、これらの細胞はエリスロポエチンのみならず、GM−CSFやIL−3にも依存性を示す。このような様々なサイトカインに反応する細胞を用いた場合には、エリスロポエチンで刺激した場合であっても他のサイトカインのシグナル伝達経路を流用している可能性が否定できない。【0007】したがって、エリスロポエチン存在下に樹立され、継代を重ねてもエリスロポエチンのみに依存して増殖し、かつエリスロポエチンに特異的なシグナル伝達タンパク質/遺伝子の発見にも使用できるような細胞株は得られていなかった。【0008】【発明が解決すべき課題】このような状況の中で、生理的なエリスロポエチン標的細胞である赤芽球の性質を残し、かつエリスロポエチンのみに特異的に依存して増殖し、エリスロポエチン活性のスクリーニングに用いることができ、またエリスロポエチンに特異的なシグナル伝達タンパク質/遺伝子の発見にも使用できる細胞株の樹立が求められている。【0009】本発明の目的はエリスロポエチン活性のスクリーニングに使用できるエリスロポエチン依存性細胞株を提供することにある。【0010】本発明はさらに、該細胞株を用いてエリスロポエチン活性を測定するインビトロスクリーニング法を提供することも目的とする。【0011】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、エリスロポエチンの生理的標的細胞である赤芽球が白血病化した細胞の中から、かかる細胞株を樹立することに成功し、本発明を完成した。【0012】すなわち、本発明はエリスロポエチンに特異的に依存して増殖するヒト細胞株を提供する。【0013】さらに、本発明はエリスロポエチン活性を有すると推察される化合物を上記細胞株に添加して細胞増殖または分化誘導を試験することからなるエリスロポエチン活性のインビトロスクリーニング法を提供する。【0014】 本発明の細胞株は、例えば初期赤芽球白血病(early erhthroblastic leukemia)患者の骨髄などから採取さた細胞を用いて樹立することができる。本発明では特に、骨髄に芽球が76.2%認められた患者の骨髄芽球を採取した。この細胞はEpo添加でコロニーを形成した。さらにこの芽球をFCS(ウシ胎児血清)およびEpo添加したIMDM(イスコーブ改変ダルベッコ培地)にて培養したところ継代可能となり、安定した細胞株を樹立することができた。このようにして樹立された細胞株はAS−E2と命名され、生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに受託番号FERM:BP−4819で寄託されている(1994年10月5日寄託)。【0015】AS−E2はパーオキシダーゼ反応(PO)が陰性であり、巨赤芽球様変化を認めた(過ヨウ素酸シッフ試薬:PAS陽性)。【0016】また、細胞株AS−E2の表面抗原を検討したところ、CD71、CD36、グリコホリンA(GPA)、CD38、CD19などを発現していた。【0017】AS−E2の各種サイトカインに対する反応性を試験したところ、Epoとともにインキュベートしたときのみ顕著に刺激され、AS−E2がEpoに特異的に反応して増殖することを示した。さらに、AS−E2に対するEpoの反応性および抗Epo抗体による増殖阻害を試験するために顕微鏡下で細胞数を数え、またトリパンブルーで生細胞数をカウントしたところ、Epo添加条件にのみ顕著な細胞増殖が認められ、また抗Epo抗体の添加によってこのような増殖効果は抑制されることが明らかとなった。【0018】また、放射標識Epoの結合実験よりAS−E2におけるEpo受容体の発現が確認された。さらに得られたデータからScatchard分析を用いてEpo受容体の性質を解析した結果、AS−E2が発現するEpo受容体は低親和性型のみであった。【0019】最近、EpoはEpo受容体と結合し、これによってJakファミリーチロシンキナーゼの1種であるJak2がリン酸化され、さらにこのリン酸化によってJak2自身がキナーゼ活性をもって次の分子をリン酸化するという増殖シグナルの伝達経路が提唱されている(Ihle et al., TIBS 19:222, 1994)。この仮説の正当性を検討するために、AS−E2をEpo非存在下で24時間培養し、次いでEpoを添加した後、細胞を可溶化し、抗Jak2抗体または抗Epo受容体抗体で免疫沈降を行った。沈降物をSDS−PAGEに付した後、PVDF膜に転写し、抗リン酸化チロシン抗体でチロシンリン酸化タンパク質を検出した結果、AS−E2はEpoに反応し、かつEpoシグナル伝達系であるEpo受容体およびJak2のチロシンリン酸化が認められた。これは、上記の増殖シグナル伝達経路が正しいことを示唆する結果といえる。【0020】増殖シグナルとは別に、同じ受容体から発信される赤血球特異的な細胞分化のシグナルの存在が示唆されているが、これについては現在ほとんど解明されていない。ただ、Epo受容体から赤血球特異的な一連の転写因子群を活性化するシグナルが伝達され、これら転写因子によって制御されている下流の赤血球特異的な遺伝子群(ヘム合成酵素遺伝子やグロビン遺伝子)の転写が活性化され、最終的にヘモグロビン産生細胞に分化すると考えられている(Yamamoto M. 実験医学 11:1026, 1993)。この特異的な転写因子であるGATA−1、GATA−2のmRNAの発現をノーザンブロットにより試験したところ、AS−E2ではGATA−1およびGATA−2のいずれもが発現していることが確認された。【0021】このようなAS−E2の各種特徴から、AS−E2がEpoのみに特異的に依存して増殖する細胞株であることが示された。【0022】したがって、本発明の細胞株は各種組換え体EpoまたはEpo活性を有すると推察される低分子化合物などのEpo活性を簡単かつ確実にインビトロでスクリーニングするのに有用である。このようなスクリーニングは細胞増殖または分化誘導を試験することによって実施できる。例えば、Epo活性を有すると推察される化合物と本発明の細胞株とを混合してインキュベーションし、一定時間後の細胞増殖を3T−チミジンの取り込み試験、またはMTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide)アッセイ法(J. Immun. Methods 65:55, 1983参照)で測定するか、あるいは生細胞数を測定することなどによって実施することができる。また、この試験法によってEpo濃度を測定することも可能である。さらに、本発明の細胞株を、初期赤芽球白血病の病態解析や治療モデルとして使用することができる。さらには、上述したように、本発明の細胞株を、エリスロポエチンに特異的なシグナル伝達タンパク質/遺伝子を解明するための実験にも使用することができる。【0023】以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。【0024】【実施例】実施例1:AS−E2の樹立および維持初期赤芽球白血病患者から骨髄液を採取した。この患者は初診時骨髄に芽球[光顕PO(−)、PAS(−)、CD11b(−)、CD13(+)、CD33(+)、CD10(−)、CD19(−)、グリコホリンA(+)、染色体:46、XY]が76.2%認められた。この患者の骨髄芽球はEpo添加でコロニーを形成した。次いでこの芽球を、Epo(2u/ml)および20% FCS添加IMDM中で培養したところ安定して継代可能となり、細胞株として樹立された。この細胞株をAS−E2と命名した。【0025】AS−E2の形態および表面抗原は以下の通りである。AS−E2の形態AS−E2は顕微鏡で観察したところ、径約30μ程度であり、空胞を有している。POは陰性であり、PASは陽性であった。AS−E2の表面抗原の解析本実施例で樹立した細胞株AS−E2の表面抗原の発現を、各種ヒト抗原に対するモノクローナル抗体のパネルを用いて、フローサイトメーターによる蛍光抗体法(Fried et al., Flow Cytometry, Boca Raton, CRC Press:59-78, 1989)により検討した。【0026】得られた結果を以下の表1に示す。【0027】表から明らかなように、AS−E2はCD71、CD36、グリコホリンA(GPA)、CD38、CD19などを発現していた。【0028】実施例2:各種サイトカインに対する反応性実施例1で樹立した細胞株AS−E2の各種サイトカインへの反応性を試験した。【0029】AS−E2 5,000細胞/ウエルに各種サイトカインを添加し、5% CO2、95% 空気(湿度100%)、37℃で3日間培養した。使用したサイトカインの種類および濃度は以下の通りである:ヒトエリスロポエチン(hEPO):10u/mlヒトインターロイキン−1α(hIL−1α):10ng/mlヒトインターロイキン−1β(hIL−1β):10ng/mlヒトインターロイキン2(hIL−2):10ng/mlヒトインターロイキン3(hIL−3):100ng/mlヒトインターロイキン4(hIL−4):10ng/mlヒトインターロイキン6(hIL−6):10ng/mlヒトインターロイキン7(hIL−7):10ng/mlヒトインターロイキン8(hIL−8):1000ng/mlヒトインターロイキン11(hIL−11):10ng/mlヒト顆粒球コロニー刺激因子(hG−CSF):100u/mlヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(hGM−CSF):10ng/ml ヒト白血病阻害因子(hLIF):10ng/mlヒト赤血球分化因子(hEDF):10ng/mlヒト幹細胞因子(hSCF):10ng/mlヒトトランスフォーミング増殖因子−β(hTGF−β):100ng/mlヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子(hbFGF):10ng/mlヒト肝細胞増殖因子(hHGF):500ng/mlヒトオンコスタチンM:100ng/mlヒト上皮増殖因子(hEGF):1000ng/ml培養後にCellTiter96TM AQueous Non−Radioactive Cell Proriferation Assay Kit(Promega社製)を用いて490nmにおける吸光度を測定することにより細胞数を測定した。細胞を含まないブランク、およびサイトカインを含まない対照を同時に試験した。得られた結果を図1に示す。図から明らかなように、AS−E2はEpoとともにインキュベートしたときのみ顕著に増殖が刺激され、その他のサイトカインによっては刺激されなかった。実施例3:Epo反応性および抗Epo抗体による増殖阻害実施例1で樹立した細胞株AS−E2のEpo反応性(増殖活性)および抗Epo抗体による増殖活性を試験した。【0030】AS−E2細胞1×105細胞/mlを用いて、(1)Epoを添加しないで培養、(2)Epo 2u/mlを添加して培養、および(3)Epo 2u/mlと抗Epo抗体(αEpo:1/100に希釈して使用)を添加して培養し、経時的(2、4、6、8日)に細胞数を顕微鏡下でカウントした。得られた結果を図2に示す。図から明らかなように、Epo添加した細胞はEpo添加しない細胞と比較して細胞数の顕著な増加が観察された。また、抗Epo抗体を同時に添加した場合には、この増殖活性が阻害された。【0031】次いで、上記3群の細胞をトリパンブルーで染色して生細胞数をカウントした結果を図3に示す。図から明らかなように、Epo添加しない細胞、およびEpoと抗Epo抗体を添加した細胞では生細胞数が経時的に減少していたが、Epo添加した細胞では細胞数としてカウントされたほとんどが生細胞数としてもカウントされた。実施例4:Epo受容体の発現の確認AS−E2細胞上でEpo受容体が発現していることを以下の方法で確認した。【0032】AS−E2細胞を24時間Epo非存在下で培養し、1×106個の細胞に対して125I−Epo(Amersham社製)を0.06〜3nM添加して15℃、3時間の条件で結合アッセイを行った。非特異的結合は、125I−Epoの400倍量の非標識Epo存在下で測定した。なお、結合アッセイ培地の組成は、2% BSA、0.2% NaN3を含むIMDM培地である。得られた結合を図4に示す。これより、AS−E2細胞上にEpo受容体が発現していることが確認された。【0033】次いで結合アッセイから得られたデータからScatchard分析を行ってEpo受容体の解離定数(Kd値)と受容体数とを求めたところ、AS−E2細胞が発現しているEpo受容体が低親和性型1種類のみであることが示された。実施例5:Jak2、Epo受容体のリン酸化AS−E2におけるJak2およびEpo受容体のリン酸化を以下の方法で試験してEpoのシグナル伝達経路を検討した。【0034】AS−E2をEpo非存在下で24時間培養し、次いでEpo(0または10u/ml)を添加して5分間反応させた後、1% NP−40(ナカライテスク株式会社製)、10% グリセロール、1mM PMSF(和光純薬工業株式会社製)、0.1mg/ml ロイペプチン(和光純薬工業株式会社製)、5μMペプスタチンA(和光純薬工業株式会社製)、1mM EDTA、2mM オルトバナジウム酸ナトリウム(SIGMA社製)を含むトリス緩衝塩溶液で細胞を可溶化した。これを用いて抗Jak2抗体または抗Epo受容体抗体(いずれもUPSTATE BIOTECHNOLOGY,INC.(USA)社製)で免疫沈降を行った。沈降物をSDS−PAGEに付した後、PVDF膜に転写し、抗リン酸化チロシン抗体(和光純薬株式会社製)でチロシンリン酸化タンパク質を検出した。得られた結果を図5(A:抗Jak2抗体、B:抗Epo受容体抗体、また、A、Bいずれにおいても、レーン1はEpo非添加の場合を、レーン2はEpo添加した場合を表す)に示す。図から明らかなように、AS−E2はEpoに反応し、かつEpoシグナル伝達系であるJak2およびEpo受容体のチロシンリン酸化が認められた。実施例6:GATA−1およびGATA−2のmRNAの発現AS−E2におけるGATA−1およびGATA−2のmRNAの発現を以下のノーザンブロット分析により検討した。【0035】本発明の細胞株AS−E2、ならびに対照としてK562細胞株(慢性骨髄性白血病急性転化細胞株)およびHL−60細胞株(急性白血病細胞株)から、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて、全RNAをキット添付の処方に従って調製した。次いで、ノーザンブロット分析(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)を行った。プローブの標識はRandom Primer LabellingKit(Takara社製)を用いて行った。すなわち、PVCベクターのEco RI部位に挿入されたGATA−1(Zon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10638-10641, 1991)とGATA−2(Nagai et al., Blood 84:1074-1084, 1994)をコーディングするインサートを切り出し、キット添付の処方に従って標識プローブを作製した。【0036】前述の各細胞からの全RNAを1レーン当たり30μg使用し、アガロースゲル電気泳動を行った後、ハイブリダイゼーション・トランスファー・メンブレンとしてHybond−N(Amersham社製)を使用し、キャピラリー法によりブロッティングした。ハイブリダイゼーションは50% ホルムアミド、5×SSPE、2×Denhardt’s solution、0.1% SDSの組成よりなる溶液を用いて42℃で一晩実施した。ハイブリダイゼーション後、メンブレンを2×SSC、0.1% SDSで室温にて4回洗浄し、さらにBAS(Fuji社製)にてオートラジオグラフィーを行い、画像解析をした。その結果を図6(A:GATA−1、B:GATA−2、また、A、Bいずれもにレーン1はAS−E2、レーン2はK562、レーン3はHL−60を表す)に示す。図から明らかなように、GATA−1はAS−E2とK562に明瞭なバンドとして検出され、またGATA−2はAS−E2、K562、HL−60のいずれの細胞株でも認められた。【0037】【発明の効果】本発明によってエリスロポエチンのみに特異的に依存して増殖し、エリスロポエチン活性のスクリーニングに用い得る細胞株の樹立が達成された。本発明の細胞株を用いてエリスロポエチン活性を有すると推定される化合物のエリスロポエチン活性を測定するインビトロスクリーニング法が可能となった。このインビトロスクリーニングは本発明の細胞株の細胞増殖または分化誘導を試験することにより実施できる。また、この試験法によってEpo濃度を測定することも可能である。さらに、本発明の細胞株を、初期赤芽球白血病の病態解析や治療モデルとして使用することができる。さらには、本発明の細胞株を用いて、エリスロポエチンに特異的なシグナル伝達タンパク質/遺伝子を解明するための実験を行うことができる。【0038】これらの点から本発明のエリスロポエチン依存性ヒト細胞株の利用価値は極めて大きい。【図面の簡単な説明】【図1】AS−E2細胞に対する各種サイトカインの反応性を示す図である。【図2】AS−E2のEpo反応性および抗Epo抗体による増殖活性を示すための、顕微鏡で観察した経時的な細胞数を示す図である。(●)はEpo 2u/mlを添加した細胞、(△)はEpoを添加しない細胞、(□)はEpo 2u/mlと抗Epo抗体(αEpo:1/100希釈)を添加した細胞を表す。【図3】AS−E2のEpo反応性および抗Epo抗体による増殖活性を示すための、トリパンブルー染色した経時的な生細胞数を示す図である。(●)はEpo 2u/mlを添加した細胞、(△)はEpoを添加しない細胞、(□)はEpo 2u/mlと抗Epo抗体(αEpo:1/100希釈)を添加した細胞を表す。【図4】125I−Epoを用いるAS−E2の結合アッセイを示す図である。(○)は全結合活性、(□)は非特異的結合活性、(●)は特異的結合活性を表す。【図5】AS−E2におけるJak2およびEpo受容体のリン酸化を示す図(電気泳動の写真)である。図中、Aは抗Jak2抗体(レーン1はEpo非添加;レーン2はEpo添加)、Bは抗Epo受容体抗体(レーン1はEpo非添加;レーン2はEpo添加)との免疫沈降物をSDS−PAGEの電気泳動に付し、PVDF膜に転写し、抗リン酸化チロシン抗体でチロシンリン酸化タンパク質を検出した図を表す。【図6】AS−E2、K562、HL−60細胞株におけるGATA−1、GATA−2のmRNAの発現を示す図(電気泳動の写真)である。図中、AはGATA−1(レーン1はAS−E2;レーン2はK562;レーン3はHL−60)、BはGATA−2(レーン1はAS−E2;レーン2はK562;レーン3はHL−60)をプローブとして用いたノーザンブロットの結果を表す。 エリスロポエチンに特異的に依存して増殖し、その他のサイトカインに対して反応しないヒト細胞株であって、AS−E2(生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター、受託番号FERM:BP−4819)である前記細胞株。 初期赤芽球白血病患者の骨髄細胞由来である請求項1に記載の細胞株。 エリスロポエチン活性を有すると推察される化合物を請求項1に記載の細胞株に添加して細胞増殖または分化誘導を試験することからなるエリスロポエチン活性のインビトロスクリーニング法。