生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_キャピラリー電気泳動用電解液およびこれを用いたキャピラリー電気泳動法
出願番号:1994280849
年次:2004
IPC分類:7,G01N27/447


特許情報キャッシュ

高木 俊夫 JP 3541069 特許公報(B2) 20040402 1994280849 19941115 キャピラリー電気泳動用電解液およびこれを用いたキャピラリー電気泳動法 大塚電子株式会社 000206967 稲岡 耕作 100087701 高木 俊夫 20040707 7 G01N27/447 JP G01N27/26 331E G01N27/26 315K G01N27/26 315F G01N27/26 301B 7 G01N 27/447 JICSTファイル(JOIS) 特開平03−239959(JP,A) 特表平06−504612(JP,A) 国際公開第94/007133(WO,A1) 特開平06−222043(JP,A) 特表平09−502805(JP,A) 特表平04−507001(JP,A) 3 1996145946 19960607 7 20010821 特許法第30条第1項適用申請有り 平成6年5月21日、社団法人日本生化学会主催の「第41回日本生化学会近畿支部例会」において文書をもって発表 黒田 浩一 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、キャピラリー電気泳動用電解液およびこれを用いたキャピラリー電気泳動法に関する。【0002】【従来の技術】電気泳動技術は、とくに生化学分野において広く採用されている分離技術である。このうち、ゲル電気泳動は、分子ふるい効果を有しかつ対流の発生を防止する、アガロース、デンプンなどのゲルを支持体として用いるものであり、今日では電気泳動といえばゲル電気泳動を指すようにさえなっている。【0003】近時、少量の試料で高速分析を可能とするために、内径が25〜100μm程度のキャピラリー内を電気泳動の場として用いるキャピラリー電気泳動法が開発された。このようなキャピラリー内の狭い空隙での電気泳動においては、電気泳動媒体の粘度が低くても、対流の発生は大幅に抑制される。そのため、キャピラリー電気泳動において分子ふるい効果を活用しようとする場合、キャピラリー内にゲルを充填する必要はなく、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルランなどの合成高分子または天然高分子の溶液を充填すれば、それらが充分に分子ふるい媒体として機能することが知られている。【0004】電解液である高分子溶液をキャピラリー電気泳動における媒体として使用する利点は、分子ふるいとしての分離能はゲルに比べて劣るものの、ゲルよりも低粘度であるため、キャピラリーへの充填が容易で測定ごとの入れ替えが可能であることである。上記高分子溶液による分子ふるい機能は、線状高分子の絡み合いによる網目構造の形成によると考えられている。例えば、特開平5−215717号公報にはDNAフラグメントや蛋白質を分離するためにメッシュを形成した高分子を用いたキャピラリー電気泳動装置が記載されている。また、特開平5−312782号公報にはキャピラリー内に充填する高分子溶液として線状のまたは未架橋のポリマーネットワークをキャピラリー内に充填することが記載されている。【0005】従って、キャピラリー電気泳動において分子ふるいに使用される高分子は比較的分子鎖の長いもの、すなわち分子量の比較的大きいものであることが前提となっている。そのため、一般にキャピラリー電気泳動の分子ふるいに使用される高分子は分子量が数万から数百万のオーダーである。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような平均分子量の高い高分子は水に難溶であるため、高分子溶液の調製には数日を要する。とくに、デキストランや、セルロース系の多糖は水に溶けにくいという問題がある。また、上記高分子の溶液はゲルと比較すると低粘度ではあるが、塩の水溶液よりは粘度が高い。そのため、キャピラリーへの充填の際に塩溶液よりも高い圧力を必要とする。装置によっては、標準の充填方法では注入できないため、注入のための特別の治具を用意しなければならないこともありうる。また、高粘度であるため、高分子の洗浄にも経験を要する。【0007】さらに、ある分子種の電気泳動移動度は溶液の粘度の反比例する。従って、高分子溶液の粘度が高くなると、移動度が低下し、そのため分析に長時間を要するという問題がある。本発明の主たる目的は、調製が容易であり、かつ充分に低粘度であるためにキャピラリーへの充填操作が容易であり、しかもキャピラリー電気泳動において迅速な分析を可能としたキャピラリー電気泳動用電解液を提供することである。【0008】本発明の他の目的は、電気泳動移動度が速く、迅速に分析できるキャピラリー電気泳動法を提供することである。【0009】【課題を解決するための手段および作用】本発明者は、キャピラリー電気泳動において支持体物質として用いられる高分子の分子ふるい機能を解明すべく一連の研究を行う過程で、重量平均分子量が異なるいくつかの高分子を添加した電解液を媒体として蛋白質の分子ふるい効果を検討したところ、高分子の分子量が高いほど分解能が高いことが見いだされた。これは、一般に電解液の支持体として用いられる高分子の鎖が絡み合って網目構造を形成することが、分子ふるい効果を示す前提であると考えられていることから、当然の結果といえる。このような観点から判断する限りにおいては、数万以下の分子量の高分子溶液には分子ふるい効果は期待できないことになる。事実、これまでの研究では重量平均分子量が数万のデキストラン溶液においては、分解能が低下することが確認されている。【0010】しかしながら、分子量が10,000以下の高分子について念のため検討したところ、驚くべきことに、この高分子溶液を媒体としたキャピラリー電気泳動では、あたかも分子ふるい媒体が存在するかのように試料蛋白質をサイズに応じて明瞭に分離できるという事実を見いだした。すなわち、高分子の溶液の分離能は、その分子量の低下と共に低下するが、その先においては意外にも反転して上昇するのである。【0011】このような分子量の低い高分子は、溶解性に優れているため、高分子を含有した電解液(電気泳動媒体)の調製が容易であり、かつ通常用いられている分子量が百万オーダーの高分子溶液に比して粘度が著しく低いため、これを媒体として使用すると、キャピラリーへの充填や高分子の洗浄が従来に比べて非常に容易になると共に、移動度も速くなり分析に要する時間も大幅に短縮できる。【0012】従って、本発明のキャピラリー電気泳動用電解液は、重量平均分子量が1,000〜10,000のデキストランを非イオン性高分子として含有したことを特徴とする。このデキストランの重量平均分子量は1,000〜6,000であるのがより好ましい。また、本発明のキャピラリー電気泳動法は、電解液をキャピラリー内に充填し、ついでキャピラリー内に試料を注入し、通電により試料を分離するものであって、前記電解液が、重量平均分子量が1,000〜10,000のデキストランを非イオン性高分子として含有することを特徴とする。【0013】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における非イオン性高分子としては、デキストラン(未架橋デキストラン)が用いられる。【0014】かかる非イオン性高分子の分子量分布はとくに限定されるものではないが、通常Mw /Mn が1〜5程度、好ましくは1〜3程度である。非イオン性高分子を添加する電解液としては、例えばTRIS−CHES〔トリス−2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸〕,MES−NaOH〔2−N−モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム〕,AMPD−CACO〔2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール−カコジル酸〕などの、とくに紫外線透過性を有する緩衝液があげられる。【0015】非イオン性高分子の含有量は0.05〜20%(重量/容量)、好ましくは6〜10%(重量/容量)であればよい。非イオン性高分子の含有量がこの範囲を超えると、電解液の粘度が高くなるため、キャピラリーへの充填や高分子の洗浄が困難になり、また移動度も遅くなるため好ましくない。本発明におけるキャピラリーは、例えば溶融シリカなどから作られ、内径が10〜200μm程度、好ましくは50〜100μm程度で、長さが20〜100cm程度である。また、キャピラリーの内面には、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミンなどのコート層を設けて、電気浸透流を抑制するのが好ましい。【0016】本発明のキャピラリー電気泳動法の実施には、通常市販のキャピラリー電気泳動装置を使用することができる。このようなキャピラリー電気泳動装置の一例を図1に示す。同図に示すキャピラリー電気泳動装置は、キャピラリー1と、このキャピラリー1によって接続され電解液を入れた2つのリザーバー2,3と、通常最高電圧30kVまでかけられる高圧電源装置4と、オン−カラム検出器5とから構成されている。7はデータ処理手段である。【0017】キャピラリー1内への電解液の充填は、常法に従って吸引(リザーバー3側を降圧にする)あるいは加圧(リザーバー2側から圧力を加える)によって行われる。ついで、キャピラリー1の末端に試料を注入する。試料の注入量は、通常数nl程度であればよい。試料の注入法としては、例えばガス加圧法、真空吸引法、サイフォンの原理に基づいたものなどの物理的な試料注入法と、電気泳動的な試料導入法とがあり、いずれも採用可能であるが、電気泳動的試料導入法は移動度の高い試料を選択的に導入してしまうおそれがあるので注意を要する。【0018】前記検出器5は、通常キャピラリー1の末端に近い部位に装着されている。主な検出方法としては、例えば紫外または可視吸収検出、スペクトラム検出、蛍光検出、間接蛍光検出、発光検出、電気伝導度検出、電気化学検出、ラジオアイソトープ検出などがあげられ、通常は紫外または可視吸収検出器が用いられる。分離対象となる試料としては、従来より電気泳動を利用して分離が行われていたイオン性高分子の分子混合物、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)変性蛋白質、DNAフラグメントなどがあげられるが、もとよりこれらのみに限定されるものではなく、種々の試料に対して本発明は適用可能である。【0019】【実施例】SDS:蛋白質の重量比が2.6:1の条件下にて蛋白質を変性させたSDS−蛋白質複合体を、デキストランを10%(重量/容量)の濃度で添加した電解液を用いて分離した。使用したデキストランは、表1に示す重量平均分子量を有するA〜Eのデキストランである。これらのデキストランはいずれも分子量分布が狭いものを使用した。【0020】【表1】【0021】電解液には、100mMのTRIS−CHES緩衝液(pH8.8、SDSを0.1重量%の濃度で含有)を用いた。分離対象となる蛋白質は以下の混合物からなる。1:ミオグロビン(重量平均分子量16.900)2:カルボニックアンヒドラーゼ(重量平均分子量30,000)3:ウシ血清アルブミン(重量平均分子量66,000)4:ホスホリラーゼb(重量平均分子量97,400)蛋白質はSDSとジチオトレイトールとを含む50mMのTris−HCl緩衝液(pH6.6)に溶解させ、沸騰水中に5分間おいて高次構造を消失させる前処理を行った。総蛋白質量に対するSDSおよびジチオトレイトールの割合(重量比)はそれぞれ2.6および0.76であった。【0022】キャピラリーとしては、内径100μm(外径375μm)の溶融石英キャピラリーを使用した。ただし、デキストランのDについては、内径50μmの溶融石英キャピラリーを使用した。これらのキャピラリーはいずれも全長が500mm、検出部までの有効長が378mmであり、内壁面にはポリアクリルアミドのコーティングを施した。【0023】使用したキャピラリー電気泳動装置は、大塚電子(株)製のCAPI−3000である。上記キャピラリーに電解液を真空吸引法にて充填し、ついで試料を電気泳動的な試料導入法にてキャピラリー内に注入した後、30℃にて、印加電圧300V/cm、電流値28〜31μAで電気泳動を行った。検出は214nmでの紫外吸収にて行い、分子量の異なる各デキストランの分離能を評価した。その結果を図2に示す。図2において、グラフA〜Eはそれぞれ表1に示した各デキストランA〜Eを添加したときの試料の分離状態を示している。また、A〜Eの各グラフ中の数字1〜4は前記した蛋白質の成分を示しており、「OG」とは泳動標準物質として同時に泳動させたオレンジGを示している。【0024】図2のグラフA〜Cから明らかなように、同一添加量において、分子量が1万を超えるデキストランでは、分子量が高くなるほど分離能が高くなるのに対して、分子量が数万程度のデキストラン(グラフC)では分離能が悪くなっている。このことは、高分子の鎖が絡み合って網目構造を形成することが、分子ふるい効果を発揮する前提であるという従来からの考えに一致するものである。すなわち、分子量の低い高分子では、分子ふるい効果の高い網目構造を形成することができないということである。【0025】しかるに、グラフD,Eに示すように、平均分子量が1万以下のデキストランでは、上記A〜Cと同じ添加量で、グラフAに示す高分子量デキストランを使用したときの分離状態とほぼ同程度の分離が得られた。その理由は明らかではないが、分子ふるい効果とは別の機構に基づくものではないかと推測される。すなわち、例えば平均分子量が1,270のデキストランEは7〜8単糖の複合体であるため、網目構造はできにくく、従って分子ふるい効果は殆ど期待できないと考えられるからである。事実、高分子量のデキストランと低分子量のデキストランの溶液の濃度を変えて、電気泳動移動度を決定し、ファーガソン・プロットを試みたところ、後者においては分子ふるい効果の前提となる網目構造が存在しないことが確認された。【0026】また、平均分子量が1,270のデキストランを用いた電気泳動では、平均分子量が667,800のデキストランを用いた場合に30分以上を要する分析が15分程度で終了した。従って、低分子量のデキストランを使用することにより、高分子量のそれを使用する場合に比べて、同程度の分離能を維持しながら迅速な分析が可能になることがわかる。【0027】【発明の効果】本発明における重量平均分子量が10,000以下の非イオン性高分子は溶解性が高いため、これを含有する本発明のキャピラリー電気泳動用電解液は調製が容易である。またその電解液は粘度が低いためキャピラリーへの充填が容易であり、さらにこの電解液を用いたキャピラリー電気泳動においては、移動度が速くなり、迅速な分析が可能になるという効果がある。【図面の簡単な説明】【図1】キャピラリー電気泳動装置の一例を示す概略図である。【図2】デキストランの分子量の違いによる分離能の変化を示すグラフである。【符号の説明】1 キャピラリー2 リザーバー3 リザーバー4 高圧電源装置5 オン−カラム検出器 重量平均分子量が1,000〜10,000のデキストランを非イオン性高分子として含有したことを特徴とするキャピラリー電気泳動用電解液。 前記デキストランの重量平均分子量が1,000〜6,000である請求項1記載のキャピラリー電気泳動用電解液。 電解液をキャピラリー内に充填し、ついでキャピラリー内に試料を注入し、通電により試料を分離するキャピラリー電気泳動法において、前記電解液が、重量平均分子量が1,000〜10,000のデキストランを非イオン性高分子として含有することを特徴とするキャピラリー電気泳動法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る