生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_抗菌活性のある香辛料、およびこれを原料とする抗菌剤
出願番号:1994266846
年次:2007
IPC分類:A61K 36/18,A61K 36/53,A01N 65/00,A61P 31/04


特許情報キャッシュ

河智 義弘 中原 良三 勝見 郁男 加味 亜季子 石井 営次 尾立 純子 JP 3886547 特許公報(B2) 20061201 1994266846 19941031 抗菌活性のある香辛料、およびこれを原料とする抗菌剤 株式会社カネカサンスパイス 594026170 大阪市 591030499 山本 秀策 100078282 河智 義弘 中原 良三 勝見 郁男 加味 亜季子 石井 営次 尾立 純子 JP 1994015322 19940209 20070228 A61K 36/18 20060101AFI20070208BHJP A61K 36/53 20060101ALI20070208BHJP A01N 65/00 20060101ALI20070208BHJP A61P 31/04 20060101ALI20070208BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 QA01N65/00 AA61P31/04 A61K 36/18 A01N 65/00 A61K 36/53 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CAplus(STN) JMEDPlus(JDream2) JSTPlus(JDream2) Shigeko Ueda et al,Inhibition of Clostridium botulinum and Bacillus sp. by Spices and Flacouring Compounds,日本食品工業学会誌,1983年,Vol.29,No.7,pp.389-392 J.A.Morris et al,Antimicrobial Activity of Aroma Chemicals and Essential Oils,J. 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Food Saf. ,1984年,Vol.6,No.4,pp.241-251 5 1995267873 19951017 15 20010226 鶴見 秀紀 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、メチシリン耐性黄色ぶどう球菌によって引きおこされる難治性の感染性の治療及び予防に有効な薬剤、および食中毒の防止に有効な薬剤に関する。【0002】【従来の技術】黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)はヒトの皮膚、鼻前庭、腸管内、そして自然環境に広く分布している病原菌であり、食中毒、化膿性疾患の病原菌として知られている。つまり、黄色ぶどう球菌は、ヒトへの腸炎起因菌として最も身近にあり、かつ毒性の強い細菌として注目されてきた。黄色ぶどう球菌の感染による病気(黄色ぶどう球菌感染症)の治療方法は、抗生物質ペニシリンに始まる現代抗菌療法の進歩、発展に伴い、臨床的にはすでに解決されたもの考えられていたため、長い間、問題とされることがなかった。【0003】ところが、1980年代後半になってから、黄色ぶどう球菌感染症の治療上の問題が再び起こってきた。メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:以下、MRSAと省略する)の出現である。メチシリンは、ペニシリンに耐性化した黄色ぶどう球菌に効力を有する抗菌薬として最初に開発されたペニシリン耐性ぶどう球菌用の抗生物質である。そこで、メシチリンに耐性を示す黄色ぶどう球菌に、メチシリンの名称を付して、一般的にMRSAと呼んでいる。【0004】しかし、MRSAの本態は、メチシリンのみならず、現在市販されているほとんどすべてのβ−ラクタム剤に耐性を示す性質を有している点にある。β−ラクタム剤と呼称される抗菌薬には、耐性ぶどう球菌用ペニシリンをはじめとするすべてのペニシリン系、第1、第2、第3世代と呼ばれるすべてのセフェム系、あるいはモノバクタム系、カルバペネム系といった、現在、臨床において用いられている抗菌薬のほとんどが含まれる。従って、有効なβ−ラクタム系の薬剤がほとんど無いというのが、現在のMRSAの1つの問題点である。【0005】さらに、MRSAはβ−ラクタム剤のみならず、多くのアミノグリコシド系やマクロライド系抗生剤にも耐性を示し、最近開発されたニューキノロン系薬にも耐性を示しつつある。言い換えると、MRSAとは、今日の多剤耐性菌を最も具現化した菌である。【0006】また、MRSAが大病院であるほど、大きな問題となっている。これは大病院ほど、白血病や癌等で免疫不全状態になっている患者、あるいは高度熱傷患者、または寝たきり老人や未熟児等といった免疫力の低下した患者をより多く抱えているからである。病院内に定着しやすい本菌によって、これらの患者は重篤な感染症におかされており、社会的にも大きな問題となっている。【0007】従って、MRSAによる感染対策、あるいはMRSAの治療方法を見いだすことが重要な問題点である。MRSA感染対策として、化学療法(除菌)、殺菌・消毒(手指の消毒,機械・器具の殺菌・消毒,口腔・耳鼻咽喉の消毒)などがおこなわれているが十分ではなく、また、MRSA対応の除菌剤、殺菌剤、繊維等が開発されているが根本的な解決策とはなっていない。【0008】他方、食中毒も微生物によって発生する。食中毒菌として、サルモネラ菌、病原性大腸菌、カンピロバクターなどがあるが、特に芽胞を形成する細菌が食中毒の原因にもなる。芽胞を形成する細菌は、好気性細菌(Bacillus属細菌、例えば、セレウス菌)と嫌気性細菌(Clostridium属細菌、例えば、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌)とに大別される。これらの細菌は、人の生活環境、河川、塵埃等に広く分布し、食品中にも広く分布する。これらの細菌は、野菜、穀類、食品原料中に芽胞の形態としても存在する。そして、芽胞は食品として製造、加工あるいは調理されたときに、温度、湿度、栄養等の条件が整うと発芽、増殖し、腐敗、変敗を引き起こし、一部の芽胞菌は食中毒を引き起こす。【0009】そこで、わが国においては、食中毒防止の観点から、食肉製品、魚肉練り製品、あるいはこれらの原料として添加される糖類、デンプン、香辛料の製造において、耐熱芽胞数に基準が設けられている。この基準によると、耐熱性細菌(芽胞)の数が1g当たり1、000個以下とされている。この基準を満たすべく、上記食品あるいは原料が加熱殺菌される。【0010】しかし、上記細菌が形成する芽胞は、熱あるいは乾燥に対して抵抗性が強く、通常の加熱条件、例えば、栄養細胞の殺菌条件である、100℃、20〜30分では死滅せず、芽胞で汚染された加工食品を加熱しても、芽胞が死滅せず、増殖して、食品の品質劣化、腐敗あるいは食中毒に関与する。他方、ハム、ソーセージ等の魚肉練り製品、食肉製品等では、風味の劣化の問題から厳しい加熱条件は適用できず、芽胞が生存する場合が多い。また、缶詰、レトルト食品では、通常、121℃、20〜40分の殺菌を行うが、芽胞が死滅しない場合がある。さらに、安全性の観点から化学殺菌剤の使用も限定されている。【0011】従って、上記MRSA、あるいは食中毒細菌およびその芽胞に対する抗菌剤が望まれていた。【0012】最近、天然由来で安全性の高い抗菌物質として漢方薬である甘草等については紹介されている。しかし、まだ実用化されるには至っていない(生活衛生(Seikatsu Eisei)37,15-19 (1993))。【0013】香辛料は古くから抗菌活性があることが知られており、サルモネラ菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、セレウス菌などの食中毒菌、更に、黄色ぶどう球菌に対して抗菌活性のあるものが報告されている(日本食品工業学会誌、29巻、112ー116頁(1982))。しかし、MRSAに対して、あるいは一部の食中毒菌に対して有効な香辛料は、現在のところ知られていない。【0014】本発明者らは、MRSAに対して、あるいは食中毒菌に対して抗菌活性を有する香辛料およびその抽出物について研究を行い、本発明を完成したものである。【0015】【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、MRSAに対して有効な抗菌活性を有し、耐性菌が出現することがなく、あるいは食中毒菌に対して有効な抗菌活性を有し、かつ安全性の高い抗菌剤を提供することにある。【0016】本発明の別の目的は、安全性が高く、適用の範囲が広い食中毒に対する抗菌剤を提供することにある。【0017】【課題を解決するための手段】本発明の香辛料は、MRSAに対して抗菌性を有する香辛料であり、そのことにより、上記目的が達成される。【0018】本発明の香辛料からの抽出物は、MRSAに対して抗菌性を有する抽出物であって、そのことにより、上記目的が達成される。【0019】また、本発明の抗菌剤は、MRSAに対して抗菌性を有する上記香辛料、あるいは上記抽出物を含有する抗菌剤であって、そのことにより、上記目的が達成される。【0020】さらに、本発明の香辛料、あるいは抽出物は、MRSA及び食中毒菌に対して抗菌活性を有し、このことにより上記目的が達成される。【0021】本発明の香辛料からの抽出物は、芽胞形成菌に対して抗菌性を有し、このことにより、上記目的が達成される。【0022】本発明に使用される香辛料は、香辛料として販売されているものであって、MRSAに対して抗菌性を有するものであればいずれをも使用し得る。好適な香辛料としては、クローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、あるいはセージが挙げられる。【0023】本発明でいう抽出物は、香辛料からの抽出物であって、MRSAに対して抗菌性を有する抽出物であれば、いずれをも使用し得る。香辛料としては、上記抗菌活性を有するクローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、あるいはセージが好適に用いられ得るが、これらに限定されない。抗菌活性からは、特に、ローズマリーあるいはセージからの抽出物が好ましい。香辛料に抗菌活性が無くとも、抽出物に抗菌活性があれば、その香辛料も用いられ得る。【0024】ここでいう抽出物は、香辛料から抽出した抽出液、その抽出液を濃縮した濃縮液、あるいは上記抽出液あるいは濃縮液を乾燥して得られる物、および、さらに上記抽出液あるいは濃縮液からさらに精製した物も包含する。【0025】抽出物は、香辛料を水、あるいは有機溶剤で抽出して得られる。有機溶剤として、例えば、ヘキサン、アセトン、dimethyl sulfoxide(以下、DMSOと省略する)、アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコールが挙げられる。水または上記有機溶剤を、香辛料の重量に対して等量から20倍量を加えて、室温あるいは適当な温度(例えば25〜50℃)に加温して、数時間から1日放置し、抽出する。好ましくは、5-10倍量用いて、37℃で抽出する。このようにして得られる抽出液は、そのまま、あるいはさらに精製して抗菌活性の測定に使用し得る。【0026】精製は、さらに溶媒による抽出、イオン交換樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーによる精製など、公知の方法が使用し得る。【0027】香辛料のMRSAに対する抗菌活性は、病院由来S.aureus T581(以下SA.B株)、S.aureus T582(以下SA.C株)、S.aureus T583(以下SA.D株)を用いて測定し得る。上記菌株を、Trypticase Soy broth(TSB)培地で、37℃で、18-24時間培養し、培養液を滅菌生理食塩水で約106cfu/mlに希釈して、感受性測定用菌液として用い得る。得られた感受性測定用菌液0.1mlを、Mueller-Hinton寒天培地(BBL)に塗抹し、その表面を乾燥させた後、粉末化した香辛料を20〜50mgのせ、37℃で培養して、香辛料の周辺に生じるMRSA生育阻止円の形成およびその大きさを測定することによって、測定し得る。抽出物の抗菌活性は、香辛料の抗菌活性の測定と同様の方法で測定し得る。すなわち、上記の方法で得られた抽出物を浸み込ませた感受性測定用ディスク(8mm、薄手:アドバンテック)を、香辛料の代わりに寒天培地上にのせて培養し、MRSA生育阻止円の形成およびその大きさを調べることによって、測定し得る。【0028】本発明の香辛料、あるいは抽出物は、MRSAに対する抗菌活性のみならず、食中毒菌に対しても抗菌活性を有するが、このような活性を有する香辛料としてクローブ、シナモンまたはオレガノが挙げられる。これらの香辛料、あるいは抽出物の抗菌活性は、MRSAに対する抗菌活性と全く同様にして測定され得る。また、抽出物のMIC(minimun inhibitory concentration)は、各抽出物を段階的に希釈し、阻止円を形成し得る最小の濃度を測定することにより求め得る。本発明の香辛料、あるいは抽出物が有効である食中毒菌としては、サルモネラ菌、病原性大腸菌、セレウス菌、あるいはカンピロバクターが挙げられる。【0029】食中毒菌に対する抗菌活性の測定に使用し得る細菌としては、以下の菌株が挙げられる:(1)黄色ブドウ球菌:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)として、Staphylococcus aureus(S.aureus)209P(以下SA.A株)および鶏卵由来S.aureus OCIS 501(以下SA.E株)、食中毒事例由来のS.aureusのOCIS 41株、OCIS 49株、OCIS 62株、OCIS 67株、OCIS 91株、およびOCIS 95株、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)として病院由来S.aureus T581(以下SA.B株)、S.aureus T582(以下SA.C株)、S.aureus T583(以下SA.D株)、食中毒事例由来のS.aureusのOCIS 100およびOCIS 104、病院由来のT655、T672、01、および03、(2)大腸菌:Escherichia coli NIHJ JC2(以下、EC.A株)、E.coli 41F(出血性大腸菌、以下、EC.B株)、E.coli H10407(毒素原性大腸菌、以下、EC.C株)および E.coli B/M702(毒素原性大腸菌、以下、EC.D株)、下水由来のE.colin OCIE 1501(以下、EC.E株)、(3)サルモネラ菌:食品由来のSalmonella Enteritidis 910225NIPT4(以下Sal.A株)および922701 PT4(以下、Sal.B株)、食中毒由来S.Enteritidis 909342PT34(以下、Sal.C株)、S.Typhimurium 8701NM(以下Sal.D株)および8842MS(以下、Sal.E株)、(4)芽胞菌(セレウス菌):食中毒や食中毒事例などから分離されたBacilluscereus株としては、Bacillus cereus OCI 9170135(以下、BC.A株)、同OCI 9170137(以下、BC.B株)、同OCI 902303(以下、BC.C株)、同OCI 902309(以下、BC.D株)、および同OCI 107(以下、BC.E株)、(5)カンピロバクター:Campylobacter jejuni CIP 702(以下、CJ株)およびC.coli CIF 7080(以下、CC株)、(6)腸炎ビブリオ菌:食中毒患者から分離されたVibrio parahaemolyticus OCI885227 K64(以下、VP株)、(7)エルシニア:ヒト由来Yersinia enterocolitica OCI 22 (以下、YE株)、および、(8)エロモナス:ヒト由来Aeromonas hydrophila OCI 37(以下、AH株)が挙げられる。【0030】上記菌株は大阪市立環境科学研究所に保存されている。【0031】上記菌株は、適当な培地、例えばTrypticase Soy broth(TSB)培地で、37℃で、18-24時間培養し、培養液を滅菌生理食塩水で約106cfu/mlに希釈して、感受性測定用菌液として用い得る。カンピロバクターを用いる場合は、血液寒天培地(Brucella agar(BBL)に馬脱繊維血液を7%加えたもの)で微好気下、37℃で2日間培養し、滅菌生理食塩水に約108cfu/mlに懸濁したものを同様に用い得る。【0032】これらの菌株を用いて、本発明の香辛料、あるいは抽出物が食中毒菌に抗菌活性を有することは、上記のMRSAと同様の方法で、測定し得る。【0033】本発明の香辛料あるいは抽出物が有効である芽胞を形成する食中毒菌としては、セレウス菌、ウエルシュ菌あるいはクロステリディウム属の細菌が挙げられる。【0034】食中毒菌に対する抗菌活性の測定に使用し得るセレウス細菌としては、Bacillus cereus株、例えば、上記、BC.A株、BC.B株、BC.C株、BC.D株、BC.E株が挙げられる。【0035】抗菌性の測定は、例えば、以下のようにして行い得る。【0036】香辛料のエタノール抽出液を、エタノール濃度がそれぞれ80,40,16,8,4,2および1V/V%となるように滅菌水で順次希釈し、各溶液2〜2.5mlを滅菌試験管にとり、各溶液の1/100量の感受性測定用菌液を添加し、直ちに攪拌して、添加後10秒、20秒、30秒、1分、および2分後に、セレウス菌の場合にはさらに、5分、10分および15分後に、その50μlとり、3〜4mlのTSB培地に加え、37℃で1〜2日培養する。培養後の生菌の有無を確認するため、その1白金耳を寒天培地に塗布してコロニーを形成させることにより行う。なお、本願において、香辛料あるいは抽出物が、細菌および芽胞と接触して、これらを死滅させる場合に、抗菌性があるという。【0037】上記方法で抗菌活性を有することが確認された香辛料あるいは抽出物は、MRSAあるいは食中毒に対する抗菌剤として使用され得る。抗菌剤の形態としては、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射等の非経口投与形態、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口投与形態、座剤、外用液剤、軟膏剤等の局所投与の形態があるが、限定されない。製剤化に用いられる添加剤としては、賦形剤、崩壊剤、分散剤、可塑剤、充填剤等が挙げられる。剤形としては、例えば、乳剤、水和剤、水溶液、錠剤、カプセル剤、分剤、丸剤などが挙げられる。【0038】本発明のMRSA、食中毒菌、あるいは芽胞形成細菌に対する抗菌活性を有する香辛料あるいは抽出物は、安全性が高いため、医薬品としての用途以外にも、感染防止、予防目的とした消毒・殺菌剤、除菌効果のある繊維、室内の洗浄、食器の洗浄等の利用、あるいは、食品へ直接添加することも可能である。【0039】以下、本発明のMRSAに対する抗菌活性、および食中毒菌に対する抗菌活性を有する香辛料および香辛料からの抽出物について、実施例で説明する。【0040】【実施例】(実施例1)一次スクリーニングまず、28種類の香辛料を用い、MRSAを含む食中毒菌に対する抗菌活性の有無の一次スクリーニングを行った。【0041】1)使用香辛料赤唐辛子,ジンジャー,マスタード,オニオン,ガーリック,クローブ,オールスパイス,シナモン,ナットメグ,メース,クミン,メッチ,コリアンダー,カルダモン,ディル,フェンネル,アニス,スターアニス,ウコン,オレガノ,セージ,セロリ,タイム,マジョラム,バジル,ローレル,ローズマリー,ペパーミント。【0042】2)使用菌株(1)黄色ブドウ球菌:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)として、SA.A株、SA.E株、S.aureus OCIS 41株、OCIS 49株、OCIS 62株、OCIS 67株、OCIS 91株、およびOCIS 95株、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)としてSA.B株、SA.C株、SA.D株、S.aureusのOCIS 100、OCIS 104、T655、T672、01、03、(2)大腸菌:EC.A株、EC.B株、EC.C株、EC.D株、およびEC.E株、(3)サルモネラ菌:Sal.A株、Sal.B株、Sal.C株、Sal.D株、およびSal.E株、(4)芽胞菌(セレウス菌):BC.A株、BC.B株、BC.C株、BC.D株、BC.E株、および、(5)カンピロバクター:CJ株およびCC株。【0043】3)培養方法及び接種菌液の調製上記菌株をTrypticase Soy broth(TSB)に植菌し、37℃、一日培養した。培養液を滅菌生理食塩水で106cfu/mlに希釈し、接種用菌液とした。【0044】カンピロバクターの場合は、血液寒天培地で微好気下、37℃で2日間培養した菌を滅菌生理食塩水に108cfu/mlに懸濁したものを同様に用いた。【0045】4)香辛料の抗菌活性の一次スクリーニングMueller-Hinton寒天培地(BBL)20mlを含む直径90mlのペトリ皿中の寒天上に各細菌の接種用菌液0.1mlを塗抹し、その表面を乾燥させた後、各香辛料を20〜50mgのせ、37℃で一日培養した。培養後、香辛料の周辺に阻止円がみられたものを一次スクリーニング陽性とした。結果を表1に示す。【0046】【表1】【0047】表1に記載の香辛料は、左欄の使用したすべての菌株に対して抗菌活性があった。【0048】(実施例2)香辛料抽出液の調製および抗菌活性の測定(二次スクリーニング)28種類の香辛料をヘキサン、アセトン、DMSO、および滅菌水に対して、各香辛料を10w/v%となるように加え、1日浸漬し、各上清を抽出液とした。ただし、滅菌水による浸漬は37℃で4〜5時間処理後、メンブランフィルター(アドバンテック)により濾過し、これを抽出液とした。各香辛料抽出液20μlを感受性測定用ディスク(8mm,薄手:アドバンテック)に浸み込ませたものを、前述の一次スクリーニングの場合と同様に各寒天上にのせ、培養し、その阻止円の形成を調べた。結果を表2に示す。【0049】【表2】【0050】大腸菌、サルモネラ菌、およびカンピロバクターに対しては、香辛料抽出物は二次スクリーニングでは抗菌活性が検出されなかったが、後述の濃縮物を用いた表3では活性が示されている。従って、抽出物の濃度が低かったことに由来するものと思われる。【0051】黄色ブドウ球菌(MSSA、およびMRSA)、およびセレウス菌の上記使用したすべての菌株に対して、表2に記載の香辛料のヘキサン、アセトン、DMSOおよび水の溶媒抽出物はすべて抗菌活性を有していた。【0052】(実施例3)ディスク法による香辛料抽出液のMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)の測定一次スクリーニングと二次スクリーニングにより抗菌活性を有する可能性が考えられる香辛料抽出濃縮物(香辛料をヘキサンで抽出し、ヘキサンを真空下で除去したもの)についてのMIC測定を行った。各抽出濃縮物をDMSOに加え、DMSO10%液を作製し、これを原液としてDMSOにより順次2倍希釈液を作成した。各希釈液を前述のディスクに吸収させ、以下一次スクリーニングと同様に菌株を塗抹した寒天上にのせ、培養後ディスクの周辺の阻止円形成を調べた。各細菌に対し、阻止円のみられる希釈系列のうち、最大の希釈倍率すなわち最小の濃度をディスク法によりMICとした。食中毒菌に対する抗菌活性を表3に、黄色ブドウ球菌(MRSAとMSSA)に対する抗菌活性を表4に示す。【0053】【表3】【0054】【表4】【0055】(実施例4)香辛料としてオールスパイス、シナモン、クローブ、ナットメグ、マジョラム、オレガノ、ローズマリー、およびセージを用い、それぞれの重量に対して、10倍量のエタノールを加え、室温で16時間攪拌抽出し、ヌッチェで減圧ろ過した。ろ液の、香辛料のエタノール抽出液を、エタノール濃度が80V/V%となるように滅菌水で希釈し、各溶液2mlを滅菌試験管にとり、各溶液に20μlの感受性測定用菌液(108cells/ml)を添加し、直ちに攪拌して、添加後10秒、20秒、30秒、1分、および2分後に、セレウス菌の場合にはさらに、5分、10分および15分後に、その50μlを3〜4mlのTSB培地に加え、37℃で1〜2日培養した。培養後1白金耳を寒天培地に塗布してコロニーを形成させることにより、抗菌力を測定した。表5にその結果を示す。【0056】なお、感受性測定用菌液はTSB培地で、37℃で、4〜5時間静置培養し、同TSB培地で約108cfu/mlに希釈したものを用いた。【0057】【表5】【0058】表5に示すように、試験した細菌は、セレウス菌を除き、80%のエタノール濃度でも10秒以内で死滅した。セレウス菌はアルコールにも耐性であるが、クローブおよびローズマリーのエタノール抽出液は、それぞれ、10秒以内で、および120秒で、セレウス菌を死滅させた。【0059】なお、表には示していないが、各香辛料のエタノール抽出液は、抗菌活性を有することは確認している。【0060】セレウス菌について、さらに検討した。結果を表6に示す。【0061】【表6】【0062】表6に示すように、各抽出液は、セレウス菌に対して、抗菌活性に差があった。しかし、ローズマリーのエタノール抽出液は、すべての試験した菌株に対して、抗菌活性を有していた。なお、この表は、80%に希釈したエタノール抽出物で10秒間(ただし、BC.A株に対してのみ120秒間)処理した場合の結果であり、ローズマリーが芽胞菌に対して有効であることが認められた。【0063】さらに、ローズマリーのエタノール抽出液は、複数種のセレウス菌に対して抗菌活性を示すことが認められた。【0064】以上の結果、オールスパイス、シナモン、クローブ、ナットメグ、マジョラム、オレガノ、ローズマリー、セージがMRSAに抗菌性を示す。特に、これらの香辛料のうち、ローズマリーとセージの抽出濃縮液はMRSA活性が高い抗菌力を示す。また、クローブ、シナモン、オレガノは、食中毒菌にも抗菌活性を有することから食中毒の予防に有効に利用し得る。【0065】また、セレウス菌のような芽胞菌にも香辛料又はその抽出物が有効であることがわかり、食中毒の予防に有効に利用し得る。【0066】【発明の効果】本発明のMRSA、食中毒菌あるいは芽胞形成細菌に対しても抗菌活性を有する香辛料あるいは抽出物は、安全性が高いため、医薬品としての用途以外にも、感染防止、予防を目的とした消毒・殺菌剤、除菌効果のある繊維、室内の洗浄、食器の洗浄等への利用に用いることができ、あるいは、食品へ直接添加することもできる。 メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)を除菌するための抗菌剤であって、クローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、およびセージからなる群から選択される香辛料を含有する、抗菌剤。 メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)を除菌するための抗菌剤であって、クローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、およびセージからなる群から選択される香辛料の抽出物を含有する、抗菌剤。 前記抽出物が、ヘキサン抽出物、DMSO抽出物、アセトン抽出物および滅菌水抽出物からなる群より選択される、請求項2に記載の抗菌剤。 前記抽出物が、クローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、またはセージのヘキサン抽出物である、請求項2に記載の抗菌剤。 前記抽出物が、クローブ、オールスパイス、オレガノ、シナモン、マジョラム、ローズマリー、ナットメグ、またはセージのエタノール抽出物である、請求項2に記載の抗菌剤。


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