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タイトル:特許公報(B2)_オキシム化合物の酸化方法
出願番号:1994211312
年次:2005
IPC分類:7,C07C45/27,C07C47/02,C07C47/21,C07C47/42,C07C47/54,C07C49/403,C07C49/78,C07C49/786,C07H13/06


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吉原 和雄 品田 哲郎 JP 3636379 特許公報(B2) 20050114 1994211312 19940905 オキシム化合物の酸化方法 サントリー株式会社 000001904 石田 敬 100077517 戸田 利雄 100088269 西山 雅也 100082898 吉原 和雄 品田 哲郎 20050406 7 C07C45/27 C07C47/02 C07C47/21 C07C47/42 C07C47/54 C07C49/403 C07C49/78 C07C49/786 C07H13/06 JP C07C45/27 C07C47/02 C07C47/21 C07C47/42 C07C47/54 C07C49/403 A C07C49/78 C07C49/786 C07H13/06 特開昭59−13781(JP,A) 特開昭55−89235(JP,A) PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,JOHN WILEY & SONS, INC.,1999, P.355-357 10 1996073392 19960319 12 20010905 松本 直子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、オキシム化合物を二酸化マンガンで酸化してカルボニル化合物に変換する方法に関する。この方法は、例えば、化学反応においてカルボニル基を保護したい場合に、カルボニル基をヒドロキシイミノ基に変換せしめて保護し、所望の反応を行わせた後に、ヒドロキシイミノ基を二酸化マンガンで酸化してカルボニル基を再生するカルボニル基の保護及び脱保護に効果的に利用することができる。【0002】【従来の技術】カルボニル基を含むケトンまたはアルデヒドをヒドロキシルアミンと反応させると、ケトキシムまたはアルドキシムのオキシム化合物を与える。これらのオキシム化合物は、ホルムアルドキシムを除き、一般に安定であり、古くからケトン、アルデヒド類の同定に用いられてきた。一方で、オキシム化合物からカルボニル基を再生してケトンまたはアルデヒドに変換することは、オキシム化合物の安定性のために困難とされ(例えば、「新実験化学講座14巻・有機化合物の合成と反応 V」 日本化学会編・2517〜2534頁 丸善・1978年参照)、数多くの方法が報告されている(例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis” 2nd Ed., John Wiley &Sons, Inc., Toronto, 1991 214〜215頁 1991年)。それにも拘わらず、オキシム化合物をカルボニル基の保護に用いることは一般的ではなかった。【0003】【発明が解決しようとする課題】以上の現状に鑑み、ヒドロキシイミノ基を簡便な方法により、カルボニル基に変換せしめる方法を開発し、例えばオキシムのカルボニル基の保護基としての利用を図れるようにすることが、本発明が解決すべき課題である。【0004】【発明を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく研究をすすめ、化学合成に広く利用されている二酸化マンガンの酸化作用に注目し、種々のオキシム化合物に二酸化マンガンを反応させ、薄層クロマトグラフィー(TLC)で対応するカルボニル化合物の生成をモニターした。その結果、アッテンバロー等(Attenburrow等、J.Chem.Soc.1094頁,1952年)の方法で活性化した二酸化マンガンを、好ましくは重量比でオキシム化合物の約20倍量以上添加し、例えば室温で15分間以上反応させることにより、オキシム化合物が収率良く酸化されて、対応するカルボニル化合物に変換されることを見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明によれば、温和な条件下で、オキシム化合物を活性化二酸化マンガンで酸化して対応するカルボニル化合物へ変換する方法を提供することができる。【0005】本発明に従ってカルボニル化合物に変換されるオキシム化合物としては、代表的にはアルドキシム及びケトキシムをあげることができ、これらは具体的には下記一般式(1)及び(2)で表される。R1 −CH=N〜OH (1)R2 −(R3)C=N〜OH (2)(式中、R1 は、置換されていてもよい、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数6〜30のアリール基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数7〜30のアラルキル基、置換されていてもよい飽和または不飽和の、好ましいヘテロ原子として、硼素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子または珪素原子を含む3〜10員単環複素環基またはこれらの単環複素環が縮合した縮合複素環基を示し、R2 及びR3 は、独立して、置換されていてもよい、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数6〜30のアリール基、置換されていてもよい、好ましくは炭素数7〜30のアラルキル基、置換されていてもよい飽和または不飽和の、好ましいヘテロ原子として、硼素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子または珪素原子を含む3〜10員単環複素環基またはこれらの単環複素環が縮合した縮合複素環基、或いは、R2 及びR3 が一緒になって、置換されてもよい飽和または不飽和の、好ましくは炭素数5〜30の環状炭化水素基、または置換されていてもよい飽和または不飽和の、好ましいヘテロ原子として、硼素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、リン原子または珪素原子を含む3〜10員単環複素環基またはこれらの単環複素環が縮合した縮合複素環基を示す。)但し、上記の「置換されていてもよい」という表現は二酸化マンガンとは反応しない基か、又は反応しないように保護された基又は官能基で置換されていてもよいことを意味する(実験化学講座23,第4版,有機合成V,22〜30頁「酸化反応」参照)。このような保護すべき反応性基としては、例えばアミノ基、アリルアルコール類、ベンジルアルコール類及びフェノール類の水酸基、ヒドラジン、ヒドラゾンなどがあげられる。なお上記オキシム化合物の例としては、アルデヒド糖のオキシムであるアルドースオキシム、ケトン糖のオキシムであるケトースオキシムもあげることができる。【0006】本発明に従って、オキシム化合物を酸化して対応するカルボニル化合物へ変換するには、オキシム化合物を活性化二酸化マンガンと反応しない溶媒に溶解し、これに活性化した二酸化マンガンを添加して反応させる。ここで、反応に用いる活性化二酸化マンガンと反応しない溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が例示され、原料オキシム化合物の溶解性を考慮して適宜選択することができる。【0007】本発明の反応に用いる活性化二酸化マンガンは、例えば上記のアッテンバロー等の方法で二酸化マンガンを活性化する必要がある。二酸化マンガンの活性化方法は具体的には以下の通りである。即ち、上記文献に従って、過マンガン酸カリウム960gを熱水6リットルに溶解し、これに硫酸マンガン(II)四水和物1110gを水1.5リットルに溶解した溶液と40%水酸化ナトリウム溶液1.17リットルを同時に加え、4時間攪拌した後遠心分離し、固形物を濾液が無色になるまで水洗した後、100〜120℃で乾燥して、使用前に粉砕する。このような活性化二酸化マンガンは、例えばコダック社から活性化二酸化マンガン(製品名:“Manganese Dioxide, Activated”)として市販されているので、これをそのまま使用することができる。【0008】この反応において、活性化二酸化マンガンは溶媒に溶解しないため、本反応は、懸濁液中の不均一系での反応である。従って、本反応を遂行するためには、過剰量の活性化二酸化マンガンを添加し、反応液を攪拌する必要がある。ここで、活性化二酸化マンガンの添加量は、重量比で原料のオキシム化合物の約20倍量以上であることが望ましい。これより少量の添加では、反応速度が低下する。この反応の反応温度は、通常は室温で充分であるが、反応を促進するために、原料および生成物が分解しない範囲で加温することも可能である。【0009】反応時間は、室温で反応させる場合は通常15分間程度で充分であるが、例えばTLC等で、反応生成物であるカルボニル化合物を確認しながら、反応終了時点を決定すれば良い。この場合、原料であるオキシム化合物が残存していれば、活性化二酸化マンガンを追加して、さらに反応させる。【0010】反応終了後、セライト等の濾過助剤を加えて反応後の不溶物を濾別し、濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣を常法に従って、結晶化、クロマトグラフィー等で精製することにより、目的物である、対応するカルボニル化合物を得ることができる。【0011】本発明の酸化反応は、オキシム化合物の立体異性に関係することなく、対応するカルボニル化合物を収率良く与えることができる。また、以下の実施例5および6に示すように、ケトオキシムの場合もアルドオキシムの場合と同様に、対応するカルボニル化合物を収率良く与えることができる。この反応は、以下の実施例6に示すように、フェニル基のようなバルキーな基に挟まれたカルボニル基を有するベンゾフェノンの場合にも、ベンゾフェノンオキシムからベンゾフェノンを与えるので、本発明の酸化反応は、種々のオキシム化合物に適用できる有用な反応と考えられる。さらに、以下の実施例1に示すように、シトラールオキシム(オレフィン異性体比=58:42)のシトラールへの酸化の場合に、その異性体比は反応後も完全に保持されていた。一般にアリルアルコールのアルデヒドへの酸化反応においては、オレフィンの異性化は認められない(例えば「実験化学講座第4版23巻」 日本化学会編・21〜30頁 丸善・1991年参照)とされているので、本発明の酸化反応においても、オレフィン部分の異性化は起こらないものと考えられる。【0012】前述の如く、本発明によれば、本発明の酸化反応の応用として、オキシムで保護したカルボニル基の脱保護の方法を提供することができる。即ち、保護すべきカルボニル化合物を、例えば通常の方法に従ってヒドロキシルアミンと反応させて対応するオキシムとする(例えば前述の“Protective Groups in Organic Synthesis”214〜215頁参照)。この反応において、必要に応じて、ヒドロキシルアミンに代えて、例えばO−ベンジルオキシルアミンのようなO−置換オキシルアミンを用いれば、オキシム水酸基を保護したオキシムとすることができる。次いで、所望の反応を遂行し、オキシム水酸基を保護したオキシムの場合は、このオキシム水酸基を脱保護した後に、本発明の方法により活性化二酸化マンガンでオキシムを酸化してカルボニル基を再生すれば、目的とするカルボニル化合物を得ることができる。【0013】本発明の、オキシムで保護したカルボニル基の脱保護の方法は、一般の有機合成反応において、広く応用が可能な方法であるが、特に、以下の実施例1および実施例2に示すように、テルペノイドの合成の分野および以下の実施例8に示すように、糖化学の開環糖類の合成の分野において、有効に応用することができる。例えば、従来の方法で、2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトースを得るには、D−ガラクトースを濃塩酸中エタンチオールで処理してジチオアセタール体とし、これをピリジン中無水酢酸で糖の水酸基を保護してペンタアセチル体とした後に、水銀、炭酸カドミニウムまたは臭素等で脱保護する方法が知られている(例えばMethods Carbohydr. Chem., Vol 2(1963)参照)。しかし、この方法では、保護・脱保護いずれの段階においても、刺激性かつ有毒な試薬を大量に使用するため、実用面で問題があった。しかし、本発明の酸化反応を応用すれば、例えば、以下の実施例8に示すように、D−ガラクトースをベンジルオキシアミンと反応させて、ベンジルオキシム体とした後にピリジン中無水酢酸で処理してペンタアセチルベンジルオキシム体とし、これを接触還元でベンジル基を脱保護したペンタアセチルオキシム体とし、これを本発明の活性化二酸化マンガンを用いる酸化方法でアルデヒド体とすれば、目的とする2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトースを容易に得ることができる。【0014】後記実施例8では、オキシム水酸基の保護基としてベンジル基を、糖の水酸基の保護基としてアセチル基を用いたが、これらの水酸基を区別して脱保護することが可能である限りにおいて、これらの水酸基の保護基として、例えば、2−メトキシエトキシメチル基(MEM),メトキシメチル基(MOM),メチルチオメチル基(MTM),テトラヒドロピラニル基(THP),1−エトキシエチル基(EE),1−(2−クロロエトキシ)エチル基(Cee),トリメチルシリル−エチル基(TMS−Et),t−ブチル基(t−But),2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基(SEM)等のエーテル型保護基、ベンジル基(Bn),p−メトキシフェニルメチル基(MPM),3,4−ジメトキシベンジル基(DMPM),ベンジルオキシメチル基(BOM),p−ニトロフェニル基(pNP),トリチル基(Tr),p−ニトロベンジル基(pNB)等のアリールエーテル型保護基、トリメチルシリル基(TMS),t−ブチルジメチルシリル基(TBDMS),トリイソプロピルシリル基(TIPS),トリエチルシリル基(TES)等のシリルエーテル型保護基等の、一般的な保護基を用いることができる。また、糖の水酸基の保護基としては、上記の保護基の他に、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、フェナシル基等のアシル型保護基を用いることも可能である。【0015】【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。【0016】実施例1:シトラールオキシムのシトラールへの変換ステップ1:シトラールオキシムの合成シトラール1.52g(10mmol,異性体比E:Z=58:42)のエタノール溶液(10ml)に、無水酢酸ナトリウム1.03g(12mmol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩834mg(12mmol)を加えた後、室温で16時間攪拌した。反応溶液に精製水50mlを加え、ジクロロメタン25mlで2回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥の後、減圧下に溶媒を留去して、標題化合物の4種類の異性体(E−syn,E−anti,Z−synおよびZ−anti)の混合物1.82gを得た(収率98%)。生成物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、8.06(37/100H,d,J=10Hz),8.03(27/100H,d,J=10Hz),7.36(21/100H,d,J=10Hz),7.33(15/100H,d,J=10Hz),6.52(42/100H,brd,J=10Hz),5.92(58/100H,brd,J=10Hz),5.10(1H,brs),2.3−2.1(4H,m),1.92−1.82(3H,m),1.68(3H,s),1.61(3H,s)であり、オキシム基に隣接するプロトンの面積比より、4種類の異性体の混合比は、E−syn:E−anti:Z−syn:Z−anti=37:21:27:15であることが判明した。【0017】ステップ2:シトラールオキシムのシトラールへの変換ステップ1で得たシトラールオキシム異性体混合物100mg(0.54mmol)のn−ヘキサン溶液(10ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)2gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して淡黄色油状物質68mgを得た(収率83%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、9.99(58/100H,d,J=7.6Hz),9.90(42/100H,d,J=7.6Hz),5.88(1H,m),5.07(1H,m),2.24−2.18(4H,m),2.16(174/100H,s),1.97(126/100H,s),1.68(3H,s),1.59(3H,s)であり、シトラール標品の値と一致した。また、E:Z=58:42の異性体比も保持されていた。【0018】実施例2:β−シクロシトラールオキシムのβ−シクロシトラールへの変換ステップ1:β−シクロシトラールオキシムの合成β−シクロシトラール(シグマ社製、純度70%)760mgを、実施例1のステップ1と同様の条件下に、無水酢酸ナトリウム510mg(6mmol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩417mg(6mmol)と処理して得られた生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=4/1)で精製して無色結晶473mgを得た(収率81%)。精製物は単一のオキシム異性体として得られ、重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、7.85(1H,s),1.94(2H,m),1.66(3H,s),1.50(2H,m),1.36(2H,m),1.00(6H,s)であった。【0019】ステップ2:β−シクロシトラールオキシムのβ−シクロシトラールオキシへの変換ステップ1で得たβ−シトラールオキシム64mg(0.38mmol)のヘキサン溶液(5ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)1gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して淡黄色油状物質51mgを得た(収率91%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、10.13(1H,s),2.19(2H,t,J=6.4Hz),2.09(3H,s),1.64−1.60(2H,m),1.45−1.43(2H,m),1.20(6H,s)であり、β−シクロシトラール標品の値と一致した。【0020】実施例3:ベンズアルデヒドオキシムのベンズアルデヒドへの変換ステップ1:ベンズアルデヒドオキシムの合成ベンズアルデヒド1.06gを、実施例1のステップ1と同様に処理して、無色油状物質1.17gを得た(収率97%)。生成物は単一のオキシム異性体として得られ、重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、8.14(1H,s),7.85(2H,m),7.38(3H,m)であった。【0021】ステップ2:ベンズアルデヒドオキシムのベンズアルデヒドへの変換ステップ1で得たベンズアルデヒドオキシム80mg(0.38mmol)のn−ヘキサン溶液(8ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)2gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して淡黄色油状物質59mgを得た(収率84%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、10.03(1H,s),7.89(2H,brd,J=7.6Hz),7.64(1H,brt,J=7.6Hz),7.54(2H,t,J=7.6Hz)であり、ベンズアルデヒド標品の値と一致した。【0022】実施例4:ラウリルアルデヒドオキシムのラウリルアルデヒドへの変換ステップ1:ラウリルアルデヒドオキシムの合成ラウリルアルデヒド1.84gを、実施例1のステップ1と同様に処理して、無色結晶1.86gを得た(収率93%)。生成物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、7.42(1/2H,t,J=5.6Hz),6.71(1/2H,t,J=5.6Hz),2.37(1H,ddd,J=13.2Hz,7.2Hz,5.6Hz),2.19(1H,dd,J=13.6,7.2Hz),1.49(2H,m),1.40−1.20(16H,m),0.88(3H,t,J=6.8Hz)であり、オキシム基に隣接するプロトンの面積比より、生成物はsyn:anti=1:1の混合物であることが判明した。【0023】ステップ2:ラウリルアルデヒドオキシムのラウリルアルデヒドへの変換ステップ1で得たラウリルアルデヒドオキシム92mg(0.5mmol)のn−ヘキサン溶液(8ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)2gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して無色油状物質63mgを得た(収率78%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、9.76(1H,t,J=2H),2.42(2H,td,J=7.2,2Hz),1.63(2H,m),1.3−1.25(16H,m),0.88(3H,t.J=6.8Hz)であり、ラウリルアルデヒドの標品の値と一致した。【0024】実施例5:アセトフェノンオキシムのアセトフェノンへの変換ステップ1:アセトフェノンオキシムの合成アセトフェノン1.2g(10mmol)を、実施例1のステップ1と同様に処理して、無色油状物質1.3gを得た(収率96%)。生成物は単一のオキシム異性体として得られ、重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、8.60(1H,brs),7.63(2H,m),7.38(3H,m),2.29(3H,s)であった。【0025】ステップ2:アセトフェノンオキシムのアセトフェノンへの変換ステップ1で得たアセトフェノンオキシム63mg(0.47mmol)のn−ヘキサン溶液(5ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)1gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して無色油状物質47mgを得た(収率84%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、7.96(2H,d,J=7.6Hz),7.57(1H,t,J=7.6Hz),7.47(2H,t,J=7.6Hz),2.61(3H,s)であり、アセトフェノン標品の値と一致した。【0026】実施例6:ベンゾフェノンオキシムのアセトフェノンへの変換ステップ1:ベンゾフェノンオキシムの合成ベンゾフェノン1.82g(10mmol)を、実施例1のステップ1と同様に処理した後、4時間加熱環流した。反応終了後、同様に処理して、無色結晶1.88gを得た(収率97%)。生成物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、8.95(1H,brs),7.55−7.40(6H,m),7.40−7.32(4H,m)であった。【0027】ステップ2:ベンゾフェノンオキシムのベンゾフェノンへの変換ステップ1で得たベンゾフェノンオキシム98mg(0.5mmol)のn−ヘキサン溶液(5ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)2gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して無色結晶77mgを得た(収率91%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、7.82(4H,d,J=7.6Hz),7.57(2H,t,J=7.6Hz),7.48(4H,t,J=7.6Hz)であり、ベンゾフェノンの標品の値と一致した。【0028】実施例7:2−メチルシクロヘサノンオキシムの2−メチルシクロヘサノンへの変換ステップ1:2−メチルシクロヘサノンオキシムの合成2−メチルシクロヘサノン1.12g(10mmol)を、実施例1のステップ1と同様に処理して、淡黄色油状物質1.18gを得た(収率93%)。生成物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、3.63(1/5H,m),3.12(4/5H,brd,J=12.8Hz),2.40−2.20(1H,m),2.00−1.75(4H,m),1.63−1.45(3H,m),1.16(3/5H,d,J=7.8Hz),1.14(12/5H,d,J=7.8Hz)であり、2位のメチル基のプロトンの面積比より、得られたオキシムは異性体比4:1の混合物であることが判明した。【0029】ステップ2:2−メチルシクロヘサノンオキシムの2−メチルシクロヘサノンへの変換ステップ1で得た2−メチルシクロヘサノンオキシム160mg(1.26mmol)のn−ヘキサン溶液(10ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)3.1gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(n−ヘキサン/エーテル=95/5)で精製して無色油状物質103mgを得た(収率92%)。精製物の重クロロホルム中での400MHzのPMRスペクトル(δppm)は、2.37−2.39(3H,m),2.06(2H,m),1.85(1H,m),1.65(2H,m),1.35(1H,m),1.03(3H,d,J=6.8Hz)であり、2−メチルシクロヘサノンの標品の値と一致した。【0030】実施例8:2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトースの合成ステップ1:2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトース−O−ベンジルオキシムの合成D−ガラクトース1.8g(10mmol)のメタノール溶液(15ml)に、無水酢酸ナトリウム1.03g(12mmol)およびO−ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩1.92g(12mmol)を順次加え、室温で16時間攪拌した。反応溶液に精製水50mlを加えた後、酢酸エチル100mlで2回抽出した。酢酸エチル層を無水マグネシウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去して得られた粗生成物のピリジン溶液(10ml)に、氷冷下に無水酢酸10mlを加え、30分間攪拌した。反応溶液を室温に上昇させ、さらに16時間攪拌したのち、反応溶液を氷(300g)に注ぎ、30分間攪拌して無色結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、精製水、次いで少量のエーテルで洗浄したのち、メタノール/酢酸エチルより再結晶して、標題化合物3.2g(6.4mmol)を単一の異性体として得た(収率64%)。物性値を表1に示す。【0031】【表1】【0032】ステップ2:2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトースオキシムの合成ステップ1で得られたO−ベンジルオキシム1g(2mmol)の、酢酸エチル/メタノール(1:1)溶液(20ml)に、20%水酸化パラジウム600mgを加え、水素ガス雰囲気下(3kg/cm2 )16時間攪拌した。パラジウム触媒を濾別した後、減圧下に溶媒を留去して得られた粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/1)で精製して、標題化合物500mgを無色結晶として得た(収率62%)。PMRスペクトルから、得られたオキシム体は、異性体比1:5の混合物であることが判明した。物性値を表2に示す。【0033】【表2】【0034】ステップ3:2,3,4,5,6−O−ペンタアセチルガラクトースの合成ステップ2で得られたオキシム100mg(0.25mmol)のn−ヘキサン溶液(10ml)に、活性化二酸化マンガン(前記コダック社製)2.4gを加え、室温で15分間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(エーテル)で精製して無色粘凋油状物質68mgを得た(収率70%)。精製物は単一の異性体として得られ、他の異性体はPMRでは確認されなかった。物性値を表3に示す。【0035】【表3】【0036】【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、温和な条件下で、オキシム化合物を酸化することにより容易に対応するカルボニル化合物へ変換する方法を提供することができる。この本発明の酸化反応は、反応の前後で骨格部分の異性化を起こさないため、オキシムをカルボニル基の保護基として用いることを可能とするものであり、反応がオキシムの立体異性に係わりなく短時間で終了しかつ収率も高いので、広く応用が可能な反応であり、特に、骨格部分に二重結合を有するカルボニル化合物の合成および糖化学における種々の反応に敏感な開環糖類の合成の分野において、有効に応用することができる。 ヒドロキシイミノ基(=N〜OH)を有するオキシム化合物を、活性化二酸化マンガンで酸化して、対応するカルボニル化合物に変換することを特徴とするオキシム化合物の酸化方法。 オキシム化合物がアルドキシムである、請求項1に記載の方法。 オキシム化合物がケトキシムである、請求項1に記載の方法。 オキシム化合物が、一般式(1):R1 −CH=N〜OH(式中、R1 は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよい飽和または不飽和の複素環基を示す)で表されるアルドキシムである、請求項1に記載の方法。 オキシム化合物が、一般式(2):R2 −(R3)C=N〜OH(式中、R2 およびR3 は独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の複素環基または、R2 とR3 が一緒になって、置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の環状炭化水素基または置換されていてもよい飽和もしくは不飽和の複素環基を示す)で表されるケトキシムである、請求項1に記載の方法。 オキシム化合物がアルドースオキシムである、請求項1に記載の方法。 オキシム化合物がケトースオキシムである、請求項1に記載の方法。 カルボニル基をヒドロキシイミノ基で変換して保護したオキシム化合物を請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化方法を用いて酸化することによりカルボニル基を再生することを特徴とするカルボニル基の脱保護方法。 カルボニル基をヒドロキシイミノ基で変換して保護したオキシム化合物を請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化方法を用いて酸化することによりカルボニル基を再生することを特徴とするオキシムのカルボニル保護基としての利用方法。 カルボニル基をヒドロキシイミノ基で保護したオキシム化合物を請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化方法で酸化することによりヒドロキシイミノ基で保護したカルボニル基を脱保護する方法を用いることを特徴とする開環糖類の合成方法。


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