タイトル: | 特許公報(B2)_抗ウレアーゼ剤 |
出願番号: | 1994201184 |
年次: | 2005 |
IPC分類: | 7,A61K31/44,A61P1/04,A61P1/16,A61P3/00,A61P7/00,A61P39/02,A61P43/00,C07D401/12 |
土屋 満美子 今村 理佐 小橋 恭一 JP 3685508 特許公報(B2) 20050610 1994201184 19940826 抗ウレアーゼ剤 エーザイ株式会社 000000217 土屋 満美子 今村 理佐 小橋 恭一 JP 1993235848 19930830 20050817 7 A61K31/44 A61P1/04 A61P1/16 A61P3/00 A61P7/00 A61P39/02 A61P43/00 C07D401/12 JP A61K31/44 A61P1/04 A61P1/16 A61P3/00 A61P7/00 A61P39/02 A61P43/00 111 C07D401/12 7 A61K 31/44 A61P 1/04 A61P 1/16 A61P 3/00 A61P 7/00 A61P 39/02 A61P 43/00 111 C07D401/12 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN) MEDLINE(STN) JICSTファイル(JOIS) 特開昭64−006270(JP,A) 特開平01−226814(JP,A) 特開平02−076812(JP,A) NAGATA,K. ,Potent Inhibitory Action of the Gastric Proton Pump Inhibitor Lansoprazole against Urease Activity,Antimicrob Agents Chemother,1993年 4月,VOL.37,NO.4,pp.769-774 3 1995118153 19950509 9 20010820 安藤 倫世 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、微好気性グラム陰性螺旋状短桿菌であるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、以下 H.pylori)が産生するウレアーゼを始め、幅広いウレアーゼを阻害する抗ウレアーゼ剤に関する。【0002】【発明の背景】従来、H.pylori(別名;Campylobacter pylori、略称;C.pylori)が胃潰瘍、十二指腸潰瘍患者の消化管粘膜に存在し、これらの疾患の発症原因、特に再発原因となることが知られている。一方でH.pyloriは強いウレアーゼ活性も有しており、H.pyloriが産生したウレアーゼが胃粘膜障害を直接引き起こす可能性も指摘されている。さらに腸管内において、これらのウレアーゼが尿素を分解して産生したアンモニアは、腸管から吸収されて高アンモニア血症、肝性脳症を発症させる原因となる。【0003】【従来技術】従来、H.pyloriが産生するウレアーゼを阻害可能な薬剤としては、アセトヒドロキサム酸、カプリロヒドロキサム酸、ニコチノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、チオ尿素等が知られている。【0004】またアンチミクロバイアル・エイジェンツ・アンド・ケモセラピー(Antimicrobial Agents and Chemotherapy),37(4),769-774,1993.には、胃酸分泌抑制作用を有する抗潰瘍剤である下記化合物、(1) 2−[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール(一般名、ランソプラゾール)(2) AG−2000(ランソプラゾールの活性誘導体)(3) 5−メトキシ−2−(4−メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル)メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール(一般名、オメプラゾール)が、H.pylori産生ウレアーゼを阻害することが記載されている。【0005】【本発明が解決しようとする問題点】従来のH.pylori産生ウレアーゼを阻害することが可能な薬剤の中で、実際に臨床使用されているのは抗悪性腫瘍剤であるヒドロキシ尿素のみであり、ヒドロキシ尿素は骨髄機能抑制等の重篤な副作用発現が報告されている。【0006】またアンチミクロバイアル・エイジェンツ・アンド・ケモセラピーに開示されているランソプラゾール等の抗潰瘍剤の抗ウレアーゼ活性は、アセトヒドロキサム酸と比較して2倍程度であり、より強い活性が望まれる。【0007】このような背景のもとに、常用量で十分な抗H.pylori産生ウレアーゼ作用を有し、かつ長期間使用しても安全性の高い薬剤の開発が望まれていた。【0008】そこで本発明者らは、前記の要件を備えている化合物について鋭意研究を行ってきた結果、下記に示す化合物が抗H.pylori産生ウレアーゼ剤として所期の目的を達することを見い出し本発明を完成した。したがって、本発明の目的はH.pylori産生ウレアーゼを阻害する、臨床的有用性の高い抗ウレアーゼ剤、高アンモニア血症予防・治療・改善剤または肝性脳症予防・治療・改善剤を提供することにある。【0009】本発明化合物は特開平1-6270号公報に記載されている化合物であり、胃酸分泌抑制作用を有している化合物であるが、本発明者らはその後の研究により、意外にもH.pylori産生ウレアーゼ阻害作用を有していることを見い出し、本発明を完成したものである。【0010】【課題を解決するための手段】本願発明にかかる化合物は、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールであり、次の化学構造式で表される。【0011】【化2】【0012】本発明は上記の化合物もしくはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗ウレアーゼ剤、高アンモニア血症予防・治療・改善剤または肝性脳症予防・治療・改善剤である。なお本発明における薬理学的に許容される塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、過塩素酸塩などの無機酸の付加塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩などの有機酸の付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属の付加塩を挙げることができる。これらのうち最も好ましい塩としては、ナトリウム塩を挙げることができる。【0013】次に、本発明で用いる化合物の物理化学的性状を述べる。【0014】【表1】【0015】なお本発明化合物は、上記公開公報(特開平1-6270号)の実施例32記載の方法により製造することができる。【0016】次に本発明の効果を示すため、H.pyloriが産生するウレアーゼに対する阻害作用試験例を掲げる。【発明の効果】【抗ウレアーゼ活性試験】阻害作用試験例1(方法)(1) H.pylori(ATCC43504)産生ウレアーゼの調製ブルセラブロス(BBL) (+10%FCSで)微好気性条件下(キャンピパック、三菱瓦斯化学社製)、37℃、3〜5日間培養を行った。培地を遠心分離(20,000×g、20分)し、沈殿を20mM-リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、H.pylori産生ウレアーゼ懸濁液とした。さらに超音波破砕後、遠心分離(20,000×g、20分)し、上清をウレアーゼ抽出液とした。また0.125mM-チオール化合物(β−メルカプトエタノール)を酵素希釈時に添加した。【0017】(2) なた豆ウレアーゼの調製なた豆粉末 10gに 0.1mM-リン酸緩衝液(pH7.0) 50mlを加え、2分間振とう後、遠心分離(20,000×g、20分)し、その上清をなた豆抽出液とした。【0018】(3) 試料調製法2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールは水に溶解した。【0019】(4) 阻害活性測定法(1)で調製したウレアーゼ抽出液 50μlに、(3)で調製した試料溶液 50μlを加え、37℃で15分間反応させた。ここに400mM-尿素/リン酸緩衝液(pH7.0) 300μlを加え、37℃で30分間反応させた。1N-硫酸 100μlを加えて反応停止し、グルタメート・デヒドロゲナーゼ法により反応液中のアンモニアを定量した。同様にして、(2)で調製したなた豆ウレアーゼに対する、本発明化合物の阻害活性を測定した。【0020】(結果)以下に、試験例1の方法で測定した、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールのウレアーゼ阻害活性を下表に示す。【0021】【表2】【0022】阻害作用試験例2(方法)(1) H.pylori(ATCC43504)産生ウレアーゼの調製法H.pylori(ATCC43504)を10%牛胎仔血清を添加したブルセラブロスで微好気性条件下、37℃で4日間培養した。遠心分離により集菌し、Citrate(pH5.0),Phosphate(pH7.0),trietanolamine(pH8.5)緩衝液に懸濁した。菌懸濁液または超音波処理した上清をウレアーゼ液とした。(2) 阻害実験法ウレアーゼと阻害剤(2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール、オメプラゾールまたはランソプラゾール)を、37℃で15分間プレインキュベーションした後、各緩衝液に溶かした尿素を加え、37℃で30分間反応させた。反応停止後、生成したアンモニアをインドフェノール(Indophenol)法またはグルタメート・デヒドロゲナーゼ(Glutamate dehydrogenase)法で定量した。【0023】(結果)以下に、試験例2の方法で測定した、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール、オメプラゾールおよびランソプラゾールの、H.pylori産生ウレアーゼ阻害活性を下表に示す。【0024】【表3】【0025】阻害作用試験例3(方法)(1) P.mirabilis産生ウレアーゼ阻害実験法試験例2の(1)および(2)と同様にして、P.mirabilis産生ウレアーゼに対する阻害作用を測定した。【0026】(結果)以下に、試験例3の方法で測定した、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール、オメプラゾールおよびランソプラゾールのウレアーゼ阻害活性を下表に示す。【0027】【表4】【0028】上記表2、3および4から、本発明化合物は、H.pylori産生ウレアーゼに対し、アセトヒドロキサム酸、カプリロヒドロキサム酸、ニコチノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、オメプラゾールおよびランソプラゾールよりも優れた阻害活性を有することが明らかである。またアンチミクロバイアル・エイジェンツ・アンド・ケモセラピーに開示されているランソプラゾール等の抗潰瘍剤は、対照物質であるアセトヒドロキサム酸の2倍程度の阻害作用しかないが、本発明化合物は約100倍強い活性を有し、優れた臨床効果が期待できる。【0029】さらに表2および4から、本発明化合物は、なた豆ウレアーゼに対する阻害作用も有しており、幅広い種類のウレアーゼに対して阻害作用を示した。【0030】次に本発明化合物の急性毒性試験の結果を示す。【急性毒性試験】7〜8週齢のSlc:SDラットおよびSlc:ICRマウスを各群雌雄各5匹用い、静脈内および経口投与による単回投与毒性試験を実施した。(媒体;生理食塩水)LD50値を下表にまとめる。【0031】【表5】【0032】これらのLD50値は、経口投与での臨床用量の約5000倍以上であり、安全性は極めて高い。【0033】上記の実験例から明らかなように、本発明化合物は優れたウレアーゼ阻害作用を有し、従ってH.pylori産生ウレアーゼを阻害する、臨床的有用性の高い抗ウレアーゼ剤、高アンモニア血症予防・治療・改善剤または肝性脳症予防・治療・改善剤として有用である。【0034】具体的には、H.pyloriが産生するウレアーゼを阻害しつつ、かつ高アンモニア血症または肝性脳症を予防・改善・治療できる安全性の高い薬剤として、長期間投与することが可能である。【0035】本発明化合物を、抗ウレアーゼ剤として患者に投与する際の投与経路、投与量は、患者の症状、潰瘍・胃炎の種類・程度、年齢、心・肝・腎機能などにより異なり限定されないが、通常成人では、1日0.01〜100mgを、好ましくは0.1〜80mgを、より好ましくは1〜60mgを、さらに好ましくは5〜40mgを経口投与する。【0036】投与剤型としては、例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などが挙げられる。製剤化の際は通常の製剤担体を用いて常法により製造するすることもできるが、より好ましくは特開平1-290628号公報および特開平2-22225号公報に記載された方法により安定な製剤とすることができる。【0037】常法により経口用固形製剤を調製する場合は、主薬に賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とする。【0038】賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素などが、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、崩壊剤としては、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末等が用いられる。これらの錠剤、顆粒剤には糖衣、その他必要により適宜コーティングすることは勿論差し支えない。【0039】次に本発明化合物である、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールを有効成分とする経口剤の製剤例を実施例として示す。下記の処方例と腸溶被覆によりそれぞれの製剤とするが、本発明の実施例がこれらに限定されないことは言うまでもない。【0040】【実施例】実施例1 2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールの錠剤下記処方に従い、2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾール(I)、マンニトールおよび酸化マグネシウムを混合し、エタノールに溶解したヒドロキシプロピルセルロースを加えて造粒・乾燥後、28メッシュのふるいで篩過した(A)。次に結晶セルロースとコーンスターチを混合し、水に溶解したヒドロキシプロピルセルロースを加えて造粒・乾燥後、28メッシュのふるいで篩過した(B)。上記(A)、(B)とカルボキシメチルセルロース・カルシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウムを混合し、単発打錠機(岡田精工社製)によって素錠を得た。【0041】【表6】【0042】上記素錠に、常法に従って腸溶被覆を施し、錠剤を得た。 下記化学式で表される2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗ウレアーゼ剤。 2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする高アンモニア血症予防・治療・改善剤。 2−[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチルピリジン−2−イル]メチルスルフィニル−1H−ベンズイミダゾールまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする肝性脳症予防・治療・改善剤。