生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_昆虫の死亡時期の判定法
出願番号:1994198280
年次:2005
IPC分類:7,C12Q1/46


特許情報キャッシュ

中 桐 裕 幸 石 田 功 JP 3675499 特許公報(B2) 20050513 1994198280 19940823 昆虫の死亡時期の判定法 麒麟麦酒株式会社 000253503 佐藤 一雄 100064285 小野寺 捷洋 100067079 中村 行孝 100091487 中 桐 裕 幸 石 田 功 20050727 7 C12Q1/46 JP C12Q1/46 7 C12Q 1/00-70 JICSTファイル(JOIS) EUROPAT(QUESTEL) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平04−152898(JP,A) 食品衛生学雑誌,1995年,36(3),413-6 Archives of Toxicology,1978年,40(2),155-8 4 1996056696 19960305 6 20010501 阪野 誠司 【0001】〔発明の背景〕【産業上の利用分野】本発明は、昆虫の死亡時期の判定方法に関する。より詳細には、飲食品(たとえばビールその他の飲料、固形食品)等の試料中に混入した昆虫の死亡時期(ひいては混入時期)を判定するための方法に関するものである。【0002】【従来の技術】死亡昆虫が食品に混入していた場合、食品製造メーカーは消費者から苦情を受けることになる。その際、いつの時点で昆虫が混入したかの判定が、最大の問題である。特に、昆虫混入後の製造工程に加熱工程がないものについては混入時期の判定が非常に困難であった。混入が認められた場合、製品の製造中に混入した場合と製品使用時(飲食時)に混入した場合によって、その取扱いが大きく異なる。つまり、前者の場合はメーカーが全ての製造工程を確認し再度このような混入事故がないようにすべく努力する必要があるのに対し、後者の場合はメーカー側の責任はなく消費者にその事実を伝えれば良いことになる。本目的のために酵素化学的ないくつかの方法が提案されている。これらは、「食品・薬品の混入異物対策」((株)新思想社発刊、発刊日1984年12月10日)の第182〜190頁に詳しく記載されている。それらの方法は昆虫が体内に持っている酵素活性を指標にするものであるが、その際に使用する酵素を選定するためには多くの条件をクリアしなくてはならない。この文献で提案されているカタラーゼおよびコリン・エステラーゼにおいてもいくつかの問題点がある。カタラーゼの場合は活性値が死後再度増加するという問題があり、またコリン・エステラーゼの場合は死後20日以上経過しても活性の低下が少なく、耐久性が強すぎるという問題点がある。【0003】〔発明の概要〕【発明が解決しようとする課題】本発明は、昆虫の死亡時期を正確に判定するのに好適な酵素を指標とする新しい判定方法を提供することを目的とするものである。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、昆虫体内に存在する数多くの酵素の中から(i)適度な耐久性、(ii)昆虫個体間でのバラツキの少なさ、(iii)ビールのような酸性水中でも活性が残存すること、(iv)酵素活性が復活しないこと、を選択の条件として検討した結果、アセチルコリン・エステラーゼ(AChE)がその条件を満足させ実用化できることを見出し、この知見をもとに本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明による昆虫の死亡時期の判定法は、死亡昆虫のアセチルコリンエステラーゼの残存活性を測定し、該残存活性値から死亡後の期間を判定することにより、試料中に存在する昆虫の死亡時期を判定することを特徴とするものである。【0005】〔発明の具体的説明〕本発明方法は、上述のようにアセチルコリンエステラーゼ(AChE)残存活性を指標として試料中(試料内または表面)に存在する昆虫の死亡時期を判定するものであり、従来用いられていた他の酵素を指標とする方法と比較して極めてバラツキの少ない正確な判定をすることができる。本発明方法における昆虫としては、一般にこれに属する任意のもの(たとえばハエ、ゴキブリ、ハチ、アリなど)が酵素測定の対象となりうるが、この中でも特に製造食品(代表的にはビール)への混入の苦情に関して主要なハエおよびゴキブリが重要となる。本発明において対象となる試料は特に製造食品であるが、このような食品としてはビールをはじめその他の飲料、さらにはゼリーなどの固形食品でも使用可能である。【0006】以下、本発明方法に従って昆虫の死亡時期を判定するための好ましい分析操作手順について説明する。まず試料に含まれる昆虫を取り出し、洗浄液(好ましくは純水)で洗浄する。通常風乾後、適当な緩衝液中でホモジネートして抽出液とする。この際、AChE濃度が高い頭部のみを切断して試料とする方がより好ましい。また、緩衝液としてはpH6.5〜7.5の範囲で塩濃度が100mM以上のものが好ましい。このようなものとして例えば食塩とトリトンX100を含んだリン酸カリウム−EDTA緩衝液(pH6.8)があげられるが、この場合塩濃度が100mM以上で1%(容量%)以上の濃度のトリトンX−100を含んだ緩衝液であれば、酵素活性測定に支障を与えない限り成分の配合割合あるいは他の成分の添加など多少の変更があっても同等の緩衝液として使用することができる。上述のようにして得られた抽出液中のAChEの活性を測定し、この値を、あらかじめ同一昆虫、同一測定条件で死後経時的に酵素活性を求めておいた検量線(図1および2を参照されたい)に照らし合わせて死後の日数を判定すれば良い。AChEの活性測定は、AChE活性量を正確に測定できるものであれば任意の方法を利用することができる。そのような方法の具体例としては、例えばC14でアセチル基をラベルしたヨウ化アセチルコリンを抽出液と反応させて生じたC14酢酸をヨウ化アセチルコリンと分離し、このC14酢酸を定量することによりAChE活性量を測定する方法(The Journal of Neuroscience,3(9),1818-1823(1983 年)参照)などがあげられる。なお、酵素(AChE)反応は通常20〜37℃の範囲の温度条件下で行なわれるが、上述のように同一条件のもとに検量線が作成される限り常温(25℃)程度の温度条件でも正確な酵素活性測定が可能となる。また、用いる方法あるいは測定条件等によって、昆虫の重量による個体差が大きい場合は、蛋白含量あるいは重量等による補正をすればよい。本発明においては、上述のようにして得られたAChE活性値を、あらかじめ作成しておいた検量線(たとえば図1および2参照)と照合させることにより、昆虫の死亡時期を正確に判定しひいてはその混入時期を判定することが可能となる。【0007】【実施例】以下は、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するものであり、これにより本発明が限定されるものではない。実施例1製品ビールに死亡した直後のハエを入れ、ふたをして25℃下で保存した。2、4、6、8、10日後にそれぞれ10匹ずつ、15、20、24、30、60日後にそれぞれ5匹ずつ取り出してサンプルとした。分析は1匹ずつ行なった。まず、純水で洗浄して風乾した後、下表に示した抽出バッファー60μLを加えて全体が均一になるまでホモジネートして抽出液とした。抽出液を活性に応じて5μLあるいは10μLとって、全体で10μLとなるように前記抽出バッファーで希釈した。これに表1に示した反応混合液を90μL加えて37℃、30分間反応させた後、氷冷してから0.1mMエセリン(関東化学社製)1mLを添加、混合して反応を終了させた。この反応終了液をイオン交換カラムに通した。カラムはカチオン交換AG50W−X−12、H型、100〜200メッシュ(バイオ・ラッド社製)を2N水酸化ナトリウム中で45分間、25℃においた後、pH7.0に調製して直径0.5×0.8cmポリプレップカラムに詰めたものである。カラムには反応終了液1mLを流した後さらに0.1mMエセリン1mLを2回流した。計3mLの流出液から1.5mLを取って、5mLのアトムライト(ニューイングランドニュークリア社製)と混合してシンチレーションカウンター(ヒューレットパッカード社製)で測定した。測定結果を図1に示した(図1はそれ自体検量線でありうる)。昆虫個体間でのバラツキが少なく、保存開始時より15日ころまで直線的に活性が低下し、その後の活性は非常に弱くなった。したがって、本分析法により昆虫の死亡後15日以内であれば正確にその死亡時期が判定でき、その結果、昆虫の混入時期が判明できることになる。【0008】実施例2ハエの代わりにゴキブリを用いて、実施例1に準じて、1、2、3、6および30日後のAChE残存活性を測定した。なお、重量の個体差が大きかった為、タンパク量による補正を行なった。バイオラッド社製プロテインアッセイを用いて、測定サンプル中のタンパク量を測定し、それぞれのAChE活性値をこの測定値で割って補正値を求めた。この補正値の結果を図2に示した(図2はそれ自体検量線でありうる)。ゴキブリでもハエ同様に死亡時期の特定が可能であることが明らかとなった。なお、上記の実施例1および2は酸性溶液であるビールを試料とする条件で酵素測定を行なっており、酵素活性保持という観点からはかなり劣悪な条件であると考えることができる。それにもかかわらず本条件で測定可能であったことから、他の飲料あるいは他の食品を試料とする場合についても測定できることは明らかである。【0009】【発明の効果】本発明によれば、試料中の昆虫の死亡時期を判定するにあたり、特にアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を指標として用いたことにより、すなわち、適度な耐久性、昆虫個体間でのバラツキの少なさ、ビールのような酸性水中でも活性が残存すること、酵素活性が復活しないことなどの好適な特質を有するアセチルコリンエステラーゼを指標として用いたことにより、従来用いられていた他の酵素を指標とする方法と比較して極めてバラツキの少ない正確な死亡時期の判定、ひいては混入時期の判定を行なうことができる。【図面の簡単な説明】【図1】昆虫がハエの場合(実施例1)におけるアセチルコリン・エステラーゼ(AChE)活性の経時的変化を示すグラフ。【図2】昆虫がゴキブリの場合(実施例2)におけるアセチルコリン・エステラーゼ(AChE)活性の経時的変化を示すグラフ。 死亡昆虫のアセチルコリンエステラーゼの残存活性を測定し、該残存活性値から死亡後の期間を判定することを特徴とする、試料中に存在する昆虫の死亡時期の判定法。 昆虫が液体試料中に存在する、請求項1記載の方法。 液体試料がビールである、請求項2記載の方法。 昆虫がハエまたはゴキブリである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。


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