タイトル: | 特許公報(B2)_エタノールアミン類緩衝液の安定化方法 |
出願番号: | 1994085694 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C215/08,C07C213/10,C07C215/12 |
土子 敏雄 JP 3598438 特許公報(B2) 20040924 1994085694 19940331 エタノールアミン類緩衝液の安定化方法 株式会社三菱化学ヤトロン 000138277 森田 憲一 100090251 土子 敏雄 20041208 7 C07C215/08 C07C213/10 C07C215/12 JP C07C215/08 C07C213/10 C07C215/12 7 C07C213/10 C07C215/08 C07C215/12 特開平03−043096(JP,A) 特開昭58−153166(JP,A) 5 1995278067 19951024 11 20010215 星野 紹英 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、緩衝液として汎用されているエタノールアミン類緩衝液の安定化方法に関する。また、安定化されたエタノールアミン類緩衝液を使用した試薬溶液にも関する。【0002】【従来の技術】臨床検査の分野において、種々の疾病を正確に判断するための指標として、生体液中に含まれる各種の生理活性物質を測定することが行われており、測定項目毎に多数の診断用試薬が市販されている。これらの試薬は、生体液試料(例えば血清や血漿、尿など)を試薬と混合するだけで試料中に含まれる目的物質由来の信号を分光学的に容易に検出できるように構成されている。特に、酵素反応が関与する場合など、所望する反応系(例えば十分な酵素活性の発現や、発色反応の進行など)が維持できるように構成成分や雰囲気(pH)が設定されており、当然の如く各種緩衝液が用いられている。【0003】例えば、乳酸脱水素酵素(以下LDH)は、心臓、肝、筋肉などに多く分布する酵素で、各種疾患時に血中に遊出されることから、血液などの生体液中のLDHの測定は心疾患、肝疾患の診断や治療の経過観察の指標として重要な項目の一つである。LDHの測定法としては、乳酸を基質として、LDHによってピルビン酸に変え、共存させておいた酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NAD)が還元されて還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NADH)となる変化量を、波長340nm付近で測定することによりLDHを測定する方法が使用されており、日本臨床化学会(以下JSCC)や国際臨床化学連合(以下IFCC)からも勧告法として挙げられている〔臨床化学,第19巻第2号228ページ〜246ページ(1990年6月)〕。一般的に乳酸を基質としたLDHの測定法はpH8.0〜9.5付近のアルカリ性条件下で行われ、その付近に緩衝能のある緩衝液としてエタノールアミン類が汎用され、JSCC勧告法でもジエタノールアミン緩衝液が使用されている。【0004】また、アルカリ性ホスファターゼ(以下ALP)は、骨、小腸、肝、腎、胆管などに多く分布する酵素で、各種疾患時に血中に遊出されることから、血液などの生体液中のALPの測定は肝疾患、骨疾患などの診断や治療の経過観察の指標として重要な項目の一つである。ALPの測定法としては、4−ニトロフェニル燐酸(以下4NPP)を基質として、ALPによって加水分解され、遊離してくる4−ニトロフェノール(以下4NP)の増加量を、波長405nm付近で測定することによりALPを測定する方法が汎用されており、この方法がJSCCやドイツ臨床化学会(以下GSCC)からも勧告法として示されている〔臨床化学,第19巻第2号213ページ〜227ページ(1990年6月);ジャーナルオブ クリニカルケミストリー クリニカルバイオケミストリー,第10巻281ページ〜291ページ(1972年)〕。一般的に4NPPを基質としたALPの測定法はpH9.0〜10.5付近のアルカリ性条件下で行われ、その付近に緩衝能のある緩衝液としてエタノールアミン類が汎用され、JSCC勧告法でも2−エチルアミノエタノール緩衝液が、またGSCC勧告法ではジエタノールアミン緩衝液が使用されている。【0005】【発明が解決しようとする課題】近年、特に試薬形態を供給時から液状とし、ユーザーの作業性を向上させることが求められている。そのため、多くの場合、自動分析機にて使用されるために試薬構成を二試薬系とし、且つ試薬組成物の安定性を長期間(例えば半年から1年間)維持する必要がある。【0006】しかし、エタノールアミン類の緩衝液は、アルカリ性条件下で酸化され経時的に溶液が黄褐色に変色する。LDHやALPの測定は上記のように波長340nm付近や405nm付近で目的物由来の信号を検出することから、緩衝液自体の変色は試薬の初期吸光度を上昇させLDHやALPの測定精度を低下させる結果となり、溶液状態で長期間安定な性能を維持させるには不都合であった。例えば、上記のJSCCの勧告法では、LDHについて試薬調製日から18日後までの安定性を確認しているが、それ以上の長期間の安定性については触れていない。【0007】従って、本発明の目的は、エタノールアミン類緩衝液を用いる液状検出系、例えばLDHやALPの測定用液状試薬を、長期間安定に保存する手段を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】前記の目的は、本発明による、エタノールアミン類緩衝液にキレート剤又はその塩を含有させることを特徴とする、エタノールアミン類緩衝液の安定化方法によって達成することができる。また、本発明は、上記の方法で安定化されたエタノールアミン類緩衝液を含む試薬溶液にも関する。【0009】以下本発明を詳細に説明する。本発明においては任意のエタノールアミン類を用いることができるが、特には、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。【0010】【化2】RHm N(CH2 CH2 OH)n (1)式中、Rは水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基、好ましくはメチル基若しくはエチル基であり、mは1〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。【0011】特に好ましいエタノールアミン類は、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、メチルアミノエタノール(MAE)、又はエチルアミノエタノール(EAE)である。これらのエタノールアミン類を単独又は複数の組み合わせで公知の手段により所望の濃度(例えば0.01〜1M)に調整し、目的に応じてpHを調整する。【0012】本発明方法においては、前記エタノールアミン類の緩衝液を、必要により無機酸(例えば、塩酸又は硫酸)及び/又は有機酸(例えば、酢酸又はコハク酸)などで、反応系で設定されたpH約8.0〜11.0に調整し、その中にキレート剤を添加する。酸を添加する理由は、エタノールアミン類溶液のpHが10以上になるので、酸を添加して、使用するpHに調整するためである。【0013】キレート剤としては、具体的には、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(以下CyDTA)、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸(以下Me−EDTA)、1,3−ジアミノプロパン−2−オール−N,N,N’,N’−四酢酸(以下DPTA−OH)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸(以下DTPA)、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン(以下DHEG)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(以下EDDA)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(以下EDTA)、エチレンジアミン−N,N’−二プロピオン酸(以下EDDP)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラキス(メチレンホスホン酸)(以下EDTPO)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)(以下EDDPO)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(以下GEDTA)、ヘキサメチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(以下HDTA)、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(以下EDTA−OH)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(以下HIDA)、イミノ二酢酸(以下IDA)、ニトリロ三酢酸(以下NTA)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(以下NTPO)、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N”’,N”’−六酢酸(以下TTHA)、ジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、若しくはエチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)など、又はそのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など)を用いることができる。前記のキレート剤は単独で又は任意に組み合わせて添加することができる。【0014】キレート剤として、好ましくは、CyDTA、Me−EDTA、DPTA−OH、DTPA、DHEG、EDDA、EDTA、EDDP、EDTPO、EDDPO、GEDTA、HDTA、EDTA−OH、HIDA、IDA、NTA、NTPO、TTHA、又はそのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩)を用いることができる。【0015】添加するキレート剤又はそのアルカリ金属塩の濃度は適宜選択することができるが、具体的には2μmol/リットル〜250mmol/リットル、好ましくは5μmol/リットル〜125mmol/リットル、更に好ましくは10μmol/リットル〜50mmol/リットルの濃度となるように添加すればよい。こうすることで、エタノールアミン類緩衝液の安定性(変色の防止)を飛躍的に向上させることが可能となった。キレート剤又はそのアルカリ金属塩の濃度が2μmol/リットル未満になると変色を充分に防止することができず、250mmol/リットルを越えると溶解性が不十分となるために吸光度が最初から高くなる。5μmol/リットル以上になると変色をほぼ防止することができ、更に10μmol/リットル以上になるとキレート剤の添加量の増加に関係なく変色を防止することができ、125mmol/リットル以下になるとキレート剤の濃度に応じた吸光度の変化がなくなり、更に50mmol/リットル以下になるとキレート剤の濃度に関係なく変色防止効果を得ることができる。【0016】このように安定化されたエタノールアミン類の緩衝液を用いることにより、長期間安定な試薬を提供することができる。従って、本発明は、安定化されたエタノールアミン類緩衝液を含有する試薬溶液にも関する。前記の試薬溶液は、エタノールアミン類緩衝液を含有する溶液であれば特に限定はされないが、例えば、生化学実験用試薬溶液、又は好ましくは臨床検査用試薬溶液である。特に、各種診断用試薬は正確な測定結果を求められるので、本発明方法が好適に用いられる。臨床検査で用いる各種診断用試薬溶液は、生物学的被検試料(例えば、血液試料、特には血清又は血漿、尿、髄液、唾液、膿又は細胞抽出液)中の生理活性物質(例えば、酵素、ホルモン又は化学物質)の検出用試薬である。【0017】例えば、前記のLDH測定用試薬の場合には、上記キレート剤又はそのアルカリ金属塩を添加したエタノールアミン類緩衝液(例えば、ジエタノールアミン緩衝液)に基質としての乳酸を添加して第一試薬とし、NADを精製水や適当な緩衝液に溶解して第二試薬とすることで、LDH測定用試薬を構成することができる。【0018】このように構成されたLDH測定用試薬を用いて、検体(例えば、血清試料又は血漿試料)にLDHの基質である乳酸と補酵素であるNADを作用させると、LDHの作用により乳酸がピルビン酸に変換される。この時共存させておいたNADは、共役的にNADHとなる。この反応で還元されて生成されるNADHに由来する吸光度変化を、波長340nm付近にて測定することで、検体中のLDH活性を求めることができる。更に本発明の液状試薬は、長期間安定に保存することができるので、臨床検査の分野で有利に用いることができる。【0019】同様にALP測定試薬の場合は、上記キレート剤又はそのアルカリ金属塩を添加したエタノールアミン類緩衝液(例えば、ジエタノールアミン緩衝液)を第一試薬とし、4NPPを精製水や適当な緩衝液に溶解して第二試薬とすることで、ALP測定用試薬を構成することができる。このように構成されたALP測定用試薬によって、検体にALPの基質である4NPPを作用させると4NPが生成される。この生成された4NPに由来する吸光度変化を、波長405nm付近にて測定することで、検体中のALP活性を求めることができる。更に本発明の液状試薬は、長期間保存可能なもので、臨床検査の分野で有利に用いることができる。【0020】【作用】本発明の作用については以下の記載に限定するものではないが、キレート剤又はその塩を添加することで、広義には抗酸化作用が発現しているものと考えられる。即ち、アルカリ性のエタノールアミン類緩衝液中でエタノールアミン類が種々の要因によって酸化されることに由来する緩衝液の変色を、本発明方法により効果的に防止することができ、また、キレート剤又はその塩を添加することで、エタノールアミン類の酸化反応に対して触媒的に作用し得る溶液中に混在する微量の金属(例えば、鉄、銅、マグネシウム等)が隠蔽され、エタノールアミン類の溶液状態での安定化にとって不都合な雰囲気が抑制されているものと考えられる。従って、本発明方法では、前記のメカニズムに基づく変色防止作用を示すキレート剤をすべて用いることができる。【0021】【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例1(1)試薬の調製DEA37.49gを精製水に溶解し、1M塩酸222.1mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液1リットルに、CyDTA、Me−EDTA、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸2Na(以下EDTA・2Na)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸2K(以下EDTA・2K)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸2Li(以下EDTA・2Li)、GEDTA、EDTA−OH、HIDA、NTA、ニトリロ三酢酸3Na(以下NTA・3Na)、又はTTHAを2.5mmol/リットルになるよう添加し、pHを8.8(30℃)として各キレート剤添加基質緩衝液を調製した。NAD3.981gを精製水に溶解し、全体を100mlとしてNAD溶液とした。【0022】(2)初期吸光度の測定各キレート剤添加基質緩衝液を37℃にて保存し、保存開始の当日、保存から10日後、22日後、30日後及び90日後の安定性を、以下の初期吸光度を測定することにより確認した。キレート剤無添加の基質緩衝液も対照用として同様に保存した。初期吸光度は、キレート剤添加基質緩衝液2.5mlとNAD溶液0.3mlとを混合して340nmで吸光度を測定した。この結果を表1に示す(表中の−−は測光不可を表す)。【0023】【表1】【0024】実施例2(1)試薬の調製DEA37.49gを精製水に溶解し、1M塩酸222.1mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液に、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸二ナトリウム塩(以下EDTA・2Na)を1リットルあたり、0.01g、0.1g、1g、又は10gの量で添加し、pHを8.8(30℃)としてEDTA・2Na添加基質緩衝液を調製した。NAD3.981gを精製水に溶解し、全体を100mlとしてNAD溶液とした。【0025】(2)初期吸光度の測定EDTA・2Na添加基質緩衝液を37℃にて保存し、保存開始の当日、保存から6日後、10日後、22日後、30日後及び90日後の安定性を、以下の初期吸光度を測定することにより確認した。EDTA・2Na無添加の基質緩衝液も対照用として同様に保存した。初期吸光度は、EDTA・2Na添加基質緩衝液2.5mlとNAD溶液0.3mlとを混合して340nmで吸光度を測定した。この結果を表2に示す(表中の−−は測光不可を表す)。【0026】【表2】【0027】実施例3(1)試薬の調製EAE112.5gを精製水に溶解し、2M塩酸330mlを加えた。この溶液に50.5mM−MgCl2 11.25mlを加えて混合した後、pHを9.9(30℃)に調整し、全体を1リットルとして緩衝液とした。この緩衝液1リットルに、EDTA・2Na0.1gを添加し、pHを9.9(30℃)として、EDTA・2Na添加EAE緩衝液を調製した。4NPP2.8gを精製水に溶解し、全体を100mlとして基質溶液とした。【0028】(2)初期吸光度の測定EDTA・2Na添加EAE緩衝液を37℃にて保存し、保存開始の当日、保存から10日後、20日後、30日後及び90日後の安定性を、以下の初期吸光度を測定することにより確認した。EDTA・2Na無添加のEAE緩衝液も対照用として同様に保存した。初期吸光度は、EDTA・2Na添加EAE緩衝液2.0mlと基質溶液0.5mlを混合して405nmで吸光度を測定した。この結果を表3に示した。【0029】【表3】【0030】実施例4(1)試薬の調製DEA37.49gを精製水に溶解し、1M塩酸222.1mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液1リットルに、EDTA・2Na1gを添加しpHを8.8(30℃)としてEDTA・2Na添加基質DEA緩衝液を調製した。同様にモノエタノールアミン(以下MEA)21.78gを精製水に溶解し、1M塩酸250.1mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液1リットルに、EDTA・2Na1gを添加しpHを8.8(30℃)としてEDTA・2Na添加基質MEA緩衝液を調製した。同じくトリエタノールアミン(以下TEA)53.20gを精製水に溶解し、1M塩酸210.6mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液1リットルに、EDTA・2Naを1g添加しpHを8.8(30℃)としてEDTA・2Na添加基質TEA緩衝液を調製した。NAD3.981gを精製水に溶解し、全体を100mlとしてNAD溶液とした。【0031】(2)初期吸光度の測定EDTA・2Na添加基質DEA緩衝液、EDTA・2Na添加基質MEA緩衝液、EDTA・2Na添加基質TEA緩衝液を37℃にて保存し、保存開始の当日、保存から10日後、20日後、30日後及び90日後の安定性を、以下の初期吸光度を測定することにより確認した。EDTA・2Na無添加の基質DEA緩衝液、基質MEA緩衝液、及び基質TEA緩衝液も対照用として同様に保存した。初期吸光度は、EDTA・2Na添加基質DEA緩衝液2.5mlとNAD溶液0.3mlとを混合して340nmの吸光度を測定した。同様にMEA緩衝液、TEA緩衝液についても行った。この結果を表4に示す(表中の−−は測光不可を表す)。【0032】【表4】【0033】実施例5(1)試薬の調製DEA37.49gを精製水に溶解し、1M塩酸222.1mlを加えた。この溶液にL(+)−乳酸リチウム6.912gを加えて溶解した後、pHを8.8(30℃)に調整し、全体を1リットルとして基質緩衝液とした。この基質緩衝液1リットルに、EDTA・2Na1gを添加し、pHを8.8(30℃)としてEDTA・2Na添加基質緩衝液を調製した。NAD3.981gを精製水に溶解し、全体を100mlとしてNAD溶液とした。EDTA・2Na無添加の基質緩衝液、又は、EDTA・2Na添加基質緩衝液を第一試薬とし、NAD溶液を第二試薬として以下の試験により、EDTA・2Na添加による、LDH活性の変化を確認した。(2)LDH活性の測定管理血清8μlに第一試薬250μlを添加し、37℃で5分間、予加温した後、第二試薬30μlを混合して、1分半経過後から340nmの吸光度の変化量を測定した後、次式によりLDH活性を算出した。その結果を図1に示した。EDTA・2Na添加による、LDH活性の変化はなかった。【0034】【式1】ΔOD/min :1分間当たりの吸光度の変化量0.288 :総液量(ml)1000 :リットル当たりへの換算6.3 :NADHの分子吸光係数0.008 :血清量(ml)【0035】【発明の効果】本発明方法によれば、エタノールアミン類緩衝液を用いる液状検出系、例えばLDHやALPの測定用液状試薬を、測定値に実質的な影響を与えず、長期間安定に保存することができる。【図面の簡単な説明】【図1】実施例5で行った、キレート剤添加試薬とキレート剤無添加試薬とを用いたLDH活性測定の相関関係を示すグラフである。 エタノールアミン類緩衝液にキレート剤又はその塩を含有させることを特徴とする、エタノールアミン類緩衝液の安定化方法。 エタノールアミン類が、一般式(1):(式中、Rは水素原子又は炭素原子1〜4個のアルキル基であり、mは1〜2の整数であり、nは1〜3の整数である)で表される化合物である請求項1記載の安定化方法。 キレート剤又はその塩が、トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,2−ジアミノプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール−N,N,N’,N’−四酢酸、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N”−五酢酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、エチレンジアミン−N,N’−二プロピオン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラキス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N’−ビス(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N”’,N”’−六酢酸、及びそれらのアルカリ金属塩からなる群から選択された1以上の化合物である請求項1記載の安定化方法。 請求項1記載の方法で安定化されたエタノールアミン類緩衝液を含有する試薬溶液であって、補酵素の変化量を吸光度変化量として測定する系、あるいは基質から遊離する物質の生成量を吸光度変化量として測定する系において用いる、前記の試薬溶液。 試薬溶液が生物学的被検試料中の生理活性物質検出用の液状試薬である請求項4記載の試薬溶液。