生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グルタリル−7−アミノセファロスポラン酸の製造方法
出願番号:1994058298
年次:2004
IPC分類:7,C12N9/99,C12P35/06


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曽我 令 松山 健二 JP 3601846 特許公報(B2) 20041001 1994058298 19940304 グルタリル−7−アミノセファロスポラン酸の製造方法 旭化成ファーマ株式会社 303046299 清水 猛 100068238 伊藤 穣 100095902 武井 英夫 100103436 鳴井 義夫 100108693 曽我 令 松山 健二 JP 1993072777 19930309 20041215 7 C12N9/99 C12P35/06 C12P35/06 C12R1:645 JP C12N9/99 C12P35/06 A C12P35/06 C12R1:645 7 C12N 9/99 C12P 35/06 特開平3−53879(JP,A) 特開平6−189761(JP,A) 5 FERM BP-4359 1994315376 19941115 7 20000914 深草 亜子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、セファロスポリンCからD−アミノ酸オキシダーゼ含有物を用いてグルタリル−7−アミノセファロスポラン酸に酵素変換する方法の改良法に関する。さらに詳しくは該酵素中に共存するエステラーゼ酵素を選択的に不活性化またはエステラーゼ酵素反応を選択的に阻害する方法に関する。【0002】【従来の技術】グルタリル−7−アミノセファロスポラン酸(以下「GL−7ACA」と称する)はセファロスポリンC(以下「CPC」と称する)から7−アミノセファロスポラン酸を製造するための製造中間体であることはよく知られている。GL−7ACAを高い収率で得るために、トリゴノプシス・バリアビリス(Trigonopsis variabilis)のD−アミノ酸オキシダーゼ(以下「DAO」と称する)の作用を利用して、CPCからGL−7ACAへ酵素的に変換する種々の方法が知られている。【0003】例えば、特公昭50−7158号公報、特公昭55−35119号公報等には、カタラーゼによるH2O2の分解を防止するために、無機アザイド類や過ホウ酸塩などのカタラーゼ阻害剤の存在下でCPCの酵素的酸化を行い、GL−7ACAを得る方法、特公昭59−15635号公報には、カタラーゼ阻害剤を存在させる代わりに、カタラーゼで分解される以上の過酸化水素の存在下で反応させる方法が述べられている。特公昭55−35118号公報には、トリゴノプシス・バリアビリスの活性化細胞にナトリウムアジドなどのカタラーゼ阻害剤を用いることによってCPCの酵素的酸化反応を行い、高い収率のGL−7ACAを得る方法が述べられている。特開平3−53879号公報には、pH約11〜12の塩基性水溶液で処理してカタラーゼ活性を不活化したDAOを使用する方法が述べられている。【0004】また、特開平3−53879号公報には、デスアセチル−CPCおよびデスアセチル−GL−7ACAの副生を防止するために、トリゴノプシス・バリアビリスの細胞をアセトン/水で処理して、エステラーゼ活性を不活性化したDAOを使用する方法が述べられている。【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の酵素反応を工業スケールで経済的に実施するには、いくつかの問題を含んでいた。それらの課題の1つに、トリゴノプシス・バリアビリスに由来するエステラーゼの存在による収率の低下がある。エステラーゼは、CPCからGL−7ACAへの酸化反応中に、そこに生成したα−ケト−アジポイル−7−アミノセファロスポラン酸(以下「KETO−CPC」と称する)反応中間体ならびにCPCおよびGL−7ACAの3位のアセトキシメチル基のアセチル基を脱離(脱アセチル化)し、GL−7ACAの収量を減少させる。【0006】また、該エステラーゼによって副生されるデスアセチル−CPCおよびデスアセチル−GL−7ACAは、不純物としてGL−7ACAの品質に多大な悪影響を及ぼす。したがって、GL−7ACAの収率および品質を向上させるために、該エステラーゼの不活性化あるいは該エステラーゼ反応の阻害は重要である。一方、エステラーゼの不活性化を図る方法として、DAO生産菌を90〜50%の水/アセトン(2:1、v:v)混合液で処理することによってエステラーゼを除去する方法(特開平3−53879号公報)等が知られている。しかし、アセトンを除去する等の処理が複雑かつ面倒であり、さらに、工業レベルに応用できる簡易かつ効率的なエステラーゼ活性の不活性化法の確立が望まれていた。【0007】【課題を解決するための手段】以上の点に鑑みて本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、DAO生産菌であるトリゴノプシス・バリアビリス由来のDAO含有物にCu化合物、例えば、CuSO4を接触させることによって、DAO活性存在下でエステラーゼを選択的に不活性化することができることを、また、該DAO含有物およびCPCを含有した液に、Cu化合物を接触させることによって、DAOによる酵素的酸化反応中にエステラーゼ反応のみを特異的に阻害することができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0008】すなわち、本発明は、DAOの存在下でエステラーゼを不活性化させる方法であって、該酵素混合物にCu化合物を接触させることを特徴とするエステラーゼの不活性化方法であり、また、本発明は、CPCからDAO含有物を用いてGL−7ACAを製造する方法において、Cu化合物と接触させた、DAO含有物を用いることを特徴とするGL−7ACAの製造方法、前記の方法においてDAO含有物およびCPCを含有した液に、Cu化合物を接触させることを特徴とするGL−7ACAの製造方法である。【0009】本発明において酸化反応に用いるCPC溶液は、CPC粉末を水に溶解した水溶液、あるいはCPC生産菌であるアクレモニウム・クリソゲナムを適当な培地、例えば、シュークロース2%、炭酸カルシウム0.5%、硫酸カルシウム1.25%、酢酸アンモニウム0.8%、コーンスターチ3%、ビートモラセス5%、脱脂大豆6%、メチルオレート3%等を含む培地、またはその他CPC生産菌に好適な栄養培地によって培養され菌体、固形分等が除去された培養液を挙げることができる。【0010】DAO含有物にCu化合物を接触させるエステラーゼの不活性化方法は、該酵素が未精製の状態あるいは部分的に精製された状態の如何なる形態であってもよく、例えば、トリゴノプシス・バリアビリスの細胞、部分的に破壊した細胞、膜透過性にした細胞、それから該酵素を抽出した細胞不含の抽出液、固定化酵素等として存在している場合が挙げられる。これらは、従来公知の方法で得ることができる。本発明において用いられるDAO含有物は、トリゴノプシス・バリアビリスに由来するものが好ましいが、KETO−CPCの副生を阻止するためには、カタラーゼを欠損した菌株、例えば、トリゴノプシス・バリアビリス KC−103株(受託番号:微工研菌寄第13074号、国際寄託番号;FERM BP−4359)などを使用するのがより好ましい。【0011】DAO含有物の水溶液または懸濁液に、10〜2000ppm濃度のCu化合物を溶解させ、5〜25℃で2〜24時間接触処理することにより、エステラーゼ活性が選択的に低減される。この処理により、エステラーゼ活性を半分以下にすることができる。前記処理において、Cu化合物濃度を10〜400ppm程度の範囲で行えば、DAO活性に全く影響することなくエステラーゼを不活性化することができる。さらに、Cu化合物濃度を50〜400ppmの範囲で前記処理を行えば、エステラーゼ活性が1/10以下に低減し、エステラーゼ/DAOの活性比を1%以下にすることができるので好ましい。【0012】本発明においては、共存するエステラーゼの不活性化は、酵素的酸化反応前だけでなく、共存するエステラーゼを不活性化させていないDAO含有物を作用させて、CPCからGL−7ACAに酵素的酸化反応する段階においてCu化合物を接触させてもよい。すなわち、前記のCu化合物の接触を、エステラーゼが共存するDAO含有物に前もって直接行うのではなく、該酵素含有物をCPC溶液に反応させる際に、Cu化合物を添加することにより行われる。この場合においても、前記反応液中のCu化合物の濃度が10〜2000ppmの範囲になるようにCu化合物を接触させればよい。さらに、Cu化合物濃度を50〜400ppmの範囲で前記反応を行えば、エステラーゼ/DAOの活性比を1%以下にすることができるので好ましい。本発明で使用するCu化合物は、CuSO4などが挙げられる。【0013】エステラーゼ活性は、適量の酵素サンプルを、0.2Mリン酸バッファー(pH7.5)に溶解した2g/L濃度のGL−7ACA溶液に添加し、25℃で30分間反応させた後、等量のメタノールを添加することによって反応を停止させ、生成したデスアセチル−GL−7ACAの量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより求めることができる。また、DAO活性は、適量の酵素サンプルを0.1Mリン酸バッファー(pH7.5)に溶解した10g/L濃度のCPC溶液に添加し、25℃で15分間反応させた後、等量のメタノールを添加することによって反応を停止させ、生成したGL−7ACAおよびKETO−CPCをHPLCにて定量することにより求めることができる。DAO含有物を酵素的酸化反応中にCu化合物と接触させる場合は、酵素的酸化反応の前後のデスアセチル−CPCとデスアセチル−GL−7ACAを定量する。CPCに対するデスアセチル誘導体の増加分を、エステラーゼ/DAOの活性比とする。【0014】CPC含有液にDAO含有物を作用させることにより酵素的酸化反応を行うに当たっては、通常、反応液に酸素を吹き込みながら行われる。反応温度は通常20〜30℃の範囲で行われる。反応時間はCPC濃度、DAO含有物の使用量または活性度合い、反応温度、pHにより左右されるが、HPLC,薄層クロマトグラフィー等により、反応の経過を追跡することができるので、GL−7ACAが最大に生成される時期を待って適宜反応を終了すればよい。通常は30分〜4時間程度である。KETO−CPCの残存量を低減させるために、過酸化水素を反応液に加えてもよい。得られた反応液から目的とするGL−7ACAを採取、精製するには、公知の方法により行えばよい。【0015】【実施例】以下に,本発明について実施例および参考例を挙げて,さらに詳しく説明するが、本発明は,これらの実施例により何等限定されるものではない。(実施例1)トリゴノプシス・バリアビリス KC−103株をグルコース2%、コーンスチープリカー2%およびDL−メチオニン0.2%を含む培地により、25℃で60時間培養し、得られた培養液60ml(湿菌体6gを含む)にトルエン0.3mlを加え、25℃で2時間撹拌して菌体の膜透過性を付与した。【0016】得られたトルエン含有培養液に、23.6mgのCuSO4・5H2Oを溶解し、室温で2時間放置した。得られたトルエン−Cu含有培養液から適量の酵素サンプルを取り出し、これを0.2mol/Lリン酸カリウムバッファー(pH7.5)に溶解した2g/LのGL−7ACA溶液に添加し、25℃で30分間反応させた後、等量のメタノールを加えることによって反応を停止させた。生成したデスアセチル−GL−7ACAの量をHPLCで定量したところ、新たに生成したデスアセチル−GL−7ACAは定量できず、該酵素サンプル中のエステラーゼは十分に不活性化されていることがわかった。次いで、10gのCPC粉末を1000mlの水に溶解し、これをpH7.5に調節したCPC溶液を、前記のトルエン−Cu含有培養液と混合し、該混合液中に酸素を吹き込みながら、20℃で約180分間反応させたところ、93.2%の収率でGL−7ACAが得られた。【0017】(実施例2)実施例1と同様の方法によって培養を行い、該培養液に膜透過性を付与し、かつ、エステラーゼを不活性化させたトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株のトルエン−Cu含有培養液を得た。一方、8.5g/L濃度のCPCを含むアクレモニウム・クリソゲナムの培養液をpH2.5で除菌した後、pH7.5に調節し,得られたCPC培養液1200mlを前記トルエン−Cu含有培養液60mlと混合した。次いで、前記混合培養液に酸素を吹き込み、かつ、3.5%濃度の過酸化水素23.9mlを連続的に添加しながら,20℃で約240分間反応させたところ、92.8%の収率でGL−7ACAが得られた。【0018】(実施例3)実施例1と同様の方法によって培養を行い、該培養液に膜透過性を付与したトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株のトルエン含有培養液を得た。一方、10gのCPC粉末を1000mlの水に溶解し、これをpH7.5に調節したCPC溶液を前記トルエン含有培養液60mlと混合した。次いで、該混合液に0.5gのCuSO4・5H2Oを添加溶解し、酸素を吹き込みながら、20℃で約180分間反応させたところ、92.2%の収率でGL−7ACAが得られた。なお、反応の前後でエステラーゼによるデスアセチル−CPC、デスアセチル−GL−7ACAの増加は、両者を合わせても、添加したCPCの量の1%以下であった。【0019】(実施例4)実施例1と同様の方法によって培養を行い、該培養液に膜透過性を付与したトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株のトルエン含有培養液60mlと、実施例2と同様の方法によって得られたCPC培養液1200mlとを混合した。次いで、該混合液に0.5gのCuSO4・5H2Oを添加溶解し、酸素を吹き込み、かつ、3.5%濃度の過酸化水素23.9mlを連続的に添加しながら、20℃で約240分間反応させたところ、92.0%の収率でGL−7ACAが得られた。なお、反応の前後でエステラーゼによるデスアセチル−CPC、デスアセチル−GL−7ACAの増加は、両者を合わせても、添加したCPCの量の1%以下であった。【0020】(実施例5)実施例1と同様の方法によって培養を行い、得られたトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株の培養液400ml(湿菌体40gを含む)にトルエン2.0mlを加え、実施例1と同様の方法で処理した。該トルエン含有培養液に157.3mgのCuSO4・5H2Oを溶解し,室温で2時間放置した。得られたトルエン−Cu含有培養液から適量の酵素サンプルを取り出し、実施例1と同様の方法でエステラーゼ活性を測定したところ、該酵素サンプル中のエステラーゼは、実施例1と同様に十分に不活性化されていることがわかった。次いで、10gのCPC粉末を1000mlの水に溶解し、これをpH7.5に調節したCPC溶液を、前記のトルエン−Cu含有培養液と混合し、該混合液中に酸素を吹き込みながら、20℃で約30分間反応させたところ、99.0%の収率でGL−7ACAが得られた。【0021】(実施例6)実施例1と同様の方法によって培養を行い、該培養液に膜透過性を付与したトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株のトルエン含有培養液400mlと、実施例1と同様の方法によって得られたCPC溶液1000mlとを混合した。次いで、該混合液に0.66gのCuSO4・5H2Oを添加溶解し、酸素を吹き込みながら、20℃で約30分間反応させたところ、98.1%の収率でGL−7ACAが得られた。なお、反応の前後でエステラーゼによるデスアセチル−CPC、デスアセチル−GL−7ACAの増加は、両者をあわせても、添加したCPCの量の1%以下であった。【0022】(参考例1)実施例1と同様の方法によって培養を行い、該培養液に膜透過性を付与したトリゴノプシス・バリアビリス KC−103株のトルエン含有培養液60mlと、実施例1と同様の方法によって得られたCPC溶液1000mlを混合した。次いで、該混合液に酸素を吹き込みながら、20℃で約180分間反応させたところ、83.0%の収率でGL−7ACAが得られた。【0023】【発明の効果】本発明の方法によれば、D−アミノ酸オキシダーゼと共存するエステラーゼを、特異的に不活性化、あるいは該エステラーゼ反応のみを阻害することができるので、極めて高収率で高品質のGL−7ACAが得られる。また、本発明は、極めて簡単かつ安全性がよいので、工業スケールで実施可能である。 D−アミノ酸オキシダーゼ酵素の存在下でエステラーゼを不活性化させる方法であって、該酵素混合物にCu化合物を接触させることを特徴とするエステラーゼの不活性化方法。 セファロスポリンCからD−アミノ酸オキシダーゼ含有物を用いてグルタリル−7−アミノセファロスポラン酸を製造する方法において、Cu化合物と接触させた、該D−アミノ酸オキシダーゼ含有物を用いることを特徴とするグルタリル−7−アミノセファロスポラン酸の製造方法。 セファロスポリンCからD−アミノ酸オキシダーゼ含有物を用いてグルタリル−7−アミノセファロスポラン酸を製造する方法において、D−アミノ酸オキシダーゼ含有物およびセファロスポリンCを含有した液に、Cu化合物を接触させることを特徴とするグルタリル−7−アミノセファロスポラン酸の製造方法。 D−アミノ酸オキシダーゼ含有物が、トリゴノプシス・バリアビリスの細胞、部分的に破壊された前記細胞、膜透過性の付与された前記細胞、前記細胞から抽出された酵素抽出液、または固定化酵素である請求項2または3記載の方法。 Cu化合物の濃度が10〜2000ppmである請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。


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