タイトル: | 特許公報(B2)_ポリフェノール化合物の精製法 |
出願番号: | 1994053232 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07D311/62,C07C37/82,C07C39/10 |
阪中 專二 マーク・シャミツァン 朱 政治 金 武祚 JP 3585518 特許公報(B2) 20040813 1994053232 19940224 ポリフェノール化合物の精製法 太陽化学株式会社 000204181 阪中 專二 マーク・シャミツァン 朱 政治 金 武祚 20041104 7 C07D311/62 C07C37/82 C07C39/10 JP C07D311/62 C07C37/82 C07C39/10 7 C07D311/62 C07C 37/82 C07C 39/10 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN) 特開平03−014572(JP,A) 仏国特許出願公開第01494907(FR,A1) 2 1995238078 19950912 8 20000313 新留 素子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、ポリフェノール化合物の精製法に関するもので、とくにポリフェノール化合物を含有する溶液を木製品の製造工程で出る端材,ノコ,カンナ屑などの製材廃棄物である木粉より調製したリグノセルロースに接触させた後,吸着した成分を溶出する工程を含むことにより、高純度のエピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレートおよびカテキンガレートを低コストで精製する方法に関するものである。【0002】【従来の技術】植物起源のポリフェノール化合物、特にツバキ科植物である茶に含まれるポリフェノール化合物は種々の生理作用、例えば抗菌・静菌作用,抗う蝕作用,抗酸化作用,コレステロール上昇抑制作用,抗ガン作用などを有することが明らかにされ、食品,化粧品,医薬品に利用され、その利用用途は益々広がっている。これらの目的に利用するために、ポリフェノール化合物であるエピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートを高含量に含む画分が要求されている。これら化合物を効率的に高純度で製造するには、ツバキ科植物好ましくは茶を抽出した液に含まれるカフェイン,色素類,アミノ酸類,糖類,ステロイド類やポリフェノール化合物の酸化重合物等の夾雑物を除去することが必要である。これまで茶葉からポリフェノール化合物を抽出、精製する方法として熱水、含水アセトンおよび含水エタノール等で茶葉から抽出した後、ヘキサン,クロロホルム,酢酸エチル等の有機溶媒で分配する方法や、特開平3−14572に記載のように親水性ビニルポリマー樹脂、デキストランのヒドロキシプロピル化樹脂を用いて吸着、精製する方法が既に知られている。しかしながら、これらの方法は、単位時間当たりの処理量が限られており、茶葉中に乾重量として10〜20%含まれるポリフェノール化合物の精製法としては、設備面やコスト面から不適当な方法である。【0003】茶ポリフェノール化合物と他成分との分離方法として、上記方法以外にも抽出物中に含まれる、カフェインを除去する方法が種々検討されている。例えば特開平1−289448の実施例1に記載のように、超臨界状態の液化炭酸ガスにより緑茶中のカフェインを除去する方法や活性炭,シリカゲル,活性アルミナ等の吸着剤を用いて脱カフェインする方法(特公昭59−39097,特公昭59−46576)も知られているが、超臨界状態の液化炭酸ガスを使用する方法は、高圧における操作を必要とし、大がかりな抽出装置を用いるため抽出コストも高くなるという欠点がある。また活性炭,シリカゲル,活性アルミナ等の吸着剤を用いる方法は、カフェインのみならずポリフェノール類も同時に吸着するという欠点があり、選択的分離の面から満足のいくものではない。木粉を吸着剤として用いる技術は、これまでにもノコ屑を用いたヒト尿中のウロキナーゼの製造(特公昭60−50436)やトリプシンの精製(J.Chromatogr,294,1984)に検討されているが、これらはいずれも高分子であるタンパク質、酵素の精製に関するものであり、ポリフェノール化合物のような低分子化合物の精製には全く検討されていない。【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に示した諸問題を解決するためになされたもので、リグノセルロースを用いることによりポリフェノール化合物を含有する溶液からポリフェノール化合物、特にエピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートを簡便にかつ効率的に精製することを目的とする。本発明により得られる精製されたポリフェノール化合物は、抗菌・静菌作用,抗う蝕作用,消臭作用,酸化防止作用,コレステロール上昇抑制作用,抗ガン作用を有し、食品,化粧品,医薬品に使用が可能である。【0005】【課題を解決するための手段】ツバキ科植物特に茶に含まれるポリフェノール化合物は、抗菌・静菌作用,抗う蝕作用,消臭作用,酸化防止作用,コレステロール上昇抑制作用,抗ガン作用などを有することが知られている。特に、天然物から抽出される上記効果を持つ物質の利用が期待されると共にこれら化合物の精製法が種々検討されている。しかし、茶を原料とし熱水や有機溶媒で、ポリフェノール化合物を抽出すると、必ず色素類やカフェインも同時に抽出される。その混合物に含まれる茶ポリフェノール化合物と、カフェイン等との安全な選択的除去方法は、未だ商業化されていないのが現状である。本発明は、エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレートおよびカテキンガレートなどのポリフェノール化合物を含有する溶液をリグノセルロースに接触させた後、吸着した成分を溶出する工程を含むポリフェノール化合物の精製法である。【0006】本発明に用いるリグノセルロースは、木製品の製造工程で出る端材やノコ,カンナ屑などの製材廃棄物に由来する木粉より調製される。リグノセルロースの原料となる木粉は、落葉樹,常緑樹,針葉樹など通常木材として利用されうる樹木に由来するものが使用可能であるが、精油成分の少ない針葉樹のマツ目,スギ目に属する樹木が特に望ましい。ここでマツ目の植物としては、モミ,ツガ,エゾマツ,カラマツ,ヒマラヤスギ等があげられ、スギ目の植物としては、セコイヤ,アケボノスギ,ヒノキ,アスナロイブキ等があげられるが、これらは特に限定するものではなく、入手可能なマツ目,スギ目の製材廃棄物が使用できる。ノコ屑等として製材所より得た木粉は、カラム操作が可能なように粒径を、10〜60メッシュに揃えた後、乾燥しアルカリ、酸で順次洗浄する。アルカリとしては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム,水酸化アルミニウム,炭酸ナトリウム等の一種または二種以上などが使用でき、酸としては、塩酸,硫酸,硝酸,リン酸等の無機酸や酢酸,クエン酸,コハク酸,リンゴ酸,乳酸,フマル酸等の有機酸の一種または二種以上が使用されうる。これらのアルカリ、酸の濃度は、0.01規定から10規定の範囲が使用できるが、望ましくは0.05規定から3規定である。アルカリ,酸で洗浄後、有機溶媒により洗浄することにより、テルペン等の精油類を除去する。有機溶媒としてエタノール,メタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,ブタノールなどのアルコールやアセトン,メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル,ヘキサン,ジエチルエーテル等の一種または二種以上が使用できる。酸,アルカリ,有機溶媒は、各々、木粉の2〜10倍量を用い、室温で洗浄することができる。洗浄温度は、特に限定するものではないが、5〜60℃の範囲で実施できる。洗浄時間は、1時間以上好ましくは1〜3日間浸漬し時々攪拌することにより、洗浄するのが望ましい。アルカリ,酸,有機溶媒で洗浄し、それぞれの可溶成分を除去した木粉は乾燥した後、リグノセルロースとして、カラム法あるいは浸漬法のいずれでもポリフェノール化合物の精製に使用できる。【0007】本発明に用いるポリフェノール化合物を含有する溶液は、ツバキ科植物の葉を既知の方法により抽出したものが使用できる。ツバキ科植物としては例えばヤブツバキ,リンゴツバキ,ユキツバキ,サザンカ,ヒメサザンカ,トウツバキ,ワビスケ,ハルサザンカ,カンツバキ,キンカチャ,ホンコンツバキ,ユチャ(油茶),ベトナメンツス,ギガントカルパ,ポリオドンタ,セミセラータ,チェキアンオレオーサがあげられるが、含有されるポリフェノール化合物の種類から茶が望ましい。原料としての茶の形態は特に限定するものではないが、例えば茶の生葉,不発酵茶,半発酵茶,発酵茶,後発酵茶が好ましく、いずれの製造段階のものでも良い。すなわち形態は粉茶から完全葉まで、制限無く用いることができる。抽出に用いうる溶媒は特に限定するものではないが、熱水またはアルコールやアセトン含有水溶液などが望ましい。抽出液は熱水抽出の場合はそのまま、また有機溶媒抽出の場合は有機溶媒を除去後使用することができる。更には、用いる溶液はポリフェノール化合物を含有していればよく、精製途中のものでも良い。例えば、茶葉を10倍量の50%アセトン水溶液で抽出後、アセトンを除去した水溶液を酢酸エチルで分配し、その酢酸エチル可溶画分を酢酸エチルを除去後、その残留物を水に溶解し、使用することができる。ポリフェノール化合物を含有する溶液と、リグノセルロースとの接触方法は、リグノセルロースをカラムに充填し、ポリフェノール化合物を含有する溶液を通過し接触させる方法、ポリフェノール化合物を含有する溶液を入れた容器内にリグノセルロースを添加し、一定時間攪拌することにより接触させる方法などが用いられる。リグノセルロースに接触させることにより、エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートなどのポリフェノール化合物は吸着し、カフェインや色素類などの夾雑物は吸着せずに除去される。リグノセルロースに吸着したポリフェノール化合物は、エタノール,メタノール,イソプロパノール,n−プロパノール,アセトン,酢酸エチルの1種、あるいはこれらの2種以上の混合物により溶出することができる。混合物としては、エタノール,アセトン混液、エタノール,イソプロパノール混液が使用でき、その混合比は、特に限定する必要はない。溶媒再生を考慮すると、単品での使用、特にエタノール,アセトン,メタノールが望ましい。また、これらの有機溶媒を含む水溶液も使用できるが、有機溶媒の濃度は40%以上であるのが溶出効率から望ましく、抽出温度は特に限定されるものではないが、5℃〜60℃以下の低温が望ましい。溶出されたポリフェノール化合物は、溶媒を留去することにより乾燥物とし、各種製品形態に加工が可能である。また、更に精製し、各種クロマトグラフィーを用いることにより純度を上げることも可能である。溶出方法は、常法に従いカラム法の場合は、ポリフェノール化合物を含有する溶液を下降法あるいは上昇法により、カラムを通過させることにより溶出ができ、バッチ法の場合は、リグノセルロースを2〜10倍量の溶出液に浸漬することにより容易に目的とするポリフェノール化合物の溶出ができる。【0008】このように本発明は、ポリフェノール化合物の精製方法において、木粉より調製したリグノセルロースを用いることにより、従来分離不可能であったポリフェノール化合物とカフェイン等の夾雑物とを、分離可能とするとともに、多量の有機溶媒を必要とせず、高純度のポリフェノール化合物を低コストで効率よく精製することを可能にした。以下、試験例,実施例により本発明を更に詳しく説明する。【0009】試験例1 (リグノセルロースの調製1)製材所より入手した北米産杉材のノコ屑1kgを50℃で1日間乾燥した後、18〜32メッシュの粒径品を10リットルの0.1規定の水酸化ナトリウム溶液に3日間浸漬した後、水で充分に洗浄し、次いで10リットルの0.1規定の塩酸溶液に1日間浸漬した後、水で充分に洗浄した。更に60%エタノール溶液で1日間洗浄することにより残存する油脂,精油類を除去し、水で洗浄した後熱乾燥により乾燥しリグノセルロースを調製した。得られたリグノセルロース乾燥品は200gであった。【0010】試験例2 (リグノセルロースの調製2)製材所より入手した北米産松材500gを破砕機により10〜60メッシュに揃え、5リットルの1規定の水酸化カリウム溶液に1日間浸漬した後、水で洗浄し、次いで0.5規定の硫酸溶液にて1日間浸漬した。水で充分に洗浄後、95%メタノール溶液で洗浄し、通風乾燥した。得られたリグノセルロース乾燥品は50gであった。【0011】【実施例】実施例1市販の煎茶100gを水道水1000mlで80℃、30分間抽出した抽出液300mlを試験例1で調製したリグノセルロース15gを充填したカラムにチャージし、水道水で通過液の色がなくなるまで洗浄した。次いで、濃度を変えたエタノール水溶液(20%,40%,60%,80%)各100mlで順次溶出した。チャージした茶抽出液およびカラム溶出液のカフェイン量,エピガロカテキンガレート(EGCg)量,エピカテキンガレート(ECg)量を表1に示した。【0012】【表1】【0013】表1に示すように40%以上のエタノール濃度の溶液で溶出することによりエピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートをカフェインと分離溶出することができた。例えば、カラムチャージ液の茶抽出液では、(EGCg量/カフェイン量)が1.44であるが、40%エタノール溶出液では411.7となった。【0014】実施例2市販の番茶100gを50%エタノール溶液1リットルで2時間攪拌(300回転/分)しながら抽出した。得られた抽出液からエバポレーターによりエタノールを留去し、水可溶性画分300mlに試験例2で調製したリグノセルロース標品20グラムを加え、200回転/分で2時間攪拌しながら吸着させた。吸着後、濾紙で吸引濾過し、脱イオン水で濾過水の目視により色がなくなるまで洗浄した。次に、50%アセトン溶液200mlで1時間攪拌することによりリグノセルロースに吸着した成分を溶出した。得られた溶出液をエバポレーターで濃縮乾固した。リグノセルロース処理前の抽出液と溶出液の各々乾燥物中のエピガロカテキンガレートとエピカテキンガレートの割合を表2に示した。【0015】【表2】【0016】表2より明らかなようにエピガロカテキンガレート,エピカテキンガレート含量はリグノセルロースカラムで処理することにより約5倍上昇した。また、溶出液の乾燥物は処理前と比べ色素類が除去され淡褐色に脱色されていた。【0017】実施例3中国産の釜入り緑茶100gを85℃の熱水1リットルで1時間攪拌(300回転/分)し、抽出した。この茶抽出液300mlをリグノセルロース10gを充填したカラムを通過させ、水で充分に洗浄した。洗浄後、60%エタノール100mlをカラムに通過させ吸着物質を溶離させた。茶抽出液と60%エタノール溶離液のHPLCチャートを図1に示した。図から明かなようにカラム処理前の茶抽出液に含まれていた夾雑物がカラム溶離液ではほとんど見られず、エピガロカテキンガレート,エピカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートの茶ポリフェノール類を効率的に精製することができた。【0018】実施例4台湾産ウーロン茶葉500gを粉砕し、15メッシュ以下の粒径とした後、10リットルの95%メタノール溶液を加え、時々攪拌し3日間抽出した。抽出液をエバポレーターにより乾固し、乾燥物を水2リットルに加熱溶解した。溶解液を別途準備したリグノセルロースカラム(内径2.5cm、長さ30cm)を通過させた後、目視により水道水で通過液の色が無くなるまで洗浄した。リグノセルロースに吸着したポリフェノール類は60%メタノール溶液により溶出した。得られた溶出液をエバポレーターにより乾固し、エピガロカテキンガレート,エピカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートの含量を測定した結果,リグノセルロースカラムを通過させることにより、各々の化合物は6.2倍、5.3倍、5.8倍、4.9倍それぞれ含量が増加した。本発明の実施態様ならびに目的生成物をあげれば以下のようなことが考えられる。(1)ポリフェノール化合物を含有する溶液を木粉を用いて精製することを特徴とするポリフェノール化合物の精製法。(2)ポリフェノール化合物を含有する溶液を木粉に接触させた後、吸着した成分を溶出することを特徴とする工程を含むポリフェノール化合物の精製法。(3)ポリフェノール化合物が植物起源である前記(2)の方法。(4)植物がツバキ科植物である前記(3)の方法。(5)ポリフェノール化合物がエピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレートおよびカテキンガレートである前記(1)〜(3)記載の方法。(6)木粉が、アルカリを用いて洗浄し、その可溶性成分を除去したものである前記(1)の精製法。(7)木粉が、酸を用いて洗浄し、その可溶性成分を除去したものである前記(1)の精製法。(8)木粉が、有機溶媒を用いて、洗浄しその可溶性成分を除去したものである前記(1)の精製法。(9)木粉がリグノセルロースである前記(2)の方法。(10)リグノセルロースが製材廃棄物などの木粉を酸、アルカリおよび有機溶媒を用いて洗浄し、それぞれの可溶性成分を除去したものである前記(9)の方法。【0019】【発明の効果】本発明によれば、ポリフェノール化合物を含有する溶液、例えば茶葉の抽出液からカフェイン等の夾雑物を除去し、効率的に商業規模で目的とするエピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート,ガロカテキンガレート,カテキンガレートなどのポリフェノール化合物を製造することが可能である。【図面の簡単な説明】【図1】カラム処理前の茶抽出液(I)と60%エタノール溶離液(II)のHPLCチャートを示した図である。 エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びカテキンガレートを含有する溶液をリグノセルロースに接触させた後、吸着した成分を溶出することを特徴とする工程を含むポリフェノール化合物の精製法。 リグノセルロースが木粉を酸、アルカリおよび有機溶媒を用いて洗浄し、それぞれの可溶性成分を除去したものである請求項1記載の精製法。