タイトル: | 特許公報(B2)_二酸化チオ尿素の連続的製造装置 |
出願番号: | 1994045870 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C07C381/14,D21C9/10 |
陣内 聖久 腰塚 哲夫 JP 3539439 特許公報(B2) 20040402 1994045870 19940316 二酸化チオ尿素の連続的製造装置 三菱瓦斯化学株式会社 000004466 陣内 聖久 腰塚 哲夫 20040707 7 C07C381/14 D21C9/10 JP C07C381/14 D21C9/10 7 C07C381/14 C07C335/04 C07C335/42 D21C9/10 特開昭59−013756(JP,A) 特公昭49−040451(JP,B1) 特開昭55−017339(JP,A) 特開昭55−017338(JP,A) 特開昭55−017337(JP,A) 9 1995258206 19951009 8 20010309 藤森 知郎 【0001】【産業上の利用分野】本発明は二酸化チオ尿素(以下「TUDO」と略す)の製造装置に関するものであり、さらに詳しくはTUDOの使用現場でチオ尿素(以下「TU」と略す)と過酸化水素を反応させて連続的にTUDOを製造するためのオンサイト型のTUDO製造装置に関するものである。【0002】【従来の技術】最近の森林資源の保護、紙ゴミ問題より地球規模で古紙のリサイクルが進められている。特に古紙資源として豊富な新聞古紙は従来の新聞紙製造へリサイクルするばかりではなく、新聞古紙を高脱墨度、高白色度にし、中質紙への配合、情報用紙への配合、及びBKPの代替としても使用し、資源としての新聞古紙の利用率をあげることが試みられている。そこで、新聞古紙を高白色度に漂白するための漂白剤として過酸化水素とともに古紙中の染料の脱色に優れているTUDOが脚光を浴びてきている。【0003】また、家庭紙分野(古紙系トイレットペーパー)の漂白には、従来次亜塩素酸ソーダが使用されているが、廃水中に有機塩素化合物が生成する問題があるため、代替の非塩素系漂白剤としてTUDOが注目されている。従来TUDOを漂白に使用する方法としては、製品化された粉末状TUDOを購入し、それを溶解タンクに一定濃度に溶解し、その液を漂白に使用する方法か、市販TUDOをホッパーに一端貯蔵し、それをフィーダーで一定容量づつ切り出して水に溶解させながら漂白に使用する方法が行われてきていた。【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、現在のTUDO漂白は、以下のことから漂白処理コストが高いという欠点を有する。一つは、製品TUDO粉末は、例えばTU溶液に過酸化水素溶液を加え反応させ、生成TUDO液を精製・濃縮・乾燥することによって得られるが、その際、高価な反応・精製・濃縮・乾燥装置を必要とし、また、反応の制御・精製・濃縮・乾燥に多大なエネルギーを必要とし、更に反応、製品化過程での一部TUDOの分解損失があるので、結果としてTUDO製品価格そのものが大幅に高くなっている。また、漂白現場で粉末状TUDOを溶解して、パルプに付与する場合、攪拌溶解時及びパルプとの混合時に空気中の酸素の影響を受けて、有効成分の分解ロスを引き起こし、その分漂白作用が低下する。そのため、漂白処理コストが高くなっている。さらに、TUDOは一般に固体として販売されるが、TUDOの水に対する溶解度が2〜3重量%と低いので、TUDOの溶解槽を大きくせざるを得ず、また、TUDOを溶解するためには相当の時間がかかり、実用上、作業性が必ずしも良くない。【0005】【課題を解決するための手段】そこで本発明者等は、TUDO漂白のコスト低減方法について研究した結果、パルプの漂白を行なう現場でTUと過酸化水素、またはTUと過酸化水素に助剤を添加しTUDOを製造する方法を開発し、そのための装置について鋭意検討し、その結果本発明に至った。本発明は、TUと過酸化水素を混合、反応させ高収率でTUDOを、精度よく、安全に製造し、且つ生成したTUDO液を連続的的且つ定量的にTUDO処理工程へ供与するための装置である。【0006】本発明は、原料チオ尿素を溶解するための溶解槽、原料過酸化水素溶液を供給するための計量槽、チオ尿素と過酸化水素を反応させるための反応槽、製造二酸化チオ尿素溶液を一時的に貯槽するためのクッション槽からなるオンサイト型の二酸化チオ尿素製造装置である。【0007】チオ尿素を溶解する溶解槽は、好ましくは、水を計量するためのセンサー、溶液温度を測定するための温度センサー、溶解槽の溶解温度を調節するための冷却管などの温度調節器、溶解のための攪拌機を備える。【0008】過酸化水素溶液を供給するための計量槽は、好ましくは、過酸化水素溶液の濃度または量を計量するためのセンサーを備える。より高い反応収率を得るために、過酸化水素計量槽から過酸化水素を供給する配管をU字形にして、過酸化水素を速やかに供給することが好ましい。【0009】二酸化チオ尿素と過酸化水素を反応させる反応槽は、好ましくは、水およびチオ尿素液を計量するセンサー、反応溶液を攪拌するための攪拌機、反応温度を測定するための温度センサー、冷却管などの温度調節器を備える。【0010】製造二酸化チオ尿素を一時的に貯槽するためのクッション槽は、好ましくは、生成二酸化チオ尿素溶液を計量するためのセンサー、生成二酸化チオ尿素溶液温度を測定するための温度センサー、生成二酸化チオ尿素溶液を冷却するための冷却管などの温度調節器を備える。【0011】反応槽およびクッション槽には、二酸化チオ尿素溶液濃度を測定確認するために好ましくは、紫外線吸光度分析器を備える。これら一連の二酸化チオ尿素製造サイクルを制御するために、好ましくは、プログラム式の自動制御器を備える。【0012】本発明の二酸化チオ尿素製造装置は、たとえば以下の様にして運転される。まず、原料チオ尿素を溶解するための溶解槽にTUおよび水を正確に計量して入れ、溶解する。また、原料過酸化水素溶液を供給するための計量槽には既知濃度の過酸化水素を所定量入れる。TUDO製造反応は、反応槽へ所定量の水、TU溶液を供給後、所定量の過酸化水素溶液を添加することによりおこなわれる。【0013】溶解槽におけるTU濃度に制限はないが、水に対するTUの溶解度が25重量%程度あるので、通常0.1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%である。使用する過酸化水素の濃度には制限はないが通常20〜85重量%、好ましくは35〜60重量%である。TUと過酸化水素との反応における両者のモル量比は、TU/過酸化水素=1/2が好ましい。TUと過酸化水素との反応時間は通常1〜60分、好ましくは3〜30分である。反応温度は通常5〜90℃、好ましくは20〜60℃である。触媒を使用する場合は、予めその相当量をTU溶解槽にTUとともに溶解しておくことが好ましい。【0014】TUDOはTU1モルと過酸化水素2モルの反応により製造され、TUと過酸化水素のいづれか一方が多くても収率が低下し目的の収量が得られない。そのためには、正確な濃度の原料TU溶液を調薬すること、次いでそのTU溶液および過酸化水素を正確に計量することが好ましい。また、この反応は発熱反応であるため反応温度が上がりすぎると収率低下に影響することから、反応温度を制御する必要がある。そのため、反応槽には温度調節器、通常、冷却管を備えることが好ましい。【0015】反応終了後全てのTUDO溶液をクッション槽へ移送する。反応槽を出たTUDO溶液は高温であるので、冷却管などで温度を下げることも好ましい。クッション槽は1つでも複数でもよい。クッション槽のTUDO溶液はTUDO漂白工程へ供与される。クッション槽へのTUDO溶液の移送完了後、反応槽にて前記した方法でTUDO溶液を製造し、クッション槽のTUDO溶液が下限にきたら、反応槽にて製造されたTUDO溶液をクッション槽に移送する。これら一連の操作の繰り返しにより、連続的にTUDOが製造される。【0016】本装置の運転を正確に、また省力化されたものとするためには、以上のようなTUDO溶液の製造サイクルをプログラム式の自動制御器などで自動的にコントロールすることが好ましい。特に、製造されたTUDO溶液濃度、原料パルプの白色度、漂白後のパルプの白色度などを連続的に測定し、フィードバック制御することにより安定したパルプの漂白を行うことができる。【0017】図1は本発明のオンサイトTUDO製造装置の具体例である。本発明の装置の運転方法を更に詳細に説明する。尚、本発明は以下の説明又は実施例によって制限されるものではない。【0018】まず、用水をT−2に供給し、センサーLA−1で計量する。次いで攪拌機M−1にて攪拌しながら原料TU、触媒を溶解する。また、用水の温度が高い場合は冷却管C−3に冷却水を流し冷却する。次に反応槽R−1に所定量の用水を供給し、センサーLA−3で計量し、次いでポンプP−2にて所定量のTU溶液を供給し、センサーLA−4で計量する。用水、TUDO溶液を反応槽R−1に供給している間に、過酸化水素溶液を計量する。過酸化水素は、過酸化水素貯槽タンクT−1よりポンプP−1にて計量槽T−3に供給する。T−3では計量センサーLA−2により過酸化水素を計量する。過酸化水素計量方法としては計量槽を使用せず、積算流量計、フローメーター又は定量ポンプなどにより計量してもよい。その他、薬液を所定量計量できる方法であればいずれの方法でもよい。【0019】次いで、反応槽R−1の攪拌機M−2で攪拌しながらT−3で計量した過酸化水素を添加し、TUDOを製造する。TUDO生成反応は発熱反応であるため、冷却管C−1に冷却水を流し発熱を抑える。冷却水としては、工水、地下水、または冷凍機で冷却した水を使用できる。次に製造したTUDOをポンプP−3にてクッション槽T−4へ移送する。次いで、T−4よりポンプP−4にてパルプ漂白工程に供与される。なお、生成TUDOの濃度測定方法としては、生成TUDOの一部をポンプP−5によりサンプリングし、紫外線測定器UV−1へ供給しその吸光度を測定し、TUDO濃度へ変換する。測定の済んだTUDO溶液はT−4タンクへ戻す。【0020】製造TUDO溶液がT−4へ完全に移送完了後、再度R−1の反応槽へ所定量の用水、TU溶液が供給され、M−2で攪拌しながら計量槽T−3で計量された過酸化水素溶液を添加し、TUDOを製造する。T−4のTUDO溶液がレベル計LA−5の下限にきたら、R−1で製造したTUDO溶液をP−3にてT−4へ供給する。以上のサイクルがくりかえされ製造されたTUDO溶液はポンプP−4により連続的に漂白に供与される。なお、計量センサーLA−1、LA−2、LA−3、LA−4、LA−5としては、電極タイプ、光を利用するタイプ、またはロードセルタイプ等重量または容量を正確に把握できるタイプであればいずれの方法でも使用できる。ポンプとしては、通常の渦巻ポンプ、ギヤーポンプ、ダイヤフラム式定量ポンプ等が使用できるが薬液を供給できるポンプであればいずれでもよい。【0021】上記オンサイトTUDO製造サイクルをコントロールする方法として、プログラム式の自動制御器、すなわち、リレー方式、シーケンサー方式、コンピューター方式等上記サイクルを制御できる自動制御器を使用することが好ましい。【0022】【実施例】次に本発明を実施例、比較例によって本発明をさらにくわしく説明する。実施例、比較例中の白色度は、JIS−P8123(ハンター白色度測定法)に従い、漂白終了後のパルプを絶乾量で15gr採取し、イオン交換水にてPC1.0%に希釈後亜硫酸水でpHを5.0に調整、その後希釈パルプ溶液を吸引ろ過し、2枚のパルプシートに抄紙後、一夜風乾して測定した。【0023】実施例1図1に示すTUDO製造装置を使用した。装置仕様を以下に示す。理論TUDO製造能力 1t/D溶解槽(T−2) 3.82m3過酸化水素計量槽(T−3) 80L反応槽(R−1) 2.5m3クッション槽(T−4) 2.5m3容量計量センサー(LA−1〜LA−5) 電極タイプポンプ 渦巻ポンプ【0024】T−2溶解槽に、TU 147kg、触媒Na2WO4 521grを水に40分以内で溶解し、全体で2.93m3とした。この時、TU濃度5W/V%、触媒濃度178ppmであった。反応槽R−1に用水1.433m3を15分で仕込み、次いで、ポンプP−2により原料TU溶液0.586m3を10分で仕込み、攪拌機M−2にて攪拌した。この操作を実施中にポンプP−1にて、過酸化水素計量槽T−3を用いて35%H2O2 74.9kg(66.3L)を計量した。攪拌機M−2にて攪拌しながら、この過酸化水素を反応槽R−1に添加した。生成TUDO理論濃度は20gr/Lであった。15分間反応させ、ポンプP−3にてクッション槽T−4に15分ですべて移送した。移送が完了したら、TUDOの使用を開始するとともに、再度前記の反応槽R−1におけるTUDO生成反応操作を繰り返した。【0025】クッション槽T−4のTUDO溶液はポンプP−4にて連続的に漂白工程に供給した。TUDO生成反応が終結するか、クッション槽T−4のTUDO溶液容量が使用により減少してセンサ−LA−5の下限に達したら、移送ポンプP−3を作動させて新たに生成したTUDO溶液をクッション槽T−4へ移送した。以上のTUDO製造サイクルは、オムロン(株)製、システムコントローラーSYSMAC−C200Hにより制御された。以上のTUDOの製造サイクルを8時間継続し、安定的にTUDO溶液を得ることができた。【0026】TUDO溶液の濃度は、ポンプP−5にてTUDOの一部を紫外線測定器UV−1に供給し、紫外線の吸光度により連続的に測定した。TUDO溶液の濃度の測定値を基に、一定量のTUDOが供給されるようにポンプP−4の流量を制御した。生成TUDO溶液の濃度の測定結果を表1に示した。【0027】比較例1実施例1の比較として、小スケールのバッチでTUDOを合成した。すなわち、生成TUDO理論濃度が20gr/LとなるようにTU14.1grおよび触媒としてNa2WO4を50mg含む水溶液に、35%H2O236.0grを添加混合しTUDO溶液1Lを製造した。結果を表1に示した。【0028】【表1】以上のように、本TUDO製造装置により、小スケールによるバッチ反応と同様に高収率でTUDOを得ることができることがわかった。【0029】実施例2上中質紙配合向けのH2O2で半漂白済み新聞古紙脱墨処理パルプ(白色度69.3%)のpH7.5、パルプコンシステンシー(以下、PC)25%のパルプに実施例1で製造したTUDOを溶液のまま、100%TUDO換算で絶乾パルプ重量当たり(以下、同様)0.25%、および水酸化ナトリウムを0.3%添加、ミキシングし、PC20%、70℃、60分間の漂白を行った。結果を表2に示した。【0030】比較例2オンサイト製造TUDO液の代わりに、市販の粉末状TUDO(DEGUSSA社製、純度99.6%)を水に溶解して100%TUDO換算で0.25%、および水酸化ナトリウムを0.3%添加、ミキシングした他は実施例2と同様にして漂白を行った。結果を表2に示した。作業中において、粉末状TUDOの溶解速度が遅く、完全に溶解するのに多くの時間を要した。【0031】【表2】以上のように、本TUDO製造装置により製造したTUDOの漂白効果は、製品TUDOと同等以上であり、作業効率も向上した。【0032】【発明の効果】本発明のTUDO製造装置を使用すれば、高収率で安価なTUDOを作業性よく、安全に製造することができる。特に漂白工程の現場でTUDOを製造することができる。本発明のTUDO製造装置およびこれを使用する方法は、古紙分野だけに限らず、化学パルプ、機械パルプ(GP、RGP、TMP、CTMPなど)の漂白、繊維分野での染料の脱色、染料の溶解等、TUDOを必要とする分野に適用することができる。【図面の簡単な説明】【図1】TUDO製造装置の概略図(平面図)。【符号の説明】T−1 過酸化水素貯槽タンクT−2 TU溶解槽T−3 過酸化水素計量槽R−1 反応槽T−4 クッション槽M−1、M−2 攪拌機LA−1〜LA−5 計量センサーP−1〜Pー5 ポンプC−1〜C−3 冷却管TA−1〜TA−3 温度センサーUV−1 TUDO濃度紫外線測定器 チオ尿素と過酸化水素を混合、反応させ二酸化チオ尿素を製造するための装置であって、チオ尿素の溶解槽、過酸化水素溶液の計量槽、チオ尿素と過酸化水素を反応させるための反応槽、および、製造された二酸化チオ尿素溶液を一時的に貯槽するためのクッション槽からなる二酸化チオ尿素製造装置。 チオ尿素の溶解槽として、水を計量するためのセンサー、溶液温度を測定するための温度センサーおよび攪拌機を備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 過酸化水素溶液の計量槽として、過酸化水素溶液を計量するためのセンサーを備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 過酸化水素計量槽から過酸化水素を供給する配管がU字形であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 チオ尿素と過酸化水素を反応させる反応槽として、水およびチオ尿素溶液を計量するセンサー、反応溶液を攪拌するための攪拌機、反応溶液温度を測定するための温度センサーを備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 製造二酸化チオ尿素を一時的に貯槽するためのクッション槽として、生成二酸化チオ尿素溶液を計量するためのセンサー、生成二酸化チオ尿素溶液温度を測定するための温度センサーを備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 反応槽またはクッション槽に、紫外線吸光度分析器を備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 一連の二酸化チオ尿素製造工程を制御するためのプログラム式の自動制御器を備えたことを特徴とする請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置。 請求項1記載の二酸化チオ尿素製造装置を使用して、反応槽へ所定量の水、溶解槽中のチオ尿素溶液を所定量供給後、所定量計量した過酸化水素溶液を添加し二酸化チオ尿素製造反応を行い、反応終了後全ての二酸化チオ尿素溶液をクッション槽へ移送し、次いで二酸化チオ尿素処理工程へ供与し、クッション槽へ移送完了後、反応槽にて同様のサイクルで二酸化チオ尿素溶液を製造し、クッション槽の二酸化チオ尿素溶液が減少してきたら、製造二酸化チオ尿素溶液をクッション槽に移送することからなる、連続的な二酸化チオ尿素の製造方法。