タイトル: | 特許公報(B2)_シリルエーテル化合物のシリル基の除去方法 |
出願番号: | 1994017356 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | C07D 477/00,C07D 499/861,C07D 499/897,C07F 7/18 |
金子 彰 賀来 敏 石黒 正路 中塚 隆 JP 3970340 特許公報(B2) 20070615 1994017356 19940214 シリルエーテル化合物のシリル基の除去方法 アスビオファーマ株式会社 503062312 日本曹達株式会社 000004307 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 金子 彰 賀来 敏 石黒 正路 中塚 隆 JP 1993024245 19930212 20070905 C07D 477/00 20060101AFI20070816BHJP C07D 499/861 20060101ALI20070816BHJP C07D 499/897 20060101ALI20070816BHJP C07F 7/18 20060101ALI20070816BHJP JPC07D487/04 134C07D499/00 FC07F7/18 A C07D 477/00 C07D 499/861 C07D 499/897 C07F 7/18 CA(STN) REGISTRY(STN) WPIDS(STN) 特開昭63−162694(JP,A) 特開平06−234675(JP,A) 特開平06−211703(JP,A) Tetarahedron Letters,1985年,Vol.26, No.44,pages 5393-5396 J. Org. Chem.,1987年,Vol.52,pages 564-569 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,1994年,Vol.4, No.11,pages 1345-1346 PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS,SECOND EDITION,pages 68-86 2 1995070126 19950314 15 20010119 山田 拓 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、シリルエーテル化合物からシリル基を除去する方法に関する。【0002】【従来の技術】従来、シリルエーテル化合物からのシリル基の除去方法としては、(1)テトラヒドロフラン等の有機溶媒中に、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NF)等の4級アンモニウムのフッ化物を作用させる方法(J.Am.Chem.Soc.1972,94,6190)、(2)アセトニトリル等の無水の有機溶媒または含水有機溶媒中で鉱酸または有機の強酸を作用させる方法(特開平1−83633号公報)、(3)ジメチルスルホキシド(DMSO)中、N−ブロモこはく酸イミド(NBS)を作用させる方法(Synthesis 1980,234)、(4)水またはアルコール等の溶媒中でアルカリ金属の硫酸水素塩を作用させる方法(特開昭62−120325号)、(5)酢酸水溶液を作用させる方法(J.Am.Chem.Soc.1972,94,6190)、(6)過剰のフッ化カリウム・2水和物と過剰のテトラブチルアンモニウムクロリドとをアセトニトリル中で反応させる方法(J.Chem.Soc.Chem.Comm.,1979,514−5)、等の方法が知られている。【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の方法に於いて、4級アンモニウムのフッ化物を作用させる方法や過剰のフッ化カリウム・2水和物と過剰のテトラブチルアンモニウムクロリドとをアセトニトリル中で反応させる方法は、n−Bu4NFやテトラブチルアンモニウムクロリド等の特殊で比較的高価な試薬をシリルエーテル化合物に対して1当量以上必要とするため経済性の面での欠点を有しており、強酸を用いる反応は、酸に対して不安定な基を有するシリルエーテル化合物に対しては目的とする化合物の収率が低くなるなどの問題点を有している。また、ジメチルスルホキシド中でN−ブロモこはく酸イミドを作用させる方法は、酸化を受けやすい基を有するシリルエーテル化合物に対しては使用できない欠点を有しており、アルカリ金属の重硫酸塩を作用させる方法は、プロトン性の溶媒中で不安定な化合物には適用が困難であったり、反応が進行しにくい等の欠点を有している。【0004】【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは、シリルエーテル化合物からシリル基を除去するに当たり、従来の方法に代わる安価で安全な原料を用いて、酸に対して比較的不安定な物質にも適応できる方法について鋭意研究した結果、有機溶媒中でシリルエーテル化合物とアミン類のフッ化水素塩とを反応させることで容易にシリル基の除去が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。【0005】 すなわち、本発明は一般式(I)【化5】(式中、Xは炭素数が1〜3のアルキル基で置換されたメチン、メチレンまたはイオウ原子を示し、R1、R2およびR3は同一または異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基またはアラルキル基を示し、R4は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級アルキルチオ基、置換されていてもよい低級アルキルオキシ基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい複素環低級アルキル基、置換されていてもよい複素環チオ基、置換されていてもよい複素環低級アルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基または置換されていてもよいアラルキル基を示し、R5は水素原子またはカルボン酸の保護基を示す。)で表されるシリルエーテル化合物またはその塩を有機溶媒中で、一般式(II)【化6】(式中、R6、R7およびR8は同一または異なる炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、nは各アミンの塩で固有のフッ化水素の数を示す。)で表されるアミンのフッ化水素塩、もしくは、一般式(III) Py・n(HF) (III)(式中、Pyは置換されていてもよいピリジンを示し、nは各ピリジンの塩で固有のフッ化水素の数を示す。)で表されるピリジン類のフッ化水素塩と反応させ、一般式(IV)【化7】(式中、X、R4およびR5は前記と同じ意味を示す。)で表される化合物を製造することを特徴とするシリルエーテル化合物のシリル基の除去方法を提供するものである。【0006】一般式(I)で表されるシリルエーテル化合物において、Xは炭素数が1〜3のアルキル基、好ましくはメチル基で置換されたメチン、メチレンまたはイオウ原子を示し、R1、R2およびR3は同一または異なる、炭素数1〜6、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基など;炭素数1〜6、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基など;アリール基、好ましくは、炭素数6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、クメニル基などまたはアラルキル基、好ましくは、炭素数6〜10のベンジル基、フェネチル基などを示し、R4は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級アルキルチオ基、置換されていてもよい低級アルキルオキシ基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい複素環低級アルキル基、置換されていてもよい複素環チオ基、置換されていてもよい複素環低級アルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基または置換されていてもよいアラルキル基を示し(ここで、低級とは、好ましくは、炭素数1〜6、特に好ましくは、炭素数1〜4を意味する。好ましい低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。好ましいアリール基の例としては、炭素数6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、クメニル基などが挙げられる。好ましいアラルキル基の例としては、炭素数6〜10のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。これらアルキル基、アリール基またはアラルキル基は、例えば、1またはそれ以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基、アセトキシ基もしくはベンゾイルオキシ基などの炭素数2〜11のアシロキシ基、アミノ基、アミノ低級アルキル基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、イミノ低級アルキルアミノ基;後記する複素環基;複素環低級アルキル基などで置換されていてもよい。【0007】また、複素環基とは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を少なくとも1個有する飽和または不飽和の単環式または多環式複素環基を意味し、その好ましい例としては、窒素原子1〜4個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の不飽和単環式複素環基、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、およびそのN−オキシド、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル基、1H−1,2,3−トリアゾリル基、2H−1,2,3−トリアゾリル基など)、テトラゾリル基(例えば、1H−テトラゾリル基、2H−テトラゾリル基など)、ジヒドロトリアジニル基(例えば、4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアジニル基、2,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアジニル基など)など;窒素原子1〜4個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の飽和単環式複素環基、例えば、アゼチジニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基など;窒素原子1〜5個を有する7〜12員の不飽和多環式複素環基、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基(例えば、テトラゾロ[1,5−b]ピリダジニル基など)、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基など;酸素原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の不飽和単環式複素環基、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,5−オキサジアゾリル基など)など;酸素原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の飽和単環式複素環基、例えば、モルホリニル基など;酸素原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する7〜12員の不飽和多環式複素環基、例えば、ベンゾキサゾリル基、ベンゾキサジアゾリル基など;硫黄原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の不飽和単環式複素環基、例えば、1,3−チアゾリル基、1,2−チアゾリル基、チアゾリニル基、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,5−チアジアゾリル基、1,2,3−チアジアゾリル基など)など;硫黄原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する3〜8員の飽和単環式複素環基、例えば、チアゾリジニル基など;硫黄原子1または2個および窒素原子1〜3個を有する7〜12員の不飽和多環式複素環基、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基など;酸素原子1または2個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の不飽和単環式複素環基、例えば、フラニル基、ピラニル基など;酸素原子1または2個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の飽和単環式複素環基、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基など;硫黄原子1または2個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の不飽和単環式複素環基、例えば、チエニル基、およびS−オキシドなど;硫黄原子1または2個を有する3〜8員、特に好ましくは、5または6員の飽和単環式複素環基、例えば、テトラヒドロチエニル基、およびS−オキシドなどが挙げられる。これら複素環基は、例えば、1またはそれ以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基、アリル基、プロペニル基などの低級アルケニル基、アセトキシ基もしくはベンゾイルオキシ基などの炭素数2〜11のアシロキシ基、アミノ基、アミノ低級アルキル基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、イミノ低級アルキル基などで置換されていてもよい。)、さらに具体的には、【化8】などを示し、R5は水素原子またはカルボン酸の保護基を示す(ここで、カルボン酸の保護基としては、β−ラクタム系化合物の技術分野で通常使用されるものであれば、特に限定されず、カルボキシル基と一緒になってエステルを形成し、加水分解、光分解、酸化、還元などによって、または酵素的に除去されるものを利用でき、その好ましい例としては、つぎのエステルを形成するものが挙げられる。【0008】すなわち、低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステルなど)、適当な置換基を少なくとも1つ有していてもよい低級アルキルエステル、例えば、低級アルカノイルオキシ(低級)アルキルエステル[例えば、アセトキシメチルエステル、プロピオニルオキシメチルエステル、ブチリルオキシメチルエステル、バレリルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、ヘキサノイルオキシメチルエステル、1−(または2−)アセトキシエチルエステル、1−(または2−または3−)アセトキシプロピルエステル、1−(または2−または3−または4−)アセトキシブチルエステル、1−(または2−)プロピオニルオキシエチルエステル、1−(または2−または3−)プロピオニルオキシプロピルエステル、1−(または2−)ブチリルオキシエチルエステル、1−(または2−)イソブチリルオキシエチルエステル、1−(または2−)ピバロイルオキシエチルエステル、1−(または2−)ヘキサノイルオキシエチルエステル、イソブチリルオキシメチルエステル、2−エチルブチリルオキシメチルエステル、3,3−ジメチルブチリルオキシメチルエステル、1−(または2−)ペンタノイルオキシエチルエステルなど]、低級アルカンスルホニル(低級)アルキルエステル(例えば、2−メシルエチルエステルなど)、モノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルキルエステル(例えば、2−ヨードエチルエステル、2,2−ジクロロエチルエステル、2,2,2−トリクロロエチルエステルなど)、低級アルコキシカルボニルオキシ(低級)アルキルエステル[例えば、メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシメチルエステル、プロポキシカルボニルオキシメチルエステル、tert−ブトキシカルボニルオキシメチルエステル、1−(または2−)メトキシカルボニルオキシエチルエステル、1−(または2−)エトキシカルボニルオキシエチルエステル、1−(または2−)イソプロポキシカルボニルオキシエチルエステルなど]、フタリジリデン(低級)アルキルエステル、または(5−低級アルキル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)(低級)アルキルエステル[例えば、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル、(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル、(5−プロピル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)エチルエステルなど];低級アルケニルエステル(例えば、ビニルエステル、アリルエステルなど);低級アルキニルエステル(例えば、エチニルエステル、プロピニルエステルなど);適当な置換基を少なくとも1つ有していてもよいアル(低級)アルキルエステル[例えば、ベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、フェネチルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル、ビス(メトキシフェニル)メチルエステル、3,4−ジメトキシベンジルエステル、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルエステルなど];適当な置換基を少なくとも1つ有していてもよいアリールエステル(例えば、フェニルエステル、4−クロロフェニルエステル、トリルエステル、tert−ブチルフェニルエステル、キシリルエステル、メシチルエステル、クメニルエステルなど);フタリジルエステルなどをあげることができる。)。【0009】一般式(I)で表されるシリルエーテル化合物の塩とは、慣用の塩であって、塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩などの無機塩基との塩、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)などの有機塩基との塩など;無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機酸付加塩(例えば、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩など)などの酸との塩;塩基性または酸性アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)との塩;分子間または分子内四級塩などを挙げることができる。【0010】一般式(II)で表されるアミンのフッ化水素塩において、R6、R7およびR8は同一または異なる、炭素数1〜8、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基など;アリール基、好ましくは、炭素数6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、クメニル基など;アラルキル基、好ましくは、炭素数6〜10のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基などまたは水素原子を示し、nは各アミンの塩で固有のフッ化水素の数を示し、一般式(III)で表されるピリジン類のフッ化水素塩において、Pyは置換されていてもよいピリジンを示し、ピリジンは前記複素環基について述べた置換基によって置換されていてもよく、nは各ピリジンの塩で固有のフッ化水素の数を示す。【0011】本発明の方法は中性から弱い酸性の条件の下で実施できるため、塩基または強い酸性に対して不安定な出発化合物または生成物にとっては好都合である。従って、本発明の方法によって生成できるアルコール体は一般に高収率で生成される。【0012】本発明の方法によって除去される適当なシリル基は本特許の請求範囲1項に記載の構成を有し、代表的なシリル基としては、トリアルキルシリル基、アリール(アルキル)アルコキシシリル基、アルコキシジアリールシリル基、トリアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、アリールジアルキルシリル基、トリアラルキルシリル基などが挙げられ、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルヘキシルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、tert−ブチルメトキシフェニルシリル基、tert−ブトキシジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルクメニルシリル基、トリベンジルシリル基などがあり、アルコールの保護基として実用的なほとんどすべてのシリル基が含まれる。【0013】本発明が適用できる化合物としては本願特許請求範囲1項に記載の構造を有する化合物であり、これらにはシリルエーテル基と共にカルボニル基やエステル基、アミド基等を有する酸性や塩基性条件に対して過敏な化合物も含まれる。特に好ましい化合物としては一般式(V)【化9】(式中、R5は前記と同じ意味を示し、mは0または1を示す。)で表されるペネム化合物が挙げられる。【0014】式(V)で表される化合物は、特開昭61−207387号、特開昭63−162694号、WO92/03442、WO92/03443、WO92/03444各公報などに記載の方法によって簡便に合成できる。【0015】本発明に用いる有機溶媒は、一般式(I)で表される化合物を溶解し原料および生成物に対し不活性な非プロトン性の溶媒であれば良く、適当な溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エタン、モノクロルベンゼン等の塩素系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられ、これらの溶媒どうしや少量の水との混合溶媒も適当な溶媒として挙げられる。【0016】反応の温度は、室温付近から反応溶媒の沸点までの範囲で選択することができる。【0017】本発明に用いるフッ化水素塩としては、種々のアミン、ピリジン類のフッ化水素塩で反応が円滑に進行するが、特にトリエチルアミン・3フッ化水素塩とピリジン・ポリフッ化水素塩において反応が良好に進行する。これらフッ化水素塩の使用量は、シリルエーテル化合物に対して1当量以上で反応が完結するが、好ましくは1.1から3.0当量で反応が良好に進行する。【0018】反応の後処理の方法としては、溶媒が水に難溶の場合にはそのまま反応液を水洗して少過剰のフッ化水素塩を水中に除去するかまたは必要に応じて炭酸水素ナトリウム等の水溶液で水洗を行って中和した後再度水洗し、溶媒を留去した後カラムクロマトグラフィーや再結晶などの単離操作を行うことで目的とするアルコール体を収率良く得ることができる。また、溶媒が水に可溶の場合には、必要に応じて炭酸水素ナトリウムやアンモニア等の塩基で少過剰のフッ化水素塩を中和し析出した結晶を濾別し、水に難溶な溶媒に置換した後水洗し、溶媒を留去した後カラムクロマトグラフィーや再結晶などの単離操作を行うことで目的とするアルコール体を収率良く得ることができる。また、本発明の方法で得られるアルコール体は高収率であるため、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの精製を行わなくても次の反応に用いることができる。【0019】本発明の方法によると、シリルエーテル化合物からシリル基を除去したさいに出発物質の光学活性を保持することが可能である。たとえば、式(V)で表される化合物の光学活性体である(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステルからシリル基を除去し、(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−ヒドロキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステルを高い光学純度で得ることが可能であり、本発明はシリルエーテル化合物のシリル基を高収率で除去するばかりでなく光学純度の優れたアルコール体を得るための重要な方法である。【0020】【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。【0021】実施例1(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−ヒドロキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステルの合成【化10】(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステル6.59g(15mmol)をメチルイソブチルケトン15mlに溶解した後、トリエチルアミン・3フッ化水素塩3.63g(22.5mmol)を添加した。添加終了後、撹拌下で40℃まで昇温し、同温度でそのまま6時間撹拌し反応を完結させた。反応後に水で3回、3%炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標記化合物4.60g(収率:94.3%)を得た。【0022】実施例2(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−ヒドロキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステルの合成(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−tert−ブチルジメチルシリルオキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸アリルエステル6.59g(15mmol)をトルエン15mlに溶解した後、トリエチルアミン・3フッ化水素塩3.63g(22.5mmol)を添加した。添加終了後、撹拌下で40℃まで昇温し、同温度でそのまま4時間撹拌した後更に50℃にて4時間撹拌し反応を完結させた。反応後に水で3回、3%炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥後の溶液中の標記化合物を内部標準法による高速液体クロマトグラフィーにより定量し、標記化合物4.45g(収率:91.2%)が含まれることを確認した。【0023】実施例3(1’R,2”R,5R,6S)−6−(1’−ヒドロキシエチル)−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステルの合成【化11】 (1’R,2”R,5R,6S)−6−[1’−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル]−2−(2”−テトラヒドロフラニル)ペネム−3−カルボン酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル50gを酢酸エチル90mlに溶解し、これにトリエチルアミン・3フッ化水素塩24.4mlの酢酸エチル8.5ml溶液を添加した。室温で24時間撹拌し、反応混合物を、水、希炭酸水素ナトリウム水溶液、希食塩水にて順次洗浄した後、これにn−ヘキサン58mlを添加した。析出した結晶を濾過し、mp125〜130℃の無色結晶として標記化合物30.20g(収率:77.8%)を得た。【0024】IR(KBr)cm-1:3512(−OH),1840(ジオキソロン C=O),1769(7位C=O),1711(3位エステル C=O).NMR(CDCl3/TMS)δ(ppm):1.33(3H,d,J=6.5Hz,6位エチルのメチル),1.78−1.86(1H,m,テトラヒドロフラン環のメチレン中の1H),1.93−2.08(2H,m,テトラヒドロフラン環のメチレン),2.20(3H,s,ジオキソレンのメチル),2.41−2.48(1H,m,テトラヒドロフラン環のメチレン中の1H),2.95(1H,s,−OH),3.72(1H,dd,J=6.5,1.5Hz,6位のメチン),3.84−3.89(1H,m,テトラヒドロフラン環のメチレン中の1H),3.95−4.00(1H,m,テトラヒドロフラン環のメチレン中の1H),4.20(1H,dq,J=6.5,6.5Hz,6位のエチルのメチン),4.97(2H,s,ジオキソレンについたメチレン),5.30(1H,t,J=7Hz,テトラヒドロフラン環のメチン),5.51(1H,d,J=1.5Hz,5位のメチン).【0025】【発明の効果】本発明によれば、安価な原料を用いて、強酸性や塩基性の条件下で不安定なシリルエーテル化合物のシリル基の除去を効率よく行うことができる。 一般式(I)(式中、Xは炭素数が1〜3のアルキル基で置換されたメチン、メチレンまたはイオウ原子を示し、次の基はtert−ブチルジメチルシリル基を示し、R4は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよい低級アルキルチオ基、置換されていてもよい低級アルキルオキシ基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい複素環低級アルキル基、置換されていてもよい複素環チオ基、置換されていてもよい複素環低級アルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基または置換されていてもよいアラルキル基を示し、R5は水素原子またはカルボン酸の保護基を示す。)で表されるシリルエーテル化合物またはその塩を有機溶媒中で、一般式(II)(式中、R6、R7およびR8は同一または異なる炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示し、nは各アミンの塩で固有のフッ化水素の数を示す。)で表されるアミンのフッ化水素塩と反応させ、一般式(IV)(式中、X、R4およびR5は前記と同じ意味を示す。)で表される化合物を製造することを特徴とするシリルエーテル化合物のシリル基の除去方法。 シリルエーテル化合物が一般式(V)(式中、R5は前記と同じ意味を有し、mは0または1を示す。)で表されるペネム化合物である請求項1記載の方法。