タイトル: | 特許公報(B2)_アスタキサンチンの製造法 |
出願番号: | 1993333101 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12P7/02 |
横山 昭裕 泉田 仁 幹 渉 JP 3570741 特許公報(B2) 20040702 1993333101 19931227 アスタキサンチンの製造法 株式会社海洋バイオテクノロジー研究所 591001949 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 早川 康 100099128 横山 昭裕 泉田 仁 幹 渉 20040929 7 C12P7/02 C12P7/02 C12R1:01 JP C12P7/02 C12P7/02 C12R1:01 7 C12P 1/00-41/00 WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) 特開平5−76347(JP,A) 特開平5−68585(JP,A) 1 FERM P-14023 1995184668 19950725 5 20001023 鈴木 美葉子 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、エビ、マダイなどの養殖魚介類の色揚げに有用であり、また抗酸化剤としても利用されるアスタキサンチンの微生物を利用した製造法に関するものである。【0002】【従来の技術】従来より、アスタキサンチンは、エビ、マダイなどの養殖魚介類の色揚げの目的で広く用いられており、その製造法としてナンキョクオキアミ等の甲殻類からの抽出、酵母の一種ファフィア等の培養、緑藻の一種ヘマトコッカス等の培養、及び有機合成等が知られている。しかし、ナンキョクオキアミを用いる場合、その採取、抽出、及び脂質を始めとする夾雑物との分離等において多大な労力を要する。また、酵母ファフィアの培養物においては、副生産物として脂肪酸エステルが存在し、生産上問題が残る。緑藻ヘマトコッカスの培養時には、光合成に欠くことのできない光を供給しなければならず、太陽光採取のための立地条件や人工光供給のための培養装置等の設備が必要であるだけでなく、混在するクロロフィルとの分離が困難で精製工程が複雑である。また、有機合成法においては、アスタキサンチンが魚介類の飼料や食品添加剤として用いられることを考慮すると、反応時に生ずる副生成物等の上で問題が残る。以上のことよりアスタキサンチンの簡易な製造法の開発が望まれている。【0003】【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の酵母や緑藻等による製造法より簡便に天然のアスタキサンチンを提供することを目的とする。【0004】【課題を解決するための手段】本発明者等は、アスタキサンチンを生産する微生物について鋭意研究を行ったところ、アグロバクテリウム属に属する微生物がアスタキサンチンを生産することを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明のアスタキサンチンの製造法は、アスタキサンチンを生産する能力を有するアグロバクテリウム属細菌を培地に培養し、培養物からアスタキサンチンを採取することを特徴とするものである。【0005】以下、本発明を詳細に説明する。アスタキサンチン生産菌株としては、アグロバクテリウム属に属し、アスタキサンチン生産能を有する菌株であれば、いずれの菌株でも用いることができる。また、これらの菌株の人工変異方法、例えば紫外線照射、X線照射、変異誘起剤処理などあるいは自然発生による変異株、また遺伝子操作、細胞融合による変異株でも、アスタキサンチンを生産するものであればいずれも本発明に用いることができる。代表的菌株としてアグロバクテリウム・アウランティアカス sp. nov. N−81106株が挙げられる。【0006】アグロバクテリウム・アウランティアカス sp. nov. N−81106株の菌学的性質について以下に示す。(1) グラム染色陰性(2) 形 態菌の形・大きさ:桿状、0.9μm×1.2μm運動性:あり鞭毛:周毛あり(3) 菌体色素:オレンジ色(4) 生理的性質オキシダーゼ:陽性グルコース分解性:陽性ゼラチン分解性:陰性DNA分解性:陰性(5) OFテスト酸化(6)G+C含量 67.4%(7)ユビキノンの型 キノン系 Q−10なお、上記の菌学的性質の決定は清水らの方法〔門田元、多賀信夫編:海洋微生物研究法、学会出版センターpp.229(1985)〕に従った。形態学的検討は、光学顕微鏡を用い、特に胞子表面の形態については走査型電子顕微鏡によった。【0007】上記の菌学的性質について、エヌ・アール・クリーグ (N.R.Krieg)、ジェイ・ジイ・ホルト (J.G.Holt) 編、バージーズ・マニュアル・オブ・システマチック・バクテリオロジー (Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology) をもとに検索を行った結果、 N−81106株をアグロバクテリウム・アウランティアカスに帰属させるのが適当であり、 N−81106株をアグロバクテリウム・アウランティアカス sp. nov. N−81106株 (Agrobacterium aurantiacus sp. nov. N−81106) として工業技術院生命工業技術研究所にFERM P−14023号として寄託した (原寄託日:平成5年12月16日) 。【0008】本発明の製造法においては、上記微生物を一般に微生物の培養に用いられる培地で培養し、産生されるアスタキサンチンを常法により採取する。まず培養法について述べる。アグロバクテリウム属細菌の培養には通常の培養方法を用いることができる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育、生産促進物質を程よく含有する培地であれば合成培地、天然培地いずれでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フルクトース、シュクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、マンニトール、糖蜜などが単独又は組み合わせて用いられる。更に、菌の資化能によっては炭化水素、アルコール類、有機酸なども用いられる。窒素源としては、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、カザミノ酸などが単独又は組み合わせて用いられる。そのほか、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅などの無機塩類や海水を必要に応じて加える。更に、使用菌の生育やアスタキサンチンの生産を促進する微量成分を適当に添加することができる。【0009】培養法としては、液体培養法、特に深部攪拌培養法が最も適している。培養温度は16〜37℃、特に20〜30℃が適当であり、培養中の培地のpHはアンモニア水や炭酸アンモニウム溶液などを添加して、4〜10、特に6〜8に維持することが望ましい。液体培養で通常1〜7日培養を行うと、目的物質のアスタキサンチンが菌体中に生成蓄積される。培養物中の生成量が最大に達したときに培養を停止する。【0010】培養物からのアスタキサンチンの単離精製は、微生物代謝生産物をその培養物から単離精製するために常用される方法に従って行われる。例えば、培養物を濾過により培養濾液と菌体に分け、菌体を有機溶剤 (例えば、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム、アセトン、エーテル、酢酸エチルなど) で抽出する。ついで濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過 (SephadexLH−20)等でアスタキサンチンを分離、精製する。なお、培養、精製操作中のアスタキサンチンの動向は薄層クロマトグラフィーによるアスタキサンチンの赤色を目安として追跡することができる。【0011】【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではないことはいうまでもない。(実施例1)種菌としてアグロバクテリウム・アウランティアカス sp. nov. N−81106株 (FERM P−14023号) を用いた。前培養及び本培養には、ペプトン5g/L、酵母エキス1g/L、グルコース2g/L、リン酸第二鉄0.04g/L、天然海水1L(孔径0.45μmのメンブランフィルターにて濾過) の組成を有し、pH7.7に調整した培地を、適宜培養槽に分注し殺菌後用いた。前培養として、 500ml容量の三角フラスコ中の150mlの培地に、該菌株を一白金耳植菌し、25℃で48時間振とう (100rpm) 培養した。このようにして得られた種培養液を10L容量の培養槽中の上記組成と同一の組成の培地3L に5%v/vの割合で移し、25℃で通気攪拌方式 (回転数100rpm、通気量1L/分) により本培養を行った。培養中、培地のpHは特に制御しないで、120時間培養した。【0012】培養液を遠心分離 (10,000rpm)して菌体画分を得、アセトン 200mlを添加し攪拌した後、沈澱物を濾別し、抽出液を20mlに濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル及び蒸留水各 150mlを添加し分液ロート中で酢酸エチル層を分画した。次いで、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムにて脱水後、濃縮した。これを更にシリカゲルカラム (ナカライテスク社製シリカゲル60) を用い、ベンゼン:酢酸エチル=85:15で展開した。溶出された画分Aを濃縮しアスタキサンチン0.3mgを得た。このようにして得られたアスタキサンチンは、水素核NMR、可視光吸光分析、質量分析において、公知のものと一致した。【0013】【発明の効果】本発明によれば、従来ナンキョクオキアミや酵母、緑藻の培養物より得られたアスタキサンチンを、極一般的な培養装置により、高収率で容易に得ることができる。また、脂質や脂肪酸エステル及び微細藻類特有のクロロフィルの混入がなく、精製工程において大幅に改善された。 アスタキサンチンを生産する能力を有するアグロバクテリウム属細菌を培地に培養し、培養物からアスタキサンチンを採取することを特徴とするアスタキサンチンの製造法。