タイトル: | 特許公報(B2)_生体物質の測定方法 |
出願番号: | 1993175996 |
年次: | 2004 |
IPC分類: | 7,C12Q1/527,C12Q1/32 |
高橋 正光 白波瀬 泰史 渡津 吉史 JP 3586737 特許公報(B2) 20040820 1993175996 19930622 生体物質の測定方法 国際試薬株式会社 000170565 廣瀬 孝美 100085486 高橋 正光 白波瀬 泰史 渡津 吉史 20041110 7 C12Q1/527 C12Q1/32 JP C12Q1/527 C12Q1/32 7 C12Q 1/00-70 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/CA(STN) 特開昭55−026896(JP,A) 特開平05−095798(JP,A) 1 1995008297 19950113 45 20000621 阪野 誠司 【0001】【産業上の利用分野】本発明は生体物質の測定方法に関する。より詳細には、臨床検査などの分野で用いられ、血清、血漿、尿などの検体中の生体物質の測定(定量及び活性測定)に関する。【0002】【従来の技術】従来、臨床検査、生化学検査などの分野においては、生体物質の定量や酵素活性の測定が頻繁に行われており、この測定には反応特異性の高い酵素反応を用いた方法が汎用されている。このような酵素反応を用いた生体物質の測定法においては、例えば、▲1▼測定対象である生体物質が関与し且つ過酸化水素を生成する酵素反応系を用い、生成した過酸化水素をパーオキシダーゼの存在下、発色性物質と反応させることにより発色させ、その吸光度変化量に基づいて生体物質を測定する方法;▲2▼測定対象である生体物質が関与し且つNAD(P)H[還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)]からNAD(P)+[酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)]を生成する酵素反応系を用い、NAD(P)Hの吸光度減少量に基づいて生体物質を測定する方法などが用いられており、また▲3▼測定対象である生体物質が関与し且つNAD+からNADHを生成する酵素反応系を用い、NADHの吸光度増加量に基づいて生体物質を測定する方法(特開平5−95798号公報参照)が知られている。【0003】【発明が解決しようとする課題】上記▲1▼の測定方法においては、検体中に存在する還元性物質(例えば、尿酸、アスコルビン酸、ビリルビン、ヘモグロビン等)や酸化性物質などにより過酸化水素の分解などが生じやすく、正確な値を与えない場合がある。一方、上記▲2▼の方法においては、十分量の基質[NAD(P)H、補酵素等]を反応系に添加することが困難なので定量限界が低く、また測定波長における検体の吸収(濁り、溶血、黄疸等)により測定できる範囲が狭くなるという問題がある。このような問題から、酵素反応による生体物質の測定に際しては、NAD(P)Hを生成する反応系を用い、生成するNAD(P)Hの吸光度の上昇に基づいて生体物質を測定する方法が好適であり、自動分析にも適している。【0004】しかしながら、上記▲3▼の方法では、酵素としてピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体が用いられており、当該酵素複合体は3種の酵素が非共有結合で分子集合した複合体なので、高純度の酵素複合体を得ることが困難である。また、還元作用を示すコエンザイムAを利用しなければならず、コエンザイムAが測定値に影響を与えるおそれがある。更に、ひとつの酵素作用としてリポアミド−FADが関与するためにホルマザン法への応用が困難であり、また干渉を受けやすい。加えて、一般に検体にはLDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)が含まれており、上記▲3▼の方法では検体中のLDHの干渉(即ち、LDHによる乳酸+NAD+⇔ピルビン酸+NADHの酵素反応が生ずるので、NADH量の変動等が起る)を考慮しなければならないという問題がある。LDHはNAD+には作用するがNADP+には作用しないため、基質としてNADP+を用いればLDHの干渉は回避できるが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体はNADP+に作用しないので、基質をNADP+に変更しても上記の問題を解消することはできない。【0005】かかる観点から、本発明者等は、NAD(P)Hを生成する酵素反応であり、単独で又は他の酵素反応系と共役させることにより、生体物質の測定に広く利用できる酵素反応を鋭意検討した結果、ピルビン酸脱炭酸酵素(E.C 4.1.1.1、以下、PDCという)及びアルデヒド脱水素酵素(E.C 1.2.1.3,1.2.1.4,1.2.1.5、以下、AlDHという)の存在下、NAD(P)+、チオ−NAD(P)+、3−アセチル−NAD(P)+などのNAD(P)+類からその還元体であるNAD(P)H類を生成する酵素反応が極めて有用であり、かかる反応は生体物質の測定に普遍的に利用できる酵素反応であることを見出した。【0006】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決すべくなされた本発明の生体物質の測定方法は、酵素反応を用いて生体物質を測定する方法であり、当該測定方法がピルビン酸とNAD(P)H類を生成する酵素反応又はこの酵素反応を含む反応系からなるとき、PDC及びAlDHの存在下、NAD(P)+類をNAD(P)H類に還元する反応を、上記酵素反応又は酵素反応系と共役させることにより、生成したピルビン酸を消費すると共にNAD(P)H類の生成量を増加させ、NAD(P)H類の生成量に基づいて生体物質を測定することからなる。【0007】本発明で用いられる、PDC及びAlDHの存在下、NAD(P)+類からNAD(P)H類を生成する酵素反応は下記酵素反応式1及び2で示される。【0008】【化1】【0009】この酵素反応の基質であるピルビン酸及びNAD(P)+類はそれ自体が生体物質として測定の対象とされ、また多くの生体物質は酵素反応によりこれらのいずれかの物質に変換することができるので、当該酵素反応と上記酵素反応式1及び2で示される酵素反応を共役させることにより、測定対象である生体物質をNAD(P)H類の生成量として測定することができる。酵素反応式1及び2で示される酵素反応はそれぞれ公知であるが、酵素反応式1及び2で示される酵素反応によりNAD(P)+からNAD(P)Hを生成させる反応を利用して生体物質を測定する例は知られていない。以下、本発明をより詳細に説明する。【0010】上記酵素反応式1で示される酵素反応に用いられるPDCは、植物及び微生物に広く存在する酵素であり、例えば、コムギ胚芽、酵母などから分離・精製することにより得ることができる。また、上記酵素反応式2で示される酵素反応に用いられるAlDHは、動物及び微生物に広く存在する酵素であり、例えば、動物肝などから分離・精製することにより得ることができる。本発明において、PDC及びAlDHの由来は特に限定されない。【0011】酵素反応式2に示されるように、上記AlDHが触媒する酵素反応は、アセトアルデヒドの酸化的脱水素反応であり、この間にNAD(P)+類は還元されてNAD(P)H類が生成する。ここにおけるNAD(P)+類には、通常単にNAD(P)+と称されるβ−NAD(P)+[本明細書においても、単にNAD(P)+と記す]の他に、例えば、α−NAD(P)+、チオ−NAD(P)+、3−アセチル−NAD(P)+、デスオキシ−NAD(P)+、イソニコチン酸ヒドラジド−NAD(P)+、6−アミノ−NAD(P)+、1,N6−エテノ−NAD(P)+、デアミノ−NAD(P)+、デアミド−NAD(P)+、3−ピリジンアルデヒド−NAD(P)+、3−ピリジンアルデヒド−デアミノ−NAD(P)+などが包含されるが、上記酵素反応式2の酵素反応に基づいて還元体を生成するNAD(P)+アナログであればこれらに限定されるものではない。NAD(P)H類は上記のNAD(P)+類の還元型を意味する。また、酵素反応1の酵素反応はチアミンピロリン酸(TPP)の存在下に反応が進行するので、反応系にはTPPを添加するのが好ましい。更に、PDCはMg2+により活性化されるので、反応系にはMg2+を添加するのが好ましい。【0012】上記酵素反応式1及び2に示される酵素反応は、ピルビン酸及びNAD(P)+類を基質とする反応であり、上記2種の物質のいずれかを基質とすることにより他の物質をNAD(P)H類の生成量に基づいて定量することができる。また、基質であるピルビン酸及びNAD(P)+類を過剰に添加することにより、補欠分子族であるTPPや活性化因子であるMg2+をNAD(P)H類の生成量に基づいて定量することができる。NAD(P)H類の生成量は種々の方法により測定することができるが、通常、簡便且つ高精度で測定することができるので吸光度測定法により行われる。測定波長はNAD(P)H類の種類により適宜選択され、例えば、NAD(P)H、3−アセチル−NAD(P)H、デアミノ−NAD(P)Hなどの場合には340nm、チオ−NAD(P)Hの場合には405nmの波長が選択される。NAD(P)H類の生成量の測定法として、テトラゾリウム塩を共存させてホルマザンに変換し、生成ホルマザンの呈色度を測定する方法などを用いてもよい。【0013】前述のように、各種生体物質は種々の酵素反応系を用いることにより、酵素反応式1及び2の酵素反応の基質であるピルビン酸又はNAD(P)+類に導くことができる。従って、これらの酵素反応系と酵素反応式1及び2で示される酵素反応系を共役させることにより、各種生体物質(基質、補欠分子族、活性化因子など)量又は生体物質としての酵素の活性を、NAD(P)H類の生成量として測定することができる。これらの例を挙げると、基質としては、例えば、ADP、尿素窒素、クレアチン、クレアチニン、遊離脂肪酸、シアル酸、中性脂肪、リン脂質、アミノ酸などが例示され、補欠分子族としては、例えば、TPP、ピリドキサルリン酸、テトラヒドロ葉酸などが例示され、活性化因子としては、例えば、マグネシウムイオン、カリウムイオン、マンガンイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、クロルイオン、炭酸水素イオンなどが例示され、酵素としては、例えば、ピルベートキナーゼ(PK)、コリンエステラーゼ(ChE)、クレアチンホスフェートキナーゼ(CPK)、マレートデヒドロゲナーゼ(MDH)、ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)などが例示される。これらの基質、酵素などを用いた酵素反応であり、ピルビン酸又はNAD(P)+類を生成する酵素反応の例を下記に示す。なお、下記の酵素反応式中、酵素反応によりADPに導いたものについては、以後、酵素反応式3によりピルビン酸に導く。また、Pはリン酸残基を意味する。【0014】【化2】【0015】【化3】【0016】【化4】【0017】【化5】【0018】【化6】【0019】【化7】【0020】【化8】【0021】【化9】【0022】本発明において、酵素反応を用いて生体物質を測定する方法が、ピルビン酸とNAD(P)H類を生成する酵素反応又はこの酵素反応を含む反応系からなるとき、酵素反応式1及び2で示される酵素反応を、上記酵素反応又は酵素反応系と共役させることにより、生成したピルビン酸を消費できると共にNAD(P)H類の生成量を2倍とすることができる。この方法によれば、生成したピルビン酸による反応阻害を回避することができ、また2倍のNAD(P)H類が生成するので測定精度の向上が図れるという効果を奏する。【0023】以下、本発明の生体物質の測定方法(基質などの定量及び酵素活性)を例をもって具体的に説明するが、本発明の方法はこれらに限定されるものではない。1)酵素反応系により生成したピルビン酸及び/又は内因性のピルビン酸を、酵素反応式1及び2の酵素反応によりNAD(P)H類の増加量として測定する方法。ピルビン酸の測定法としては、LDHを用いるNADHの減少量測定法、パーオキシダーゼを用いた過酸化水素法などが知られているが、本発明の方法は以下の点で優れている。▲1▼NAD(P)H類の増加量を測定するので定量限界が高い。▲2▼NAD(P)H類の分子吸光係数が明確なため定量が容易である。▲3▼NAD(P)H類の生成系は、血清等の検体中の還元性物質の影響を受けない。▲4▼NAD(P)H類の発色は、他の色素(例えば、キノン色素等)に比べて安定である。【0024】2)酵素反応系により生成したNAD(P)+類及び/又は内因性のNAD(P)+類を、酵素反応式1及び2の酵素反応によりNAD(P)H類の増加量として測定する方法。NAD(P)+類の測定法としては、種々の方法が知られているが、本発明の方法によれば上記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0025】3)酵素反応式3の酵素反応と酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、酵素反応系により生成したADP及び/又は内因性のADPを、NAD(P)H類の増加量として測定する方法。ADPの測定法としては、PK、ATP及びPEPを併用したLDH法又はPOP法などが知られているが、本発明の方法によれば上記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0026】4)酵素反応式7又は8の酵素反応と、酵素反応式3の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のクレアチン又はクレアチニンをNAD(P)H類の増加量として測定する方法。クレアチン又はクレアチニンの測定法としては、Creatinine amidohydrolase(C1)-Creatine amidinohydrolase(C2)-Sarcosine oxidase(SOD)-POD系、C1-C2-SOD-Formaldehyde dehydrogenase(FDH)系などが広く用いられているが、本発明の方法によれば、上記1)に記載した効果に加え、従来法に比べて共役系の酵素反応数が少ないという利点を有する。【0027】5)酵素反応式4の酵素反応と、酵素反応式3の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中の尿素窒素をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。尿素窒素の測定法としては、Glutamate dehydrogenase (GLDH)-Urease法、PK-LDH-Urea amidolyase法などが知られているが、本発明の方法によれば上記1)に記載した効果と同じ効果が得られ、更に検体中のアンモニアの影響を受けることもない利点を有する。【0028】6)酵素反応式14の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のシアル酸をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。シアル酸の測定法としては、LDH法、Pyruvate oxidase (POP)法、N-Acetyl-D-mannosamine dehydrogenase (AMDH)法などが知られているが、本発明の方法によれば上記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0029】7)酵素反応式15の酵素反応と、酵素反応式3の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中の中性脂肪をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。中性脂肪の測定法としては、Lipoprotein lipase (LPL)により生成するグリセロールを測定する方法に基づき、Glycerol kinase (GK)-Glycerol-3-phosphate oxidase (GPO)法、Glycerol oxidase (GOD)法、Glycerol dehydrogenase (GDH)法などが知られているが、本発明の方法によれば上記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0030】8)酵素反応式13の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のLDHの酵素活性(乳酸からピルビン酸へ)をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。現在用いられているLDHの測定法は、ピルビン酸やNAD(P)Hに対するKmが小さいために生成物阻害を受けやすく、反応直線部分が短いので正確に測定するには初速度を測定する必要がある。それに対し、本発明の方法では下記の点で優れる。▲1▼反応生成物であるピルビン酸が酵素反応式1及び2の酵素反応により消失するので、反応直線性が向上し、長時間域での測定が可能となる。▲2▼1モルの乳酸から2モルのNAD(P)H類が生成するため感度が2倍になり、低活性の検体(特に、LDHのアイソザイム測定等)においても正確に測定することができる利点を有する。【0031】9)酵素反応式12の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のMDHの酵素活性をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。現在、アイソザイム測定(電気泳動等)などにより、心筋梗塞や肝疾患の場合にMDHが上昇することが知られており臨床的に有用である。本発明の方法によれば、NAD(P)H類の生成でMDH活性を測定することができ、また上記と同様に反応直線性が向上すると共に2モルのNAD(P)H類が生成するので、感度の向上が図れる。【0032】10)酵素反応式9の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のALTの酵素活性をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。現在使用されているALTの測定法は、ALTの作用により生成したピルビン酸を測定するLDH法やPOP法であるが、本発明の方法によれば前記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0033】11)酵素反応式10の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のASTの酵素活性をNAD(P)H類の増加量として測定する方法。現在使用されているASTの測定法は、ASTの作用により生成したオキサロ酢酸を測定するMDH法とOxaloacetate decarboxylase (OADC)-POP法であるが、本発明の方法によれば前記1)に記載した効果と同じ効果が得られる。【0034】12)酵素反応式1及び2の酵素反応により、検体中のマグネシウムイオンをNAD(P)H類の増加量として測定する方法。マグネシウムイオンの測定法としては、キシリジンブルー法、GK-G6PDH法などが知られているが、本発明の方法による測定によれば上記1)に記載した効果と同様な効果が得られる。【0035】13)酵素反応式3の酵素反応と、酵素反応式1及び2の酵素反応とを組合せ、検体中のカリウムイオンをNAD(P)H類の増加量として測定する方法。カリウムイオンの測定法としては炎光法、電極法等が知られている。酵素反応式3の酵素反応は活性化因子としてカリウムイオンを必要とするので、酵素反応式1及び2の酵素反応と組合せることにより、検体中のカリウムイオンを測定することができ、この方法によれば上記1)に記載した効果と同様な効果が得られる。【0036】本発明において、酵素反応式1及び2で示される酵素反応の基質及びPDC及びAlDHの使用量としては酵素反応が円滑に進行する量であればよく、測定対象となる生体物質の種類、検体中の含量、共役させる酵素反応の種類、反応時間及び温度などにより適宜調整されるが、PDC及びAlDHの濃度は0.1〜100単位/ml程度、好ましくは0.5〜30単位/ml程度、より好ましくは1〜5単位/ml程度とされる。ピルビン酸及びNAD(P)+類の濃度は、これらが測定対象物質の酵素反応系から由来するときは当然にその濃度となるが、基質として反応系に添加する場合には、ピルビン酸の濃度は0.5〜10mM程度、好ましくは1〜5mM程度、NAD(P)+類の濃度は1〜10mM程度、好ましくは2〜5mM程度とされる。また、TPPの濃度としては、0.05〜1mM程度、好ましくは0.1〜0.5mM程度とされ、Mg2+の濃度としては0.1〜5mM程度、好ましくは0.5〜3mM程度とされる。【0037】本発明の方法は、酵素反応系に悪影響を及ぼさない適当な緩衝液(例えば、トリス−HCl緩衝液、リン酸緩衝液、モノ又はジエタノールアミン緩衝液等)を用いて行われる。また、測定手法は特に限定されず、エンドポイト法、レートアッセイ法などの適宜な手法を用いることができる。なお、前述したように、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体を用いた方法においては、検体中にLDHが存在する場合には、LDHが測定値に影響を与えるので、LDHの測定以外の場合には、反応系にLDH阻害剤(例えば、オキサミン酸及びその塩、蓚酸及びその塩等)を必ず添加する必要がある。しかし、NADP+はLDHの基質とならないので、本発明の方法においてNADP+を用いることにより、かかる問題を解消することができる。測定対象である生体物質を含有する検体としては、例えば、血清、血漿、尿、髄液などが例示される。【0038】【発明の効果】本発明の測定方法では、NAD(P)H類の生成量に基づいて生体物質を測定するので測定限界が高く、また分子吸光係数が明確になっているNAD(P)H類を測定するので、測定値の信頼性が高い。更に、本発明の測定方法は、検体中の還元性物質などの影響を受けないという利点を有する。従って、本発明によれば、生体物質を簡便にして高精度で測定することができ、自動分析にも容易に適用することができるという効果を奏する。【0039】【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、PDCは大腸菌由来を、AlDHは酵母又は大腸菌由来を、PKはブタ心臓由来を用いた。【0040】参考例1ピルビン酸の定量(2)測定方法:ピルビン酸ナトリウムを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記ピルビン酸サンプル20μlを加え、37℃、5分間加温後の340nmの吸光度で、試薬ブランクを対照に測定する。図1に示すようにピルビン酸が定量的に測定できた。【0041】参考例2ADPの定量(2)測定方法:ADPカリウムを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlにADPサンプル20μlを加え37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定する。図2に示すようにADPが定量的に測定できた。【0042】参考例3クレアチンの定量(2)測定方法:クレアチンを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlにクレアチンサンプル20μlを加え37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を試薬ブランクを対照に測定する。図3に示すようにクレアチンが定量的に測定できた。【0043】参考例4クレアチニンの定量(2)測定方法:クレアチニンを約14mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlにクレアチニンサンプル20μlを加え37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を、試薬ブランクを対照に測定する。図4に示すようにクレアニチンが定量的に測定できた。【0044】参考例5NAD+及びNADP+の定量(2)測定方法:NAD+及びNADP+をそれぞれ約14mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに、上記のNAD+サンプル又はNADP+サンプルを20μlを加え37℃、5分間加温後の340nmの吸光度を、試薬ブランクを対照に測定する。図5及び図6に示すようにNAD(P)+が定量的に測定できた。【0045】実施例1LDHの測定(3)測定方法:測定試薬2.8mlにヒト由来LDH(LD−1)200μlを加え、37℃、340nmの吸光度変化を記録し、1分間当りの吸光度変化量を試薬ブランク対照に計算する。同様に、対照試薬2.8mlにヒト由来LDH(LD−1)200μlを、加え37℃、340nmの吸光度変化を記録し、1分間当り吸光度変化量を試薬ブランク対照に計算する。各測定試薬での反応経過を図7に示し、また1分間当りの吸光度変化量を表1に示す。【0046】【表1】【0047】図7に示されるように、対照試薬での反応においては直線部分が短く、その後、生成物(ピルビン酸)阻害を受け反応が抑制される。それに対して、本発明の測定方法においては、生成ピルビン酸の影響を回避できるので直線部分が長く、また感度も高い。現在使用されているLDH測定(乳酸→ピルビン酸)は対照試薬のように初速度しか測定することができないが、PDC及びAlDHを共役させることにより長い範囲での測定が可能であり感度が2倍に上昇する。LDHやMDHのように、NAD+又はNADP+を補酵素とし且つ反応系を共役させることによりピルビン酸生成に導ける活性測定法において、PDC及びAlDHを共役させることは、反応直線性の向上と感度の上昇が得られ、低活性のものの測定に有利である。【0048】参考例6血中クレアチニンの測定(2)測定方法:血清5μlに第1試薬315μlを加え、37℃、5分間加温後、340nmの吸光度(A1)を測定し、さらに第2試薬35μlを加え、37℃、5分間加温し、340nmの吸光度(A2)を測定する。A2とA1より吸光度変化量を計算する。血清検体に代え、クレアチニン標準液(5mg/dl)及び精製水についても同様に測定し、その値を用いて血中クレアチニン濃度を算出する。対照法としてJaffe法を用いた市販の試薬を用いて、同じ検体を測定した。その結果を表2に示す。表2に示されるようによい相関性(Y=1.02X-0.22)を示した。【0049】【表2】【0050】参考例7血中尿素窒素の測定(2)測定方法:血清3μlに第1試薬360μlを加え、37℃、5分間加温後、340nmの吸光度(A1)を測定し、さらに第2試薬40μlを加え、37℃、5分間加温し、340nmの吸光度(A2)を測定する。A2とA1より吸光度変化量を計算する。血清検体に代え、尿素窒素標準液(30mg/dl)及び精製水についても同様に測定し、その値を用いて血中尿素窒素濃度を算出する。対照法としてGLDH−ウレアーゼ法を用いた市販の試薬を用いて同じ検体を測定した。その結果を表3に示す。表3に示されるようによい相関性(Y=0.97X+0.12)を示した。【0051】【表3】【0052】参考例8血中シアル酸の測定(2)測定方法:血清7μlに第1試薬315μlを加え、37℃、5分間加温後、340nmの吸光度(A1)を測定し、さらに第2試薬35μlを加え、37℃、5分間加温し、340nmの吸光度(A2)を測定する。A2とA1より吸光度変化量を計算する。血清検体に代え、シアル酸標準液[N−アセチルノイラミン酸(NANA)100mg/dl]及び精製水についても同様に測定し、その値を用いて血中シアル酸濃度を算出する。対照法としてND−NAL−LDH法を用いた市販品を用いて、同じ検体について測定した。その結果を表4に示す。表4に示されるようによい相関性(Y=1.00X-0.31)を示した。【0053】【表4】【0054】参考例9血中中性脂肪の測定(2)測定方法:血清5μlに第1試薬360μlを加え、37℃、5分間加温後、340nmの吸光度(A1)を測定し、さらに第2試薬40μlを加え、37℃、5分間加温し、340nmの吸光度(A2)を測定する。A2とA1より吸光度変化量を計算する。血清検体に代え、TG標準液(200mg/dl)及び精製水についても同様に測定し、その値を用いて血中中性脂肪濃度を算出する。対照法としてLPL−GK−GPO法を用いた市販の試薬を用いて、同じ検体を測定した。その結果を表5に示す。表5に示されるようによい相関性(Y=1.00X+1.21)を示した。【0055】【表5】【0056】実施例2血中LDHの測定(3)測定方法:血清8μlに第1試薬320μlを加え、37℃、5分間加温後、第2試薬80μlを加え37℃で1分から5分の反応直線部分の1分間当りの340nmの吸光度変化を測定する。同様に、精製水でも操作し、検体の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。対照試薬も同様に操作するが、第2試薬添加後、37℃で30秒から2分までの反応直線部分(初速度)の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。その結果を表6に示す。表6に示されるようによい相関性(Y=2.03X)を示した。【0057】【表6】【0058】実施例3血中MDHの測定(3)測定方法:血清14μlに第1試薬280μlを加え、37℃、5分間加温する(この時、内因性のピルビン酸の消去を行う)。その後、第2試薬70μlを加え37℃で1分から5分の反応直線部分の1分間当りの340nmの吸光度変化を測定する。同様に、精製水でも操作し、検体の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。対照試薬も同様に操作し、検体の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。その結果を表7に示す。表7に示されるように、よい相関性(Y=1.99X)を示した。【0059】【表7】【0060】実施例4血中MDH測定の再現性(1)測定試薬実施例3に同じ。(2)測定方法実施例3に同じ。同一検体について、10回測定する。その結果を表8に示す。表8に示されるように、高感度となることにより、再現性もよくなる。【0061】【表8】【0062】参考例10血中ALTの測定(2)測定方法:血清15μlに第1試薬350μlを加え、37℃、5分間加温する(この時、内因性のピルビン酸の消去を行う)。その後、第2試薬100μlを加え37℃で1分から5分の反応直線部分の1分間当りの340nmの吸光度変化を測定する。同様に、精製水でも操作し、検体の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。また、NADPHの見かけの分子吸光係数を用いて求めたFactor(4984)を乗じ、ALT活性(IU/L)を導く。対照法としてLDH法を用いた市販の試薬を用いてALT活性(IU/L)を求める。その結果を表9に示す。表9に示されるようによい相関性(Y=1.02X-0.23)を示した。【0063】【表9】【0064】参考例11血中ASTの測定(2)測定方法:血清15μlに第1試薬350μlを加え、37℃、5分間加温する(この時、内因性のピルビン酸の消去を行う)。その後、第2試薬100μlを加え37℃で1分から5分の反応直線部分の1分間当りの340nmの吸光度変化を測定する。同様に、精製水でも操作し、検体の1分間当りの340nmの吸光度変化量を算出する。また、NADPHの見かけの分子吸光係数を用いて求めたFactor(4984)を乗じ、AST活性(IU/L)を導く。対照法としてMDH法を用いた市販の試薬を用いてAST活性(IU/L)を求める。その結果を表10に示す。表10に示されるようによい相関性(Y=1.00X+0.31)を示した。【0065】【表10】【0066】参考例12ピルビン酸の定量(チオ−NAD+を用いた例)(2)測定方法:ピルビン酸ナトリウムを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記ピルビン酸サンプル10μlを加え、37℃、5分間加温後の405nmの吸光度で、試薬ブランクを対照に測定する。図8に示すようにピルビン酸が定量的に測定できた。【0067】参考例13チオ−NAD+の定量(2)測定方法:チオ−NAD+を約7mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlにチオ−NAD+サンプル10μlを加え、37℃、5分間加温後の405nmの吸光度を、試薬ブランクを対照に測定する。図9に示すようにチオ−NAD+が定量的に測定できた。【0068】参考例14血中尿素窒素の測定(チオ−NADP+を使用する方法)(1)測定試薬(2)測定方法:血清5μlに第1試薬360μlを加え、37℃、5分間加温後、436nmの吸光度(A1)を測定し、さらに第2試薬40μlを加え、37℃、5分間加温し、436nmの吸光度(A2)を測定する。A1とA2より吸光度変化量を計算する。血清検体に代え、尿素窒素標準液(30mg/dl)及び精製水についても同様に測定し、その値を用いて血中尿素窒素濃度を算出する。対照法としてGLDH−ウレアーゼ法を用いた市販の試薬を用いて同じ検体を測定した。その結果を表11に示す。表11に示されるようによい相関性(Y=1.01X-0.28)を示した。【0069】【表11】【0070】参考例15ピルビン酸の定量(3−アセチル−NAD+を使用する方法)(2)測定方法:ピルビン酸ナトリウムを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記ピルビン酸サンプル20μlを加え、37℃、10分間加温後の340nmの吸光度で、試薬ブランクを対照に測定する。図10に示すようにピルビン酸が定量的に測定できた。【0071】参考例16ピルビン酸の定量(デアミノ−NAD+を使用する方法)(2)測定方法:ピルビン酸ナトリウムを約13mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記ピルビン酸サンプル20μlを加え、37℃、20分間加温後の340nmの吸光度で、試薬ブランクを対照に測定する。図11に示すようにピルビン酸が定量的に測定できた。【0072】参考例17マグネシウムイオンの定量(1)測定試薬トリス−HCl緩衝液 50 mM pH7.5TPP 0.2mMAlDH 2.0単位/mlNADP+ 2.5mMPDC 1.0単位/mlピルビン酸ナトリウム 4.0mM(2)測定方法:塩化マグネシウムを約10mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記塩化マグネシウムサンプル10μlを加え、37℃での2〜5分時の340nmにおける1分間当りの吸光度変化量を試薬ブランクを対照に測定する。図12に示すようにマグネシウムイオンが定量的に測定できた。【0073】参考例18カリウムイオンの定量(2)測定方法:塩化カリウムを約10mMの水溶液に調製し、精製水にて5段階希釈系列のサンプルを作成する。測定試薬1.0mlに上記塩化カリウムサンプル10μlを加え、37℃での2〜5分時の340nmにおける1分間当りの吸光度変化量を試薬ブランクを対照に測定する。図13に示すようにカリウムイオンが定量的に測定できた。【0074】参考例19血中コリンエステラーゼの測定(2)測定方法:検体4μlに第1試薬280μlを加え、37℃、5分間加温する。つぎに第2試薬70μlを加え、37℃で1分〜5分の反応直線部分の1分間当りの340nmの吸光度変化量(A)を求める。検体の代りに精製水を用い、同様な操作を行い、1分間当りの340nmの吸光度変化量を(B)を求め、下式によりコリンエステラーゼ活性値(U/L)を算出する。ここで、検体としてコリンエステラーゼを高値に含む血清を1/10、1/5、2/5、3/5、4/5、5/5に希釈して用い、検量線を作成した。その結果を図14に示す。図14に示されるように良好な直線性に示した。次に、対照法として、DMBT(2,3−ジメトキシベンゾイルチオコリンヨーダイト)を用いた市販の試薬を用いて、同じ検体についてコリンエステラーゼ活性値(U/L)を求めた。その結果を表12に示す。表12に示されるように、よい相関性[相関係数(r)=0.999]を示した。【0075】【表12】【図面の簡単な説明】【図1】本発明の方法によるピルビン酸の測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図2】本発明の方法によるADPの測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図3】本発明の方法によるクレアチンの測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図4】本発明の方法によるクレアチニンの測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図5】本発明の方法によるNAD+の測定の検量線を示す図である。【図6】本発明の方法によるNADP+の測定の検量線を示す図である。【図7】本発明の方法及び従来法によるLDHの測定例を示す図である。【図8】本発明の方法によるピルビン酸の測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてチオ−NAD+を使用)。【図9】本発明の方法によるチオ−NAD+の測定の検量線を示す図である。【図10】本発明の方法によるピルビン酸の測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類として3−アセチル−NAD+を使用)。【図11】本発明の方法によるピルビン酸の測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてデアミノ−NAD+を使用)。【図12】本発明の方法によるマグネシウムイオンの測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図13】本発明の方法によるカリウムイオンの測定の検量線を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。【図14】本発明の方法による血中コリンエステラーゼ活性の測定例を示す図である(NAD(P)+類としてNADP+を使用)。 酵素反応を用いて生体物質を測定する方法において、当該方法がピルビン酸とNAD(P)H類を生成する酵素反応又はこの酵素反応を含む反応系からなるとき、ピルビン酸脱炭酸酵素及びアルデヒド脱水素酵素の存在下、NAD(P)+類をNAD(P)H類に還元する反応を、上記酵素反応又は酵素反応系と共役させることにより、生成したピルビン酸を消費すると共にNAD(P)H類の生成量を増加させ、NAD(P)H類の生成量に基づいて生体物質を測定することを特徴とする生体物質の測定方法。