生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アセトアルデヒド毒性の抑制剤
出願番号:1992201350
年次:2006
IPC分類:A61K 31/198,A61P 39/02,C07C 237/06


特許情報キャッシュ

藤居 亙 諏訪 芳秀 JP 3793239 特許公報(B2) 20060414 1992201350 19920728 アセトアルデヒド毒性の抑制剤 サントリー株式会社 000001904 社本 一夫 100089705 増井 忠弐 100076691 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 村上 清 100092886 藤居 亙 諏訪 芳秀 20060705 A61K 31/198 20060101AFI20060615BHJP A61P 39/02 20060101ALI20060615BHJP C07C 237/06 20060101ALN20060615BHJP JPA61K31/198A61P39/02C07C237/06 C07D237/06,A61K31/198 東丈夫ら「民間薬の基礎知識」東洋経済新報社1979年、90頁、238頁 調理科学、第25巻1号(1992)、51〜59頁 香料、No.131、1981年、105〜109頁 12 1994040901 19940215 8 19990719 2004002919 20040213 塚中 哲雄 横尾 俊一 中野 孝一 【0001】【産業上の利用分野】本発明は、L−テアニンを有効成分とするアセトアルデヒドの毒性抑制剤に関し、さらに詳しくは、アルコール飲料摂取に伴い血中に生じるアセトアルデヒドのもたらす毒性から生体を防御する薬剤に関する。【0002】【従来の技術】アルコール、特にエチルアルコールは主に肝臓でアルコール脱水素酵素によって酸化され、アセトアルデヒドに変換される。また、その一部はミクロゾームのエタノール酸化系(microsomal ethanol oxidizing system:MEOS)やペル オキシゾームに存在するカタラーゼによってもアセトアルデヒドへと酸化される(L.J. Kricka and P.M.S. Cleark, Biochemistry of alcohol and alcoholism,Ellis Horwood Ltd., Chichester, 1979)。アセトアルデヒドは更にアルデヒド脱水素酵素により酢酸に変換される。肝臓に取り込まれたアルコールの約75%は酢酸として循環系に放出されることになる(Lundquist, E. et al., J. Clin.Invest., Vol.41, 955-961, 1962)。一般に飲酒後の健康人の血中アルコール濃度は0.01-0.1%である(Lundquist, E., The metabolism of alcohol, 1-52, Biological basis of alcoholism, Wiley-interscience, Toronto, 1971)。一方、 アセトアルデヒドの血中濃度はアルコールの 1/1000 程度である。【0003】アセトアルデヒドは、アルコール代謝上不可避的な生成物であり、アルコール飲料を過度に摂取したときの急性中毒や、いわゆる“悪酔い”の主因を形成すると考えられているが、近年、飲酒に伴うアセトアルデヒドの下記のような副次的な作用についても明らかにされつつある。【0004】(1) 酸化的リン酸化の阻害、及び脳、肝におけるコエンザイムA活性の抑制。(Beer, C. T. and Quastel, J. H., Can. J. Biochem. Physiol., Vol.36, 531-541, 1958 )(2) カテコールアミンの遊離の促進、及びそれに伴う心機能の低下。(McCloy, R.B. et al., Cardiovasc. Res., Vol.8, 216, 1974)(3) テトラヒドロイソキノリン類の生成。本物質は、ノルエピネフリンやエピネフリンとアセトアルデヒドが縮合することにより生成され、アルコール依存症の主因を形成するとの説がある。(Sandler, M. et al., Nature(London), Vol.241, 439-443, 1973)(4) テトラヒドロ−β−カルボリン類の生成。本物質は、アセトアルデヒドとインドールアミン類の縮合により形成され、やはりアルコール依存症に関与するとされている。(Rahwan, R. G., Toxicol. Appl. Pharmacol., Vol.34, 3-27, 1975)。(5) 心拍数、換気、死腔の増加。(Asmussen, E. et al., Acta Pharmacol.Toxicol., Vol.4, 311-320, 1948)(6) 突然変異原性及び染色体異常誘発(Obe, G. and Ristow, H., Mutation Res., Vol.65, 229-259, 1979 )。【0005】従って、アルコール飲料を健康的に嗜むためには、アセトアルデヒドによる上記生体への不都合な作用を低下させ、好ましからざる副次的作用を防止することが望ましい。特に、日本人をはじめとするモンゴロイドでは、遺伝的にアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の欠損が約50%の人々に見られる。そして、この酵素の欠損者におけるアルコール摂取後の血中アセトアルデヒド濃度は、欠損していない人と比べ、著しく高い(約17倍)ことが指摘されている(Harada, S., Lancet, 11, 982, 1981)。このように、アセトアルデヒドの毒性を軽減する ことは、アルコール飲料を健康的に嗜むために是非必要とされている。【0006】このような目的にかなう物質としては、これまでに、L−システイン、L−2−メチルチアゾリン−4−カルボン酸、チアミン塩酸(Sprince, H. et al., Agents and Actions. Vol.4/2, 125-130, 1974)、重亜硫酸ナトリウム、D−ペニシラミン(Nagasawa, H. T., et al., Life Sci., Vol.20, 187-194, 1977 )、ニコチンアミド(Eriksson, C. J. P., FEBS Lett., Vol.40, 317, 1974)など が報告されている。【0007】しかしながら、L−システイン、チアミン塩酸、D−ペニシラミンなどのSH基を有する化合物の有効性については、D−ペニシラミンが臨床的に許容される投与量域ではアセトアルデヒドの血中濃度になんら影響を及ぼさないことから否定的見解も出されている(Inoue, K. et al., Jpn. J. Alcohol & Drug Depend ence, Vol.19(1), 74-82, 1984)。また、L−システインは比較的毒性があり、他のチオール化合物も本発明の目的とは別の薬理作用も併せ持つことから、理想的なアセトアルデヒドの毒性低下剤とは言い難い。【0008】【発明が解決しようとする課題】このような現状に鑑み、アルコール摂取に伴って生成する血中アセトアルデヒドの作用を中和あるいは抑制し、アセトアルデヒドによって惹起される悪酔い症状を抑制することができる、真に有効な悪酔い防止剤が望まれてきた。【0009】【課題を解決するための手段】本発明者らは、このようなアセトアルデヒドの急性毒性を有効に抑制する物質を、マウスにアセトアルデヒドを投与した時の急性毒性の軽減を指標に、鋭意スクリーニングを行い、アミノ酸の一つであるL−α−アラニンがアセトアルデヒドの急性毒性を有効に抑制することを見出し、特許出願を行った(特開昭59−255252号公報参照)。【0010】本発明者らは、さらに有効なアセトアルデヒドの急性毒性抑制剤を見出すべく、マウスに致死量のアセトアルデヒドを投与した時の救命率を指標に、鋭意スクリーニングを行った結果、L−テアニンが血中アセトアルデヒドの毒性から生体を極めて有効に防御することを見出し、これを有効成分とする組成物を製造して本発明を完成した。すなわち、本発明はL−テアニンを有効成分として含有し、アルコール急性毒性や悪酔いの予防、治療を目的とする悪酔い防止剤を提供するものである。【0011】本発明に使用するL−テアニン(L-Glutamic acid-γ-monoethylamide)は、 茶の葉に含まれているグルタミン酸誘導体で、旨味の主成分である。茶の葉中のその含有量は、他のアミノ酸よりも高く、玉露(上)で 2466 mg%、玉露(並)で 2007 mg%、煎茶(上)で 1496mg %、煎茶(並)で 652 mg %と報告されている(茶研報 No.40, 65, 1973)。また、呈味を用途とする食品添加物として使用されており、その使用基準は制限されていない。【0012】また、L−テアニンの薬理作用としては、マウスを用いた実験において、カフェインによって誘発されるけいれん死や運動量の増加に対して拮抗することが報告されており(Chem. Pharm. Bull. Vol.19, 1257-1261, 1971, 薬学雑誌, Vol.95, 892-895, 1975)、L−テアニンはお茶に含まれるカフェインの作用を穏や にするものと考えられているが、L−テアニンがアセトアルデヒドの毒性を軽減するとの報告はない。【0013】本発明の毒性抑制剤の有効成分であるL−テアニンは、薬学的に許容されうる塩、たとえば塩酸塩の形で、賦形剤、担体等の薬品及び食品分野で慣用の補助成分、たとえば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などとともに、カプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤、注射剤、点滴剤等に製剤することができる。更に、アルコール飲料やミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。【0014】ドリンク剤の場合、必要に応じ、他の生理活性成分、ミネラル、ビタミン、ホルモン、栄養成分、香味剤等を混合することにより、嗜好飲料的性格を持たせることも可能である。【0015】L−テアニンは、マウスを用いた急性毒性試験において、2 g/kg 経口投与で死亡例はなく、一般症状及び体重等に異常は認められず、非常に弱毒または無害の物質である。【0016】本発明のL−テアニンを二日酔いまたは悪酔いの予防または治療剤として用いるには、後述の実施例の、マウスに致死量のアセトアルデヒドを投与した時にL−テアニンが示す毒性軽減効果と、実際のヒトの悪酔い時の平均的な血中のアセトアルデヒド濃度(約 20μmol/l )および経口投与の場合の吸収率等を考慮し て、L−テアニンとして、0.3 mg/kg 以上を投与すればよい。L−テアニンの投与量に特に上限は存在しないが、L−テアニンの特有の呈味と経済性を考慮すると、一般に300 mg/kg 程度を超えないことが好ましい。従って、本発明の悪酔い防止剤がその効果を十分に発揮させるためには、L−テアニンを1回服用当り 0.02 〜2 g 含有することが好ましい。本発明の悪酔い防止剤は、アルコール飲料の摂取前、摂取中または摂取後に服用し、アセトアルデヒドによる悪酔いの予防または治療をすることができる。【0017】本発明に用いたL−テアニンは、後述の実施例から明らかなように、マウスに致死量のアセトアルデヒド(11 mmol/kg)を投与した場合の生存率を改善する。また本発明のドリンク剤は、後述の評価例に示すように、悪酔いし易いとされるアセトアルデヒド脱水酵素欠損型パネラーにおいて、悪酔いを予防する。【0018】L−テアニンがどの様にしてアセトアルデヒドの毒性を抑制するのかは未だ詳らかではないが、アセトアルデヒドの生理作用として、副腎髄質や交感神経を刺激して、カテコールアミンの遊離を促進し、心臓のβ−受容体を介して心拍数を上昇させることが判明しているので、動物にアセトアルデヒドを大量に投与するとこの作用が強くなり、不整脈を引き起こし、死に至ると考えられている。よって、L−テアニンのアセトアルデヒド毒性抑制の機序は、アセトアルデヒドにより遊離が促進されるカテコールアミンの作用に拮抗するためと考えられる。【0019】【実施例】次に実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。【0020】実施例1.アセトアルデヒド急性致死抑制試験試験動物は、7週齢のCDF1 雄性マウスを日本チャールズリバー(株)より購入し、1週間の予備飼育の後実験に用いた。飼育条件は、マウスは室温23±1〜2℃、湿度55±5%、換気回数12〜15回/ 時間(オールフレッシュエアー方式)、照明時間(12時間/日、午前7時点灯、午後7時消灯)に設定された飼育室でポリイソペンテンケージ(日本チャールズリバー製、235×325×170H mm)に6匹ずつ飼育した。固形飼料CE−2(日 本クレア)及び飲料水は自由に摂取させた。【0021】アセトアルデヒドは蒸留水にて希釈し、投与量が11ミリモル/kgになる様に調整した。また、L−テアニンは投与量が 0. 2 および 2 g/kg になるように蒸留水に溶解して試験に供した。すべての注射量は 10 ml/kg とした。【0022】マウスは1群12匹とし、規定量のL−テアニンまたはコントロールとして蒸留水を腹腔内投与し、30分後にアセトアルデヒドを腹腔内投与した。アセトアルデヒド投与2時間後及び2週間後の生存率を観察し、χ2 検定により有意差を判定した。【0023】結果は〔表1〕に示すように、コントロール群の2時間後および2週間後の生存率がそれぞれ16.7%であったのに対して、L−テアニン 0.2 g/kg 投与群の生存率はそれぞれ33.3%、25.0%また 2 g/kg 投与群の生存率はそれぞれ66.7%、58.3%であり、 2 g/kg 投与群ではコントロール群に較べて危険率5%以下で有意であった。【0024】【表1】【0025】b.製法処方に従ってL−テアニンと乳糖を混合し、打錠後粉砕したものに処方量のステアリン酸マグネシウムを混合した。混合物を400 mgづつ2号カプセルに充填して、1カプセル中に200 mgのL−テアニンを含有するカプセル剤を製造した。【0026】実施例3.粉剤の製造b.製法処方に従ってL−テアニン、乳糖およびオキシプロピルセルロースを混合し、少量の水を加えて練合機で練合後、整粒し、乾燥して再び整粒、篩分して1000mgづつ分包して、1剤あたり200 mgのL−テアニンを含有する粉剤を製造した。【0027】実施例4.ドリンク剤の製造a.処方L−テアニン 20 gDL−酒石酸ナトリウム 0.1 gコハク酸 9 mg液糖 800 gクエン酸 12 gビタミンC 10 g香料 15 ml塩化カリウム 1 g硫酸マグネシウム 0.5 gb.製法処方に従って上記の成分を蒸留水 8 lに溶解し、蒸留水を加えて全量 10 l とした後、0.22μm の除菌フィルターで滅菌し、100 mlづつ褐色びんに無菌充填して、1剤あたり200 mgのL−テアニンを含有するドリンク剤を製造した。【0028】評価例.アルデヒド脱水素酵素欠損型パネルによるドリンク剤の評価エタノールパッチテストでアルデヒド脱水素酵素欠損型と判定された健常人5名(年齢25〜32才、男性3名、女性2名)をパネルとし、実施例4で製造したドリンク剤および実施例4においてL−テアニンに代えて同量のL−グルタミン酸を加えて製造したプラセボドリンク剤を用いた。【0029】ドリンク剤服用後 20 分にビール(アルコール濃度約 4.5%) 135 ml を飲酒させて、飲酒後 20 分での自覚症状を質問票で回答させた。パネルテストは順序効果を考慮し、ブラインドで行い、同一時間帯に日を変えて実施した。自覚症状の評価は1〜5(1:症状なし、2:やや症状あり、3:症状あり、4:ややひどい、5:ひどい)の5段階で行い、Paired-t 検定により有意差を検定した。【0030】結果を〔表2〕に示すが、本発明のドリンク剤は、危険率 5%で酔いの程度および顔のほてりを改善し、悪酔いを予防することが明らかになった。【0031】【表2】本発明のドリンク剤の悪酔い予防効果(平均値)--------------------------------------------------------項目 実施例4のドリンク剤 プラセボドリンク--------------------------------------------------------酔いの程度 2.4* 3.4顔のほてり 2.2* 3.6心臓の鼓動 2.6 3.6眠気の程度 3.4 3.4--------------------------------------------------------*:プラセボドリンクに比べて有意差あり(P<0.05)【0032】【発明の効果】本発明によれば、L−テアニンを有効成分とする二日酔いまたは悪酔いの予防および治療剤が提供される。 単離されたL−テアニンを有効成分として1回服用量当たり0.02〜2g含有する、アセトアルデヒドの毒性抑制剤。 前記毒性抑制剤が、単離されたL−テアニンと食品補助成分を配合してなることを特徴とする、請求項1の毒性抑制剤。 前記毒性抑制剤が嗜好飲料である、請求項1の毒性抑制剤。 前記毒性抑制剤がドリンク剤である、請求項1の毒性抑制剤。 嗜好飲料に添加するための、請求項1の毒性抑制剤。 食品に添加するための、請求項1の毒性抑制剤。 単離されたL−テアニンを有効成分として1回服用量当たり0.02〜2g含有する、二日酔いまたは悪酔いの予防及び治療剤。 前記予防及び治療剤が、単離されたL−テアニンと食品補助成分を配合してなることを特徴とする、請求項7の予防及び治療剤。 前記予防及び治療剤が嗜好飲料である、請求項7の予防及び治療剤。 前記予防及び治療剤がドリンク剤である、請求項7の予防および治療剤。 嗜好飲料に添加するための、請求項7の予防および治療剤。 食品に添加するための、請求項7の予防および治療剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る